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砂糖祭り(1)
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そうこうしているうちに、砂糖祭りが近づいてきた。当然おれも、なにか出品してみろと命じられている。
おれは興奮していた。
砂糖祭りでこの国の豊かさを他国に見せつけるのがどれだけ大事かってことを理解したからってのもあるけど、現代日本にいたときにも、コンテストなんて参加させてもらったことはないから。公の場で、思う存分腕を振えるチャンスだ。
通りを練り歩くんだから、目立たないとだめだよな。ってことは、立体的ななにか……
細工しやすさで考えたらチョコレートなんだけど、イルディズにはまだない(おれが作って大儲けする予定)。
今あるものだけで、砂糖をふんだんに使って、他の奴に作れないもの――シュガークラフトか。
シュガークラフトっていうのは、主に粉砂糖をメインに使って立体物を作ることだ。花とか、動物とか、建物とか。
おれは日本で見た数々のシュガークラフトを思い出していた。
こっちの世界の菓子は、まずくはない。まずくはないけど、なんていうか、日本人的には繊細さが足りない。細工も同様だ。とにかく甘いということが一番重要で、造りは ちょっと大雑把。
日本のセンスで細工を作ったら、ほとんどの相手を圧倒できるんじゃないか?
「よーし!」
早速取りかかろうと厨房を見渡して、おれはとても重大なことに気がついた。
なにしろ王様の厨房だから、砂糖は、ふんだんにある。
だけど、こっちの技術だと、それはただ精製された荒い砂糖だ。
シュガークラフトに使うのはさらさらとした、粒子の細かい粉砂糖。だからこそ細かい細工が可能になるわけで。
粉砂糖自体の作り方は簡単だ。文字通り、普通の砂糖をミキサーなんかで粉に……
「ミキサー……」
自分で口にして、絶望する。そんなものはここにはない。ミキサーなしで砂糖を粉にするには――
「すり鉢で……?」
練習用も含めたら、いったい何キロ必要なんだ。
途方にくれて呟いたとき、厨房の入り口に影が差した。
アスランだ。
「ウミト、なにをしている。なぜすぐ来ない」
公務のときに着るカフタンを脱いで、薄手のラフな長着姿だ。柔らかく薄い生地の胸元は開いていて、相変わらず、男のおれでもちょっと変な気分になる色気が、だだ漏れていた。
そういえば、今日も呼ばれていたっけ。
「ああ、砂糖祭りの案考えてたら、つい遅くなって」
砂糖祭りの準備だって、半分はこいつのためみたいなもんだ。そんなに不機嫌にならなくても。
「――そうか。なら、いい」
そんな気持ちが通じたのか、アスランはちょっと申し訳なさそうに頷く。わかればいいんだよ。
アスランが気まずげに長い髪をかきあげる。
めくれた袖からのぞく腕には、はっきりと筋肉の線が見て取れた。たくましくて男らしいその体。
――たくましい?
おれは立ち上がり、スルタンをじっと見つめたままつかつかと歩み寄った。褐色の凜々しい腕を両手で握る。
「どうした。今日はずいぶんと積極的だな?」
色気たっぷりに訊ねてくるアスランの顔を、おれはにっこりと笑顔で見上げた。
おれは興奮していた。
砂糖祭りでこの国の豊かさを他国に見せつけるのがどれだけ大事かってことを理解したからってのもあるけど、現代日本にいたときにも、コンテストなんて参加させてもらったことはないから。公の場で、思う存分腕を振えるチャンスだ。
通りを練り歩くんだから、目立たないとだめだよな。ってことは、立体的ななにか……
細工しやすさで考えたらチョコレートなんだけど、イルディズにはまだない(おれが作って大儲けする予定)。
今あるものだけで、砂糖をふんだんに使って、他の奴に作れないもの――シュガークラフトか。
シュガークラフトっていうのは、主に粉砂糖をメインに使って立体物を作ることだ。花とか、動物とか、建物とか。
おれは日本で見た数々のシュガークラフトを思い出していた。
こっちの世界の菓子は、まずくはない。まずくはないけど、なんていうか、日本人的には繊細さが足りない。細工も同様だ。とにかく甘いということが一番重要で、造りは ちょっと大雑把。
日本のセンスで細工を作ったら、ほとんどの相手を圧倒できるんじゃないか?
「よーし!」
早速取りかかろうと厨房を見渡して、おれはとても重大なことに気がついた。
なにしろ王様の厨房だから、砂糖は、ふんだんにある。
だけど、こっちの技術だと、それはただ精製された荒い砂糖だ。
シュガークラフトに使うのはさらさらとした、粒子の細かい粉砂糖。だからこそ細かい細工が可能になるわけで。
粉砂糖自体の作り方は簡単だ。文字通り、普通の砂糖をミキサーなんかで粉に……
「ミキサー……」
自分で口にして、絶望する。そんなものはここにはない。ミキサーなしで砂糖を粉にするには――
「すり鉢で……?」
練習用も含めたら、いったい何キロ必要なんだ。
途方にくれて呟いたとき、厨房の入り口に影が差した。
アスランだ。
「ウミト、なにをしている。なぜすぐ来ない」
公務のときに着るカフタンを脱いで、薄手のラフな長着姿だ。柔らかく薄い生地の胸元は開いていて、相変わらず、男のおれでもちょっと変な気分になる色気が、だだ漏れていた。
そういえば、今日も呼ばれていたっけ。
「ああ、砂糖祭りの案考えてたら、つい遅くなって」
砂糖祭りの準備だって、半分はこいつのためみたいなもんだ。そんなに不機嫌にならなくても。
「――そうか。なら、いい」
そんな気持ちが通じたのか、アスランはちょっと申し訳なさそうに頷く。わかればいいんだよ。
アスランが気まずげに長い髪をかきあげる。
めくれた袖からのぞく腕には、はっきりと筋肉の線が見て取れた。たくましくて男らしいその体。
――たくましい?
おれは立ち上がり、スルタンをじっと見つめたままつかつかと歩み寄った。褐色の凜々しい腕を両手で握る。
「どうした。今日はずいぶんと積極的だな?」
色気たっぷりに訊ねてくるアスランの顔を、おれはにっこりと笑顔で見上げた。
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