私がいかにして彼を愛するようになったか

変狸

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私たちがここに来た理由と訳

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 私が目を覚ます。見知らぬ天井が見え、壁際になんのためかわからないタイマーが時を刻んでいた。
 さすがに死んだのでは、と思うが直ぐに違うことが分かる。
 私はけが人などを運ぶストレッチャーのようなものの上で横になっているのだが、手足が拘束されているのだ。

「目が覚めたようだな」

 非常に深い声が室内に響く。
 それと同時に固定されている台が音を立てながら動き始める。ゆっくりと台が起き上がっていくと、私と彼を襲ったあの軍服の男が立っていた。

「おはよう。どうだ、体の具合は」

 言われてすぐに自分のお腹を確認する。入院着みたいな服を着ているが何処にも怪我らしいものはない。
 そう、ないのだ。
 腹に空いた穴も、それらしき傷跡もなくなっているのだ。

「俺に何をした?」

「それよりも。まず、貴様に聞きたいことがある」

 男は立ち上がると、私の近くまでやってくる。

「貴様、私の下に来る気はないか?」

「は? いきなり何言ってんだ」

 私はあまりにも荒唐無稽なことに驚く。

「そうか、ダメか」

「いや、ダメとかじゃなくて。説明してくれってことで」

 私が、そう言うと男は俺の顔をいきなり殴ってきた。

「上官に何たる口の利き方だ!」

「まだ上官じゃねえよ! 情緒不安定か!」

 私を殴るとすぐにくるっと回り後ろに下がっていく。

「貴様が今どうなっているのか。それは、逃げたあのくそ雑魚ナメクジにも関係のあることだ」

 そして私を無視して一人で話をし始める。

「くそ雑魚ナメクジって、言いすぎだろ」

「そもそもの話は、数年前にさかのぼる」

「こら~無視ですか?」

 私の事を完全に無視して男は話を続ける。

「我々はこの長きにわたる戦争に勝利するためにあるプロジェクトが実行された。プロジェクト名は超人類創造計画」

    仕方なく、身動きもとれないため黙って男の話を聞くことにしました。

「たんに強い兵士を作り出す計画ではない。今、人類が減少していることは知っているな」

「もちろん。知らないやつはいないだろうさ」

「我が祖国は戦後、人類が全滅しないようにするためにもこの計画は必要だと考えていた。たんに強い兵士を作り出すだけではダメだ、あらゆる環境に適応し確実に種としての数を増やしていかねばならない」

「やっぱり話聞かねえな」

    無視してれば良かった。
    今思い出しても、むしゃくしゃします。

「そういう経緯もあり始まった計画だが、それは苦難の道だった。何度も失敗し何度も挫折した。何度、もうだめかと思ったことか。そして、苦心の末ようやく実験体1号が完成した」

「そのときだ」と、男は当時のことを思い出して目に涙を浮かべる。

「わが軍の研究所からその実験体1号が何者かに盗み出された。まだ人の姿にすらなっていない受精卵の状態のものがな」

「・・・」

「研究所は爆破されデータもそのほとんどが消えた」

    私は男に恐る恐る、その犯人は誰かと訪ねた瞬間、男は私を睨み付けてくる。

「その後、残ったデータを使い計画を進めるがめだったこともなくその間に別の部門が成果を出すことになり計画もそちらにシフトしていくこととなった」

「まさか」

「そして、今日。それは目の前に表れた。我々の予想通りの姿形をしてな!」

    なるほど、と納得する。彼の異常なまでの身体能力等の説明がついたからだ。
    だが、

「まて、どこに今の俺の状況と関係してるものが出てるんだ」

「なに、簡単な話だ。お前にはそのもう一つの計画の産物を使ったにすぎない」

    男の口はさらに饒舌になっていく。
    そして、とうとう男は私に衝撃のことを告げるのだった。

「簡単に言うと、お前は今、機械人間になっている」

「機械?    人間?    サイボーグみたいなもんか?」

「いや、違う。機械人間とはナノマシンによってからだの内部から人を機械に変えていき最終的には体を完全に機械とし永遠の命を得ようと言うものだ」

「余計なところまでどうも」

   つまり、このまま行くと俺はロボットになってしまうのか。
   自分がどんどん自分でないものに変わっていく恐怖。
   まるで巨大なタコに抱きつかれたような感覚が俺の体を走る。

「何てことしてくれたんだ!    どうしてこんなことをした」

「死なすには惜しいと思ったゆえな」

「え?」

   またまた、驚きの言葉が飛び出した。

「貴様は機械人間の私に生身でかかんに立ち向かってきた。しかも、あの実験体を好いているようだ、我々は善き友になれると思う。どうだ、私と一緒にこの世界のために戦う気はないか?」

「ない!」

    きっぱりと断りをいれる。

「承諾すら取らずに勝手に人間で人体実験するような連中と組むきなんてない」

    こんな、人を無理矢理改造するやつとなど働きたくない。

「ははは、そんな答えを焦る必要はない。機械化が進めば貴様もこの体の良さがわかるはずだ。それに、1号ももうじきやって来るはずだ」

    それは、意外なことだった。
    まさか彼が戻ってくるなど。

「やつの任務。それは、自身に関する全てのことを消し去ることだ。当然、それにはこの私とこの基地も含まれる」

「つまりここが・・・」

「そう、奴が生まれた場所さ。まあ、今となっては何の戦略的価値もない研究所となってしまったわけだが」

「何でだ、さっきの話じゃあんたは研究の責任者なんだから・・・」

 私がそう言うと男は急にがははと笑い出した。

「違う。私は1号の計画が失敗した責任を取って進んでいた兵士機械化計画の実験体に志願したのだ」

「は?」

   俺が何言ってんだと聞き返そうとした瞬間へやが大きくゆれる。

「とうとう来たな」

    男はそう言って、部屋を飛び出していく。

「おい、俺を置いていくな!」

    私の叫び声が、部屋の中で響く。

「くそ、外れろ」

    そういいながら、手足を動かして拘束を解こうとするが、外れない。

「俺もロボットになったんじゃないのかよ!」

    分かっている。気を失ってから、どれくらい時間がたったかわからないが、体を作り替えるのには時間がかかると。
    だが、今ほしいのだ。
    力が。
    揺れはいっそう激しくなっていく。
 ふいにピーという電子音が響き拘束が外れる。

「なんで。て、今はそれどころじゃない」

 近くの台からメスを持つと、扉を開け部屋を飛び出しすぐ横の部屋に飛び込む。
 白衣を着た人間が数人ほどいるので、そのうちの一人を捕まえてメスを首筋に構える。

「全員動くな。今から俺の言うとおりにすればだれにも危害は加えない」

 研究者たちは一度向き合う。そして、一人が「分かった」と言う。
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