25 / 42
弟の帰宅後⑤-ユース
しおりを挟む
「兄様、少しお聞きしたいことがあります」
休日、またもや無断で帰省してきたトレイクが、椅子に腰掛けながら切り出した。
その顔は真剣そのもので、まるで取り調べ官である。
(……またですか。こういう時のトレイク様は手強い)
「最近、殿下とは全くお会いしていないのですか?」
「会ってない」
「本当に?」
「……嘘ついても仕方ないだろ」
ユースは湯気の立つティーポットを手にしながら、横目でアディルを観察する。
殿下の名が出た瞬間、わずかに肩がこわばった――。
やはり、何かしら緊張や負担を感じているのは間違いない。
でも、それが何なのかは依然として分からない。
「殿下からの手紙や使いは届いていませんか?」
「届いてない」
「本当に?」
「本当に」
このやり取りは、正直見ていて息が詰まる。
アディルは、殿下の話題を出されると、まるで見えない鎧を着込むように感情を隠す。
それが体調悪化の引き金になるのも、ユースは何度も見てきた。
「そういえば兄様、最近やたらと政局の話題を避けますよね?」
「そんなことない」
「本当に?」
「ないって」
ユースはお盆を兄弟の間に滑り込ませる。
「はい、お茶が入りました! 焼き菓子もございますよ」
このままでは、また体調を崩される。
殿下や政治の話は、アディルにとって精神的な毒だ――そう感じている。
けれど、それを正面から止めるには、ユースにはまだ根拠が足りない。
「兄様。……殿下のせいで何かあったんじゃないですか?」
ついに直球が飛んだ。
ユースは笑顔を作り、即座に割って入る。
「いいえ、殿下のお名前が出ると緊張して体調を崩されるだけです」
「……緊張?」
「はい。ほら、以前も入学パーティーで倒れられましたし」
トレイクはしばらく沈黙したあと、ため息をつく。
「……まあ、兄様がそう言うなら信じます」
部屋を出て行く背中を見送りながら、ユースは心の中で小さくつぶやく。
(……やはり、殿下が関わると駄目だ。でも、なぜ? 私にはその“なぜ”がまだ分からない)
休日、またもや無断で帰省してきたトレイクが、椅子に腰掛けながら切り出した。
その顔は真剣そのもので、まるで取り調べ官である。
(……またですか。こういう時のトレイク様は手強い)
「最近、殿下とは全くお会いしていないのですか?」
「会ってない」
「本当に?」
「……嘘ついても仕方ないだろ」
ユースは湯気の立つティーポットを手にしながら、横目でアディルを観察する。
殿下の名が出た瞬間、わずかに肩がこわばった――。
やはり、何かしら緊張や負担を感じているのは間違いない。
でも、それが何なのかは依然として分からない。
「殿下からの手紙や使いは届いていませんか?」
「届いてない」
「本当に?」
「本当に」
このやり取りは、正直見ていて息が詰まる。
アディルは、殿下の話題を出されると、まるで見えない鎧を着込むように感情を隠す。
それが体調悪化の引き金になるのも、ユースは何度も見てきた。
「そういえば兄様、最近やたらと政局の話題を避けますよね?」
「そんなことない」
「本当に?」
「ないって」
ユースはお盆を兄弟の間に滑り込ませる。
「はい、お茶が入りました! 焼き菓子もございますよ」
このままでは、また体調を崩される。
殿下や政治の話は、アディルにとって精神的な毒だ――そう感じている。
けれど、それを正面から止めるには、ユースにはまだ根拠が足りない。
「兄様。……殿下のせいで何かあったんじゃないですか?」
ついに直球が飛んだ。
ユースは笑顔を作り、即座に割って入る。
「いいえ、殿下のお名前が出ると緊張して体調を崩されるだけです」
「……緊張?」
「はい。ほら、以前も入学パーティーで倒れられましたし」
トレイクはしばらく沈黙したあと、ため息をつく。
「……まあ、兄様がそう言うなら信じます」
部屋を出て行く背中を見送りながら、ユースは心の中で小さくつぶやく。
(……やはり、殿下が関わると駄目だ。でも、なぜ? 私にはその“なぜ”がまだ分からない)
0
あなたにおすすめの小説
クラスのボッチくんな僕が風邪をひいたら急激なモテ期が到来した件について。
とうふ
BL
題名そのままです。
クラスでボッチ陰キャな僕が風邪をひいた。友達もいないから、誰も心配してくれない。静かな部屋で落ち込んでいたが...モテ期の到来!?いつも無視してたクラスの人が、先生が、先輩が、部屋に押しかけてきた!あの、僕風邪なんですけど。
ひみつのモデルくん
おにぎり
BL
有名モデルであることを隠して、平凡に目立たず学校生活を送りたい男の子のお話。
高校一年生、この春からお金持ち高校、白玖龍学園に奨学生として入学することになった雨貝 翠。そんな彼にはある秘密があった。彼の正体は、今をときめく有名モデルの『シェル』。なんとか秘密がバレないように、黒髪ウィッグとカラコン、マスクで奮闘するが、学園にはくせもの揃いで⁉︎
主人公総受け、総愛され予定です。
思いつきで始めた物語なので展開も一切決まっておりません。感想でお好きなキャラを書いてくれたらそことの絡みが増えるかも…?作者は執筆初心者です。
後から編集することがあるかと思います。ご承知おきください。
僕はただの妖精だから執着しないで
ふわりんしず。
BL
BLゲームの世界に迷い込んだ桜
役割は…ストーリーにもあまり出てこないただの妖精。主人公、攻略対象者の恋をこっそり応援するはずが…気付いたら皆に執着されてました。
お願いそっとしてて下さい。
♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎
多分短編予定
従者は知らない間に外堀を埋められていた
SEKISUI
BL
新作ゲーム胸にルンルン気分で家に帰る途中事故にあってそのゲームの中転生してしまったOL
転生先は悪役令息の従者でした
でも内容は宣伝で流れたプロモーション程度しか知りません
だから知らんけど精神で人生歩みます
美女のおっさんと護衛騎士
琉斗六
BL
◎あらすじ
佐藤英里緒、37歳。中小企業のIT部門の係長。独身。だが、実は彼には前世の記憶がある。
完容姿端麗、才色兼備。完璧な令嬢と呼ばれたエリザベートだった記憶である。
そしてエリザベートはずっと考えていた「コルセットのない生活がしてみたいですわ」。
現在の英里緒は、休みの日はトレパンでダラダラしながら、昼間からビールを嗜む生活に満足していた。
だが、ある日。
中途採用で部に配属された若い男は、英里緒に言った。
「あの晩、バルコニーで僕に抱かれたあなたの、愛に蕩けた心も体も、全て僕は覚えてます!」
田中玲央、22歳。彼もまた、前世の記憶を持っていた。
◎その他
この物語は、複数のサイトに投稿されています。
ビッチです!誤解しないでください!
モカ
BL
男好きのビッチと噂される主人公 西宮晃
「ほら、あいつだろ?あの例のやつ」
「あれな、頼めば誰とでも寝るってやつだろ?あんな平凡なやつによく勃つよな笑」
「大丈夫か?あんな噂気にするな」
「晃ほど清純な男はいないというのに」
「お前に嫉妬してあんな下らない噂を流すなんてな」
噂じゃなくて事実ですけど!!!??
俺がくそビッチという噂(真実)に怒るイケメン達、なぜか噂を流して俺を貶めてると勘違いされてる転校生……
魔性の男で申し訳ない笑
めちゃくちゃスロー更新になりますが、完結させたいと思っているので、気長にお待ちいただけると嬉しいです!
最可愛天使は儚げ美少年を演じる@勘違いってマジ??
雨霧れいん
BL
《 男子校の華 》と呼ばれるほどにかわいく、美しい少年"依織のぞ"は社会に出てから厳しさを知る。
いままでかわいいと言われていた特徴も社会に出れば女々しいだとか、非力だとか、色々な言葉で貶された。いつまでもかわいいだけの僕でいたい!いつしか依織はネットにのめり込んだ。男の主人公がイケメンに言い寄られるゲーム、通称BLゲーム。こんな世界に生まれたかった、と悲しみに暮れ眠りについたが朝起きたらそこは大好きなBLゲームのなかに!?
可愛い可愛い僕でいるために儚げ男子(笑)を演じていたら色々勘違いされて...!?!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる