自重をやめた転生者は、異世界を楽しむ

饕餮

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ファウルハーバー領編

第192話 搬入と栽培

お待たせしました!ちょっと体調を崩しておりました。


*******


 工場建築が終わり、作業部屋や食堂にテーブルと椅子を運ぶ。とはいえ、マジックバッグを使えば大きなテーブルだろうとたくさんある椅子だろうと、簡単に運び込めるんだけどね。
 大きな鍋とコンロもそうして運び込むことになるのだが、制作を依頼したばかりでここにはない。先にテーブルや椅子は作ったので、それを搬入することに。
 まずは作業部屋から。
 ここは鍋を置く部屋の隣にあり、甜菜とビーツを細かく刻む部屋だ。部屋の大きさは二十畳あるかないかかな? これは二部屋ある。
 ひとつは甜菜用、もうひとつはビーツ用だ。
 当たり前だが混ざったら大変なことになるので、部屋を分けている。もちろん皮を剥く部屋も同じで、二部屋あるのだ。
 ただ、ここと皮を洗ったり剥いたりする部屋は、包丁を使う関係で水回り関連のものを作っているし、使ったあとの籠を洗うための場所もある。なので、それなりに広い。
 水自体は魔石を使ったもので、排水関連は大工たちが設置した。私のお祖父さんがレシピ登録しているやつらしい。
 テーブルは八人掛けで四ヶ所置く。皮をむいたあとの芋は一人ひとつ、刻んだものを入れる籠は二人でひとつ使うよう、中間に置くようになっている。
 一人で大きな籠をいっぱいにするのは時間がかかるからだ。
 最初はこのやり方にして、作業している人がやりづらいようであればまた違うやり方を考えるそうだ。
 次は食堂。キッチンもあるので、ここもそれなりに広い。テーブルは六人掛けを十台用意。従業員が増えた時のために、予備もいくつか用意している。
 最後に事務所。ここは応接室も兼ねていて、机と椅子の他にソファーとローテーブルを設置。応接部分は衝立で仕切ることになる。
 事務所の横に簡易キッチンがあり、取引先や業者が来た時のためにお茶を沸かせるようになっている。食堂で使う道具類を含め、食器は後々搬入するんだろう。
 搬入が終わったあとは簡単に水が出るか、排水関連に問題はないかのチェックをし、工場自体の建築は終了。その時点で日が沈む時間になっていたので、解散となった。
 大工たちは次の工場を建てるまでの間に、必要な木材やアルミのインゴットを調達してくれとルードルフに言われ、涙目になっている。まあ、どんなに早くても三ヶ月以上先の話だと言われていたので、なんとかするんだろう。
 ……お疲れ様。
 彼らと別れたあと、ルードルフたちと屋敷に帰りながら、いつ種芋を持って村に行くのかの話し合いだ。

「調理場や応接関連の食器はロジーに任せてもいいか?」
「ええ。食堂のものは木材がいいですわよね」
「そうだな。割れ物だと怪我が怖いし」
「念のため、傷薬やポーションも用意しておきませんと……」
「ああ。なら、明日から手配を頼む。僕たちは北と西の寒村に行ってくる」
「わかりましたわ」

 さすがに決めるのが早いな~。自分たちの領地でやる事業だからなのか、あるいは前世の経営術を投影しているのかはわからないが、決断力の早さは前世のままだった。
 そんなことを懐かしく思っていると、次々に指示を出していくルードルフ。
 午前中にいた畑を管理する人や農民たちに声をかけるように言ったり、肥料の手配や農具などの調達を指示したり。それぞれが担っているであろう側近たちに手配を頼んでいる。
 で、私たちだが。

「明日の朝、甜菜とビーツの栽培方法を教えたあと、そのまま寒村に出発したい」
「私は構わないわ」
「ボクも」
「俺もいいよ」
「助かる。道中は魔物が出る場合もあるから、そこだけは気をつけてくれ」

 魔物が出るのか。とはいえ、スライムと一角兎ぐらいだと聞いているから、もし出たらヤミンとヤナの従魔たちのレベル上げに使わせてもらおう。
 ルードルフにそう提案すると許可が出たので、しっかりレベル上げと戦闘訓練をしてもらおうじゃないか。
 畑の状況次第だが、いつまでもそこにいるわけにはいかないのである程度の出発時間を決めると、ちょうど公爵家に着く。

「じゃあ、明日は頼む」
「はいよー」

 ルードルフたちとは本邸の玄関のところで別れ、私たちはそれぞれの従魔を連れ、借りている別邸へ戻る。さっと汗を流したあとはご飯作りだ。
 従魔たちのリクエストだからね~。魚介類をふんだんに使ってあれこれ作ったり、ノンお気に入りの桃ジュースを出したりして美味しくいただいた。
 その後、約束していたものを作るべく、ヤミンとヤナから魔物の皮を預かり、錬金して馬装一式と馬着、レッグプロテクターを渡す。

「「アリサ、ありがとう!」」
「どういたしまして」

 喜んだ二人を落ち着かせ、厩舎に行って馬に馬着とレッグプロテクターを着けたあと、鞍を着ける練習をする二人。従魔となった子たちも、自分の主人を乗せられるとあって喜んでいるのがなんとも可愛い。
 馬場で乗る練習をしたあと、汗を流してから眠りについた。

 翌朝。早めにご飯を食べて出発の準備をしていると、ルードルフと騎士の側近、護衛の騎士が二人来た。
 今回は男しかいないからか、全員馬に乗っている。朝の挨拶をしたあと、私たちもそれに合わせて鞍を着けてから畑に向かうと、男女合わせて十人ほどいた。
 人間だけじゃなく獣人やエルフもいて、なんともバラエティーに富んだ人選だ。

「あっ! 公爵様! おはようございます!」
「おはよう。今日からよろしく頼むね」
「はい!」

 代表で出てきたのは、プラチナブロンドでエメラルドグリーンの瞳をした、見目麗しいエルフの男性だ。彼が管理人なんだろう。
 貴族社会だと、家格が下の者から上の者に話しかけてはいけないというルールがあるそうだが、ここでは関係ないみたい。まあ、他の町でもルードルフに積極的に話しかけてたもんなあ。
 自分の領地だし、気にしていないんだろう。気にしてたら仕事にならんしね。
 それぞれ挨拶が終わると甜菜とビーツを見せ、説明を始めるルードルフ。これから携わる、そして初めて見る植物に対し、真剣に話を聞いている。説明が終わると畑の一角へ赴き、そこで植え方などをヤミンから説明。
 とりあえず、一列ずつ甜菜とビーツを植え、農業や緑の手のスキルを持っている人たちが、まずは芽だけ出すところまで成長させる。そこからはゆっくりと成長させていき、どのような姿になるのかを観察。
 全ての姿を見たあとは芋掘りをした。

「これが……」
「砂糖になるのですね……」
「ああ。元はダンジョン産だと、陛下から聞いています。まずはもう少し数を増やしたあと、その後は通常通りに育ててほしいのです」

 砂糖の精製工場は建てたがまだ機材が出来上がっていないこと、その搬入まで早くとも二週間はかかると告げるルードルフ。

「その間に、できるだけこの甜菜とビーツを増やしてほしい」
「わかりました。最低の数はどうなさいますか?」
「大きな麻袋で百ほど。無理なようであれば、八十でも構いません。肥料などは既に手配していますから、遅くとも今日の午後には届くでしょう」
「二週間で百袋ですね。大丈夫なようであれば、増やしても構いませんか?」
「ええ。しばらく領内を回ってきますから、ゆっくりで大丈夫です」
「わかりました」

 おお~、すげー! ポンポン決まっていくわ! きっと町の人たちもルードルフのやり方に慣れているんだろうね。
 作業と指示が終わったルードルフは、「戻ってきたら顔を出します」と言って畑から離れると馬に跨る。私はリコに、ヤミンとヤナは自分の従魔に跨ると、ルードルフの案内で最初の寒村に向かった。

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