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第一幕
絶縁
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私は、筆を取った。
神殿の静かな書院。
墨の香りが満ちるこの場所で、私は一通の文をしたためている。
宛ては、エヴァンス侯爵家当主――私の父。
形式に則った書き方。けれど、文面にこめたのは、私の決意だった。
⸻
父上
このたび、ヴァレンタイン家との婚約は正式に破棄され、
私は神殿よりも、王宮よりも、遠い場所へと追いやられる立場となりました。
家名を穢したこと、家の誇りを損なったことについて、
弁明をするつもりはございません。
ただ一つ、お願いがございます。
この身を、エヴァンス家より除籍し、
私を神殿の人間として籍に移していただきたく存じます。
私は、もはや“侯爵令嬢”ではございません。
貴族の娘としてではなく、
ただの祈り人として、静かに生きてゆきたく思います。
今まで大切に育ててくださったこと、感謝しております。
どうか、お身体にお気をつけて。
――リリエル
⸻
封をして、蝋を落とす。
家の印章は使えない。だから、神殿の印を借りた。
それは“私がもう、家族ではない”という証だった。
私はこの書状をもって、正式に――貴族を捨てた。
聖女であることさえ、もはや肩書きのひとつに過ぎない。
神に仕えながら、神に問いたい。
誰かを赦すことと、自分を赦すことは、同じなのかと。
最後に、ひとつだけ手紙を添えた。
母に、エリナに、もう誰にも届かなくても。
「神に見捨てられても、人として祈り続けます」
それが、私という人間の、最初のわがまま。
神殿の静かな書院。
墨の香りが満ちるこの場所で、私は一通の文をしたためている。
宛ては、エヴァンス侯爵家当主――私の父。
形式に則った書き方。けれど、文面にこめたのは、私の決意だった。
⸻
父上
このたび、ヴァレンタイン家との婚約は正式に破棄され、
私は神殿よりも、王宮よりも、遠い場所へと追いやられる立場となりました。
家名を穢したこと、家の誇りを損なったことについて、
弁明をするつもりはございません。
ただ一つ、お願いがございます。
この身を、エヴァンス家より除籍し、
私を神殿の人間として籍に移していただきたく存じます。
私は、もはや“侯爵令嬢”ではございません。
貴族の娘としてではなく、
ただの祈り人として、静かに生きてゆきたく思います。
今まで大切に育ててくださったこと、感謝しております。
どうか、お身体にお気をつけて。
――リリエル
⸻
封をして、蝋を落とす。
家の印章は使えない。だから、神殿の印を借りた。
それは“私がもう、家族ではない”という証だった。
私はこの書状をもって、正式に――貴族を捨てた。
聖女であることさえ、もはや肩書きのひとつに過ぎない。
神に仕えながら、神に問いたい。
誰かを赦すことと、自分を赦すことは、同じなのかと。
最後に、ひとつだけ手紙を添えた。
母に、エリナに、もう誰にも届かなくても。
「神に見捨てられても、人として祈り続けます」
それが、私という人間の、最初のわがまま。
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