自重をやめた転生者は、異世界を楽しむ

饕餮

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ドルト村の冬編

第153話 ダンジョン攻略 14

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「ヤミン、このフロアに紙になりそうな草はありそう?」
「うーん……なくはないけど、日本にいた時のような紙は無理だよ?」
「わかってるわ。せめて藁半紙のようなものができればいいけど、今は手元に藁がないからね。間に合わせでできないかなあと思って」
「だよね。あとで探索に出た時に探してみるね。ボクは樹人だから、植物の隠された特性すらわかるし」
「助かるわ」

 紙さえあればマップの書き込みができるしね。しかも大きな紙一枚ですむから楽なのだよ。
 この世界にも紙があるにはあるが、藁半紙の劣化版のような感じであまり手触りはよくない。ただし、貴族や王宮で使うようなものはその限りではないんだとさ。
 つまり、日本にあったような紙はとても手間暇がかかった上質なものなのでその分値段も高く、庶民は買えないってわけ。かろうじて冒険者ギルドのマップはそれなりに上質ではあるものの、それでも藁半紙よりも若干劣るようなものなのだ。
 だが、ランツによると製紙技術が向上しているらしく、ここ数年でかなりいい紙が出来上がりつつあり、お高い紙もなんとか買えるくらいまでは値段が落ちてきているという。
 それでも上質なやつはA5サイズくらいで金貨一枚以上はするんだから、とてもじゃないが庶民は買えない。その分藁半紙の劣化版は五枚から十枚で銀貨一枚なんだから、そこそこ高いと言わざるを得ないのが実情とのこと。
 まあ、紙は輸入品らしいので、どうしても高くなってしまうらしい。紙に適した植物が生えているのがその国にしかないそうだから、仕方がないんだろう。
 代用できるものでもあればまた違うんだろうけどね。
 帝国の場合だと藁を使って作れそうではあるが、製紙の製造方法自体が秘匿されているそうなので、一から作るのは難しい。あとはそれらにまつわる道具とか。
 それでも帝国内で日々模索しているそうだから、そのうち藁で作れることに気づくんじゃなかろうか。
 ……できることは言わないけどね!
 紙のことは置いといて。一旦防音結界を解除したヤナは、何食わぬ顔でご飯を再開する。ヤミンはヤミンで自分のスキルを見直しているのか、餅を食べながらブツブツと呟いているし。
 そんな彼らを見つつ、私はアルミのインゴットを三つほど出し、懐炉と湯たんぽを錬成。その後、アイテムボックスに残っていた綿と布を使ってキルトを錬成したあと、懐炉と湯たんぽを入れる袋を錬成した。

「ヴィン、ランツ。間に合わせだけど」
「なんだ?」
「小さいのと大きいのですか」
「ええ。小さいのが懐炉と言って、中に炭を入れて使う暖房器具のひとつ。大きいものは指を入れて熱いと感じるか人肌まで温めたお湯をこの中に入れて、布団を温めるものよ。一時間前に入れておくと、布団全体が温まるわ」
「「「「おお~!」」」」

 懐炉と湯たんぽを渡すと感動する成人男性四人。それだけテントの中は寒かったんだろうなあ。

「もし、また雪景色の場所だったら使ってね」
「それなんだが、アリサ。村のような家を作れねえか?」
「あ~、やっぱそのほうが楽?」
「ああ。個人や他の人間とで来たならともかく、今は村に住む人間同士でパーティーを組んでるだろ? このフロアのような気候ならいいが、さすがに五十一階や五十二階のような環境だと、まず眠れない」
「だよね~」

 村にあるようなSランクの蜘蛛糸で作った布団なんてないし、基本的に毛布一枚だしねぇ。それなら小さな小屋や納屋を作り、中を拡張した挙げ句、エンチャントをガチガチにかけて防熱と防寒、ついでに耐熱と耐寒をつけたほうが遥かにマシだよね。

「作るにはいいけど、木材はどうする? このフロアのを使ってみる?」
「ああ、頼む。お前さんが持ってる樹木ほどではないだろうが、それでもかなり魔素が濃い場所だからな。Sランクは軽くあると見ている」
「そうね。あとで確認してみるわ。ヤミンも手伝ってね」
「わかった」

 嬉しそうに頷くヤミン。そしてそこでヤナが地形把握を持っていると全員に話し、今後のことも踏まえてマップを作ろうかと提案している。

「……いいのか? ヤナがギルドに渡せば、相当いい値段になるぞ?」
「わかってるけど、今俺たちはパーティーを組んでいるだろ? 本来なら俺もヤミンも、ここまで深く潜れるほどのレベルに達してなかった。けど、ここまでこれたのはヴィンさんやランツさんたちがいたからだし。お礼じゃないけど、それくらいさせてくれよ」
「別に気にしなくていいんだがな。それでもヤナがやってくれるというなら、俺としても……いや、俺たちは助かる」
「そうですね。その分時間が短縮できますし、最短で階段やセーフティーエリアに辿り着けますから」

 最年長の二人が頷く。

「もちろん、ギルドに言ったりしないぞ」
「ギルマスなのにそれでいいのかよ」
「いいんだよ、アリサ。今は個人的にパーティーを組んで、このダンジョンに潜っているんだしな」

 私が突っ込むと、ニヤリと笑ってそんなことを言うヴィン。策士だな、おい。
 まあ、冒険者は他人のスキルや魔法を探るような真似はマナー違反だし、それを吹聴することも忌避されているしね。ヴィンとしても、ヤナが困るようなことになってほしくないんだろう。
 もちろんそれはランツたちや私にも言えるわけで。ヤナを勧誘しようと、村に大挙して来られても困るのだ。
 なので、ここにいるメンバーが黙っていればすむ話なのだ。
 そんなわけで、ヤナがマップを描き込んでくれることになった。もちろん、ヤミンと私も手伝うけどね!

「紙に関しては、ボクがそれっぽいものを探すね」
「どうやって作るのですか?」
「もちろん私が錬成するわ」
「さすが、錬金術持ちは言うことが違いますね」
「規格外にもほどがあんだろ」
「喧しい!」

 いいじゃないか、錬金術でごり押ししても。時短になるんだからさ。
 昼休憩を終えたあとは、それぞれで行動開始。私とヤミンとヤナ、護衛にジルとリコがつき、残りは周囲を探索。時間を決めて探索したあと、またこのセーフティーエリアに戻ってきて一泊することに。
 そんなわけで三人と二匹で里山に入ると、さっそくヤミンが紙になる草木を探し、私はできるだけ真っ直ぐに生えている樹木を探す。樹木自体を鑑定してみると、なんとSSSランクだった。

「マジかー。あのダンジョンと同じなんだろうなあ……」

 まだ誰も来たことがないことに加え、伐採しようなんて考えないからなあ、この世界の住人は。まあ、ランクが上がれば上がるほど虫除けになるからね、この世界の樹木は。
 今後村で何か作るとなった時のためにも、多めに伐採していこう。そうと決めたらあとはヤミンに手伝ってもらいつつ、真っ直ぐに生えている樹木を伐採する。
 そのついでにヤミンが紙に適した植物を見つけたので、それを大量に採取する。他にも山菜やキノコ各種、薬草と果物を採取しつつ、伐採していった。
 さすが里山なだけあり、薬草の種類が半端なかった。しかも、素材としてのランクはどれもSランクだ。
 これを持っていけば、レベッカも喜ぶだろう。
 村にはない薬草があるとヤミンが教えてくれたので、それは苗ごと掘り起こし、ヤミンが管理してくれることに。樹人だからなのか、知らない植物を見ると目を輝かせていた。
 ヤナはヤナで山菜やキノコ、果物を喜々として採取しているから、きっと今までこうやって二人で生きてきたんだろうなと窺える。
 誰も来ないのをいいことに、根こそぎ採取しまくって満足したところで時間切れ。魔物もかなりの数がいたから広範囲の採取はできなかったけれど、それでもかなりの数を採取することができた。
 最後は魔物たちを殲滅する勢いで私以外の二人と二匹が広域の魔法を放って魔物を殲滅し、セーフティーエリアに帰ってきたのだった。
 息子二人とランツ、そしてヴィンが晩ご飯を作っている間に、私はB4サイズの紙を二十枚とA2サイズを五枚錬成したあと、エリア内にある庭で小屋を建築。家具はベッドくらいなので楽だ。
 その分キッチンと囲炉裏は必ず欲しいと言っていたし、寝るだけのスペースがあればいいとのことだったので、各自の部屋を用意した。まあ、寝るだけと言っても、四畳半はあるけどね。
 家造りが終わるころご飯ができたと呼びに来たので戻る。
 ご飯はポトフとパン、サラダとウルフの肉を使った串焼きだった。とても美味しゅうございました。

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