甘い運命〜オメガパティシエは後宮で気高き王に溺愛される〜

あまみや慈雨

文字の大きさ
22 / 23

薔薇の浴室

しおりを挟む
 
 事後処理をすべて家臣たちに丸投げして、アスランがおれを連れて行ったのは、内邸にあるアスランの居住エリアだった。いつも会う秘密の部屋より、さらに贅沢な造りのそこは――
「ここって、女奴隷を呼ぶとこ、だろ?」
 単に、一時的な発散のために奉仕していたおれが入るのは、なんだか気が引ける。アスランは、そんなおれの言いたいことを察したようだった。
「いや、もうおまえしか呼ばない。後継者は家臣の中から優秀な者を指名する。元々、建国当時はそうしていたんだ。世襲にするからおかしくなる」
「でも――、」
 さらに言い募ろうとしたおれの言葉は、アスランの口づけに奪われる。
 まだ冷たかった唇が、アスランの体温を分け与えられて、熱を持つ。
 舌を絡められ、上顎の敏感なところをくすぐられると、喉が鳴ってしまう。
 頭の芯がぼうっとした頃、やっと解放された。
「――難しい話は終りだ」

 アスランはおれを風呂に運び入れる。青と白の幾何学紋様で彩られたそこは蒸気で充分に温められていた。人払いしたらしく、身の回りの世話をする奴隷の姿はない。
 アスランはおれを抱えたまま、薔薇の花びらが浮かぶ湯船に体を沈めた。背後から、胸に俺を抱き込むようにして「大丈夫か」と囁いてくる。
 なにが? と訊き返そうとして、気づいた。
 おれが、風呂の話をしたから、か?
「大丈夫」
 そう答えたものの、別の理由で心が落ち着かなかった。
 どうしてこいつは、誰も耳を貸してなんかくれなかったおれの言葉を、いちいちちゃんと聞いててくれるんだ。
「なんか熱い。もう出る」
「こら、よく温まれ。海に落ちたんだぞ」
 アスランがおれを追って湯船から出る。腕を掴んで抱き寄せられ、胸が密着する。
 お互いの間にあるものは、もう熱を持っていた。
 アスランがふっと意味ありげに笑い、耳を甘噛みしてくる。そのまま囁かれた「横になれ」という言葉に、おれは、逆らうことができなかった。

 タイルの床は充分に温められていて、冷たくはない。言われるまま仰向けに横たわったおれの体の上で、アスランは用意されていた香油の壺を傾けた。まるで、シロップをかけられるアイスクリームになった気分だ。

 蒸気の中に、薔薇の香りが充満する。
「ん……っ」
 注がれた香油が乳首に触れただけで、声が出てしまう。アスランはそんなおれに艶っぽく目を細めたあと「うつ伏せに」と命じる。
「胸をつけて、腰を高く……そう、足をもっと開いて」
 薔薇の香りに酔ったように、されるがままになっていると、アスランはおれの尻たぶを揉むように弄んだ。大きな手で鷲づかみにされると、
片手にすっぽり収まってしまう。さらに香油を足して揉みしだいたあと、左右に押し開く。
 ぐに、と舌が差し入れられて、おれは悲鳴のような声を上げた。
「あ……っ!」
 アスランは、おかまいなしに舌での注挿を始める。
 もう、何度も抱き合った体は、あっさり快感を受け容れる。出し入れされる度、身悶えると、香油を塗りたくられた胸が床の温かなタイルにこすれて――香油はこのために塗ったのだと悟っても、もう遅い。
 乳首が刺激されて、快感から逃げられない。
「あっ、あっ、あっ、あっ」
 おれははしたなく声を上げる。天井の高い浴場に、おれの声と、アスランの舌が奏でるあられもない水音とが、反響する。

 アスランは執拗におれの中を舌で犯した。
 おれの体は震え、震えれば、乳首はさらに刺激されてしまう。

「あっ、あっ、あっ、あっ、ばか、へんたい」
 おれの悲鳴みたいな声に、アスランがときどきくすっと笑いを漏らす。その吐息が敏感な箇所に触れるだけで、また感じてしまう。ぬるぬるした乳首はすっかり育ち上がって、真っ赤になっていた。
「その可愛い声を一晩中聞いていたいが、あいにく今日は私ももう我慢が限界だ」
 アスランが体を起す。触れてもいないのに、刀みたいにすっかりそそり立ったものが、舐めしゃぶられてやわらくなったおれの中に入ってくる。
「んっ――」
 背中にぴったりと胸を付けて、アスランが呟いた。
「……あたたかいな。おまえの中は」
 まるで、意図せずぽろっとこぼれ落ちた、みたいなその声に、おれの体は、なぜか総毛立つ。

 自分でも言葉にできない感情があって、言葉にできないから、体の方が正直に反応したのかもしれない。

 始めは、事故みたいなものだった。
 でも今は、こいつと体を繋げることが――嬉しい。

 自分の中に生まれた、生れて初めての感情に戸惑っていると、じっと胸を重ねていたアスランが上体を起した。
 伏せていたおれの肩を起こし、両腕を背中側に引っ張る。
 
その体勢で、腰を深く突き入れられた。
「ああ……っ!」
 アスランの固い肉棒が、ずる、とおれの内部の感じるところを強く擦っていく。強すぎる快感に、頭がくらくらするくらいだった。

「あっ、あっ、あっ、や、やだ」
 激しく揺さぶられる。やだ、といいながら、ずっと固く反り返ったままのおれが、おれの腹をぺちぺちと叩く。
 アスランの艶めいた吐息が聞こえる。背後から腰を打ち付けながら、片手を伸ばして、おれの竿を握り混む。
「ああ……っ!」
 前からも後ろからも激しく責め立てられて、背中が限界まで反った。顔は快感の涙と汗でぐちゃぐちゃだ。
「一緒にいこう、ウミト」
 囁かれ、がくがくと頷く。ぎゅうっと体が引き絞られるような感覚と、熱を注ぎ込まれる感覚、その両方があって、おれの頭の中は真っ白にとろけた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

欠陥Ωは孤独なα令息に愛を捧ぐ あなたと過ごした五年間

華抹茶
BL
旧題:あなたと過ごした五年間~欠陥オメガと強すぎるアルファが出会ったら~ 子供の時の流行り病の高熱でオメガ性を失ったエリオット。だがその時に前世の記憶が蘇り、自分が異性愛者だったことを思い出す。オメガ性を失ったことを喜び、ベータとして生きていくことに。 もうすぐ学園を卒業するという時に、とある公爵家の嫡男の家庭教師を探しているという話を耳にする。その仕事が出来たらいいと面接に行くと、とんでもなく美しいアルファの子供がいた。 だがそのアルファの子供は、質素な別館で一人でひっそりと生活する孤独なアルファだった。その理由がこの子供のアルファ性が強すぎて誰も近寄れないからというのだ。 だがエリオットだけはそのフェロモンの影響を受けなかった。家庭教師の仕事も決まり、アルファの子供と接するうちに心に抱えた傷を知る。 子供はエリオットに心を開き、懐き、甘えてくれるようになった。だが子供が成長するにつれ少しずつ二人の関係に変化が訪れる。 アルファ性が強すぎて愛情を与えられなかった孤独なアルファ×オメガ性を失いベータと偽っていた欠陥オメガ ●オメガバースの話になります。かなり独自の設定を盛り込んでいます。 ●最終話まで執筆済み(全47話)。完結保障。毎日更新。 ●Rシーンには※つけてます。

高貴なオメガは、ただ愛を囁かれたい【本編完結】

きど
BL
愛されていないのに形だけの番になるのは、ごめんだ。  オメガの王族でもアルファと番えば王位継承を認めているエステート王国。  そこの第一王子でオメガのヴィルムには長年思い続けている相手がいる。それは幼馴染で王位継承権を得るための番候補でもあるアルファのアーシュレイ・フィリアス。 アーシュレイは、自分を王太子にするために、番になろうとしてると勘違いしているヴィルムは、アーシュレイを拒絶し続ける。しかし、発情期の度にアーシュレイに抱かれる幻想をみてしまい思いに蓋をし続けることが難しくなっていた。  そんな時に大国のアルファの王族から番になる打診が来て、アーシュレイを諦めるためにそれを受けようとしたら、とうとうアーシュレイが痺れを切らして…。 二人の想いは無事通じ合うのか。 現在、スピンオフ作品の ヤンデレベータ×性悪アルファを連載中

完結・オメガバース・虐げられオメガ側妃が敵国に売られたら激甘ボイスのイケメン王から溺愛されました

美咲アリス
BL
虐げられオメガ側妃のシャルルは敵国への貢ぎ物にされた。敵国のアルベルト王は『人間を食べる』という恐ろしい噂があるアルファだ。けれども実際に会ったアルベルト王はものすごいイケメン。しかも「今日からそなたは国宝だ」とシャルルに激甘ボイスで囁いてくる。「もしかして僕は国宝級の『食材』ということ?」シャルルは恐怖に怯えるが、もちろんそれは大きな勘違いで⋯⋯? 虐げられオメガと敵国のイケメン王、ふたりのキュン&ハッピーな異世界恋愛オメガバースです!

策士オメガの完璧な政略結婚

雨宮里玖
BL
 完璧な容姿を持つオメガのノア・フォーフィールドは、性格悪と陰口を叩かれるくらいに捻じ曲がっている。  ノアとは反対に、父親と弟はとんでもなくお人好しだ。そのせいでフォーフィールド子爵家は爵位を狙われ、没落の危機にある。  長男であるノアは、なんとしてでものし上がってみせると、政略結婚をすることを思いついた。  相手はアルファのライオネル・バーノン辺境伯。怪物のように強いライオネルは、泣く子も黙るほどの恐ろしい見た目をしているらしい。  だがそんなことはノアには関係ない。  これは政略結婚で、目的を果たしたら離婚する。間違ってもライオネルと番ったりしない。指一本触れさせてなるものか——。  一途に溺愛してくるアルファ辺境伯×偏屈な策士オメガの、拗らせ両片想いストーリー。  

沈黙のΩ、冷血宰相に拾われて溺愛されました

ホワイトヴァイス
BL
声を奪われ、競売にかけられたΩ《オメガ》――ノア。 落札したのは、冷血と呼ばれる宰相アルマン・ヴァルナティス。 “番契約”を偽装した取引から始まったふたりの関係は、 やがて国を揺るがす“真実”へとつながっていく。 喋れぬΩと、血を信じない宰相。 ただの契約だったはずの絆が、 互いの傷と孤独を少しずつ融かしていく。 だが、王都の夜に潜む副宰相ルシアンの影が、 彼らの「嘘」を暴こうとしていた――。 沈黙が祈りに変わるとき、 血の支配が終わりを告げ、 “番”の意味が書き換えられる。 冷血宰相×沈黙のΩ、 偽りの契約から始まる救済と革命の物語。

完結|ひそかに片想いしていた公爵がテンセイとやらで突然甘くなった上、私が12回死んでいる隠しきゃらとは初耳ですが?

七角@書籍化進行中!
BL
第12回BL大賞奨励賞をいただきました♡第二王子のユーリィは、美しい兄と違って国を統べる使命もなく、兄の婚約者・エドゥアルド公爵に十年間叶わぬ片想いをしている。 その公爵が今日、亡くなった。と思いきや、禁忌の蘇生魔法で悪魔的な美貌を復活させた上、ユーリィを抱き締め、「君は一年以内に死ぬが、私が守る」と囁いてー? 十二個もあるユーリィの「死亡ふらぐ」を壊していく中で、この世界が「びいえるげえむ」の舞台であり、公爵は「テンセイシャ」だと判明していく。 転生者と登場人物ゆえのすれ違い、ゲームで割り振られた役割と人格のギャップ、世界の強制力に知らず翻弄されるうち、ユーリィは知る。自分が最悪の「カクシきゃら」だと。そして公爵の中の"創真"が、ユーリィを救うため十二回死んでまでやり直していることを。 どんでん返しからの甘々ハピエンです。

すれ違い夫夫は発情期にしか素直になれない

和泉臨音
BL
とある事件をきっかけに大好きなユーグリッドと結婚したレオンだったが、番になった日以来、発情期ですらベッドを共にすることはなかった。ユーグリッドに避けられるのは寂しいが不満はなく、これ以上重荷にならないよう、レオンは受けた恩を返すべく日々の仕事に邁進する。一方、レオンに軽蔑され嫌われていると思っているユーグリッドはなるべくレオンの視界に、記憶に残らないようにレオンを避け続けているのだった。 お互いに嫌われていると誤解して、すれ違う番の話。 =================== 美形侯爵長男α×平凡平民Ω。本編24話完結。それ以降は番外編です。 オメガバース設定ですが独自設定もあるのでこの世界のオメガバースはそうなんだな、と思っていただければ。

冷遇されたΩは運命の竜に守られ花嫁となる

花里しろ
BL
*誤字報告ありがとうございます! 稀少なオメガとして王都に招かれたリュカは、夜会で酷い辱めを受ける。 悲しみに暮れるリュカはテラスに出ると、夜空を見上げて幼い頃に出会った初恋の相手を思いその名を呼んだ。 リュカ・アレオンは男爵家の末っ子次男だ。病弱なリュカは両親と兄・姉、そして領民達に見守られすくすくと育つ。ある時リュカは、森で不思議な青年クラウスと出会う。彼に求婚され頷くも、事情がありすぐには迎えられないと告げられるリュカ。クラウスは「国を平定したら迎えに来る」と約束し、リュカに指輪を渡すと去って行く。 時は流れ王太子の番として選ばれたリュカは、一人王都へ連れて来られた。思い人がいるからと、リュカを見向きもしない王太子。田舎者だと馬鹿にする貴族達。 辛い日々を耐えていたリュカだが、夜会で向けられた悪意に心が折れてしまう。 テラスから身を投げようとしたその時、夜空に竜が現れリュカの元に降り立つ。 「クラウス……なの?」 「ああ」 愛しい相手との再会し、リュカの運命が動き出す。 ファンタジーオメガバースです。 エブリスタにも掲載しています。

処理中です...