4 / 6
辺境の村、ローレン
人参とじゃがいもと小麦
しおりを挟む
ヨナさんに引きずられるように来た場所は広い農地だった。
村人共同の農地で、好きに野菜を取っていいとのこと。
ただし、必ず畑の世話をすること。
「キャベツと人参を収穫するかね」
ヨナさんはどこからともなく出した包丁でスパッとキャベツを収穫した。同じく人参も収穫し、私に持たせた。
私の腕の中は人参とキャベツの山になってしまった。しっかり抱えないと、人参がポロポロ落ちてしまう。
「母ーさーん」
「おかぁちゃーん」
ヨゼくんとマリアちゃんが籠を持ってやってきた。私はヨゼくんが持ってきた籠に野菜を入れた。
「ヨゼ、野菜を家に持って行っておくれ」
「はい。マリア、ほら行くよ」
「はーい」
二人と別れた後、マリアちゃんが持ってきた籠を持って、ヨナさんの後に続く。
畑から少し離れた場所に行くと鼻を刺す臭いに思わず顔を歪めた。
「ん?ああ、臭うかい?あれだよ」
そう言ってヨナさんが指差す方には柵があり、ピンク色の何かが蠢いている。
あれはもしかして…。
「あ、あの。ヨナさん、あれは…」
「あれは豚だよ、豚」
「やっぱり!」
驚く私に、
「?……豚が珍しいのかい?」
「珍しいと…言いますか…。私の知り合いに豚さんをペットにしてる方がいて…」
大きさは大人の拳三つほどの体長で、
「あんなにいっぱい……でも、あれ…?」
大きさが…。
?
大きさが…?
「都会には豚なんてペットにしてるのかい?あんな大きく育つ家畜(ヤツ)をねぇ」
物珍しいように、不思議がる。
「おおき…?」
首を傾げた私にヨナさんが柵へと案内した。
その豚さんは私が知っている数倍も大きかった。
「お!大きい…」
ポカンと口を開けた私に、だろう?みたいにヨナさんが笑った。
「ここに小麦が売ってるんだよ」
豚さんたちと別れ、商店だという小屋…もとい建物に案内された。
店内の木箱の上に商品が陳列され、小麦や塩、胡椒などは量り売りのようだ。
「小麦を二キロお願い」
「はいよ。二キロね」
店員の青年にチラチラと視線を向けられる。
「アルベルト。アンタ、ジークさんにへんな視線むけるんじゃないよ!」
「ちょっ!ななな、何言ってるんだい!ヨナさん!そんなつもりは、あ!っあ!
そんなつもり、全然ありませんから!!俺!結婚してますから!!」
なんだろう、これは。
私が色目を使ったというのか…。
王都を追放された出来事を思い出し、一緒怒りが湧いた。
大きく息をつき、
「私にもそんなつもりはありません」
アルベルトと呼ばれた青年に冷ややかに言った。
彼は、さっと青ざめた。
「アイツは自意識過剰……自己中心的なところがあってね。はぁ…」
商店を重い雰囲気のまま出て、ヨナさんの自宅についた。すぐにマリアちゃんがヨナさんに抱きつき、ヨナさんがため息をついた。
アルベルトの奥様はのんびりとした女性らしく、アルベルトの自己中心的な部分を上手く操作しているらしい。
「気をと直して夕食を作ろうじゃないか!」
「つくろうじゃないか~」
おー!とマリアちゃんが笑顔で両手を上げた。
作ろうじゃないか。
そう、ヨナさんは作ろう、と言った。
誰と?
もちろん、私と、だ。
「これが熟成させた塩豚だよ」
ドンっと調理台兼ダイニングテーブルに置かれたお肉の塊に私は慄いた。
調理されたお肉は見たことはあるが、生の、その、お肉は初めてで、
「これが…にく…」
調理前の。
塩漬けなので、調理前のお肉ではない。
テラテラとした、表面と程よい脂身。生肉に嫌悪感は湧かなかった。
畑に行った際に、豚さんを見たけど…。まさか、あの子たち…?
そうだ。
自給自足のこの村では、あの豚さんたちは愛玩動物(ペット)ではなく、家畜ーー食べものなのだ。
……たべもの…いきもの…
………、
もしかして、自分で捌かなければいけない?
ぶるりと震え、私は青ざめた。
「ん?まさか、肉を見たことないとか?」
「調理したものしか…」
「ああ…」
ヨナさんが納得した声色で、
「ここで生きるなら、やることはたくさんあるよ」
村長の家で言われた言葉を、手にした包丁を輝かせて言った。
村人共同の農地で、好きに野菜を取っていいとのこと。
ただし、必ず畑の世話をすること。
「キャベツと人参を収穫するかね」
ヨナさんはどこからともなく出した包丁でスパッとキャベツを収穫した。同じく人参も収穫し、私に持たせた。
私の腕の中は人参とキャベツの山になってしまった。しっかり抱えないと、人参がポロポロ落ちてしまう。
「母ーさーん」
「おかぁちゃーん」
ヨゼくんとマリアちゃんが籠を持ってやってきた。私はヨゼくんが持ってきた籠に野菜を入れた。
「ヨゼ、野菜を家に持って行っておくれ」
「はい。マリア、ほら行くよ」
「はーい」
二人と別れた後、マリアちゃんが持ってきた籠を持って、ヨナさんの後に続く。
畑から少し離れた場所に行くと鼻を刺す臭いに思わず顔を歪めた。
「ん?ああ、臭うかい?あれだよ」
そう言ってヨナさんが指差す方には柵があり、ピンク色の何かが蠢いている。
あれはもしかして…。
「あ、あの。ヨナさん、あれは…」
「あれは豚だよ、豚」
「やっぱり!」
驚く私に、
「?……豚が珍しいのかい?」
「珍しいと…言いますか…。私の知り合いに豚さんをペットにしてる方がいて…」
大きさは大人の拳三つほどの体長で、
「あんなにいっぱい……でも、あれ…?」
大きさが…。
?
大きさが…?
「都会には豚なんてペットにしてるのかい?あんな大きく育つ家畜(ヤツ)をねぇ」
物珍しいように、不思議がる。
「おおき…?」
首を傾げた私にヨナさんが柵へと案内した。
その豚さんは私が知っている数倍も大きかった。
「お!大きい…」
ポカンと口を開けた私に、だろう?みたいにヨナさんが笑った。
「ここに小麦が売ってるんだよ」
豚さんたちと別れ、商店だという小屋…もとい建物に案内された。
店内の木箱の上に商品が陳列され、小麦や塩、胡椒などは量り売りのようだ。
「小麦を二キロお願い」
「はいよ。二キロね」
店員の青年にチラチラと視線を向けられる。
「アルベルト。アンタ、ジークさんにへんな視線むけるんじゃないよ!」
「ちょっ!ななな、何言ってるんだい!ヨナさん!そんなつもりは、あ!っあ!
そんなつもり、全然ありませんから!!俺!結婚してますから!!」
なんだろう、これは。
私が色目を使ったというのか…。
王都を追放された出来事を思い出し、一緒怒りが湧いた。
大きく息をつき、
「私にもそんなつもりはありません」
アルベルトと呼ばれた青年に冷ややかに言った。
彼は、さっと青ざめた。
「アイツは自意識過剰……自己中心的なところがあってね。はぁ…」
商店を重い雰囲気のまま出て、ヨナさんの自宅についた。すぐにマリアちゃんがヨナさんに抱きつき、ヨナさんがため息をついた。
アルベルトの奥様はのんびりとした女性らしく、アルベルトの自己中心的な部分を上手く操作しているらしい。
「気をと直して夕食を作ろうじゃないか!」
「つくろうじゃないか~」
おー!とマリアちゃんが笑顔で両手を上げた。
作ろうじゃないか。
そう、ヨナさんは作ろう、と言った。
誰と?
もちろん、私と、だ。
「これが熟成させた塩豚だよ」
ドンっと調理台兼ダイニングテーブルに置かれたお肉の塊に私は慄いた。
調理されたお肉は見たことはあるが、生の、その、お肉は初めてで、
「これが…にく…」
調理前の。
塩漬けなので、調理前のお肉ではない。
テラテラとした、表面と程よい脂身。生肉に嫌悪感は湧かなかった。
畑に行った際に、豚さんを見たけど…。まさか、あの子たち…?
そうだ。
自給自足のこの村では、あの豚さんたちは愛玩動物(ペット)ではなく、家畜ーー食べものなのだ。
……たべもの…いきもの…
………、
もしかして、自分で捌かなければいけない?
ぶるりと震え、私は青ざめた。
「ん?まさか、肉を見たことないとか?」
「調理したものしか…」
「ああ…」
ヨナさんが納得した声色で、
「ここで生きるなら、やることはたくさんあるよ」
村長の家で言われた言葉を、手にした包丁を輝かせて言った。
1
あなたにおすすめの小説
番に見つからない街で、子供を育てている
はちも
BL
目を覚ますと、腕の中には赤ん坊がいた。
異世界の青年ロアンとして目覚めた「俺」は、希少な男性オメガであり、子を産んだ母親だった。
現世の記憶は失われているが、
この子を守らなければならない、という想いだけははっきりと残っている。
街の人々に助けられ、魔石への魔力注入で生計を立てながら、
ロアンと息子カイルは、番のいない街で慎ましく暮らしていく。
だが、行方不明の番を探す噂が、静かに近づいていた。
再会は望まない。
今はただ、この子との生活を守りたい。
これは、番から逃げたオメガが、
選び直すまでの物語。
*不定期連載です。
人族は一人で生きられないらしい――獣人公爵に拾われ、溺愛されて家族になりました
よっちゃん
BL
人族がほとんど存在しない世界に、
前世の記憶を持ったまま転生した少年・レオン。
獣人が支配する貴族社会。
魔力こそが価値とされ、
「弱い人族」は守られるべき存在として扱われる世界で、
レオンは常識の違いに戸惑いながらも必死に生きようとする。
そんな彼を拾ったのは、
辺境を治める獣人公爵アルト。
寡黙で冷静、しかし一度守ると決めたものは決して手放さない男だった。
溺愛され、守られ、育てられる日々。
だが、レオンはただ守られるだけの存在で終わることを選ばない。
学院での出会い。
貴族社会に潜む差別と陰謀。
そして「番」という、深く重い絆。
レオンは学び、考え、
自分にしかできない魔法理論を武器に、
少しずつ“並び立つ覚悟”を身につけていく。
獣人と人族。
価値観も、立場も、すべてが違う二人が、
それでも選び合い、家族になるまでの物語。
溺愛×成長×異世界BL。
読後に残るのは、
「ここに居場所があっていい」と思える、あたたかな幸福。
とあるΩ達の試練
如月圭
BL
吉住クレハは私立成城学園に通う中学三年生の男のオメガだった。同じ学園に通う男のオメガの月城真とは、転校して初めてできた同じオメガの友達だった。そんな真には、番のアルファが居て、クレハはうらやましいと思う。しかし、ベータの女子にとある事で目をつけられてしまい……。
この話はフィクションです。更新は、不定期です。
英雄の溺愛と執着
AzureHaru
BL
転生した世界は前世でどハマりしたBLゲーム。最推しは攻略対象!ではなく、攻略対象達の剣術の師匠である、英雄の将軍閣下。メチャクチャイケオジでドストライクだった主人公はこのイケオジみたさにゲームをやっていた。その為に、ゲームの内容など微塵も覚えていなかった。
転生したからには将軍閣下を生でみないとというファン根性で付きまとう。
付き纏われていることに気づいていた将軍だか、自分に向けられる視線が他とは違う純粋な好意しかなかったため、戸惑いながらも心地よく感じていた。
あの時までは‥。
主人公は気づいていなかったが、自分達にかけらも興味を持たないことに攻略対象者達は興味をそそられ、次第に執着していく。そのことにいち早く気づいたのは剣術指南役の将軍のみ。将軍はその光景をみて、自分の中に徐々に独占欲が芽生えていくのを感じた。
そして戸惑う、自分と主人公は親子ほどに歳が離れているのにこの感情はなんなのだと。
そして、将軍が自分の気持ちを認めた時、壮絶な溺愛、執着がはじまる。
婚約者の前で奪われる!?王太子が僕の番だった夜
侑
BL
僕は辺境伯家の嫡男レオン・グレイスフィールド。
婚約者・隣国カリスト王国の辺境伯家、リリアナの社交界デビューに付き添うため、隣国の王都に足を踏み入れた。
しかし、王家の祝賀の列に並んだその瞬間、僕の運命は思わぬ方向へ。
王族として番に敏感な王太子が、僕を一目で見抜き、容赦なく迫ってくる。
転生者で、元女子大生の僕にはまだ理解できない感覚。
リリアナの隣にいるはずなのに、僕は気づけば王太子殿下に手を握られて……
婚約者の目の前で、運命の番に奪われる夜。
仕事の関係上、あまり創作活動ができず、1話1話が短くなっています。
2日に1話ぐらいのペースで更新できたらいいなと思っています。
【Amazonベストセラー入りしました】僕の処刑はいつですか?欲しがり義弟に王位を追われ身代わりの花嫁になったら溺愛王が待っていました。
美咲アリス
BL
「国王陛下!僕は偽者の花嫁です!どうぞ、どうぞ僕を、処刑してください!!」「とりあえず、落ち着こうか?(笑)」意地悪な義母の策略で義弟の代わりに辺境国へ嫁いだオメガ王子のフウル。正直な性格のせいで嘘をつくことができずに命を捨てる覚悟で夫となる国王に真実を告げる。だが美貌の国王リオ・ナバはなぜかにっこりと微笑んだ。そしてフウルを甘々にもてなしてくれる。「きっとこれは処刑前の罠?」不幸生活が身についたフウルはビクビクしながら城で暮らすが、実は国王にはある考えがあって⋯⋯?(Amazonベストセラー入りしました。1位。1/24,2024)
【8話完結】強制力に負けて死に戻ったら、幼馴染の様子がおかしいのですが、バグですか?
キノア9g
BL
目が覚めたら、大好きだったRPGの世界に転生していた。
知識チートでなんとか死亡フラグを回避した……はずだったのに、あっさり死んで、気づけば一年前に逆戻り。
今度こそ生き残ってみせる。そう思っていたんだけど——
「お前、ちょっと俺に執着しすぎじゃない……?」
幼馴染が、なんかおかしい。妙に優しいし、距離が近いし、俺の行動にやたら詳しい。
しかも、その笑顔の奥に見える“何か”が、最近ちょっと怖い。
これは、運命を変えようと足掻く俺と、俺だけを見つめ続ける幼馴染の、ちょっと(だいぶ?)危険な異世界BL。
全8話。
(無自覚)妖精に転生した僕は、騎士の溺愛に気づかない。
キノア9g
BL
気がつくと、僕は見知らぬ不思議な森にいた。
木や草花どれもやけに大きく見えるし、自分の体も妙に華奢だった。
色々疑問に思いながらも、1人は寂しくて人間に会うために森をさまよい歩く。
ようやく出会えた初めての人間に思わず話しかけたものの、言葉は通じず、なぜか捕らえられてしまい、無残な目に遭うことに。
捨てられ、意識が薄れる中、僕を助けてくれたのは、優しい騎士だった。
彼の献身的な看病に心が癒される僕だけれど、彼がどんな思いで僕を守っているのかは、まだ気づかないまま。
少しずつ深まっていくこの絆が、僕にどんな運命をもたらすのか──?
騎士×妖精
※主人公が傷つけられるシーンがありますので、苦手な方はご注意ください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる