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2巻
2-3
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集落を出たアタシは、旅をしながら、アラクネとは違う裁縫技術を学んだり、他の種族と交流したりしていたわ。
気ままな旅を続けるアタシに、あるとき転機が訪れた。アルケニーと間違えられて、アタシはヒト族の冒険者に襲われてしまったの。
アルケニーは半数が男個体として生まれるわ。だから、アラクネの特異体であるアタシを、見間違えるのも無理はない。魔蜘蛛なら普通にオスがいるから、蜘蛛種の魔物の中でアラクネだけが特殊といえるのかもね。
そんなこんなで勘違いされてしまったわけだけれど、アタシがいくら自分はアラクネだと説明しても、その冒険者たちは話を聞かなかった。近くにアルケニーの集落があったから、思い込みがあったのかもしれない。
アラクネと似ていると言われることが多いアルケニー。でも、外見的特徴に違いがある。
アラクネは褐色肌で、アルケニーは真っ白。こちらはヒトの腕一対二本を持ち、あちらは二対四本ある……みたいにね。
彼らはアタシの特徴がアルケニーとは違うことに目をつぶり、こちらを攻撃してきた。
ヒト族を斃すと面倒なことになるのは目に見えている。
場所がとある魔の森の中心部だったことで地の利もあって、アタシは殺すことなく全員を返り討ちにしたわ。そして、彼らを最寄りの冒険者ギルドに突き出したの。
私を襲ってきた者たちは正規の冒険者ではなく、殺人を犯して資格を剝奪され、犯罪者が収監される強制労働所から脱獄、指名手配されていた人物だった。
「生きて指名手配犯を捕らえたから」と、報奨金をたんまりといただいたわ♡
あっ、分類上は魔物であるアラクネだけれど、人間たちと意思疎通はできるのよ。今では亜人種として扱われているくらいだし。
それでも思うことがあって、ちょっと考えた。
今までは魔物に理解がある人に恵まれて順調な旅だったから、少ぉし気が抜けていたんだと思う。これを機に気を引き締め、警戒を怠らないようにしたわ。
ときに穏やかな、ときに殺伐とした、メリハリのある日々が百年ほど続いたかしら?
ある日、バステト様の使いだという女性が現れたの。彼女はバステト様の神獣で、「バステト様が呼んでいます」と言って、アタシを神域に連れていってくれたわ。
そこで、アタシは初めてバステト様にお会いした。
黒猫のお顔に人間の姿をなさっている彼女は、とてもお綺麗だった! 獣人の猫族のような見た目だけれど、彼らと違って尻尾はないみたいね。
男が好きなアタシでも、思わず惚れてしまいそうになる美貌だったわ。
そんなバステト様を見て、アタシは自分が作った服を着ていただきたくなった。彼女を前にして、どんなお洋服を着せたらもっとお美しくなるかしら……なんて悩んでしまったわ。
バステト様はそんなアタシの心を見透かすように微笑なさり、「いつか作ってくださいね」とおっしゃったのよ!
あのときの興奮は、今も忘れられないわね。
バステト様がアタシを神域に招いたのは、バステト様の神獣にならないかと誘うためだった。もちろん、快諾したわ。
それ以来、アタシは許可をいただいて、バステト様と他の神々のお洋服を作っているのよ。
❖ ❖ ❖
神獣になってから、一万年ちょっと。もしかしたら、もっと経ったかしら?
その日、藍染めに使う材料が足りなくなったアタシは、死の森にある特殊で特別な薬草や果物を採取していた。
そうしたら、【気配察知】で見知った人たち――同じバステト様の神獣である、バトラーとテトの気配を捉えたの。
二人は、アタシの知らない別の気配と一緒だった。なんだか引っかかったから、顔を見に行ったら……!
まあ! まあまあまあ! とてつもなく可愛い幼子がいるじゃない! 肩のあたりで切り揃えられた黒髪に、金色の瞳。その容姿から神族じゃないかと推測できた。
木々の間から落ちてきたアタシを見て、その幼子は目をまぁるくしたの。ちょっと怖がっていたから、泣くかと思ったけれど……そんなことはなかった。
それが、アタシと幼子――ステラちゃんの出会い。
あまりの可愛さにステラちゃんをギュッと抱きしめたら、力が強すぎたみたい。「圧し潰す気か?」と、バトラーとテトには叱られてしまったわ。
彼女はまだ幼いのに、どうして危険な死の森にいるのかしら?
バトラーに理由を聞くと、「異世界の転生者だからだ」と言われた。
なんでも、ステラちゃんはバステト様の愛し子であるそう。バステト様から、アタシたち神獣やその棲み処を浄化する使命を託されたものの、あの方のミスで町ではなく死の森に下ろされてしまったというじゃない。
最初にバトラーが保護したときの話も聞かされて、アタシは溜息をついた。
「……なにをやっていらっしゃるのかしら、バステト様は」
「相変わらずおっちょこちょいねぇ」とぼやけば、バトラーとテトも疲れたような顔をして苦笑し、頷く。
愛し子であるならば、神獣として試練を与えなければならない。こんな幼子に……とは思うけれど、こればかりはどうしようもないの。
ステラちゃんの前の代のバステト様の愛し子――二代目愛し子は、今なお残る穢れを生み出した張本人。驕り高ぶった傲慢な人間に成長した挙げ句、とある国の者たちと共に神々と神獣を呪う罪を犯したの。
二代目愛し子はとうの昔に故人となっているものの、彼の国は何度滅んでも神々への呪詛を吐き散らしている。そうはならないようにしないとね。
最初はその場で試練を課して、すぐに別れるつもりだったアタシだけれど……すぐに気が変わった。
「え、あの、穢れが酷すぎて、トレントゾンビになる直前みたいだったあの大樹と、周囲に穢れを放出していた、あの洞穴を浄化したの!?」
テトが課した、五箇所の穢れを浄化するという試練。
それをステラちゃんはやり遂げたと聞いて、唖然としてしまう。
「うん。僕の穢れも無詠唱で祓ってくれたんだよ、ステラは」
「え?」
「終わったあとに、気絶したがな」
バトラーが口を挟むと、テトは唇を尖らせる。
「それはしょうがないでしょ。一万年分の穢れだし」
「は……?」
「しかも【ライニグング】は、僕たち神獣以上の威力なんだ」
開いた口が塞がらないアタシに、誇らしそうに話すテト。そこに、バトラーも続く。
「【聖域展開】も平気な顔をして、無詠唱で唱えていたな」
「はぁっ!?」
なんて規格外な幼子かしら! しかもまだ三歳だというじゃない。こんなとんでも三歳児なんて、いくら神族といえどいないわ!
でも、話を聞いて理解した。人間嫌いなテトが、どうしてステラちゃんを優しく見つめているのか不思議だったけれど……納得だわ。
死神という種族のせいで、なにもしていないのに忌み嫌われていたテト。そんなテトをステラちゃんは恐れるでも嫌うでもなかった。
初対面のときでさえ、目をキラキラと輝かせ、憧れた存在を見るようにじっと見上げてきたそうよ。
穢れを祓って浄化したことで、テトは彼女を認めた。そして、初めての愛し子にしたそうだから、よっぽどのことだわ。
きっとその試練では、ステラちゃん自身が努力し、実力を示したんじゃないかしら。
あとにも先にも、テトの愛し子はステラちゃんただ一人なんじゃないかしら――そんな予感がした。
アタシも彼女がどんな子なのかより知りたくなって、浄化の旅に同行することにしたのよ。
お互いに自己紹介を終えて、アタシたちは場所を移動した。
ステラちゃんを誰が抱き上げて移動するかで揉めて、当のステラちゃんに叱られちゃったのはご愛敬ね。
今いる洞穴に着いて、昼食をとった。
幼子だから、ステラちゃんは昼食後に寝てしまった。あどけない寝顔を眺めていると、癒されたわ~!
お昼寝から起きたステラちゃんに、アタシは試練を課すことにした。
アタシの試練は服飾関連よ。ただ、アタシ自身は、この世界の技術を網羅してしまっている。異世界の知識を見せてほしいとはいったものの、どうやって評価するべきか悩んでいたの。
そんな中、ステラちゃんはいろいろ質問してきてね。
異世界の知識として、染色に関して、野菜くずを染料にする方法と、絞り染めなるものを教えてくれたのよ!
まさか、シプリやカロートを剝いた皮でできるとは思わなかったわ~。果物で染めることがあるのに、どうして野菜くずでやろうと思わなかったのかしら? 目から鱗だった。
そして絞り染め。初めて聞く技法にわくわくしたけれど、それだけでは試練の合格は出せない。
悩んだステラちゃんは、猫の顔を模した魔法の鞄からいろんな編み棒や糸を取り出した。それらを見せてもらったら、その中に、アタシが知らない、糸状のものがくっついている棒針があって驚いた。
ステラちゃんに聞くと、これはワバリというものだそう。帽子や手袋、セーターの首を、これ一本で編めると言ったの。
本当かしら? と疑問を持ったわ。けれど、いざワバリを使って編み始めれば、その有用性に気づく。いちいち棒針を交換しなくても、そのまま編めるのがいいわ! 交換時に目が外れたり飛ばしたりする心配がないのもいいわね。
つい、ステラちゃんサイズの帽子を編み上げてしまったわ~。
喜んでもらえてよかった♡
そのあとは絞り染めの前段階を教えてもらったんだけれど、これがまた可愛いの!
基本しか教わらなかったけれど、かなり応用が利く技法だと思ったわ。あとでいろいろ試作してみるつもり。
そこで試練は一旦終了。ひとまず合格を伝え、絞り染めの模様がどんなふうになるかを確認してから、評価を出そうと思うわ。
ステラちゃんと別れ、テトが作ったというログハウスにやってきたアタシ。
テトは、アタシの部屋を用意すると言ってくれたから、出来上がるのを待つ。
やがて「この部屋を使って」と案内されたのは、アタシがアラクネの状態のまま寝られて、機織り機や作業台を置くスペースなどがバッチリ設けられた広い部屋だった。なんと、染めができる続き部屋があって、水回りも完璧!
その部屋で藍染め液を作ったり、【アイテムボックス】にしまっていたアタシ専用の機織り機を設置して糸を通したりしていたら、外からスパイシーで食欲をそそる匂いがしてきたの。
テトも感じたようで一緒に外に出ると、お腹がすく香りが洞穴内に漂っていたわ。ついお腹が鳴りそうだったわよ!
ステラちゃんが作ってくれたものは、サラダと、土の色をしたあまり美味しそうに見えないカレーという料理に、ラッシーと呼ばれる白い飲み物。
彼女によれば、土色をした料理――カレーは、焦がした小麦粉と飴色になるまで炒めたシプリ、複数のスパイスでその色になっているだけだそう。
せめて一口でいいから食べてほしいと言われ、アタシはバトラーとテトの三人で顔を見合わせた。
そして、恐る恐る食べてみたの。
すると、まず口腔内に、薬草と香辛料の香りが広がり、それから辛みと甘みが広がった。アタシには表現が難しいほど複雑な味で……この味、なにかしら? ガラムマサラとクミン? 他にもいろんなものが混ざっているみたいで、詳しくはわからない。
ステラちゃんとの付き合いが一番長いバトラーにさりげなく聞いたけれど、バトラー自身、彼女が使うすべての香辛料や薬草がわかるわけではないそう。
まあ……なんてことかしら! バトラーがわからないなんて、どれだけの種類のスパイスを配合したのかしら? しかも、見た目に反してとても美味しくて、食べる手が止まらない! すごいわ、ステラちゃん!
そんなステラちゃんは、輝くような笑みを浮かべてカレーを食べていた。可愛い~♡
結局、アタシもバトラーもテトも、二回おかわりしてしまったわ~。
白色と、黄色の中に仄かな赤みを帯びた、コメと呼ばれる穀物も美味しかったし。白いものはコメをそのまま、黄色はサフランとバターを入れて炊いたものなんですって。
やだ、サフランって高価な薬草じゃない! たしか、色によって等級があり、色が濃いほど貴重で高いのよね。薬草としての効能は鎮静と鎮痛、抗炎症だったかしら。液体魔法薬の中でも、上級以上にしか使われていないの。
栽培している国が少ないのと、サフランになる部分がひとつの花から五本しか採れない関係で、非常に高価なのが特徴なんだけれど……それを惜しげもなく使うステラちゃんに、呆れを通り越して感心してしまったわ。
そんなステラちゃんと一緒の旅は、とても楽しそう。
「一緒に行く」と言ってよかったと思った瞬間だった。
どんな子に成長するのかしら? 他にもアタシの知らない服飾の知識を持っているかしら?
期待に胸を躍らせつつ、アタシは彼女の成長を見守ろうと誓ったのだった。
魔道具と、足止めからの移動
おはようございまーす! 外は雷鳴轟く雨でーす! どうやら、私が寝たあとに雨脚が強くなったみたい。
バトラーさんの特製スープと、テトさん作の朝ご飯をたいらげる。大人三人は、それぞれの役割をすると言って洞穴の入口に結界を張ると、外に出ていった。雨の中、お疲れ様です。
私は残って火の番をしつつ、鞄の整理……というか中身の把握に努める。
だってさ……バステト様が新たにいろいろ送ってくれたから。本っ当っに! いろいろと! 送って! くれたから!
服や靴はいい、これから必要になる冬物ばかりだ。
料理に使う道具も、旅の仲間が増えた今、時短になって助かる。
食料については、死の森で採取できていない食材を入れてくれたようで、野菜の種類が増えていた。各製品の缶詰や瓶詰を含めた、加工品は言わずもがな追加。肉は森で狩れるから、支給されていないようだ。
この魔法の鞄の、「バステト様からのいただきものに限り、減った食材は日付が変わると元の量に戻る」機能が地味に助かる。
缶詰……一瞬だけリストから目を離したら、いつの間にか内容物はそのままに、外側が瓶詰に変わっていた。この世界にはない技術なのに、バステト様が間違えて入れてしまったらしい。
基本的に、バステト様は、私への支給品はガイアにあるもの、あるいは代用できるもので用意してくれているんだけれど、ちょっとおっちょこちょいだからなぁ……。
そういえば、キャシーさんに卓上編み機を見せるのを忘れていた。帰ってきたら見せよう。
こうした使い道がわかる道具は別にいいの。幼児の私が使えなくとも、私以外の誰かが使えばいいから。
問題なのは、使い方のよくわからない道具類。ずらっと出してみたけれど、なんじゃこりゃなものが結構あるのだ。
そこで、鑑定さんの出番ですよ!
鑑定を駆使してわかったが、これらはラノベでもお馴染みの魔力や魔石を電力として使う道具――いわゆる魔道具と呼ばれるものだった。
まず、灯りの魔道具。カンテラとキャンプ用ランプを足して二で割ったような不思議デザインなもの、布張りと革張りのシェード付き室内用ランプ、トルコランプに酷似したものの三種類だ。
室内用ランプはとてもシンプルなデザインだけれど……布張りのシェードを付けると、有名なアンティークランプのような雰囲気になった。灯りを点ければ、岩壁に模様が映し出される。
落ち着いた色合いがとても綺麗で、ベッドサイドやチェストの上に飾ったら、素敵だなと思う。
革張りのシェードは複数枚あり、「その日の気分で使い分けなさい」という計らいなのか、シェードがさまざまな模様や動物の形に切り抜かれていた。猫、狼、鳥……たぶんハヤブサかな? 他にも花や果物などの形に革が切り取られ、そこに布が張られているようだ。なんとも可愛い。
トルコランプタイプは、地球のものと遜色ないので割愛。
村や町に定住することになって、自分の家を持つことができたら、飾ろう。
ちなみに、鑑定さんによると、不思議デザインはカンテラだった。これがあれば薄暗いダンジョンにも潜れるし、テントの灯りにも使えるという優れもの。前世で言うところの電池式で、電池部分が魔石になっていた。
ちなみに、魔石の魔力がなくなったら魔石だけを交換するタイプと、空になった魔石に魔力を補充して使える充電式タイプがあるらしい。
交換するタイプはデザインに凝っているものが多く、富裕層が購入するんだとか。見栄を張るためでもあるんだろう。
充電式タイプは魔力さえあればいいので、壊れない限りは半永久的に使えるという、エコなもの。これは庶民や平民、冒険者たちが使っている。魔石を交換する分のお金がかからず、初回に出費するだけというのが、庶民たちに人気なんだって。
どちらの魔道具も灯りをつけるのも消すのも、スイッチひとつでOK。なんとも便利なものだ。スイッチは、幼児の私でも簡単に押せるほど軽かった。
次に見たのは長方形の金属の箱。私から見て正面上部に取っ手がついており、右側につまみがふたつと細い長方形がある。ただし、箱自体は幼児でも持てるくらい軽い。
見た目は電子レンジやオーブンっぽい。もしかしてと思って鑑定したら、ズバリ、オーブンでした! しかも鉄板共々重量軽減機能つき!
ふたつのつまみの部分をよく見ると、上が温度、下が時間、細い長方形はスイッチだった。
これも魔石で動くタイプで、中は三段になっていた。業務用とまではいかないけれど、家庭用にしてはかなりの大型だ。
きちんと温度調節機能がついているから、お菓子だろうと肉料理だろうと、なんでもできそうで嬉しい。これも自宅ができたら設置決定。その前に一回、なにか作ってみよう。材料もあるしね。
ちなみに、オーブンの外見なんだけれど、いろんな姿の猫と肉球が描かれた可愛い見た目をしている。なぜか一箇所だけ、金床の上にハンマーとやっとこが描かれているのが気になった。……まるで、ファンタジーの鍛冶屋みたいな模様だ。なんでそんなのが描かれているの?
首を捻りつつ、三つ目のアイテムへ。
バステト様からの三つ目の贈り物は、子ども用サイズのキッチンだった。
しかも、六本足で大型の五徳が三つあるシステムキッチン。まさに、業務用の五徳です、ありがとうございました! なシステムキッチン。大事なことなので三回言ってみた。
つうか、なんでキッチン? 意味がわからん。
てなわけで、鑑定さーん!
【システムキッチン】 外神話級
ステラ用に設えたシステムキッチン
ステラの身長に合わせ、サイズが変わる優れもの
水回りとコンロには魔石が使用されているが、周囲の魔素を取り込むことで稼働するため、魔石の交換や魔力の補充を必要としない
汚水は、浄化装置により綺麗にされたあと、外に排出される
生ゴミは、内蔵されている処理機に一旦収納され、分解処理を経て堆肥となり、外に排出される
指定名義人:ステラ
「ふぁー!? どゆことー!?」
私専用のキッチンってなにさ! 浄化装置付きっておかしいでしょ!
汚水やゴミが綺麗になって、勝手になくなるのはありがたいけれど!
しかも生ゴミは堆肥になるときた。これ、麻袋を中に入れておいたら、その中に堆肥を入れてくれたりするんじゃ……?
もしかしてと思って引き戸を開けてみると……あったよ、袋を設置できる箱が。
鑑定したところ、袋が設置されていなければ自動で外に排出されるらしい。
「ばしゅてとしゃま……なんちゅーものを……」
なんかさ……孫に甘い、ホイホイ物を買い与えるジジババになっとるやないかい。
嬉しいけれど……思っていた異世界転生と、なんか違ーう!
叫んだところで今さらどうにもならず。と、とりあえず、これも家が手に入ったら設置しよう。
そして最後は種。
バステト様からの贈り物には、この世界の野菜とハーブ、スパイスと果物の種があった。
薬草の種がないが、ある程度のものは森で採取できているから大丈夫。それに「気温や土壌の状態によって育たない薬草がある」と、バトラーさんから教わっている。なのでこれはいい。
が、確認していたら、一種類だけ摩訶不思議な種を見つけたんだよね。大きさは大玉スイカくらいあって、見た目はヤシの実。なんじゃこりゃ?
鑑定さーん!
【ツリーハウスの種】
地面に埋めると大きくなり、ツリーハウスができる種
住人がいるかぎり腐ることも枯れることもない
「引っ越しする」と唱えると種に戻る
住人数によって部屋数が変動し、各階にある部屋の移動は、中にある螺旋階段を使う
大きいものは中央に昇降機がついている
種を捨てるか割らない限り、半永久的に使用できる
……なんてこったい!
気ままな旅を続けるアタシに、あるとき転機が訪れた。アルケニーと間違えられて、アタシはヒト族の冒険者に襲われてしまったの。
アルケニーは半数が男個体として生まれるわ。だから、アラクネの特異体であるアタシを、見間違えるのも無理はない。魔蜘蛛なら普通にオスがいるから、蜘蛛種の魔物の中でアラクネだけが特殊といえるのかもね。
そんなこんなで勘違いされてしまったわけだけれど、アタシがいくら自分はアラクネだと説明しても、その冒険者たちは話を聞かなかった。近くにアルケニーの集落があったから、思い込みがあったのかもしれない。
アラクネと似ていると言われることが多いアルケニー。でも、外見的特徴に違いがある。
アラクネは褐色肌で、アルケニーは真っ白。こちらはヒトの腕一対二本を持ち、あちらは二対四本ある……みたいにね。
彼らはアタシの特徴がアルケニーとは違うことに目をつぶり、こちらを攻撃してきた。
ヒト族を斃すと面倒なことになるのは目に見えている。
場所がとある魔の森の中心部だったことで地の利もあって、アタシは殺すことなく全員を返り討ちにしたわ。そして、彼らを最寄りの冒険者ギルドに突き出したの。
私を襲ってきた者たちは正規の冒険者ではなく、殺人を犯して資格を剝奪され、犯罪者が収監される強制労働所から脱獄、指名手配されていた人物だった。
「生きて指名手配犯を捕らえたから」と、報奨金をたんまりといただいたわ♡
あっ、分類上は魔物であるアラクネだけれど、人間たちと意思疎通はできるのよ。今では亜人種として扱われているくらいだし。
それでも思うことがあって、ちょっと考えた。
今までは魔物に理解がある人に恵まれて順調な旅だったから、少ぉし気が抜けていたんだと思う。これを機に気を引き締め、警戒を怠らないようにしたわ。
ときに穏やかな、ときに殺伐とした、メリハリのある日々が百年ほど続いたかしら?
ある日、バステト様の使いだという女性が現れたの。彼女はバステト様の神獣で、「バステト様が呼んでいます」と言って、アタシを神域に連れていってくれたわ。
そこで、アタシは初めてバステト様にお会いした。
黒猫のお顔に人間の姿をなさっている彼女は、とてもお綺麗だった! 獣人の猫族のような見た目だけれど、彼らと違って尻尾はないみたいね。
男が好きなアタシでも、思わず惚れてしまいそうになる美貌だったわ。
そんなバステト様を見て、アタシは自分が作った服を着ていただきたくなった。彼女を前にして、どんなお洋服を着せたらもっとお美しくなるかしら……なんて悩んでしまったわ。
バステト様はそんなアタシの心を見透かすように微笑なさり、「いつか作ってくださいね」とおっしゃったのよ!
あのときの興奮は、今も忘れられないわね。
バステト様がアタシを神域に招いたのは、バステト様の神獣にならないかと誘うためだった。もちろん、快諾したわ。
それ以来、アタシは許可をいただいて、バステト様と他の神々のお洋服を作っているのよ。
❖ ❖ ❖
神獣になってから、一万年ちょっと。もしかしたら、もっと経ったかしら?
その日、藍染めに使う材料が足りなくなったアタシは、死の森にある特殊で特別な薬草や果物を採取していた。
そうしたら、【気配察知】で見知った人たち――同じバステト様の神獣である、バトラーとテトの気配を捉えたの。
二人は、アタシの知らない別の気配と一緒だった。なんだか引っかかったから、顔を見に行ったら……!
まあ! まあまあまあ! とてつもなく可愛い幼子がいるじゃない! 肩のあたりで切り揃えられた黒髪に、金色の瞳。その容姿から神族じゃないかと推測できた。
木々の間から落ちてきたアタシを見て、その幼子は目をまぁるくしたの。ちょっと怖がっていたから、泣くかと思ったけれど……そんなことはなかった。
それが、アタシと幼子――ステラちゃんの出会い。
あまりの可愛さにステラちゃんをギュッと抱きしめたら、力が強すぎたみたい。「圧し潰す気か?」と、バトラーとテトには叱られてしまったわ。
彼女はまだ幼いのに、どうして危険な死の森にいるのかしら?
バトラーに理由を聞くと、「異世界の転生者だからだ」と言われた。
なんでも、ステラちゃんはバステト様の愛し子であるそう。バステト様から、アタシたち神獣やその棲み処を浄化する使命を託されたものの、あの方のミスで町ではなく死の森に下ろされてしまったというじゃない。
最初にバトラーが保護したときの話も聞かされて、アタシは溜息をついた。
「……なにをやっていらっしゃるのかしら、バステト様は」
「相変わらずおっちょこちょいねぇ」とぼやけば、バトラーとテトも疲れたような顔をして苦笑し、頷く。
愛し子であるならば、神獣として試練を与えなければならない。こんな幼子に……とは思うけれど、こればかりはどうしようもないの。
ステラちゃんの前の代のバステト様の愛し子――二代目愛し子は、今なお残る穢れを生み出した張本人。驕り高ぶった傲慢な人間に成長した挙げ句、とある国の者たちと共に神々と神獣を呪う罪を犯したの。
二代目愛し子はとうの昔に故人となっているものの、彼の国は何度滅んでも神々への呪詛を吐き散らしている。そうはならないようにしないとね。
最初はその場で試練を課して、すぐに別れるつもりだったアタシだけれど……すぐに気が変わった。
「え、あの、穢れが酷すぎて、トレントゾンビになる直前みたいだったあの大樹と、周囲に穢れを放出していた、あの洞穴を浄化したの!?」
テトが課した、五箇所の穢れを浄化するという試練。
それをステラちゃんはやり遂げたと聞いて、唖然としてしまう。
「うん。僕の穢れも無詠唱で祓ってくれたんだよ、ステラは」
「え?」
「終わったあとに、気絶したがな」
バトラーが口を挟むと、テトは唇を尖らせる。
「それはしょうがないでしょ。一万年分の穢れだし」
「は……?」
「しかも【ライニグング】は、僕たち神獣以上の威力なんだ」
開いた口が塞がらないアタシに、誇らしそうに話すテト。そこに、バトラーも続く。
「【聖域展開】も平気な顔をして、無詠唱で唱えていたな」
「はぁっ!?」
なんて規格外な幼子かしら! しかもまだ三歳だというじゃない。こんなとんでも三歳児なんて、いくら神族といえどいないわ!
でも、話を聞いて理解した。人間嫌いなテトが、どうしてステラちゃんを優しく見つめているのか不思議だったけれど……納得だわ。
死神という種族のせいで、なにもしていないのに忌み嫌われていたテト。そんなテトをステラちゃんは恐れるでも嫌うでもなかった。
初対面のときでさえ、目をキラキラと輝かせ、憧れた存在を見るようにじっと見上げてきたそうよ。
穢れを祓って浄化したことで、テトは彼女を認めた。そして、初めての愛し子にしたそうだから、よっぽどのことだわ。
きっとその試練では、ステラちゃん自身が努力し、実力を示したんじゃないかしら。
あとにも先にも、テトの愛し子はステラちゃんただ一人なんじゃないかしら――そんな予感がした。
アタシも彼女がどんな子なのかより知りたくなって、浄化の旅に同行することにしたのよ。
お互いに自己紹介を終えて、アタシたちは場所を移動した。
ステラちゃんを誰が抱き上げて移動するかで揉めて、当のステラちゃんに叱られちゃったのはご愛敬ね。
今いる洞穴に着いて、昼食をとった。
幼子だから、ステラちゃんは昼食後に寝てしまった。あどけない寝顔を眺めていると、癒されたわ~!
お昼寝から起きたステラちゃんに、アタシは試練を課すことにした。
アタシの試練は服飾関連よ。ただ、アタシ自身は、この世界の技術を網羅してしまっている。異世界の知識を見せてほしいとはいったものの、どうやって評価するべきか悩んでいたの。
そんな中、ステラちゃんはいろいろ質問してきてね。
異世界の知識として、染色に関して、野菜くずを染料にする方法と、絞り染めなるものを教えてくれたのよ!
まさか、シプリやカロートを剝いた皮でできるとは思わなかったわ~。果物で染めることがあるのに、どうして野菜くずでやろうと思わなかったのかしら? 目から鱗だった。
そして絞り染め。初めて聞く技法にわくわくしたけれど、それだけでは試練の合格は出せない。
悩んだステラちゃんは、猫の顔を模した魔法の鞄からいろんな編み棒や糸を取り出した。それらを見せてもらったら、その中に、アタシが知らない、糸状のものがくっついている棒針があって驚いた。
ステラちゃんに聞くと、これはワバリというものだそう。帽子や手袋、セーターの首を、これ一本で編めると言ったの。
本当かしら? と疑問を持ったわ。けれど、いざワバリを使って編み始めれば、その有用性に気づく。いちいち棒針を交換しなくても、そのまま編めるのがいいわ! 交換時に目が外れたり飛ばしたりする心配がないのもいいわね。
つい、ステラちゃんサイズの帽子を編み上げてしまったわ~。
喜んでもらえてよかった♡
そのあとは絞り染めの前段階を教えてもらったんだけれど、これがまた可愛いの!
基本しか教わらなかったけれど、かなり応用が利く技法だと思ったわ。あとでいろいろ試作してみるつもり。
そこで試練は一旦終了。ひとまず合格を伝え、絞り染めの模様がどんなふうになるかを確認してから、評価を出そうと思うわ。
ステラちゃんと別れ、テトが作ったというログハウスにやってきたアタシ。
テトは、アタシの部屋を用意すると言ってくれたから、出来上がるのを待つ。
やがて「この部屋を使って」と案内されたのは、アタシがアラクネの状態のまま寝られて、機織り機や作業台を置くスペースなどがバッチリ設けられた広い部屋だった。なんと、染めができる続き部屋があって、水回りも完璧!
その部屋で藍染め液を作ったり、【アイテムボックス】にしまっていたアタシ専用の機織り機を設置して糸を通したりしていたら、外からスパイシーで食欲をそそる匂いがしてきたの。
テトも感じたようで一緒に外に出ると、お腹がすく香りが洞穴内に漂っていたわ。ついお腹が鳴りそうだったわよ!
ステラちゃんが作ってくれたものは、サラダと、土の色をしたあまり美味しそうに見えないカレーという料理に、ラッシーと呼ばれる白い飲み物。
彼女によれば、土色をした料理――カレーは、焦がした小麦粉と飴色になるまで炒めたシプリ、複数のスパイスでその色になっているだけだそう。
せめて一口でいいから食べてほしいと言われ、アタシはバトラーとテトの三人で顔を見合わせた。
そして、恐る恐る食べてみたの。
すると、まず口腔内に、薬草と香辛料の香りが広がり、それから辛みと甘みが広がった。アタシには表現が難しいほど複雑な味で……この味、なにかしら? ガラムマサラとクミン? 他にもいろんなものが混ざっているみたいで、詳しくはわからない。
ステラちゃんとの付き合いが一番長いバトラーにさりげなく聞いたけれど、バトラー自身、彼女が使うすべての香辛料や薬草がわかるわけではないそう。
まあ……なんてことかしら! バトラーがわからないなんて、どれだけの種類のスパイスを配合したのかしら? しかも、見た目に反してとても美味しくて、食べる手が止まらない! すごいわ、ステラちゃん!
そんなステラちゃんは、輝くような笑みを浮かべてカレーを食べていた。可愛い~♡
結局、アタシもバトラーもテトも、二回おかわりしてしまったわ~。
白色と、黄色の中に仄かな赤みを帯びた、コメと呼ばれる穀物も美味しかったし。白いものはコメをそのまま、黄色はサフランとバターを入れて炊いたものなんですって。
やだ、サフランって高価な薬草じゃない! たしか、色によって等級があり、色が濃いほど貴重で高いのよね。薬草としての効能は鎮静と鎮痛、抗炎症だったかしら。液体魔法薬の中でも、上級以上にしか使われていないの。
栽培している国が少ないのと、サフランになる部分がひとつの花から五本しか採れない関係で、非常に高価なのが特徴なんだけれど……それを惜しげもなく使うステラちゃんに、呆れを通り越して感心してしまったわ。
そんなステラちゃんと一緒の旅は、とても楽しそう。
「一緒に行く」と言ってよかったと思った瞬間だった。
どんな子に成長するのかしら? 他にもアタシの知らない服飾の知識を持っているかしら?
期待に胸を躍らせつつ、アタシは彼女の成長を見守ろうと誓ったのだった。
魔道具と、足止めからの移動
おはようございまーす! 外は雷鳴轟く雨でーす! どうやら、私が寝たあとに雨脚が強くなったみたい。
バトラーさんの特製スープと、テトさん作の朝ご飯をたいらげる。大人三人は、それぞれの役割をすると言って洞穴の入口に結界を張ると、外に出ていった。雨の中、お疲れ様です。
私は残って火の番をしつつ、鞄の整理……というか中身の把握に努める。
だってさ……バステト様が新たにいろいろ送ってくれたから。本っ当っに! いろいろと! 送って! くれたから!
服や靴はいい、これから必要になる冬物ばかりだ。
料理に使う道具も、旅の仲間が増えた今、時短になって助かる。
食料については、死の森で採取できていない食材を入れてくれたようで、野菜の種類が増えていた。各製品の缶詰や瓶詰を含めた、加工品は言わずもがな追加。肉は森で狩れるから、支給されていないようだ。
この魔法の鞄の、「バステト様からのいただきものに限り、減った食材は日付が変わると元の量に戻る」機能が地味に助かる。
缶詰……一瞬だけリストから目を離したら、いつの間にか内容物はそのままに、外側が瓶詰に変わっていた。この世界にはない技術なのに、バステト様が間違えて入れてしまったらしい。
基本的に、バステト様は、私への支給品はガイアにあるもの、あるいは代用できるもので用意してくれているんだけれど、ちょっとおっちょこちょいだからなぁ……。
そういえば、キャシーさんに卓上編み機を見せるのを忘れていた。帰ってきたら見せよう。
こうした使い道がわかる道具は別にいいの。幼児の私が使えなくとも、私以外の誰かが使えばいいから。
問題なのは、使い方のよくわからない道具類。ずらっと出してみたけれど、なんじゃこりゃなものが結構あるのだ。
そこで、鑑定さんの出番ですよ!
鑑定を駆使してわかったが、これらはラノベでもお馴染みの魔力や魔石を電力として使う道具――いわゆる魔道具と呼ばれるものだった。
まず、灯りの魔道具。カンテラとキャンプ用ランプを足して二で割ったような不思議デザインなもの、布張りと革張りのシェード付き室内用ランプ、トルコランプに酷似したものの三種類だ。
室内用ランプはとてもシンプルなデザインだけれど……布張りのシェードを付けると、有名なアンティークランプのような雰囲気になった。灯りを点ければ、岩壁に模様が映し出される。
落ち着いた色合いがとても綺麗で、ベッドサイドやチェストの上に飾ったら、素敵だなと思う。
革張りのシェードは複数枚あり、「その日の気分で使い分けなさい」という計らいなのか、シェードがさまざまな模様や動物の形に切り抜かれていた。猫、狼、鳥……たぶんハヤブサかな? 他にも花や果物などの形に革が切り取られ、そこに布が張られているようだ。なんとも可愛い。
トルコランプタイプは、地球のものと遜色ないので割愛。
村や町に定住することになって、自分の家を持つことができたら、飾ろう。
ちなみに、鑑定さんによると、不思議デザインはカンテラだった。これがあれば薄暗いダンジョンにも潜れるし、テントの灯りにも使えるという優れもの。前世で言うところの電池式で、電池部分が魔石になっていた。
ちなみに、魔石の魔力がなくなったら魔石だけを交換するタイプと、空になった魔石に魔力を補充して使える充電式タイプがあるらしい。
交換するタイプはデザインに凝っているものが多く、富裕層が購入するんだとか。見栄を張るためでもあるんだろう。
充電式タイプは魔力さえあればいいので、壊れない限りは半永久的に使えるという、エコなもの。これは庶民や平民、冒険者たちが使っている。魔石を交換する分のお金がかからず、初回に出費するだけというのが、庶民たちに人気なんだって。
どちらの魔道具も灯りをつけるのも消すのも、スイッチひとつでOK。なんとも便利なものだ。スイッチは、幼児の私でも簡単に押せるほど軽かった。
次に見たのは長方形の金属の箱。私から見て正面上部に取っ手がついており、右側につまみがふたつと細い長方形がある。ただし、箱自体は幼児でも持てるくらい軽い。
見た目は電子レンジやオーブンっぽい。もしかしてと思って鑑定したら、ズバリ、オーブンでした! しかも鉄板共々重量軽減機能つき!
ふたつのつまみの部分をよく見ると、上が温度、下が時間、細い長方形はスイッチだった。
これも魔石で動くタイプで、中は三段になっていた。業務用とまではいかないけれど、家庭用にしてはかなりの大型だ。
きちんと温度調節機能がついているから、お菓子だろうと肉料理だろうと、なんでもできそうで嬉しい。これも自宅ができたら設置決定。その前に一回、なにか作ってみよう。材料もあるしね。
ちなみに、オーブンの外見なんだけれど、いろんな姿の猫と肉球が描かれた可愛い見た目をしている。なぜか一箇所だけ、金床の上にハンマーとやっとこが描かれているのが気になった。……まるで、ファンタジーの鍛冶屋みたいな模様だ。なんでそんなのが描かれているの?
首を捻りつつ、三つ目のアイテムへ。
バステト様からの三つ目の贈り物は、子ども用サイズのキッチンだった。
しかも、六本足で大型の五徳が三つあるシステムキッチン。まさに、業務用の五徳です、ありがとうございました! なシステムキッチン。大事なことなので三回言ってみた。
つうか、なんでキッチン? 意味がわからん。
てなわけで、鑑定さーん!
【システムキッチン】 外神話級
ステラ用に設えたシステムキッチン
ステラの身長に合わせ、サイズが変わる優れもの
水回りとコンロには魔石が使用されているが、周囲の魔素を取り込むことで稼働するため、魔石の交換や魔力の補充を必要としない
汚水は、浄化装置により綺麗にされたあと、外に排出される
生ゴミは、内蔵されている処理機に一旦収納され、分解処理を経て堆肥となり、外に排出される
指定名義人:ステラ
「ふぁー!? どゆことー!?」
私専用のキッチンってなにさ! 浄化装置付きっておかしいでしょ!
汚水やゴミが綺麗になって、勝手になくなるのはありがたいけれど!
しかも生ゴミは堆肥になるときた。これ、麻袋を中に入れておいたら、その中に堆肥を入れてくれたりするんじゃ……?
もしかしてと思って引き戸を開けてみると……あったよ、袋を設置できる箱が。
鑑定したところ、袋が設置されていなければ自動で外に排出されるらしい。
「ばしゅてとしゃま……なんちゅーものを……」
なんかさ……孫に甘い、ホイホイ物を買い与えるジジババになっとるやないかい。
嬉しいけれど……思っていた異世界転生と、なんか違ーう!
叫んだところで今さらどうにもならず。と、とりあえず、これも家が手に入ったら設置しよう。
そして最後は種。
バステト様からの贈り物には、この世界の野菜とハーブ、スパイスと果物の種があった。
薬草の種がないが、ある程度のものは森で採取できているから大丈夫。それに「気温や土壌の状態によって育たない薬草がある」と、バトラーさんから教わっている。なのでこれはいい。
が、確認していたら、一種類だけ摩訶不思議な種を見つけたんだよね。大きさは大玉スイカくらいあって、見た目はヤシの実。なんじゃこりゃ?
鑑定さーん!
【ツリーハウスの種】
地面に埋めると大きくなり、ツリーハウスができる種
住人がいるかぎり腐ることも枯れることもない
「引っ越しする」と唱えると種に戻る
住人数によって部屋数が変動し、各階にある部屋の移動は、中にある螺旋階段を使う
大きいものは中央に昇降機がついている
種を捨てるか割らない限り、半永久的に使用できる
……なんてこったい!
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