自重をやめた転生者は、異世界を楽しむ

饕餮

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ドルト村編

第128話 パーティーを組んだ

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 そろそろディエゴが村に来る時期が近づいてきた。ただ、馬車を作ってからは村を離れて王都に行くことが増えたから、今後ディエゴが来るかどうかはわからないが。
 といっても馬車を使ったのはコッコを買いに行ったのと、コッコの餌や藁を買い溜めるために一回使っただけなので、そこはヘラルドの裁量次第かな?
 そんな中、ヤミンとヤナ、従魔たちを連れて森を散策中だ。二人からお願いされ、パーティーを組むことになったからだ。
 これは、ギルマスのヴィンからもお願いされた案件だったのもあり、断りづらかった。そこは仕方がないよね。ヤミンもヤナもまだ未成年なわけだし。

「成人したての私じゃ、他のベテランが黙ってないんじゃないの?」
「ん? それはねえな。だってこの村に来れるような奴もいないし、いたとしてもヘラルドに認められるような奴もいないしな」
「あ~、そういう理由なのね」
「おう」

 つまり、今帝都にいるBランクとAランクは、力量と技術に問題がなくとも、人格に問題ありってことだ。いくら力量や技術がよくても、人格に問題があるとSランクに上がれない。
 だからヘラルドに認められた私につけたいってことみたい。
 あと、従魔たち全部をひっくるめると、全属性の魔法が使えてしまう。ヤミンとヤナは魔法使いだからこそ、私につけたいとも言っていた。
 私自身は魔法が使えないけれど、従魔たちは全員使えるからね~。そこを見越して、成人するまでにしっかりと育てろってことらしい。
 他国はどうか知らないが、帝国は魔法を使う人は種族に関係なく、帝都にある魔法学校に通って魔法を学ぶことを定めているという。けれど、ヤミンとヤナは職業として冒険者を選んでしまっている。
 だから学園に入ることができないそうだ。冒険者なら実践で覚えることができるから。
 なので、魔法を扱える人に指導してもらわないといけないんだけれど、一流と呼ばれる魔法使いは貴族の家に仕えたり国に仕えたりするから、まず冒険者になることはない。
 いても初級クラスの魔法しか使えず、それ以上のことを教えることができない。中級や上級と呼ばれる魔法を使える人が冒険者になっていることもあるが、基本的に人見知りか変人、指導が下手糞な人ばかり。
 それもあり、二人を指導できる人材がいなかったらしい。
 その悩みを帝都のギルマスとヴィンで話し合っている時に二人が私を探していることと、私の従魔たちの話をした二人のギルマスの利害が一致し、もし私たちが出会うことができたのなら、私に面倒を見てもらおうと考えたという。
 チッ……お前らのせいかよっ!
 まあ、ギルマスたちの懸念もわかるんだよね。村に来る時に見たヤミンとヤナの魔法の使い方は、とても危ないものだった。なんというか、魔力を込めすぎっていうのかな? 魔力の使い方がよくわかっていない人や下手な人の魔法と同じだと、従魔たちが指摘していた。
 だからレベルの高い魔物を倒す力量があっても、技術がなかったせいでなかなか倒すことができなかったわけだし。
 なので、村に来る道中では従魔たちが中心となり、ヤミンとヤナの指導を徹底的にやってもらったのだ。もちろん、一緒にいたヘラルドたちも二人に教えていた。
 理論は魔族の四人が、実践は従魔たちというふうに分けてね。
 基本的に、魔族は村にいるからね~。日々森で遊びという名の戦闘をしている従魔たちのほうが、実践経験値が高い。なので、そういう指導の仕方になった。
 そのおかげもあり、ヤミンとヤナは山頂付近の魔物を倒せるようになったというわけ。
 まあ、そんな二人の事情はともかく。

「ヤミン、ヤナ。ここに山芋があるわよ」
「なるほど!」
「これが山芋か!」
「むかごはほとんど落ちてしまっているから食べられないけど、掘ることは可能ね」
「やり方を教えて?」
「自分でやってみたい」
「はいよー」

 魔法がある世界にいるんだからと、リコに実践してもらいつつ山芋を掘ると、二人はキラキラとした目でそれを見ている。近くにあと三つほどあったのでそれを掘ってもらう。
 これも土魔法を扱う練習のひとつになっているのだ。
 山芋を折ることなく、土を丁寧に柔らかくしたうえで、髭を残しながら山芋を掘る。言葉だけなら簡単そうに聞こえても、いざ実践するとなると難しい。
 それを少ない魔力で、尚且つ丁寧にやらないと山芋はすぐにポッキリ折れるので、繊細な使い方を学ぶには最適だと、ジルとリコが話していた。

「「で、できたー!」」
<上手にできたのー>
<ああ、うまいぞ>
「「ありがとう!」」

 ノンと、ノンの通訳によるジルに褒められ、ヤミンとヤナは嬉しそうにしている。軽く水洗いしたあとは自分のアイテムボックスにしまっていた。
 そうしながら、この山で採れる果物やキノコと薬草を教えつつ、魔物の分布も教える。村のギルドが必要とする素材は上位種ばかりだからね~。効率よく、そして無駄な殺生をしないためにも、しっかりと憶えてもらう。

「あ、そうか。先輩冒険者が真っ先にどこにいるのか情報を聞くのって、そういうことなんだね」
「そうすれば探し回る時間も無駄にならないってことか」
「そうよ。受付で聞くか、ギルド内にある資料室を探せば、魔物の分布や特徴、弱点などがわかる。だから、ベテランになるほど情報を集めるの」
「「なるほど~」」

 弱点を知っていればそれに対処することができるから。
 外にいる魔物であれば、必ず戦うことになるから動きや弱点、分布先がわかる。けれど、ダンジョンだとそうはいかない。
 ダンジョンによって出現する魔物が違うし、外よりも強くなっているからだ。
 もし外と同じ感覚で戦闘すると、必ず痛い目を見ることになる。先輩たちの失敗談や自分の経験を経て、新人たちは成長していく。
 中には増長して手酷い怪我を負い、冒険者を辞めざるを得ない状態になったり死んだりすることもある。だからこそ、慣れ始めた時が一番危険だと言われているし、その時期が一番怪我や死亡が多いのだ。
 それをわかっている新人は慎重になるし、浮かれていた人は気を引き締める。できないやつは冒険者から離脱することになる。
 魔物がいる世界ならではのシステムとでもいうのかな。命が軽いとまでは言わないが、死と隣り合わせである以上哀しいことだ。世界が違えば常識も変わるんだから、しょうがない。
 同じ世界の地球だって、国によっては常識が違うんだから、当たり前だ。
 例えば結婚。ほとんどが一夫一妻制だが、一部の地域や国には一夫多妻のハーレムが存在する。
 例えば銃。日本だと一般市民が持つのは禁止されているが、アメリカは一般市民が持っていることも多い。
 他にもあげたらキリがない。
 地球内ですらそうなんだから、異世界でも常識が違うのは当然だよね。
 採取や戦闘をしながら話す内容ではないけれど、ヤミンとヤナは常識の違いを改めて感じたのか、神妙な顔で頷いていた。

<アリサ、ブラックウルフの匂いがする>
「ほんと? なら、全員で仕留めようか。ヤミン、ヤナ。ブラックウルフの匂いがするそうよ。戦闘後は解体の練習をしようか」
「「うん!」」

 ふんす! と気合いを入れる二人に肩の力を抜くように言い、襲ってきたブラックウルフの群れを全員で殲滅。その後、私も解体と解説をしつつ、二人の経験値稼ぎのために解体してもらった。
 それ以降もベア種やサル種、ボア種やディア種に襲われたが難なく倒し、しっかりと解体の勉強をするヤミンとヤナ。村に来る前の状態に比べると、今は危なげなく解体できるようになっているのが凄い。
 二人が若いってこともあるが、それだけ真剣に学んでいる証拠だ。
 将来はどんな大人になるんだろう。
 真剣に、そして楽しそうに解体している二人を見て、そんなことを思った。

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