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番外小話

にゃんにゃんにゃんの日

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 今日は二月二十二日で、猫の日。
 章吾さんに会いに、雪降る東北は松島基地に来た。雪景色もいいから一度は来いと言われて来たし、今日はお泊りです。
 章吾さんの引退後で、松島では最後のフライトになる。だからこそ、来いって言われたんだよね。

「やっぱ寒い……」

 完全防寒で来たけど、やっぱ寒い!
 今日のお土産はキーホルダーとミニクロワッサン。ブルーインパルスの色でキーホルダーを作ったから、それを渡そうと思ったのだ。しかも、ブルーインパルスに猫耳をつけた、猫型にデフォルメしたバッグチャームをだ。
 一機につきキーパーさんが三人つくって聞いてたし、キーパーさんプラスライダーの分を作ったから、一人一個は渡るはず。しかも、それぞれ一番機から六番機まであるから、大丈夫だろうと思う。
 今日も今日とてゲートに着くと、章吾さんが待っていた。お仕事はいいのかな?

「章吾さん、お土産」
「お、ありがとう」

 紙袋を渡して一緒に歩く。

「中身はなんだ?」
「今日はパン屋さんのミニクロワッサンと、デフォルメしたブルーインパルス全機。しかも、みんなに行き渡るようにした」
「おい……。相変わらずだな、ひばりは」

 苦笑した章吾さんに、ちょっとだけ膨れっ面をする。だってそれしか取り得がないしね。
 これでも結構苦労したんだよ、猫耳をつけるのは。デフォルメした丸っこいデザインだから、ご家族にあげてもいいし。
 そんな話をしながら歩くと、いつものようにブルーインパルスが置いてある場所に来た。昨日雪が降ったらしくて、雪かきしたあとがあったよ。
 で、今日は晴れたし飛べそうだからって、これから飛ぶらしい。

「ごめんなさい、忙しい時に来ちゃったんだね、私」
「時間を指定したのは俺だし、これでも一度飛んだんだよ。で、二回目をこれから飛ぶんだ。基地の上空だから、ひばりも見れるぞ?」
「え、ほんと?!」
「ああ。隊長が許可をくれたから、キーパーたちに混じって見てるといい」
「ありがとう! そうする!」

 ブルーインパルスが置いてある場所に着いたので、隊長さんに挨拶をする。忙しい時に来て申し訳ないと頭を下げると、「ジッタは今日が最後だしな」と、隊長さんは少し寂しそうな顔をしていた。
 そこにすかさず章吾さんがお土産を渡してその内容を話すと、隊長さんは一瞬だけ驚いた顔をしたあとで、「これも最後だな」と豪快に笑っていた。
 そのあとは飛ぶ準備をしていたので私は隅っこに移動し、邪魔にならないように彼らの仕事を見ていた。写真も撮りたかったけど、許可をもらってないからしてないし。そのぶん、目に焼き付けた。
 そして準備が整い、航空祭などと同じように動くライダーたち。日々こうやって訓練をしているからこそ、息の合った演技が出来上がると思うとすごいなあって思うし、尊敬する。
 その合間合間にフェンスの外から写真を撮っている人たちに手を上げたりしているんだから、さすが広報だと感心した。章吾さんですら、珍しく笑顔で答えてるんだから、すごい。
 そしてライダーたちがブルーインパルスに乗り込む。章吾さんは牛木さんの後ろに乗っていた。牛木さんの演技を見るのは初めてだからドキドキするし、章吾さんが卒業したんだと実感してしまう。

 全てのチェックを終えたらしいイルカたちが、滑走路に出て行く。

 飛ぶ直前に煙を一回吐き出して、まずは四機が空を飛び立った。そして次に二機。
 そこから訓練開始なんだって。

 デルタからワイドデルタへ、またはその逆へ、そして未だに名前が覚えられないあれこれ。やっぱブルーインパルスはいいなあ、って思う。綺麗で、雄大で、かっこよくて、おおらかで。
 ひとつひとつに意味があって、願いが込められているそうだ。

 だから何回見ても感動する。

 章吾さんが戻ることになっている百里基地にもブルーインパルスが来るから、今度はそこで楽しめばいいし、章吾さんももしかしたら、F-4戦闘機に乗ってお披露目するかも知れない。ブルーインパルスとは違う機体がどう動くのか、今からとても楽しみにしていた。

「今日も四番機のエンジンはご機嫌だな」
「音でわかるんですか?」
「まあな。技術屋なんてそんなもんだぞ? メカオタクなんて言われることもあるしな」
「へ~!」

 小島さんの解説を聞きながら、そんな話もしてくれた。演技の写真は撮ってもいいと隊長さんにもキーパーの隊長さん? にも言われたので、動画や写真を撮ってみた。フェンスの向こうでも、大きな望遠鏡みたいなカメラで写真を撮っているファンの人がいるから、許されていることなんだろう。
 そして演技を終えたブルーインパルスたちが地上に戻ってくる。何度見ても感動するよ、ブルーインパルスは。
 そんな幸せな時間は終わり、ズラーッとブルーインパルスが並ぶ。そしてライダーが降りて来て、そこでも愛想を振りまいていた。


 ***


「ひばり、最後だったけど、どうだった?」
「やっぱり感動したよ。百里基地にも来るから見れるけど、F-4も気になるよ。章吾さんはそれに乗ってたんだよね?」
「爺さんか。そうだよ。まあ、古い戦闘機ではあるが、爺さんも人気あるしな」
「おじいさん?」
「ああ。F-4戦闘機は『おじいちゃん』って呼ばれて親しまれているんだ」

 章吾さんの家でまったりしていると説明してくれたんだけど、F-4戦闘機はおじいちゃんって呼ばれているなんて知らなかった。
 でもどうしておじいちゃんなんだろう? おばあちゃんでもいいじゃんって言ったら、「確かにな」と言いながらも章吾さんは笑っていた。

 ご飯を食べて、少しだけ引っ越し準備も手伝って。箱詰めされていくものを見ると、本当に結婚したんだな、これから一緒に住めるんだな、って実感が湧いてくる。
 そんなことを考えていたら、章吾さんに押し倒された。

「章吾さん……」
「今日は猫の日――にゃんにゃんにゃんの日だそうだからな。俺たちもにゃんにゃんにゃんしようか」
「へ……?! 意味がちがーう! あっ、ちょっ、ああんっ!」

 乳房を揉まれて乳首を吸われ、アソコに指が入り込んできて動かされてしまえば、章吾さんの愛撫に慣れた私の身体は一気に熱くなるわけで……。

「あっ、あっ、章吾さ、ああっ!」
「ひばり……可愛い……」

 激しく揺さぶられて、あちこちキスされて、何度もイかされて、抱かれた。


 この二ヶ月後、百里基地の官舎に引っ越したあと、体調が悪くて病院に行ったら妊娠が発覚。どう考えてもお医者さんが教えてくれた赤ちゃんの週はこの日しか考えられなくて……。


 晩御飯を作りながら、章吾さんに伝えたらどんな反応をするんだろう……と考えたら、なんだか幸せな気分になった。

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