私がいかにして彼を愛するようになったか

変狸

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戦いが終わる、だが

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 私たちが基地内部に入っていくと指揮官がやられたことで統制を失い、混乱の極みと化していた。
 その隙を縫って基地の各ポイントに爆弾を仕掛けていく。
 途中、戦闘になることもあったが。

「止まれ!」

「止まれといわれて止まるわけないでしょ」

 問題なく設置していく。
 タイマーですべてを設置した瞬間にスタート。3分後にはすべて吹き飛ぶ事になる。
 
「さて、あとは脱出だけど」

 そう、新たな問題。脱出の手段。
 陸路でここを離れたとしてもこの基地はこのあたりの広い範囲の地下に埋まっている。だから、爆破すればこのあたり一帯の地面がどうなるかわからない。
 危険を冒すわけにはいかない。
 だったら空に逃げればいいのだが、どこを見ても飛行機やヘリの類が見当たらない。
 何処に行ったらいいのか。
 その時、耳につけているインカムに連絡が入る。

「使えそうな飛行機を見つけた。B-12地区だ」

「わかった」

 必要な会話だけ済ませ言われた場所に向かう。



 言われた場所に行くと、すでにそこには彼と兵士の死体があちこちに転がりその先に数機、BNと思しき戦闘機が鎮座しており、彼はそのうちの一機、青い機体の上で寝っ転がっている。

「終わったか」

「ああ、全部仕掛けてきた。連中も自分たちの爆弾で死ぬなんて想像もしてないだろうだな」

 私は彼と合流できた安心感から軽口が漏れる。
 それを聞いて彼は目を丸くさせ驚く。
 よく驚くな。

「お前、そんなこと言うやつだったんだな」

「おう。俺、本当は結構お喋りなのさ」

 そう言って私と彼はともにBNに乗り込む。

「あのカラーボックスみたいなやつはどうするんだ?」

 そう、この機体は乗ってきたやつとは違い、カラーボックスを入れておけるスペースなどないため持ち帰ることはできない。

「問題ない」

 そう言って彼はカラーボックスの背面に手を当てる。すると、彼の手の平の周辺が魔法陣のように幾何学な模様を浮かび上がらせ、次の瞬間にはビービーと警告音のようなものが鳴り出す。

「これで個々の施設が爆発すると同時にこいつも爆発する」

「ああ、破棄するのね」

 あれだけの兵器をいちいち破棄してたら予算的な問題もあると思うけど、そう言うところが試作兵器なんだろうと無理やり納得することにした。
 こういうことは深く考えないに限るとこの時の私は思い、流れに完全に身を任せる気でいた

「そっちはどうだ。動かせるか?」

「ああ、敵の機体についての講習を受けてっから。基本的には同じみたいだし」

 敵機を鹵獲した時のための物だが、受けるかどうかは自由。
 ただ、その日が非番で特に予定もなかったため暇つぶしで受けたがまさか役に立つことがあるとは。

「しかし前進翼・・・逆かぁ」

 軍で研究されてるって聞いた事あるけど、こっちにはもう実機があるのかと大変驚いた。

「じゃあ行くぞ」

 VTOL機のためそのまま飛び上がる。
 その時、下から無数の兵士が出てきてこちらに向けて重火器を打ち込んでくる。
 
 「くそ、まだ来るのかよ」

 狭い中で避けることなどできるはずもない。変形して戦ってたら当然、脱出が間に合わない。そうこうしていると、他の機体にパイロットが乗り込み追いかけてくる。

「しゃあ、飛ばすぞ!」

「後ろの事は気にすんな! 行け!」

 そう言った瞬間、今まさに発進したBNがつぎつぎと爆発していく。

「何を仕込んだんだ?」

「電気系統をちょっといじっただけだ」

 そう言うが、下の兵士たちを巻き込んでブロックを丸ごとふったばしている。
 仕掛けた爆弾は高性能なため、時間が来るまで爆発しないため誘爆した可能性はない。
 まあ、敵を一掃できたことは良かった。とにかく、今は逃げ出そう。
 その時、天井の隔壁が閉まっていく。

「大丈夫か?」

「さあね、こいつの性能を信じててくれ」

「信じられるか!」

 そりゃ敵の試作機だけどさ、そんな叫ばなくてもいいんじゃねえの。と思いながら私は、スロットルを全開にする。
 かなりの速度で飛んでいるはずなのにこの瞬間がゆっくりと流れていく。それこそ、ハイスピードカメラで撮った映像を見ているように。
 そこで気が付く。この機体が完全な前進翼ではなく可変翼であることに。

「少し揺れるぞ!」

「はあ?!」

 翼を動かして機体の幅を狭める。しかし、まだ十分に速度が出ていないため機体が不安定となり振動が激しくなってきた。

「通れ、通れ!」

 目の前には今まさに閉まろうとしている隔壁。
 少しでも遅れれば、隔壁にぶつかり私たちはバラバラ。

「・・・だめだ」

 下手なことは想像しないほうがいい。
 操縦桿から手が離れてしまうのをすんでのところでこらえる。
 しかし、目は閉じてしまう。



 しばらくして目を開けるとそこは一面の青空、下には一面の雲海。

「出たのか・・・」

 俺がそう言った瞬間、はるか下から強烈な爆発音が響いてくる。空気が振動し、厚い雲すら突き抜け機体を揺らす。
 
「まさか、雲の上がこんなにもきれいなものだったなんて」

 だが、ここから動かないわけにもいかない。

「さて、帰りますか」

「お前は、このまま帰ったら殺さるかも知れないが・・・いいのか」

「ああ、だからもう、国には帰らない」

 そう、前々から考えていたが実行できなかったことを実行に移す。

「俺は軍を抜ける」

「脱走は重罪じゃないのか」

「そんなこと関係ねえよ。いや、関係なくはないけど。それでもやるしかないだろ。もう、俺の居場所なんて何処にもないんだしな」

 私はやっぱり軍人には向かない。
 前々からずっと思っていたことだが、やっと決心がついた。

「それに、このまま戻ったところで殺されるか、研究所で死ぬまで体をいじくられて死んでもホルマリン漬けにされるだけだろうし。とにかく俺は軍を抜けるんだよ!」

「わかったよ。だから少し黙ってくれ、うるさい」

「わ、悪い」

 私の叫びは彼からすればただの雑音だったらしく、すぐに操縦に専念する。

「・・・まあ、それしかないか」

 彼は独り言のようにつぶやくと「よし」といってもう一度口を開く。

「俺も、このまま帰ってもろくなことがないからな。俺もお前と一緒に行くわ」

「え、いいのか?」

「お前のためじゃねえよ。俺にだって自由に生きる権利があるはずなんだ。だから」

「わかったよ。行こう」

 私たちは覚悟を決めて再び雲の中に飛び込む。
 その先が曇っていても明るい未来を信じて。
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