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22.仮面はいらない
しおりを挟む高層階の窓からスカイツリーに見入っていると、磨き込まれた硝子に龍介の姿が映る。
百樹を胸に抱き込むように立ち、腕を掴まれた。手の甲に唇を押し当てる。その眼差しが、硝子ごしに百樹の瞳をのぞきこむ。
「落ち着いたか?」
静かに訊ねられる。それがかえって記憶を呼び覚まし、恥ずかしいことこの上ない。
『ずぎぃ……!』ってなんだよ、『ずぎぃ……!』って……!
これ以上ないくらい嬉しい告白に、自分だってもっとかっこよく返したかった。
なのに涙と鼻水がそれを許してくれなかった。
そのあとも奴らはとどまるところを知らず、びいびいと泣き崩れる百樹を気遣って、龍介が手配してくれたのがこの部屋だ。
羞恥にぐぬぬと震えていると、龍介の唇が百樹の耳介に触れた。偶然かと思っていたそれはやがて明確な意思を持った動きに変わり、耳たぶを甘噛みされる。
「ん……っ」
思わず漏れた声に気をよくしたように、龍介の舌が耳の中まで愛撫し始めた。初めはくすぐったいばかりだったそれは、濡れた音に煽られるように、快感に変わっていく。
龍介の吐息を間近に感じる。それが荒々しく乱れていくのが嬉しい。
「あっ、やっ、んん……っ」
伸びてきた手がTシャツをめくりあげ、小さな突起を露わにさせる。
わずかな愛撫の間に、そこはぷっくり膨らんでいた。
ま、まだ触られてもないのに……!
そんな様が、鏡面のように磨き上げられた硝子にしっかり映り込んでしまっている。
恍惚に上気した頬。欲情に濡れた瞳。胸を突き出し腰は浮いて、龍介から触られるのを待っている体。
星のきらめきのような街の灯りは遥か地上にあって、誰にも見えはしないとわかっているけれど、百樹は思わず身をよじった。
「や……恥ずかしい」
ふっと笑みを孕んだ吐息が首筋に触れる。
「い、今更だけど」
「いや。いろんな顔が味わえてむしろお得だ」
硝子に映り込んだ龍介の表情に偽りの色はない。
龍介の前では自分を偽らなくていいのだ――触れられるだけで心地よい骨張った指で体をやさしくまさぐられ、促されるまま腰を突き出す。
ジーンズ越しに腰のくぼみに口づけられるだけでぶるりと震える。龍介は、ちゅ、ちゅ、と音を立てて双丘の膨らみや腿に口づけを落としながら、巧みにジーンズと下着を脱がせていく。
素肌になった丘をぐっと割り、熱くぬるりと濡れた舌がそこを割った。
「ああ……っ!」
愛撫されているのは後ろなのに、昂ぶりの先端まで電流が走ったように感じる。びん、と張り詰め、自分の腹を自分で叩いてくる。
中まで入り込む龍介の舌は、熱く濡れていた。
「あっ、あっ、あっ、ああ……っ!!」
まるでそこだけ別の生き物のようにいやらしく蠢く。百樹の隘路を強引にこじ開ける。
一度こじ開けられてしまえば、自分の内部は、それを喜んで受け入れ、きゅうきゅうとまとわりついた。
龍介がたっぷり施す唾液が内腿を伝わっていく感触にさえ感じてしまい、百樹は白い喉をさらしてあおのく。
切れ切れの吐息の下、やっとのことで絞り出した。
「ん……っ、顔、見ながらしたい、から、ベッド、」
いきたい、という言葉は形にならなかった。膝裏に手を差し入れられたかと思うと、百樹の体はいとも簡単に宙に浮く。龍介は苦労などまるで感じさせない足取りで百樹をベッドに降ろすと、大事なものを扱うようにそっと額に口づけた。
「俺もそう思ってた」
喜びと慈愛が混ざり合った顔と声音で告げられて、心ごと愛撫に飲み込まれる。
受け容れてくれる。龍介はなにもかも。
なにもかもさらけ出して、哀しみも欲望も、情念も。
見つめ合ったまま、龍介がゆっくりと入ってくる。
「あ、あ、あ………」
自分はきっと、快感の涙でまたぐちゃぐちゃの顔をしているだろう。
でもその涙さえ、龍介は嬉しそうに口づけで拭ってくれる。たくましい胸板、腕、その熱その重み。なにもかもが愛しい。
そうして貫かれ、百樹は果てた。
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