自重をやめた転生者は、異世界を楽しむ

饕餮

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ファウルハーバー領編

第191話 工場建築

 気を取り直し、敷地の広さを決める。
 まずは砂糖を作るための作業場。ここは大きくてもルードルフ曰く、直系五尺(約150センチ)の鍋を十基入れるので、相当広く取るつもりだ。
 もちろん、魔道具のコンロを設置して火を扱うことになるので、風通しをよくするためにも、隣同士の間隔をかなり開けるそうだ。それを踏まえて、作業場はかなり大きく取る。
 次に芋の洗浄と皮むきやカットをする場所、食堂とキッチン、事務所、砂糖を乾燥させる部屋、袋詰めまたは瓶詰にする場所。袋にするか瓶にするかはまだ決めていないそうだが、輸出時の移動手段が荷馬車オンリーの場合を考え、恐らく布か革を使った袋になるだろうとのこと。
 マジックバッグがあるといえども、大きな瓶よりは袋のほうがコストダウンに繋がるし。小さめの瓶ひとつで、大きな麻袋が五枚買えるんだぜ? それを考えたら、断然袋だろう。
 大きな袋に入れて商人に売り、小売りは最初は瓶か袋で販売、その後は入れ物持参にすれば、その分コストカットできるからね。そこはルードルフが運営しながら決めることなので、私は口を出さない。それに、それくらいは彼も考えているだろう。
 あとは遠方から来た人のための住宅も建設予定とのこと。とはいえ、これに関しては、人数によっては公爵家の離れを宿代わりにするか、町の宿を借りてもらうしかないという。
 なにせ、遠方からどれくらいの人数が来るかわからないからね~。そこは徐々に増やしていくらしい。
 とりあえず、独身寮と家族寮を作る計画を立てているそうだ。その手配はルードルフが請け負うんだろう。私はそこまでの依頼を請け負ってないしね。
 そもそもそれは今すぐに必要なものではないし、ルードルフ側の仕事だ。
 ある程度の配置を決めたら、そこに目印の杭を打ち、糸を張る。そしてリコとジルに土魔法を使ってもらい、基礎を作った。
 で、ここからが問題なんだが。

「ところで、ルードルフ。建築に使う木材や金属、砂は? いつ来るの?」
「え?」
「え、じゃないでしょ。私は建築と栽培の依頼しか請けてないんだよ? それらを用意するのは、そっちの役目でしょうに」

 帰ってきたばかりだから、用意していないのはわかるし、そう簡単に用意できないこともわかっている。だが、本来であれば施工業者に一切合切を頼み、人件費や材料込みでの金額が発生するはずなのだ。
 しかしながら、私は冒険者であって業者ではないし、請けた依頼は建築と最初の栽培のみ。ならば、事業主であるルードルフが用意するのが筋だろう。

「あ~……。昨日の段階で指示を出したが……。今日の昼には用意できるとは聞いている」
「そう。なら、土台の基礎はこれで終わりかな。もちろん、地元の大工も来るのよね?」
「ああ。木材と一緒に来る予定になっている。規模はともかく次のことを考えると、できるだけ同じ作りの建物を作ってほしいしな」
「わかった」

 今日の昼に届くとか、早いな、おい。
 まあそのあたりは帝都に行く前に発注していた可能性がある。国を挙げての一大事業になる可能性があったわけだから、皇帝から手紙なり連絡をもらった時点で、そこまで考えていたに違いない。
 とりあえず建築材料が来るまでの時間ができたので、ちょっとだけ移動。南側に甜菜とビーツ用の畑を用意してもらっているそうだ。
 まずはそこで貧しい村に配るためのものを大量にし、それを使って栽培を促進する。もちろん領都でも実験を兼ねて栽培するという。

「甜菜とビーツの栽培が成功すれば、金が入る。金が入れば、食料や衣類、壊れた農具も買えるようになる。他の野菜が育たない以上、甜菜とビーツでなんとかやっていけるようにしたいんだ」
「ジャガイモやサツマイモは? 試してみた?」
「ジャガイモはなんとか成功したが、サツマイモが手に入らなくてな。むしろジャガイモよりもサツマイモのほうが適している土地なんだが」
「いろいろ伝手を当たってみたのです。けれど、我が領地の豊かさに嫉妬しているのか、種芋ですら購入できないのです」
「醜い嫉妬だな、おい」

 どうせ土の豊かさに対しても嫉妬してるんだろうと言えば、溜息をつきながらも頷いた。バカバカしいよな、ホント。

「ヤミン、甘く改良できる?」
「もちろん! ほくほくでもしっとりでも、両方合わせたのでもできるよ」

 金時でも安納芋でも、紅はるかや紅こがねもできるよととても小さな声で言ったヤミンに、ニンマリ笑う。

「それはありがたいが……種芋が……」
「私が持ってるから大丈夫! ダンジョン産のだけどいいわよね?」
「っ! あ、ありがとう、アリサ、ヤミン!」
「見つけたのはヤナとヤミンだけどね」
「そうか……! ヤナもありがとう!」

 ルードルフにお礼を言われ、照れるヤミンとヤナ。村から出ているから人型になっているからか、若干顔が赤い。
 素直だなあ……。
 生温い視線で二人を見つつ、さつまいもを十本渡す。改良はヤミンにしかできないけれど、成長は私にもできるからね。
 てなわけで畑に着くと、まずは甜菜とビーツを植え、ヤミンと二人であっという間に成長させていく。それを種芋として使い、倍々にして増やしていくのだ。
 もちろん土の栄養がなくなるのを考慮して、種芋以外の部分は腐葉土と一緒に土に混ぜ込んでいる。土を混ぜるのは土魔法が使える従魔たちやルードルフがやっている。
 腐葉土を撒いているのは側近たちだね。まあ、私とヤミンの魔法による成長の早さに、唖然としていたが。
 とにかく、ある程度の数が揃うと、甜菜とビーツを分け大きな麻袋に詰めていく。それが百になったところで一旦休憩。
 この時点でお昼だった。屋敷に戻るよりも町のほうが近いからとご飯は町の食堂で食べ、そのまま工場建設予定地へ。
 そこで大工たちと挨拶を交わしたあと、土で固めた基礎部分を説明しながら紙に設計図を書いた。窓の位置と大きさ、コンロをどこに置いたり固定はどうするか。
 事務所内や食堂、作業場に入れるテーブルや作業台の大きさや椅子の数など、ルードルフと側近たちを交えて話を詰めていく。
 これは、今後彼らが作ることになるからその説明を兼ねているし、建物に関する私のイメージを固める意味もあるのだ。
 なにせ私は、錬金術とDIYを駆使して一気に建物を作り上げる手法だからね。だからこそイメージは大事だし、詳細になればなるほど歪みなどの失敗も減る。
 屋根に関しては、どのみち平屋になるので、藁葺き屋根を採用。これは熱い空気を逃がしやすくしつつ風を取り込みやすくするのと、風を巡回させやすくするためだ。
 もちろん、大型の扇風機を何台も用意する。
 本来であれば、火を使う場所で扇風機を使うのは危険だが、今回用意する魔道具のコンロは、どちらかといえばIHに近い、火を使わないタイプのものを使用するという。
 なので、扇風機を用意することができるってわけ。
 屋根も、森が少ないこの領だと、木材を他から用意しないといけない。ダンジョンにぶっとい木材があればいいが、今のところそこまで太い木材はないんだそうだ。
 せいぜい、樹齢二十年くらいの細いものだけらしい。
 それならば、せいぜい家畜と畑に使うくらいしかない稲藁を使い、藁葺き屋根にしたほうが安上がりだし、ファウルハーバー領の備蓄も大量にある。それを消費する意味でも屋根に使おうとルードルフが提案してくれたのだ。
 とりあえず、細々としたもの以外の目処が立ったので、まずは柱を立てる。鉄骨だと楽なんだが、そこまでの量のインゴットとなると高くつくからね~。のちのち回収できるとしても、今すぐ集められるわけではないし、この建物はあくまでも実験場なので、木材が主流なのだ。
 柱を立てたら梁を通し、屋根枠を組む。天井は必要ないので、骨組みだけだ。
 大工たちに基礎はここまでだと説明したあと、窓と窓枠、ガラスやサッシを含め、錬金術とDIYを駆使して一気に錬成する。

『おお~!』
「はい、終了。あとは壁を土で覆って雨対策と頑丈さをもたせ、屋根に念のため防水シートをかけたあと、藁葺きを載せれば終わりよ」
「もし屋根の補修をするにしても、腐った部分の藁を取り換えればいいってわけか」
「ええ。帝国内でも気温が高い地域だし、藁はいくらでもあるんでしょう? だからこそ、かしら」
「なるほどね」

 台風などの強風や豪雨の自然災害が起きるような地域だったのであれば、もっと頑丈な造りの建物にしていた。だが、内陸にあるこの国では嵐はあるものの台風ほどの強風や豪雨になるわけではないし、どんなに強くてもゲリラ豪雨ほどだと聞いている。
 なのでこういった形になった。
 窓は虫除けの意味もあるのでアルミサッシを採用。レア金属の部類なのでそれなりに高いが、錆びや軽さ、領内にアルミを扱える鍛冶師がいることを考えると、これが一番いいとルードルフに判断された。
 もちろん、今日一緒に作業した大工の中には、高レベルの錬金術を使える人が複数いる。彼らにアルミサッシの構造を教えてあるので、のちのちの建築に役立ててくれるだろう。
 とりあえず、工場の建築はなんとか終了。
 使い勝手は、作業しながら模索してくれ。

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