自重をやめた転生者は、異世界を楽しむ

饕餮

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ドルト村の冬編

第152話 ダンジョン攻略 13

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 翌朝。五十五階層のボスをサクッと倒し、五十六階層へ。
 相変わらず数が多い魔物に辟易しつつ、切り込み隊長よろしく突撃し、階段付近の魔物を殲滅。その後はノンのサンクチュアリを展開し、私以外の全員が魔法攻撃をした。
 途中で魔法攻撃に飽きたらしいヴィンが大剣での攻撃に加わったり、ランツが魔力で矢を作る弓での攻撃に切り替えたり。息子二人も攻撃に参加し、それなりに楽に戦えるとわかった時点で剣や槍での攻撃に変更したりと、それぞれが攻略を楽しんでいた。
 魔術師寄りのヤミンとヤナまで、杖で殴ったりしてたんだよ? それでも五撃で倒すんだから、レベルも腕力も底上げされたんだろう。まあ、結局は疲れるという理由で魔法に切り替えていたが。

「もうちょっと体力をつけないとね」
「そうだな。村に帰ったら、雪の中を歩いて体力をつけようぜ」
「そうしよっか」

 のほほんとそんな会話をしながら魔法を放つヤミンとヤナ。転生者だからなのか詠唱を破棄し、技の名前だけで魔法を放っている。
 魔法はイメージが大事と聞いている。娯楽が溢れている日本からの転生者であるヤミンとヤナからすれば、イメージは簡単だろう。
 いいなあ……。私も魔法を使ってみたかった!
 まあ、嗜んでいた武術の関係で生活魔法以外は使えないとリュミエールから言われているので、そこは仕方がない。生活魔法と錬金術だけで我慢しよう。
 このふたつも立派な〝魔法〟だしね。

 ある程度魔物を殲滅したら、左上に展開しているマップを確認しつつ、周囲を見渡す。見た目の景色は里山といったところか。
 ただし、小さな草原というか畑というかそういうものもあるし、ため池や小川も流れている。古民家がないだけで、某男性アイドルグループがやっていたテレビ番組にあった里山の景色にとても似ているのだ。
 小川も沢に近い小川なので、もしかしたらわさびが見つかるかもしれない。

「わさびがあるといいね、アリサ」
「そうね。川の土手にあるといいんだけど」
「あれ? これってわさびの葉じゃない? よいしょ、っと」
「「おお~!」」
「やった! わさびだ!」

 さっそく沢で葉っぱを見つけたヤミンが、そのまま引っこ抜く。その下にあったのは、日本でもお馴染みの形の山わさびだった。
 香りを嗅ぐと、ツンとした香りの他にも爽やかなものが混じり、記憶にある香りを一致する。ジルとリコにとってはきつい匂いのようで、すぐに川べりを離れた。
 鼻がいい魔物にとってはちょっとつらいかもね。
 そしてヤミンが見つけた山わさびを皮切りに、土手になっているところに転々と生えているわさびやクレソン、せりを採取しつつ、周囲にたくさん湧いている魔物たちや小川にいる魚も採取。小川の魚も襲ってくるんだよ……。
 まあ倒すとそのまま丸ごと一匹の川魚と魔石がドロップするので、かなり嬉しい。
 多いのはニジマスで次にアユ、そしてヤマメだろうか。あとは鯉やフナ、ウナギもいる。
 ウナギはなぜが背開きの状態でドロップするので、目打ちで捌くことを考えるとかなり楽だった。夜はうなぎの蒲焼きかな? どうせなら村の人たちにも食べさせてあげたい。
 それはヤミンとヤナも同じだったようで、ドロップしたら回収しているしね。そんな私たち転生者とは違い、ランツ親子とヴィンは周囲の魔物を殲滅している。
 こっちもなかなかいいランクの素材のようで、四人ともホクホク顔だ。従魔たちもそれなりに楽しんでいるらしく、キャッキャウフフと魔物や魚と戯れていた。
 そうこうするうちにセーフティーエリアに着く。この階層のエリアは、なんととても大きな古民家。村と同じように茅葺き屋根で、キッチンと囲炉裏、トイレにお風呂まである。
 部屋は大部屋なのでパーティーごとに泊まれるようになっているし、盗みや殺人、レイプなどの犯罪を犯すことも不可能になっている、とても優れた部屋だった。
 まあ、こんな深い階層まで来れるような猛者だと、そんなことをしなくても金は持っているし女にモテるので、犯罪を犯すような真似はしない。そんなことをしたら、今までの功績や名誉が全て不意になるからね。
 荒くれ者が多いのに、ランクが上がっていくほど人格者になっていくのが不思議。
 部屋も決まったことだし、囲炉裏の周囲で休憩。お昼に近いこともあり、ここでご飯にすることにした。

「せっかく囲炉裏があるのに、お餅がない……」
「俺も持ってきてない……」
「私が持ってきてるから、焼こうか?」
「「お願いします!」」

 てなわけで、お昼は餅になった。
 男たちに持って来ていた餅を渡して焼いてもらっている間に、砂糖醤油や大根おろし、海苔を用意。他にも野菜がたっぷり入った味噌汁を作る。味噌汁があればその中に餅をいれ、お雑煮にすることもできるだろうし。
 あとはドロップした川魚を焼けばいいかと波打ちで串に刺し、塩を振って囲炉裏端に刺していく。焼き加減を全員に見てもらっている間にご飯を炊き、合間にウナギを蒸しておく。
 こうすることで柔らかくふっくらとしたウナギの蒲焼きができると祖母に教わった。その後は白焼きをしてからアイテムボックスにしまっておく。仕上げは食べる直前のほうがいいしね。
 香り込みでのウナギだし。
 和気藹々としながら昼食を食べ、今後の行動を話し合う。予定していた日数はあと十日ほど。ここで切り上げるのか、それとも六十階層まで行くのかを話し合っているのだ。

「五十一階層のような寒さだと、少し厳しいな」
「それでもアリサが腕輪を作ってくださいましたから、まだいいほうでは?」
「ああ。装備が軽くて助かる。だがなあ……テント内がなあ……」
「寒いことには変わらないですしね。それでも、オンジャクでしたか? あれがあるだけでだいぶ違いましたし」
「まあなあ」

 暑さもそうだけれど、寒さも体の負担になる。寒さに関しては、動いている間はどうにでもなるが、休憩などをして動きが止まると、一気に冷えて体温が奪われていくのだ。
 これが意外と侮れない。かといって着込むと動きが鈍り、強くなっていく一方の魔物に対処できないようでは困る。
 だからこそ、経験が豊富なヴィンとランツが攻略を渋るというか、悩んでいるのだ。そこにランツの息子たちが加わり、渋面を作りながらあれこれと話している。
 ふとヤミンとヤナを見ると、二人も私を見ている。何か話があるのかと思い、黙って首を傾げたら、防音結界を張った。これはヴィンたちに聞かれたくない話らしい。

「どうしたの?」
「あのさ、アリサと初めて出会った時、マップのことを教えてくれたよね」
「そうね。ヤミンとヤナもオールカラーのマップだったわよね?」
「うん。それなんだけどさ、ダンジョンも同じなんだ」
「だから俺たちは、アリサがマップに従って安全な方向へと誘導してるのに気づいたんだけどな」

 さすが転生者だな。確かにこの話はヴィンたちの前ではできない。

「相談というか、提案なんだけど……」
「俺、地形把握ってスキルを持ってるんだ。もちろんカンストしてる。それを理由にして、マップを描いて渡したらどうかなってヤミンと話してたんだ」
「あと、江戸時代にあった懐に入れる懐炉かいろも。僕たちはその構造を知らないけど、アリサなら知ってると思って……」
「知ってるわ。もちろん、布団に入れるタイプのカイロもね」
「「お~」」

 感動したように目を輝かせるヤミンとヤナ。すまん、祖父母の家は昔っからある家で旧家なんだ。だから、そういうものがゴロゴロしてるし、炭を使ったアイロンなんてものもあった。
 そんな話をすると、なぜか「すげー!」と言われた。

「あとは、村のような家を作って、テントから脱却するか、私がテントを提供するかくらいしかないかも」
「「テント?」」
「リュミエールからもらった特別性。中が家のようになってる」
「「ゲッ!」」

 だよね、そうなるよね。
 テントに関しては保留、その代わり懐炉と昔ながらの金属の湯たんぽを私が作り、ヤミンとヤナの二人でマップを作ることになった。

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