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後日談:戸惑いも愛しく
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これは、龍介と付き合うことになった百樹が初めて梓に戻ってきた日のお話。
□□□
今回初めて梓に戻るに当たって、百樹は固く心に決めていることがあった。
龍介さんにちゃんと「好き」って言うぞ……!
そう。初めてちゃんと結ばれた東京での夜。自分は涙と鼻水で顔をぐちゃぐちゃにしてこう言った。
『おれもずぎぃ…………!!!!』
――今思い出しても顔面から発火しそう。
せっかく生れて初めて「どんなおまえでも好きだ」なんて凄い言葉をもらったのに、その返答が『ずぎぃ』。
翌朝龍介が梓に帰り、自分は東京での仕事に戻ってからも、後悔はずっと消えることがなかった。
あれからまめにLINEで連絡をとっているものの、直接会うのは一ヶ月ぶり。社会人ならそれも珍しくないことなのかも知れないが、自分たちはまずクローズドのゲイ。それも芸能人。それも遠距離。なにかと不安要素が多い付き合いなのだ。
だから空港に降り立ったとき、龍介の姿がちゃんとそこにあるのを見て、実はもうちょっと泣いていた。
嬉しい。
離れている間にやっぱり冷静になってしまって、迎えにこないなんてパターンも想定していただけに、心底嬉しい。
かくなるうえはこの旅行中、絶対にちゃんと『好き』ってちゃんと言って、関係をより強固なものにしたい。
百樹は心の中で密かに拳を握った。
――と、決意をしたものの。
まず、空港。会っていきなりはまだ心の準備が整っていなかった。しかももう涙ぐんでいたので、そのまま告げたらあの『ずぎいぃ』の悪夢再来の予感しかなかった。
それならバイクで背中にしがみついているときというのはどうだろう。なんだか昔の少女漫画みたいでそれはそれで雰囲気良くない?――とも思ったのだが「今日は五十日でこの辺でも道が混むから、その前に飛ばすぞ。口閉じとけよ」と言われれば、黙るしかなかった。
っていうか〈ごとうび〉って何。
高校からすぐ芸能界入りした百樹には、知らないことが沢山ある。
それからなんとか渋滞に巻き込まれずに市街地に入った。ランチは古民家を今風にリノベーションした和風モダンな店で、席は半個室。
よし、ここなら――
「龍介さん、おれね、す」
言いかけたそのとき、店員さんが卓上に七輪を運んできた。新鮮な魚介類が次から次へと乗せられていく。
「こっち、もういいんじゃないか?」
龍介が、香ばしく焼かれた蟹の一番太いところを百樹の皿に載せてくれる。ふつふつといい具合に蒸し焼きにされた牡蠣にすだちを絞ってくれる。
「……だち、美味しいね」
すっかり気勢を削がれ、百樹は呟いた。
まあ、初真剣告白が甲殻類の香りっていうのもどうかと思うし。旅はまだ始まったばかりだし。大変美味しゅうございました。
店を出たあとは、山間の神社に向かう。なんでも、ガイドブックに大きく取り上げられることはないが、地元では一番ご利益があると言われている神社だそうだ。
「ここは仕事運にご利益があるって評判なんだ。……百樹は大変な世界で仕事してるから、いいかと思って」
正直龍介に会える喜びと不安で、事前になんの下調べもしていなかった百樹は、龍介のそんな言葉に面食らった。
「おれの、ため?」
「実力ではどうにもできないこともあるから、縁起を担ぐ人も多いと聞いたんだが――よけいなお世話だったか?」
「ううん! めちゃくちゃ担ぐよ! おれ、オーディションの朝は絶対青汁飲むって決めてるし。靴を左右どっちから履くか決めてて、間違っちゃったときは部屋からやり直す人とかもいるよ。――ありがとう」
おれのこと、そこまで考えてくれてるんだ。
……嬉しい。
嬉しい嬉しい嬉しい。
たしかに芸能界は浮き沈みが激しい。でも、ほとんどの人は華やかな面にしか目を向けないものなのに。
いてもたってもいられなくなって、なんだか駆け出したい気持ちになったとき、ちょうどお守り売り場が目に入った。
「おれ、お守り買う!」
さっそく駆け寄って物色する。なんといっても龍介がわざわざ自分のためにつれてきてくれたのだ。ご利益があろうとなかろうと、記念になるなにかをゲットせずにはいられない。
色とりどりの金襴の中から、水色のものを選んで「これください!」と叫ぶと「待て」と龍介がおもむろにそれをさえぎった。
「俺が買う」
「えっ、いいよ。ずっと運転してもらってるし、お守りだし――」
流石にそこは自分で買うものだと思う。
だが、龍介は「そうじゃない」とふたたびやんわりと百樹の言葉をさえぎる。
「この辺りじゃ、お守りは人に買ってもらったほうがご利益があるって言われてるんだ」
言うが早いか、さっさと初穂代を納めてしまう。「ほら」と差し出され、百樹はためらった。こんなになんでもかんでもよくしてもらうのは、やっぱり申し訳ない。
――そうだ。
思い立って、もうひとつお守りを手にする。龍介がなにか言い出す前にさっと初穂料を納めた。
手の中にあるのは、龍介が選んでくれたものと同じ、水色のお守りだ。
「はい、交換」
差し出して「こうしたら龍介さんにも御利益あるよね?」と告げる。
龍介はまるで目の前でぱちんと手を叩かれたみたいに一瞬固まって、それから――やさしく目を細めた。
「……ありがとう」
いつも精悍で男らしい顔から一枚険しさが剥がれると、少しだけ幼く見える。そんな無防備な表情を目にすると、どういうわけか百樹の心臓辺りに痛みにも似た感覚が走った。
平日の半端な時間、周りに人影はない。
周囲を針葉樹に囲まれた境内は、青く透明な空気に満ちている。ちょうどそのとき吹いてきた風が、さわさわと木立を鳴らして行った。
芸能界には縁起を担ぐ人が本当に多いから、そんな誰かから聞いたことがある。神社を訪ねたときにちょうど風が吹いたりするのは、神様に歓迎されているのだと。
これは絶好のチャンスでは……?
タイミング的には今しかないのでは?
「龍介さん、――す」
じゃりじゃりじゃり。
あとほんのひと息というところで、玉砂利を踏みしめる幾つもの足音が百樹の声をかき消した。
「はい、皆さん、ここが普通のガイドブックには載らない、地元の人だけが知っている、すごーく御利益がある神社でーす」
足音に続いて、よく通るガイドの声が響く。それからわらわらと年配の旅行者がやって来た。
こんな山間なのに、なんだかとても身なりがいい。そう――これはきっとたいがいのところに行き尽くした年配旅行者のためのマニアックツアーだ。超一流の宿に泊まって、国内なのに何十万もするやつ。
彼らががやがやと通り過ぎる頃には、神々しい空気も、すっかり霧散していた。
またしても失敗、だ。
□□□
神社をあとにしてまたバイクに乗った。
「好き」そのたった二文字を伝えたいだけなのに、なんともう三連敗。
――でも、夜はまだこれからだ。
そう、なんといっても宿ではふたりきりなのだ。いくらでも仕切り直せるはずだ。
というわけで、宿に着くなり百樹は「おれ、先にお風呂入ってくるね!」と部屋を飛び出した。
大浴場でつるつるのぴかぴかになって、一番いい状態で渾身の「好き」を伝えたい。
からだの隅から隅まで丁寧に洗う。髪にはアメニティの椿オイルを塗ってつやつやに。
龍介ほどたくましくはないけれど、連日重い衣装をつけて殺陣をこなしているおかげで、体に無駄な肉はない。
よし、完璧。
浴衣に身を包んで意気揚々と部屋に戻ると、浴衣に着替えた龍介の前に、食事の準備が整っていた。
「ごめん。もしかしておれのせいで冷めちゃった?」
風呂で自分をぴかぴかに磨き上げることしか考えていなかった。せっかくの食事を前にひとりで待たせてしまったなら申し訳ない。
「いや、今持ってきてくれたところだ。――喰おう」
「うん!」
和装がさまになるのは船頭の衣装でも証明済みだが、浴衣はより似合っていた。気がつくと、食事中もちらちらと龍介のセクシーな胸元ばかりを見てしまう。
――あんまり味わかんなかったな……
食事を終えて残った感想はそれだった。
食べ終わったらいよいよ「好き」ってちゃんと言わなくちゃ。そればかりを考えていたせいだ。
少し着崩れた浴衣を綺麗に直す。よし、と百樹が気合いを入れ直したとき、龍介は広縁の椅子に腰かけ、頬杖をついていた。
――あ、れ?
その物憂げな横顔に、心臓が波打つ。昼間神社で感じたものとは真逆の、冷たい波だ。
じわじわと波打ち際の砂を削っていただけのそれが、じょじょに大きくなる。
だっておれ、龍介さんのこんな顔、初めて見る。
百樹の視線に気がついたのか、龍介がこちらを見る。その唇から紡がれた言葉は――
「すまない」
――な、なんで?
『すまない』
突然思い詰めたような面持ちで告げられた言葉が、上手く咀嚼できない。
すまない。すまない。……なにが?
今朝顔を見るまで囚われていた不安が、再び込み上がる。
もしかしてこれ、やっぱり「付き合えない」ってやつ?
クリスマスとか旅行中に別れを切り出すなんて、ダメな男の定番だよ。
まさか龍介がそんなことを思うのに、でも龍介さんはやさしいから、ここまで言い出せなかったのかもという気持ちもわいてくる。そんなにまでして赦そうとしている自分に気がついて、鼻の奥がつん、とした。
しょうがない。元々ノンケだった人が、離れている間に冷静になるなんて、そんなのはよくあることだ。たとえ少しの間でも、心の一番やわらかい部分に寄り添ってくれた。そっと触れてくれた。それだけで感謝するべきだ。
舞台以外ではしばらく被っていなかった、仮面を用意する。
「だ――」
いじょうぶ、と言いさして百樹は「……はしゃぎ過ぎた」という呟きを聞いた。
「へ?」
悲壮な覚悟とは裏腹に間抜けな声を漏らして面を上げる。龍介が大きな手で自分の顔を覆っていた。
「……張り切りすぎたよな。鬱陶しかっただろ」
ん?
「俺はこういうことに慣れてないから……」
んんん?
「えっと、なんの話?」
どうやら自分を責めているようだが、なにがどうしてそんなことになっているのかわからない。空港まで迎えに来てくれただけで満点だし、そのあとのランチも神社もプランを立ててくれたのは龍介だ。有り難いと思うならともかく、鬱陶しいとはどういうことなんだろう?
しかし龍介は龍介で「引いてたんじゃないのか?」と引き続き意味不明なことを口にする。
「引くって、なにに」
「――」
龍介は険しい顔ですっくと立ち上がると、広縁の向こうの引き戸を開け放った。
「わ――」
そこにあったのは、頭の中にうずまく疑問など一瞬で吹き飛ぶ光景だ。
焼き物の丸い湯船に、掛け流しのお湯。小上がりのように洗い場から一段高くなった場所は、湯上がりにくつろげるようにだろうか、畳敷きになっていた。
「え、これどうなってんの?」
思わず駆け寄ってみれば、なにか特殊な加工がしてあるらしく、濡れても平気そうな材質だ。
この宿は高台にある。面を上げれば、植え込みに囲まれた先に湖畔の灯りが見えた。今は暗い湖の畔をぽつぽつと灯りが囲む様子が、小さな宝石のはめ込まれた指輪みたいだなと百樹は思った。
こ、これは。
豪華露天風呂付き個室ってやつじゃないですか……!
「龍介さん、ごめん。おれ、気がつかなくて先に大浴場行っちゃったよ。言ってくれれば良かったのに」
申し訳なさ九割、責める気持ち一割で告げると、龍介は戸惑ったような顔をした。
「――やり過ぎが鬱陶しくて逃げたんじゃなかったのか?」
「逃げるって……」
いや、と百樹は自分の行動をふり返る。
日中の失敗を巻き返すべく、着いて荷物を解くのも早々にひとりで大浴場に向かってしまった。部屋の中をぐるっと確かめることもせずに。戻ってきたら食事が用意されていたから、慌ててその場についた。
その食事だって、これを食べたら絶対「好き」って言うんだと、そればかりを考えて、味の記憶はろくに残っていない。
せっかくふたりで一緒にいるのに。
「朝からずっとそわそわして落ち着かなかったし、俺は、てっきり……来たことを、後悔しているのかと」
龍介にしては珍しく、歯切れの悪い言葉。
「龍介さん……もしかしておれたち、おんなじこと心配してたのかな」
「同じこと?」
「おれも、空港で龍介さんの姿見るまで不安で不安でしょうがなかった。龍介さんはおれよりずっと大人だし、ノンケだし、離れてるし。もしかしたらやっぱり付き合うなんてなかったことにしようってならないかなって」
「――おまえは俺よりずっと若いし、華やかな世界でイケメンに囲まれてるんだぞ。どう考えたって心配するのは俺のほうだろう」
龍介の声にはかすかに拗ねたような響きがある。それが胸の中のやわらかな場所を、たまらなくくすぐる。
「せっかく一緒にいるのに、おれたち自分の不安のことばっかり見てる。……もう、そういうのやめよう?」
百樹はかたわらの龍介を見上げた。まなざしを受け止める龍介の瞳にはまだ戸惑いの色がある。
自分よりずっと大人だとばかり思っていた龍介の中にも、揺れ動くものがある。
それを知っても、幻滅はしなかった。
むしろ嬉しい。――愛しい。
「龍介さん、おれ、龍介さんが好き。大好き。大好きでも全然足りないくらい好き」
ん、と伸びをして、背の高い恋人の不安に引き結ばれた口元にキスをした。
「今日一日、それが言いたくてそわそわしてたんだよ。ごめ――」
離れようとした腰に力強い腕が回される。
「――っ!」
一瞬息が止まるほど強く抱き寄せられた。言葉はいっそう激しい口づけで奪われてしまう。
唇を吸うだけでは足りないとばかりに舌が入り込んでくる。歯列を割り、舌を絡め取られると、唾液があふれる。熱くて甘いそれが。
「ん……、りゅ、すけさ……」
苦しいと言いたいのか、もっとと言いたいのか、自分でもわからないまま背中に腕を回す。龍介の背中は広く、抱えきれない。それがもどかしく、いっそうしがみついた。
まさぐられているのは口の中なのに、腰から力が抜けていくから不思議だ。
飲み下し切れない唾液が、露天に灯されたオレンジの間接照明で、朝露を受けた蜘蛛の糸のように光る。
はふ、と漏らした吐息を整える間もなく、龍介の舌は百樹の耳介をくすぐり、首筋を伝った。
「りゅ、龍介さん、お風呂」
「もう入っただろ」
「龍介さんはまだでしょ……?」
待てない、とでも言うように浴衣の合せに入り込んでくる腕を、百樹はやんわりと押さえる。
「気になるか?」
「そうじゃなくて、一緒に入りたい。……だめ?」
「――だめなわけがあるか」
龍介は口の中で呟いたかと思うと、ひょい、と百樹の体を持ち上げた。湯船の脇の小上がりに押し倒され、再び耳介を甘噛みされる。
「ひゃ……っ!!」
濡れた舌が耳の中まで愛撫して、百樹は思わず声を上げた。
「りゅ、龍介さん、お風呂、お風呂に入るって……」
「だから脱がせてる」
龍介は悪びれる様子もなく言い捨てる。黙っていろとばかりに、舌での愛撫は激しさを増していった。
「あ……っ」
頭の中に直接響くような淫らな水音が全身に伝わって、あらぬところがじんと熱を持つ。もどかしく足をこすりあわせると、浴衣の裾が乱れた。それを見越したように、龍介の手が伸びてくる。
「ん……っ!」
すっかり乱れて露わになった下着の上から昂ぶりをきつく握りこまれ、背が浮いた。背中は龍介の胸に抱き留められて、そこから逃げることもできない。龍介は百樹の肩に顎を乗せ、押さえ込むようにすると、さらに百樹の中心をもみしだき始めた。
背筋にぶるっと震えが走る。
「や……っ、ん……」
この一ヶ月、龍介のことを考えない日はなかった。焦がれていたのは体も一緒だ。そこはあっという間に固く張り詰める。
龍介さんの手……大きくて……いい……っ
そのごつごつした感触に、はしたなくも感じてしまう。耳元に感じる龍介の息づかいもどんどん熱を持ち、じわっと先走りが滲んでしまうのを感じてひとり恥じ入っていると、龍介がそれを見逃してくれるわけもなく、下着の上からかりっと爪を立てられた。
「ん、んん……っ!!」
なにかが限界までぎゅうっと集まり、一気に解放される。
自分の体なのに、もうすっかりコントロールを失って、余韻でびくびく痙攣するのを止められはしない。
「早いな」
笑みを含んだ言葉が、口づけとともに耳元に落とされた。
「だ、だって、ずっと会いたかった……から……っ」
恥ずかしさと快感で涙がにじんだ。快感が飛び火したようにまだ触れられてもいない乳首がきつく立ち上がって、はだけた浴衣の胸元からのぞく。
一度放った下着の中に、龍介の手がふたたび入り込んだ。
「や……っ!!」
ぬるりとした蜜で手が汚れるのも構わずに、再び愛撫される。微かにお湯の流れる音だけが聞こえる露天に、ぐちゅ、ぐちゅっと粘度を帯びた音は淫らに響いた。
いやらしい音で耳からも犯されながら、龍介のごつごつしたてのひらの感触を直接感じるのは、たまらない快感だ。
それでいて放ったばかりの躰はゴールを見失っている。達することを許されず、ただ刺激を与え続けられる行為は、百樹に軽い恐怖さえ抱かせた。どこまでこの快感が積み上げられてしまうのか。どこまで乱されてしまうのか。
おれ、どうなっちゃうの――
ぐずぐずに濡れた下着の中で百樹は再び育つ。育った自身と、龍介の大きな手とで下着はきつくなり、そのきつささえ淫らな躰は感じてしまう。
「ん……っ」
逃れるように腰を引けば、なにか熱源のようなものに双丘が触れた。
反射で逃げると、今度は明確な意思を持って、ぐっと押し当てられた。
「あ……っ」
はっきりと伝わって来る、その形――乱れているのが自分だけではないのだとわかって、喜びと期待が全身を駆け巡る。
「百樹……」
龍介のいつもは落ち着いている声が、熱に浮かされたようにかすれていた。
たくましい太腿を太腿に絡められ、固くなった龍介自身を押し当てられる、躰のどこか深いところがぞくりと疼く。
いつの間にか昂ぶりはまた張り詰めている。
蜜をまとってぬるぬるするそこを龍介は執拗にしごく。それでいて達するところまでは行かない絶妙な加減で。
「りゅ……すけ……さん、も、いかせて……」
はしたない呻きを漏らしながら、自ら腰をこすりつけたとき、龍介がぐっと百樹の肩をひねった。
すっかり露わになっていた胸の屹立を、じゅっときつく吸う。
「あ、ああ……っ!!」
躰の中央を、稲妻が貫いていったようだった。下肢はひくひくと痙攣し、もはや輪郭があやふやだ。
快感の波に翻弄される百樹を龍介は仰向けにさせ、下着を剥ぎ取る。足から抜かれるとき、たっぷり二度も吐き出した蜜ですっかり重たくなっているのを感じ、百樹は羞恥で頬を染めた。
龍介が百樹の足首を掴む。押し広げてさらに愛撫を施そうとしているのだと気がついて、はっきりとしない頭で必死に声を上げた。
「おれも、龍介さんに、する……!」
さっきまで腰に押し当てられていたもの。その固さを思う。きっと龍介も苦しいはずだ。
なのに龍介は「だめだ」と険しい顔で告げた。
「な、なんで?」
まさか拒まれると思わなかった。体を覆う甘い倦怠も忘れて起き上がると、龍介は、もうかろうじてまとわりついているだけだった百樹の浴衣の帯を引き抜く。
呆気にとられている間に、器用に手首を縛り上げられてしまった。
「――え?」
「今日は俺の好きなようにさせてもらう」
「りゅ、龍介さん、あの……」
これは、もしかして。
「なんかちょっと怒ってたり、する……?」
恐る恐る訊ねると、龍介は「いや?」と否定した。
「ただ、一緒に温泉旅館に来て、ひとりで部屋に置いてかれる人間の気持ちがわかるか? とは思ってるな」
「それ怒ってるってい、……ああっ」
言い終わらないうち、縛った手を頭の上で固定され、浮いた胸を吸われる。男の胸なのに、感じすぎるとぷっくり膨らんでしまうそこを龍介は舌先で転がし、つつき、また吸った。空いたほうの指先でもう片方の果実を摘ままれると、ほとんど悲鳴のような声が唇を震わせる。
「や、あ……っ!」
両手を封じられているから、胸はまったくの無防備だ。さらに両の親指で両の乳首をこねるように愛撫されると、喘ぎ声は止まらなくなってしまう。
「んっ、んっ、んっ、――」
責め苦のようだった愛撫が一旦やみ、いぶかしく思っていると、体を返された。縛った腕を顔の前につき、高く腰を突き出す格好をさせられる。
龍介のてのひらはまるでそのなめらかな形を楽しむかのように百樹の双丘を撫で――ぐっと押し広げると、谷間に口づけを落とした。
「や……っ!」
悲鳴を上げても、それが一番好む行為だと、もう知られてしまっている。
「や、あ、あっ、あっ、龍介さん、だめ……!」
そう続けて叫んでも、ふっと笑みを含んだ吐息が触れるだけだ。身悶えれば、露わになった胸が畳にこすれ、それも快感になった。逃げ場がない。
「あ、――」
――くちくちくち、と唾液と共に舌先をねじ込まれ、百樹は放出せずに今日三度目達した。
一瞬気を失っていたのだろう。不具合で動かなくなったスマホのように突然目の前が真っ暗になり、戻ったときには全身が疼痛にも似た快感に包まれていた。
――中、だけで、いっちゃった……
こんなこと今までなかった。ドライでいくなんて、都市伝説だと思っていたのに。
はっきりしない頭で、初めて会ったあの夜、あの店にいたのがおれで良かった、と思った。
あの日、運良く出会わなければ、この人が他の男のものになっていたかもしれないなんて、考えるだけでいやだ。
自分で制御できない痺れに覆われた体に、ひた、と押し当てられるものがあって、百樹は我にかえった。
龍介の昂ぶり。
少しも奉仕させてもらえなかったのに恐ろしいほど育ったそれが、後孔に押し当てられている。
「あ……」
それだけで喉が物欲しげに鳴ってしまう。同時に怖くなった。
「りゅ、すけさ、おれ、まだ、いってる、か、ら……」
挿入れないで、という言葉は形にならなかった。龍介は自ら手をあてがい、百樹の双丘の谷間を滑らせた。
「ん……っ」
触れるだけのその行為に、ぶるりと体の芯から震えが走る。
龍介は、先走りの蜜をなすりつけるように何度も行ったり来たりさせた。
くちゅ、くちゅ、となまめかしい音が立ち始める。
怖い。のに、もどかしい。こんなの挿入れられたら、これ以上の快感の波に呑まれたら、どうなってしまうかわからない。
そう思うのに、百樹の脳裏には見えるはずのないものがはっきりと見えてもいた。――龍介の唾液ですっかりほぐされたそこが、熟れて自ら弾ける果実のように、物欲しげに口を開いているのが。
「龍介さん、も……挿入れて……お願い……」
「――」
焦らしていたのは自分のだというのに、龍介が息を呑むような気配がした。
ためらいは一瞬。乱暴に腰を掴まれ、ぐうっと剣を突き立てられる。
「あ、ああ……っ!」
めまい。
胸元まで貫かれたような錯覚がある。苦しい、と感じたのはほんの一瞬で、百樹の内部は貪欲に龍介に絡みついた。
「百樹……」
「りゅうすけ、さん」
ずるりと引き抜かれ、また貫かれる。隘路は喜々として蠕動する。百樹は猫のように限界まで背をしならせた。龍介の注挿のピッチは速くなり、はっきりと開いた笠が、快楽のスイッチに触れる。
「あっ、あっ、んっ、いいっ、気持ちいいよお……っ」
唇から抑えきれない直截な言葉がこぼれ出る。
「――百樹」
龍介が名を呼ぶ。その切羽詰まったような響き。それほど欲しがられていることに、魂が震える。
龍介がふたたび結合を深くした。
「ああ……っ」
百樹の背に覆い被さり、うなじに鼻先を埋める。獣の雄を思わせる汗が一瞬香り、百樹、と呻くように名前を呼びながら、龍介は果てた。
□□□
「……痛くないか」
ようやく一緒に入浴中、背中から百樹の体を抱いた龍介が、百樹の手首を撫でながら訊ねる。
「だいじょうぶ」
これは本当の大丈夫、だ。とっさに加減したのだろう。そもそもそんなにきつく縛られてはいなかった。
「本当か?」
さらに気遣わしげに訊ねられ、百樹は微笑んだ。
「本当だし、ちょっとすねた龍介さん可愛かった」
「か、」
呟いたきり、龍介はむっつりと黙り込む。
照れと気まずさが入り交じったような気配が、背中越し伝わってくる。
「……みっともなくて悪かったな」
「全然」
百樹は龍介の顔を振り仰ぐ。
「龍介さん、前、おれのいろんな顔が見られてお得って言ってくれたよね? おれも同じ気持ち」
「おれに、いろんな顔を見せてくれてありがとう。全部を見せてくれてありがとう」
どんな龍介さんでも好きだよと囁いて、百樹は龍介に口づけた。
〈了〉
20210513
□□□
今回初めて梓に戻るに当たって、百樹は固く心に決めていることがあった。
龍介さんにちゃんと「好き」って言うぞ……!
そう。初めてちゃんと結ばれた東京での夜。自分は涙と鼻水で顔をぐちゃぐちゃにしてこう言った。
『おれもずぎぃ…………!!!!』
――今思い出しても顔面から発火しそう。
せっかく生れて初めて「どんなおまえでも好きだ」なんて凄い言葉をもらったのに、その返答が『ずぎぃ』。
翌朝龍介が梓に帰り、自分は東京での仕事に戻ってからも、後悔はずっと消えることがなかった。
あれからまめにLINEで連絡をとっているものの、直接会うのは一ヶ月ぶり。社会人ならそれも珍しくないことなのかも知れないが、自分たちはまずクローズドのゲイ。それも芸能人。それも遠距離。なにかと不安要素が多い付き合いなのだ。
だから空港に降り立ったとき、龍介の姿がちゃんとそこにあるのを見て、実はもうちょっと泣いていた。
嬉しい。
離れている間にやっぱり冷静になってしまって、迎えにこないなんてパターンも想定していただけに、心底嬉しい。
かくなるうえはこの旅行中、絶対にちゃんと『好き』ってちゃんと言って、関係をより強固なものにしたい。
百樹は心の中で密かに拳を握った。
――と、決意をしたものの。
まず、空港。会っていきなりはまだ心の準備が整っていなかった。しかももう涙ぐんでいたので、そのまま告げたらあの『ずぎいぃ』の悪夢再来の予感しかなかった。
それならバイクで背中にしがみついているときというのはどうだろう。なんだか昔の少女漫画みたいでそれはそれで雰囲気良くない?――とも思ったのだが「今日は五十日でこの辺でも道が混むから、その前に飛ばすぞ。口閉じとけよ」と言われれば、黙るしかなかった。
っていうか〈ごとうび〉って何。
高校からすぐ芸能界入りした百樹には、知らないことが沢山ある。
それからなんとか渋滞に巻き込まれずに市街地に入った。ランチは古民家を今風にリノベーションした和風モダンな店で、席は半個室。
よし、ここなら――
「龍介さん、おれね、す」
言いかけたそのとき、店員さんが卓上に七輪を運んできた。新鮮な魚介類が次から次へと乗せられていく。
「こっち、もういいんじゃないか?」
龍介が、香ばしく焼かれた蟹の一番太いところを百樹の皿に載せてくれる。ふつふつといい具合に蒸し焼きにされた牡蠣にすだちを絞ってくれる。
「……だち、美味しいね」
すっかり気勢を削がれ、百樹は呟いた。
まあ、初真剣告白が甲殻類の香りっていうのもどうかと思うし。旅はまだ始まったばかりだし。大変美味しゅうございました。
店を出たあとは、山間の神社に向かう。なんでも、ガイドブックに大きく取り上げられることはないが、地元では一番ご利益があると言われている神社だそうだ。
「ここは仕事運にご利益があるって評判なんだ。……百樹は大変な世界で仕事してるから、いいかと思って」
正直龍介に会える喜びと不安で、事前になんの下調べもしていなかった百樹は、龍介のそんな言葉に面食らった。
「おれの、ため?」
「実力ではどうにもできないこともあるから、縁起を担ぐ人も多いと聞いたんだが――よけいなお世話だったか?」
「ううん! めちゃくちゃ担ぐよ! おれ、オーディションの朝は絶対青汁飲むって決めてるし。靴を左右どっちから履くか決めてて、間違っちゃったときは部屋からやり直す人とかもいるよ。――ありがとう」
おれのこと、そこまで考えてくれてるんだ。
……嬉しい。
嬉しい嬉しい嬉しい。
たしかに芸能界は浮き沈みが激しい。でも、ほとんどの人は華やかな面にしか目を向けないものなのに。
いてもたってもいられなくなって、なんだか駆け出したい気持ちになったとき、ちょうどお守り売り場が目に入った。
「おれ、お守り買う!」
さっそく駆け寄って物色する。なんといっても龍介がわざわざ自分のためにつれてきてくれたのだ。ご利益があろうとなかろうと、記念になるなにかをゲットせずにはいられない。
色とりどりの金襴の中から、水色のものを選んで「これください!」と叫ぶと「待て」と龍介がおもむろにそれをさえぎった。
「俺が買う」
「えっ、いいよ。ずっと運転してもらってるし、お守りだし――」
流石にそこは自分で買うものだと思う。
だが、龍介は「そうじゃない」とふたたびやんわりと百樹の言葉をさえぎる。
「この辺りじゃ、お守りは人に買ってもらったほうがご利益があるって言われてるんだ」
言うが早いか、さっさと初穂代を納めてしまう。「ほら」と差し出され、百樹はためらった。こんなになんでもかんでもよくしてもらうのは、やっぱり申し訳ない。
――そうだ。
思い立って、もうひとつお守りを手にする。龍介がなにか言い出す前にさっと初穂料を納めた。
手の中にあるのは、龍介が選んでくれたものと同じ、水色のお守りだ。
「はい、交換」
差し出して「こうしたら龍介さんにも御利益あるよね?」と告げる。
龍介はまるで目の前でぱちんと手を叩かれたみたいに一瞬固まって、それから――やさしく目を細めた。
「……ありがとう」
いつも精悍で男らしい顔から一枚険しさが剥がれると、少しだけ幼く見える。そんな無防備な表情を目にすると、どういうわけか百樹の心臓辺りに痛みにも似た感覚が走った。
平日の半端な時間、周りに人影はない。
周囲を針葉樹に囲まれた境内は、青く透明な空気に満ちている。ちょうどそのとき吹いてきた風が、さわさわと木立を鳴らして行った。
芸能界には縁起を担ぐ人が本当に多いから、そんな誰かから聞いたことがある。神社を訪ねたときにちょうど風が吹いたりするのは、神様に歓迎されているのだと。
これは絶好のチャンスでは……?
タイミング的には今しかないのでは?
「龍介さん、――す」
じゃりじゃりじゃり。
あとほんのひと息というところで、玉砂利を踏みしめる幾つもの足音が百樹の声をかき消した。
「はい、皆さん、ここが普通のガイドブックには載らない、地元の人だけが知っている、すごーく御利益がある神社でーす」
足音に続いて、よく通るガイドの声が響く。それからわらわらと年配の旅行者がやって来た。
こんな山間なのに、なんだかとても身なりがいい。そう――これはきっとたいがいのところに行き尽くした年配旅行者のためのマニアックツアーだ。超一流の宿に泊まって、国内なのに何十万もするやつ。
彼らががやがやと通り過ぎる頃には、神々しい空気も、すっかり霧散していた。
またしても失敗、だ。
□□□
神社をあとにしてまたバイクに乗った。
「好き」そのたった二文字を伝えたいだけなのに、なんともう三連敗。
――でも、夜はまだこれからだ。
そう、なんといっても宿ではふたりきりなのだ。いくらでも仕切り直せるはずだ。
というわけで、宿に着くなり百樹は「おれ、先にお風呂入ってくるね!」と部屋を飛び出した。
大浴場でつるつるのぴかぴかになって、一番いい状態で渾身の「好き」を伝えたい。
からだの隅から隅まで丁寧に洗う。髪にはアメニティの椿オイルを塗ってつやつやに。
龍介ほどたくましくはないけれど、連日重い衣装をつけて殺陣をこなしているおかげで、体に無駄な肉はない。
よし、完璧。
浴衣に身を包んで意気揚々と部屋に戻ると、浴衣に着替えた龍介の前に、食事の準備が整っていた。
「ごめん。もしかしておれのせいで冷めちゃった?」
風呂で自分をぴかぴかに磨き上げることしか考えていなかった。せっかくの食事を前にひとりで待たせてしまったなら申し訳ない。
「いや、今持ってきてくれたところだ。――喰おう」
「うん!」
和装がさまになるのは船頭の衣装でも証明済みだが、浴衣はより似合っていた。気がつくと、食事中もちらちらと龍介のセクシーな胸元ばかりを見てしまう。
――あんまり味わかんなかったな……
食事を終えて残った感想はそれだった。
食べ終わったらいよいよ「好き」ってちゃんと言わなくちゃ。そればかりを考えていたせいだ。
少し着崩れた浴衣を綺麗に直す。よし、と百樹が気合いを入れ直したとき、龍介は広縁の椅子に腰かけ、頬杖をついていた。
――あ、れ?
その物憂げな横顔に、心臓が波打つ。昼間神社で感じたものとは真逆の、冷たい波だ。
じわじわと波打ち際の砂を削っていただけのそれが、じょじょに大きくなる。
だっておれ、龍介さんのこんな顔、初めて見る。
百樹の視線に気がついたのか、龍介がこちらを見る。その唇から紡がれた言葉は――
「すまない」
――な、なんで?
『すまない』
突然思い詰めたような面持ちで告げられた言葉が、上手く咀嚼できない。
すまない。すまない。……なにが?
今朝顔を見るまで囚われていた不安が、再び込み上がる。
もしかしてこれ、やっぱり「付き合えない」ってやつ?
クリスマスとか旅行中に別れを切り出すなんて、ダメな男の定番だよ。
まさか龍介がそんなことを思うのに、でも龍介さんはやさしいから、ここまで言い出せなかったのかもという気持ちもわいてくる。そんなにまでして赦そうとしている自分に気がついて、鼻の奥がつん、とした。
しょうがない。元々ノンケだった人が、離れている間に冷静になるなんて、そんなのはよくあることだ。たとえ少しの間でも、心の一番やわらかい部分に寄り添ってくれた。そっと触れてくれた。それだけで感謝するべきだ。
舞台以外ではしばらく被っていなかった、仮面を用意する。
「だ――」
いじょうぶ、と言いさして百樹は「……はしゃぎ過ぎた」という呟きを聞いた。
「へ?」
悲壮な覚悟とは裏腹に間抜けな声を漏らして面を上げる。龍介が大きな手で自分の顔を覆っていた。
「……張り切りすぎたよな。鬱陶しかっただろ」
ん?
「俺はこういうことに慣れてないから……」
んんん?
「えっと、なんの話?」
どうやら自分を責めているようだが、なにがどうしてそんなことになっているのかわからない。空港まで迎えに来てくれただけで満点だし、そのあとのランチも神社もプランを立ててくれたのは龍介だ。有り難いと思うならともかく、鬱陶しいとはどういうことなんだろう?
しかし龍介は龍介で「引いてたんじゃないのか?」と引き続き意味不明なことを口にする。
「引くって、なにに」
「――」
龍介は険しい顔ですっくと立ち上がると、広縁の向こうの引き戸を開け放った。
「わ――」
そこにあったのは、頭の中にうずまく疑問など一瞬で吹き飛ぶ光景だ。
焼き物の丸い湯船に、掛け流しのお湯。小上がりのように洗い場から一段高くなった場所は、湯上がりにくつろげるようにだろうか、畳敷きになっていた。
「え、これどうなってんの?」
思わず駆け寄ってみれば、なにか特殊な加工がしてあるらしく、濡れても平気そうな材質だ。
この宿は高台にある。面を上げれば、植え込みに囲まれた先に湖畔の灯りが見えた。今は暗い湖の畔をぽつぽつと灯りが囲む様子が、小さな宝石のはめ込まれた指輪みたいだなと百樹は思った。
こ、これは。
豪華露天風呂付き個室ってやつじゃないですか……!
「龍介さん、ごめん。おれ、気がつかなくて先に大浴場行っちゃったよ。言ってくれれば良かったのに」
申し訳なさ九割、責める気持ち一割で告げると、龍介は戸惑ったような顔をした。
「――やり過ぎが鬱陶しくて逃げたんじゃなかったのか?」
「逃げるって……」
いや、と百樹は自分の行動をふり返る。
日中の失敗を巻き返すべく、着いて荷物を解くのも早々にひとりで大浴場に向かってしまった。部屋の中をぐるっと確かめることもせずに。戻ってきたら食事が用意されていたから、慌ててその場についた。
その食事だって、これを食べたら絶対「好き」って言うんだと、そればかりを考えて、味の記憶はろくに残っていない。
せっかくふたりで一緒にいるのに。
「朝からずっとそわそわして落ち着かなかったし、俺は、てっきり……来たことを、後悔しているのかと」
龍介にしては珍しく、歯切れの悪い言葉。
「龍介さん……もしかしておれたち、おんなじこと心配してたのかな」
「同じこと?」
「おれも、空港で龍介さんの姿見るまで不安で不安でしょうがなかった。龍介さんはおれよりずっと大人だし、ノンケだし、離れてるし。もしかしたらやっぱり付き合うなんてなかったことにしようってならないかなって」
「――おまえは俺よりずっと若いし、華やかな世界でイケメンに囲まれてるんだぞ。どう考えたって心配するのは俺のほうだろう」
龍介の声にはかすかに拗ねたような響きがある。それが胸の中のやわらかな場所を、たまらなくくすぐる。
「せっかく一緒にいるのに、おれたち自分の不安のことばっかり見てる。……もう、そういうのやめよう?」
百樹はかたわらの龍介を見上げた。まなざしを受け止める龍介の瞳にはまだ戸惑いの色がある。
自分よりずっと大人だとばかり思っていた龍介の中にも、揺れ動くものがある。
それを知っても、幻滅はしなかった。
むしろ嬉しい。――愛しい。
「龍介さん、おれ、龍介さんが好き。大好き。大好きでも全然足りないくらい好き」
ん、と伸びをして、背の高い恋人の不安に引き結ばれた口元にキスをした。
「今日一日、それが言いたくてそわそわしてたんだよ。ごめ――」
離れようとした腰に力強い腕が回される。
「――っ!」
一瞬息が止まるほど強く抱き寄せられた。言葉はいっそう激しい口づけで奪われてしまう。
唇を吸うだけでは足りないとばかりに舌が入り込んでくる。歯列を割り、舌を絡め取られると、唾液があふれる。熱くて甘いそれが。
「ん……、りゅ、すけさ……」
苦しいと言いたいのか、もっとと言いたいのか、自分でもわからないまま背中に腕を回す。龍介の背中は広く、抱えきれない。それがもどかしく、いっそうしがみついた。
まさぐられているのは口の中なのに、腰から力が抜けていくから不思議だ。
飲み下し切れない唾液が、露天に灯されたオレンジの間接照明で、朝露を受けた蜘蛛の糸のように光る。
はふ、と漏らした吐息を整える間もなく、龍介の舌は百樹の耳介をくすぐり、首筋を伝った。
「りゅ、龍介さん、お風呂」
「もう入っただろ」
「龍介さんはまだでしょ……?」
待てない、とでも言うように浴衣の合せに入り込んでくる腕を、百樹はやんわりと押さえる。
「気になるか?」
「そうじゃなくて、一緒に入りたい。……だめ?」
「――だめなわけがあるか」
龍介は口の中で呟いたかと思うと、ひょい、と百樹の体を持ち上げた。湯船の脇の小上がりに押し倒され、再び耳介を甘噛みされる。
「ひゃ……っ!!」
濡れた舌が耳の中まで愛撫して、百樹は思わず声を上げた。
「りゅ、龍介さん、お風呂、お風呂に入るって……」
「だから脱がせてる」
龍介は悪びれる様子もなく言い捨てる。黙っていろとばかりに、舌での愛撫は激しさを増していった。
「あ……っ」
頭の中に直接響くような淫らな水音が全身に伝わって、あらぬところがじんと熱を持つ。もどかしく足をこすりあわせると、浴衣の裾が乱れた。それを見越したように、龍介の手が伸びてくる。
「ん……っ!」
すっかり乱れて露わになった下着の上から昂ぶりをきつく握りこまれ、背が浮いた。背中は龍介の胸に抱き留められて、そこから逃げることもできない。龍介は百樹の肩に顎を乗せ、押さえ込むようにすると、さらに百樹の中心をもみしだき始めた。
背筋にぶるっと震えが走る。
「や……っ、ん……」
この一ヶ月、龍介のことを考えない日はなかった。焦がれていたのは体も一緒だ。そこはあっという間に固く張り詰める。
龍介さんの手……大きくて……いい……っ
そのごつごつした感触に、はしたなくも感じてしまう。耳元に感じる龍介の息づかいもどんどん熱を持ち、じわっと先走りが滲んでしまうのを感じてひとり恥じ入っていると、龍介がそれを見逃してくれるわけもなく、下着の上からかりっと爪を立てられた。
「ん、んん……っ!!」
なにかが限界までぎゅうっと集まり、一気に解放される。
自分の体なのに、もうすっかりコントロールを失って、余韻でびくびく痙攣するのを止められはしない。
「早いな」
笑みを含んだ言葉が、口づけとともに耳元に落とされた。
「だ、だって、ずっと会いたかった……から……っ」
恥ずかしさと快感で涙がにじんだ。快感が飛び火したようにまだ触れられてもいない乳首がきつく立ち上がって、はだけた浴衣の胸元からのぞく。
一度放った下着の中に、龍介の手がふたたび入り込んだ。
「や……っ!!」
ぬるりとした蜜で手が汚れるのも構わずに、再び愛撫される。微かにお湯の流れる音だけが聞こえる露天に、ぐちゅ、ぐちゅっと粘度を帯びた音は淫らに響いた。
いやらしい音で耳からも犯されながら、龍介のごつごつしたてのひらの感触を直接感じるのは、たまらない快感だ。
それでいて放ったばかりの躰はゴールを見失っている。達することを許されず、ただ刺激を与え続けられる行為は、百樹に軽い恐怖さえ抱かせた。どこまでこの快感が積み上げられてしまうのか。どこまで乱されてしまうのか。
おれ、どうなっちゃうの――
ぐずぐずに濡れた下着の中で百樹は再び育つ。育った自身と、龍介の大きな手とで下着はきつくなり、そのきつささえ淫らな躰は感じてしまう。
「ん……っ」
逃れるように腰を引けば、なにか熱源のようなものに双丘が触れた。
反射で逃げると、今度は明確な意思を持って、ぐっと押し当てられた。
「あ……っ」
はっきりと伝わって来る、その形――乱れているのが自分だけではないのだとわかって、喜びと期待が全身を駆け巡る。
「百樹……」
龍介のいつもは落ち着いている声が、熱に浮かされたようにかすれていた。
たくましい太腿を太腿に絡められ、固くなった龍介自身を押し当てられる、躰のどこか深いところがぞくりと疼く。
いつの間にか昂ぶりはまた張り詰めている。
蜜をまとってぬるぬるするそこを龍介は執拗にしごく。それでいて達するところまでは行かない絶妙な加減で。
「りゅ……すけ……さん、も、いかせて……」
はしたない呻きを漏らしながら、自ら腰をこすりつけたとき、龍介がぐっと百樹の肩をひねった。
すっかり露わになっていた胸の屹立を、じゅっときつく吸う。
「あ、ああ……っ!!」
躰の中央を、稲妻が貫いていったようだった。下肢はひくひくと痙攣し、もはや輪郭があやふやだ。
快感の波に翻弄される百樹を龍介は仰向けにさせ、下着を剥ぎ取る。足から抜かれるとき、たっぷり二度も吐き出した蜜ですっかり重たくなっているのを感じ、百樹は羞恥で頬を染めた。
龍介が百樹の足首を掴む。押し広げてさらに愛撫を施そうとしているのだと気がついて、はっきりとしない頭で必死に声を上げた。
「おれも、龍介さんに、する……!」
さっきまで腰に押し当てられていたもの。その固さを思う。きっと龍介も苦しいはずだ。
なのに龍介は「だめだ」と険しい顔で告げた。
「な、なんで?」
まさか拒まれると思わなかった。体を覆う甘い倦怠も忘れて起き上がると、龍介は、もうかろうじてまとわりついているだけだった百樹の浴衣の帯を引き抜く。
呆気にとられている間に、器用に手首を縛り上げられてしまった。
「――え?」
「今日は俺の好きなようにさせてもらう」
「りゅ、龍介さん、あの……」
これは、もしかして。
「なんかちょっと怒ってたり、する……?」
恐る恐る訊ねると、龍介は「いや?」と否定した。
「ただ、一緒に温泉旅館に来て、ひとりで部屋に置いてかれる人間の気持ちがわかるか? とは思ってるな」
「それ怒ってるってい、……ああっ」
言い終わらないうち、縛った手を頭の上で固定され、浮いた胸を吸われる。男の胸なのに、感じすぎるとぷっくり膨らんでしまうそこを龍介は舌先で転がし、つつき、また吸った。空いたほうの指先でもう片方の果実を摘ままれると、ほとんど悲鳴のような声が唇を震わせる。
「や、あ……っ!」
両手を封じられているから、胸はまったくの無防備だ。さらに両の親指で両の乳首をこねるように愛撫されると、喘ぎ声は止まらなくなってしまう。
「んっ、んっ、んっ、――」
責め苦のようだった愛撫が一旦やみ、いぶかしく思っていると、体を返された。縛った腕を顔の前につき、高く腰を突き出す格好をさせられる。
龍介のてのひらはまるでそのなめらかな形を楽しむかのように百樹の双丘を撫で――ぐっと押し広げると、谷間に口づけを落とした。
「や……っ!」
悲鳴を上げても、それが一番好む行為だと、もう知られてしまっている。
「や、あ、あっ、あっ、龍介さん、だめ……!」
そう続けて叫んでも、ふっと笑みを含んだ吐息が触れるだけだ。身悶えれば、露わになった胸が畳にこすれ、それも快感になった。逃げ場がない。
「あ、――」
――くちくちくち、と唾液と共に舌先をねじ込まれ、百樹は放出せずに今日三度目達した。
一瞬気を失っていたのだろう。不具合で動かなくなったスマホのように突然目の前が真っ暗になり、戻ったときには全身が疼痛にも似た快感に包まれていた。
――中、だけで、いっちゃった……
こんなこと今までなかった。ドライでいくなんて、都市伝説だと思っていたのに。
はっきりしない頭で、初めて会ったあの夜、あの店にいたのがおれで良かった、と思った。
あの日、運良く出会わなければ、この人が他の男のものになっていたかもしれないなんて、考えるだけでいやだ。
自分で制御できない痺れに覆われた体に、ひた、と押し当てられるものがあって、百樹は我にかえった。
龍介の昂ぶり。
少しも奉仕させてもらえなかったのに恐ろしいほど育ったそれが、後孔に押し当てられている。
「あ……」
それだけで喉が物欲しげに鳴ってしまう。同時に怖くなった。
「りゅ、すけさ、おれ、まだ、いってる、か、ら……」
挿入れないで、という言葉は形にならなかった。龍介は自ら手をあてがい、百樹の双丘の谷間を滑らせた。
「ん……っ」
触れるだけのその行為に、ぶるりと体の芯から震えが走る。
龍介は、先走りの蜜をなすりつけるように何度も行ったり来たりさせた。
くちゅ、くちゅ、となまめかしい音が立ち始める。
怖い。のに、もどかしい。こんなの挿入れられたら、これ以上の快感の波に呑まれたら、どうなってしまうかわからない。
そう思うのに、百樹の脳裏には見えるはずのないものがはっきりと見えてもいた。――龍介の唾液ですっかりほぐされたそこが、熟れて自ら弾ける果実のように、物欲しげに口を開いているのが。
「龍介さん、も……挿入れて……お願い……」
「――」
焦らしていたのは自分のだというのに、龍介が息を呑むような気配がした。
ためらいは一瞬。乱暴に腰を掴まれ、ぐうっと剣を突き立てられる。
「あ、ああ……っ!」
めまい。
胸元まで貫かれたような錯覚がある。苦しい、と感じたのはほんの一瞬で、百樹の内部は貪欲に龍介に絡みついた。
「百樹……」
「りゅうすけ、さん」
ずるりと引き抜かれ、また貫かれる。隘路は喜々として蠕動する。百樹は猫のように限界まで背をしならせた。龍介の注挿のピッチは速くなり、はっきりと開いた笠が、快楽のスイッチに触れる。
「あっ、あっ、んっ、いいっ、気持ちいいよお……っ」
唇から抑えきれない直截な言葉がこぼれ出る。
「――百樹」
龍介が名を呼ぶ。その切羽詰まったような響き。それほど欲しがられていることに、魂が震える。
龍介がふたたび結合を深くした。
「ああ……っ」
百樹の背に覆い被さり、うなじに鼻先を埋める。獣の雄を思わせる汗が一瞬香り、百樹、と呻くように名前を呼びながら、龍介は果てた。
□□□
「……痛くないか」
ようやく一緒に入浴中、背中から百樹の体を抱いた龍介が、百樹の手首を撫でながら訊ねる。
「だいじょうぶ」
これは本当の大丈夫、だ。とっさに加減したのだろう。そもそもそんなにきつく縛られてはいなかった。
「本当か?」
さらに気遣わしげに訊ねられ、百樹は微笑んだ。
「本当だし、ちょっとすねた龍介さん可愛かった」
「か、」
呟いたきり、龍介はむっつりと黙り込む。
照れと気まずさが入り交じったような気配が、背中越し伝わってくる。
「……みっともなくて悪かったな」
「全然」
百樹は龍介の顔を振り仰ぐ。
「龍介さん、前、おれのいろんな顔が見られてお得って言ってくれたよね? おれも同じ気持ち」
「おれに、いろんな顔を見せてくれてありがとう。全部を見せてくれてありがとう」
どんな龍介さんでも好きだよと囁いて、百樹は龍介に口づけた。
〈了〉
20210513
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