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神官と第一王子
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――その日も俺は、布団の中で怠惰を満喫していた。
春の陽気に包まれ、ウトウトと夢と現実を行ったり来たりしていた、その時。
ドンドンドンッ!
ドアを叩く音が響き、心臓が跳ね上がる。
使用人の慌てた声が続いた。
「アディル様! で、殿下がお見えです!」
(はあああああ!?)
布団から飛び出すどころか、逆に潜り込む俺。
魂が粉になるどころか、灰になって消滅する未来しか見えない。
「お、お通ししてよいかと……」
「断固拒否ッ!! 命が惜しい!!」
使用人がオロオロしている間に、廊下から落ち着いた、しかし妙に圧のある声が響く。
「……入ってもいいかな、アディル」
(来た……! 声だけで魂が削れる……!)
次の瞬間、ドアが開いた。
黄金の髪、涼やかな碧眼、そして微笑――だがその目は一切笑っていない。
「久しいな、アディル」
「久しくなくていい……!!」
布団の中から絞り出した声に、殿下は笑みを深める。
その直後、俺と殿下の間にスッと立ちふさがった人影があった。
「殿下、アディル様は療養中です。面会はお控えください」
――ユースだ。
いつもは明るい青年神官が、今日は真顔で盾になっている。
「君は……大神殿の神官だね?」
「はい、アディル様の魂と健康を守る者です」
俺の代わりに堂々と言い切るユース。
殿下は一瞬だけ目を細めたが、すぐに柔らかな声に戻る。
「心配して来たんだがね。彼とは婚約者だし」
「婚約者であっても、魂の休養は最優先です」
――ユース、カッコいい……!
俺は布団の中で密かにガッツポーズした。
しかし殿下は一歩、ユースに近づく。
「……君は、私とアディルの間に立つつもりか?」
「はい」
即答だ。空気が一瞬、ぴんと張り詰める。
(やばい、これ絶対裏で政治的に揉めるやつ……!)
俺は布団の中から必死に叫ぶ。
「殿下ー! 俺、今日、魂が粉々なので! また今度で! たぶん来世あたりで!」
ユースが小声で「来世はだめです」とツッコミを入れる。
殿下は沈黙し、そして小さく笑った。
「……分かった。今日は引き下がろう」
そう言って、踵を返す殿下。
その背中に、俺は思わず「二度と来ないで!」と叫びそうになったが、ユースが肩を押さえてくれた。
殿下が去った後、部屋に静寂が戻る。
ユースは布団の中の俺を覗き込み、苦笑する。
「……本当に逃げ足の速い魂ですね、アディル様」
「魂が粉になると走れないからな……」
その夜、俺は久々にぐっすり眠れた。
ユースが盾になってくれる限り、俺の平穏は守られる――たぶん。
春の陽気に包まれ、ウトウトと夢と現実を行ったり来たりしていた、その時。
ドンドンドンッ!
ドアを叩く音が響き、心臓が跳ね上がる。
使用人の慌てた声が続いた。
「アディル様! で、殿下がお見えです!」
(はあああああ!?)
布団から飛び出すどころか、逆に潜り込む俺。
魂が粉になるどころか、灰になって消滅する未来しか見えない。
「お、お通ししてよいかと……」
「断固拒否ッ!! 命が惜しい!!」
使用人がオロオロしている間に、廊下から落ち着いた、しかし妙に圧のある声が響く。
「……入ってもいいかな、アディル」
(来た……! 声だけで魂が削れる……!)
次の瞬間、ドアが開いた。
黄金の髪、涼やかな碧眼、そして微笑――だがその目は一切笑っていない。
「久しいな、アディル」
「久しくなくていい……!!」
布団の中から絞り出した声に、殿下は笑みを深める。
その直後、俺と殿下の間にスッと立ちふさがった人影があった。
「殿下、アディル様は療養中です。面会はお控えください」
――ユースだ。
いつもは明るい青年神官が、今日は真顔で盾になっている。
「君は……大神殿の神官だね?」
「はい、アディル様の魂と健康を守る者です」
俺の代わりに堂々と言い切るユース。
殿下は一瞬だけ目を細めたが、すぐに柔らかな声に戻る。
「心配して来たんだがね。彼とは婚約者だし」
「婚約者であっても、魂の休養は最優先です」
――ユース、カッコいい……!
俺は布団の中で密かにガッツポーズした。
しかし殿下は一歩、ユースに近づく。
「……君は、私とアディルの間に立つつもりか?」
「はい」
即答だ。空気が一瞬、ぴんと張り詰める。
(やばい、これ絶対裏で政治的に揉めるやつ……!)
俺は布団の中から必死に叫ぶ。
「殿下ー! 俺、今日、魂が粉々なので! また今度で! たぶん来世あたりで!」
ユースが小声で「来世はだめです」とツッコミを入れる。
殿下は沈黙し、そして小さく笑った。
「……分かった。今日は引き下がろう」
そう言って、踵を返す殿下。
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殿下が去った後、部屋に静寂が戻る。
ユースは布団の中の俺を覗き込み、苦笑する。
「……本当に逃げ足の速い魂ですね、アディル様」
「魂が粉になると走れないからな……」
その夜、俺は久々にぐっすり眠れた。
ユースが盾になってくれる限り、俺の平穏は守られる――たぶん。
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