異世界転生したけど、生きるのが無理ゲーなのでフラグ折ります。

千宮寺みるく

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第一王子の見舞い-ユース

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 その日、侯爵家の執事から「本日、第一王子殿下がお見舞いに」と連絡があった。
 ユースの眉間に、ほんのわずかに皺が寄る。
(……正直、殿下の訪問はアディル様の負担になる)

 案の定、ベッドの上で報せを聞いたアディルは顔を引きつらせた。
「……無理だ。会いたくない」
「そうは言っても、殿下はもうお城を出られたそうで」
「引き返してくれないかな……」
「……恐らく無理でしょう」

 やがて、軽やかな靴音と共にエルーク殿下が現れた。
 相変わらずの笑顔、だがその目は冷たく光っている――とアディルは思う。

「やあ、アディル。顔色は……まあまあ、かな?」
「……まあまあ、です」

 (“まあまあ”じゃなくて“ギリギリ”ですけどね!?)

心の中で全力ツッコミ。

 殿下は部屋を見回し、窓際の薬草ポットに視線を止めた。
「これ、育ててるの?」
「ユースが……趣味で」
「ふうん……」

 その一言に妙な含みを感じたのは、アディルの被害妄想か。
 殿下は椅子に腰掛け、軽く足を組む。

「君は…」
「……?」
「婚約者として、僕の隣に立つ日は来るのかな?」
 さらりと言われ、心臓がギュッと縮む。
(来なくていいなら一生立たないけど!?)

 ユースが間に入る。
「殿下、アディル様は体調が――」
「分かってる。でも、顔を見るくらいはいいだろう?」

 短いやり取りの間にも、アディルの背中にはじっとり汗が滲む。
 このままじゃ本当に体調を崩す……そう確信したときだった。

「……っ」
 視界が揺れ、吐き気がこみ上げる。
「アディル様!」ユースが駆け寄る。
 殿下も立ち上がるが、表情は読めない。

「……すまない……少し、横に……」
 毛布を引き上げられ、ユースの手が背に回る。
「殿下、本日はこれで」
 きっぱりと告げる声に、殿下はわずかに目を細めたが、それ以上は何も言わなかった。

 そして数分後、エルーク殿下は侯爵家を後にした。



 殿下が去ったあと、アディルはベッドに沈み込み、深く息をついた。
「……もう来ないでほしい」
 小さな声で呟くと、ユースは黙って水の入ったカップを差し出した。

「……ありがとう」
 唇を湿らせながら、アディルは天井を見上げる。
 さっきまで感じていた圧迫感が嘘のように消えている。
 けれど――殿下の視線の冷たさと、ユースの背中に感じた妙な緊張感は、簡単には忘れられそうになかった。
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