3 / 42
天敵という名の…
しおりを挟む春の昼下がり。
窓の外では小鳥がチュンチュンと鳴き、陽光が差し込んでいる。
だが俺は――寝台の上で、布団にくるまっていた。
「……ああ、今日も健康的に怠惰だ……」
枕元には、読みかけの本(開きっぱなしで三週間経過)、一口かじったクッキー、そして神官からもらった回復薬(未開封)。
視界の端で薬瓶が光っているが、俺の手は布団の外に出ることすら拒否していた。
使用人が食事を運んできても、俺は「あとで食べる」と答え、結局冷めた頃に渋々食べる。
そんな至福の引きこもりライフに――あの男が現れる。
「アディル様~! 今日も日光浴びましょう!」
元気いっぱいの声とともに、カーテンが一気に開け放たれた。
まぶしい光が雪崩れ込み、俺は悲鳴を上げる。
「目がッ! 魂が焼かれるッ!」
「魂は焼けません! むしろくすみが取れてツヤが出ますよ!」
レフェリア大神殿の神官、ユース。
健康体そのものの青年で、俺の引きこもり生活に不定期で乱入してくる、天敵だ。
「外は危険だ……日焼けするし、転ぶし、王子に遭遇するかもしれん……」
「じゃあ、お部屋でストレッチしましょう! まずは腕をこう――」
「ほれっ」
俺は寝たまま、腕をバタバタと上下させてみせる。
「……それは溺れている動きですか?」
「運動だ。溺れた魂が必死にもがいているんだ」
ユースはこめかみを押さえ、「じゃあ薬草茶を飲みましょう」と切り替えてきた。
湯気の立つ茶を差し出してくるが、俺は鼻先をしかめる。
「苦いのは嫌だ」
「じゃあ蜂蜜を混ぜますね」
「甘すぎるのは嫌だ」
「……」
しばしの沈黙。
そしてユースは「蜂蜜を入れてから苦味を足します!」と謎の折衷案を提示。
結果、甘いのか苦いのかわからない液体が完成し、俺はそれを一口飲んでベッドに沈んだ。
「……舌が混乱している」
「アディル様の健康も混乱してますよ……」
そんな押し問答を繰り返していると、ユースがふと思い出したように言った。
「そういえば、殿下がまた様子を見に来たいと仰ってますが……」
「却下だ」
「でも“心配して”――」
「絶対別の目的だろ……俺を派閥争いの駒にするつもりだ。魂が粉になる」
ユースは苦笑して、荷物をまとめ始めた。
「ま、殿下にも都合がありますからね。ではまた明日来ます」
「明日は休んでいいぞ?」
「嫌です。寄付金をたんまりいただいてますのでちゃんとアディル様を看護いたしますよ!」
爽やかに言い残し、部屋を出ていくユース。
その背中を見送りながら、俺は布団をかぶる。
「……今日もよく生き延びた」
春の風が窓から入り込み、部屋の片隅で未開封の回復薬がきらりと光った。
そして俺は、次の来訪までの貴重な怠惰タイムを噛みしめたのだった。
10
あなたにおすすめの小説
クラスのボッチくんな僕が風邪をひいたら急激なモテ期が到来した件について。
とうふ
BL
題名そのままです。
クラスでボッチ陰キャな僕が風邪をひいた。友達もいないから、誰も心配してくれない。静かな部屋で落ち込んでいたが...モテ期の到来!?いつも無視してたクラスの人が、先生が、先輩が、部屋に押しかけてきた!あの、僕風邪なんですけど。
ひみつのモデルくん
おにぎり
BL
有名モデルであることを隠して、平凡に目立たず学校生活を送りたい男の子のお話。
高校一年生、この春からお金持ち高校、白玖龍学園に奨学生として入学することになった雨貝 翠。そんな彼にはある秘密があった。彼の正体は、今をときめく有名モデルの『シェル』。なんとか秘密がバレないように、黒髪ウィッグとカラコン、マスクで奮闘するが、学園にはくせもの揃いで⁉︎
主人公総受け、総愛され予定です。
思いつきで始めた物語なので展開も一切決まっておりません。感想でお好きなキャラを書いてくれたらそことの絡みが増えるかも…?作者は執筆初心者です。
後から編集することがあるかと思います。ご承知おきください。
僕はただの妖精だから執着しないで
ふわりんしず。
BL
BLゲームの世界に迷い込んだ桜
役割は…ストーリーにもあまり出てこないただの妖精。主人公、攻略対象者の恋をこっそり応援するはずが…気付いたら皆に執着されてました。
お願いそっとしてて下さい。
♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎
多分短編予定
従者は知らない間に外堀を埋められていた
SEKISUI
BL
新作ゲーム胸にルンルン気分で家に帰る途中事故にあってそのゲームの中転生してしまったOL
転生先は悪役令息の従者でした
でも内容は宣伝で流れたプロモーション程度しか知りません
だから知らんけど精神で人生歩みます
美女のおっさんと護衛騎士
琉斗六
BL
◎あらすじ
佐藤英里緒、37歳。中小企業のIT部門の係長。独身。だが、実は彼には前世の記憶がある。
完容姿端麗、才色兼備。完璧な令嬢と呼ばれたエリザベートだった記憶である。
そしてエリザベートはずっと考えていた「コルセットのない生活がしてみたいですわ」。
現在の英里緒は、休みの日はトレパンでダラダラしながら、昼間からビールを嗜む生活に満足していた。
だが、ある日。
中途採用で部に配属された若い男は、英里緒に言った。
「あの晩、バルコニーで僕に抱かれたあなたの、愛に蕩けた心も体も、全て僕は覚えてます!」
田中玲央、22歳。彼もまた、前世の記憶を持っていた。
◎その他
この物語は、複数のサイトに投稿されています。
ビッチです!誤解しないでください!
モカ
BL
男好きのビッチと噂される主人公 西宮晃
「ほら、あいつだろ?あの例のやつ」
「あれな、頼めば誰とでも寝るってやつだろ?あんな平凡なやつによく勃つよな笑」
「大丈夫か?あんな噂気にするな」
「晃ほど清純な男はいないというのに」
「お前に嫉妬してあんな下らない噂を流すなんてな」
噂じゃなくて事実ですけど!!!??
俺がくそビッチという噂(真実)に怒るイケメン達、なぜか噂を流して俺を貶めてると勘違いされてる転校生……
魔性の男で申し訳ない笑
めちゃくちゃスロー更新になりますが、完結させたいと思っているので、気長にお待ちいただけると嬉しいです!
最可愛天使は儚げ美少年を演じる@勘違いってマジ??
雨霧れいん
BL
《 男子校の華 》と呼ばれるほどにかわいく、美しい少年"依織のぞ"は社会に出てから厳しさを知る。
いままでかわいいと言われていた特徴も社会に出れば女々しいだとか、非力だとか、色々な言葉で貶された。いつまでもかわいいだけの僕でいたい!いつしか依織はネットにのめり込んだ。男の主人公がイケメンに言い寄られるゲーム、通称BLゲーム。こんな世界に生まれたかった、と悲しみに暮れ眠りについたが朝起きたらそこは大好きなBLゲームのなかに!?
可愛い可愛い僕でいるために儚げ男子(笑)を演じていたら色々勘違いされて...!?!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる