自重をやめた転生者は、異世界を楽しむ

饕餮

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ドルト村の春編

第165話 王城到着

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 あれこれと準備をし、今日は村を出発する日。従魔たちを連れていけないので、イデアを繋いだ馬車で移動だ。
 ただ、村にある馬車は幌馬車だし、さすがにこれで王城に行くわけにはいかないからと、貴族が乗るような箱馬車を新たに作った。とはいえ、一回こっきりしか使わないものなので、中を広くしたりはしていない。
 もちろん、サスペンションだのを作って揺れを少なくしたし、座椅子は長時間座っていても疲れない仕様にはしたが。村に戻って来たら、木材は薪として廃材決定、座椅子の部分は集会所行きである。

「では、しばらく頼みます」
「ええ。いってらっしゃいませ」

 副村長の立場であるゲレオンが一緒に行くので、その兄であるランツが代理で、ヘラルドの代わりに村を見ているそうな。
 まあ、元々山奥の僻地にあるし、町や村と取引しているわけでもないし。ディエゴも来なくなったから、ヘラルドが出かけても問題はないらしい。
 売れるものがないのでしばらくはハビエルが王都に行くくらいしかないし、それは私たちが帰って来てからでも問題ない。
 従魔たちのご飯はヤミンとヤナにお願いすると快く引き受けてくれたので胸を撫で下ろし、しっかりと材料を渡しておく。

「できるだけ早く帰ってくるから。いい子にしているんだよ。ヤミン、ヤナ。お願いね」
<<<<<はーい!>>>>>
「「わかった」」
「では、行きましょうか」
「ええ」

 ヘラルドの合図でイデアに合図し、馬車を走らせる。もちろん、御者は私だ。
 謁見する日は明日のお昼。普通なら絶対に間に合わない日数なのに、村を出る。
 ……普通ならね?
 一回村を出てしばらく走り、停まる。

「転移はどこにすればいいのかしら」
「帝都から半日くらいの道でいいですよ」
「わかった。じゃあ、今から転移するわね」

 てなわけで、マップを出して言われた場所にピンを打ち、そこに転移。範囲指定しておけばイデアだけや馬車だけ取り残す、なんてこともないから、とっても便利。
 一瞬で帝都まで半日のところにある休憩所に着くと、休憩がてら最終確認。
 場合によっては、転移した時に酔うらしいんだよね。しかも、一緒に行く三人とイデアは転移の経験がないという。
 なので、具合が悪くなっていないかの確認と、もし体調を崩していた場合は困るので、休憩にしたのだ。
 まあ、三人とイデアは特に体調を崩すなんてことはなかったが。
 逆に初転移で興奮していたが。

「宿はどうなっているの?」
「王城に泊まるように言われています。ですので、そのまま向かってください」
「うへぇ……。紹介状とか招待状は?」
「あります。城門の門番に、こちらを見せるようにと、皇帝陛下からお話をいただいていますよ」

 ヘラルドから手渡されたのは、ハガキサイズの青みがかった白い封筒。透かし彫りのようになっているらしく、封筒自体に帝国の紋章が刻印されている。
 裏を返せば赤い封蝋と、帝国の紋章とは違うデザインがあった。ヘラルドによると皇帝個人の封蝋印だそうで、滅多なことでは押されないらしい。
 ……とんでもねーな、ヘラルドの人脈は。伊達に王太子してなかったってことか。
 元魔族の国と帝国自体はかなり離れていたものの、先々代国王こと祖父母が帝国で作っている米を輸入したり、魔族からは国でしか採取できないスパイスや果物、野菜を輸出していた関係で、それ以来ずっと仲良くしていたらしい。
 けれど、例のアホの国のせいで亡国となり、それを知った当時の皇太子――現皇帝が手を差し伸べてくれて、帝国まで逃げることができたのだとか。
 村の場所も皇帝自ら選定し、住まわせてくれたそうだ。
 それもあり、招聘されると断れない、らしい。
 まあ、そこまで恩があったら断りづらいわな。しかも、今は平民だし。
 そんな話をしているうちに休憩も終わり、イデアを操って帝都に向かう。
 魔物自体は弱いからイデアが蹴り一発で倒しているので問題もなく、のんびりと馬車を走らせる。そうこうするうちにお昼となり、山を下りる直前の休憩所でご飯。
 ご飯を食べたあとは帝都まで走り、多少並んだものの問題なく門を通り抜ける。そのまま大通りを走ること一時間。
 やっと王城の目の前に来た。

「……さすがに大きいわね」
「そうですね。それにしても、懐かしい……」
「陛下はお元気かしら」
「元気じゃないか?」

 皇帝を知っている人間からすると、会うのが楽しみらしい。
 私としてはそんな面倒事は避けたいが、こればっかりは仕方がない。それよりも今は、城の美しさを堪能して現実逃避しよう。
 城自体はかなり大きい。中央の他に両翼、そして離れた場所にも建物がある。
 屋根の色はオレンジで統一されていて、陽光を浴びて輝いている。
 中央部分の屋根の見た目は、某ネズミーランドにある灰かぶりや百年寝てたお姫様が出てくる物語で、作中内に出てくる城のモデルになったノイシュバンシュタイン城に近い。下部はハイデルベルク城っぽい造りだね。
 両翼はニンフェンブルク城っぽいデザインで、三階建てで統一されている。そのおかげで中央部分がドーンと高く聳えるように見えるのだ。
 ポツンと離れた場所にある建物は離宮や後宮なんだろうか。小型版ホーエンツォレルン城っぽい見た目の屋根ではあるが、一階建てというか平屋というか、それくらいの高さしかない。
 あくまでも似たものを当てはめているだけで、同じ形ではないことを明記しておく。
 門に着いたので馬車を停める。目の前にいるのは兵士、あるいは下級騎士だろうか。騎士服を着ているが、装飾が少ない。
 そんな彼らは槍を持ち、門の前で槍をクロスさせ、通行を阻止している。

「何か御用でしょうか」
「こちらを。招待を受けています」

 お城だからね、一応普段とは違う言葉遣いだよ。普段は年上だろうと偉い人だろうと変わらないって?
 喧しいわ、ヘラルドとゲレオン!

「こ、これは!」
「お話を聞いております。どうぞ、お通りください」
「ありがとうございます」

 封筒を返してもらい、マジックポーチにしまう。一応簡単な武装はしているよ、護衛も兼ねているからね。
 刀を腰に佩いているだけで、見た目は冒険者が着るような恰好だ。黒い皮のパンツと蜘蛛糸の白いシャツ、黒い皮のベストとマジックポーチ。その上に蜘蛛糸のコートを着ている。
 とはいえ、コート以外はリュミエールからもらったものなので、下手な武器や防具よりも、攻撃力と防御力が高いというとんでも仕様なものだったりする。
 見た目が安物っぽいから、その性能がバレることはないだろう。実際、門番にも気づかれた様子はないしね。
 会釈をしてイデアを歩かせる。

「ヘラルド、馬車はどこに停めたらいいの?」
「このまま真っ直ぐ行くと、誰かいると思います。その人の指示に従ってください」
「はいよー」

 ヘラルドの言葉に従って馬車を真っ直ぐ走らせる。すると、途中でスーツに近い恰好で紺色の髪で短髪、ヘラルドと同じくらいの年齢で眼鏡をかけた男性と、ケープくらいの長さのマントを羽織った騎士が五人佇んでいるのを見つけた。

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