本気の恋をもう一度

蜜花

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出会編

1.再会

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 人の心は永遠じゃない。それは、わかってるつもりだった。馬鹿みたいに、これは最後の恋だと思い込んでいたのだ。

 ペルテト様は、真摯に謝罪してくださった。そんな必要はないのに。準備された食事は豪華で、別れ際のプレゼントも同じ。たた、その外装はピンクや赤からグレーに変わっていた。

 なんだか頭がぼんやりする。別れの気配はずっと感じていた。だから、縋って泣いて困らせなくてすんだ。何か大きな問題が起きたのではなく、少しずつ心が離れただけ。

 減ってしまった部分を埋める方法はまだ見つけられそうにない。

「何年かかっても、前を向かなきゃ……」

 あの時は楽しかったと、また会えたら笑えると信じて。


◯⚫️◯

「リリーちゃん、5卓お願い」
「はーい」

 ペルテト様と別れてすぐ、私は街を引っ越した。いつか顔を合わせて泣くのが怖かったし、環境を変えてやり直したかったから。そして二年が経ち、「アンナおばさんのお料理店」で働いている。手伝いではあるけど、仕入れ、調理、接客に関われる。忙しくしていると時間が経つのはすぐだった。

 いつの間にか、甘い言葉も熱い腕も思い出さなくなって傷はすっかりと癒えていた。これからは、減ってしまった部分を埋めてくれる相手を探したい、そう思っていたのに。

「リリー?」
 
 はっとした。席にいたのは、ペルテト様とその同僚が数名だったから。

 久しぶりに聞く甘い声に、体がピリッと痺れるのを感じた。心は立ち直っても、体はまだこの人を求めているのかもしれない。だって初めての快楽を教えてくれたのだし。
 今は感傷に浸る時間じゃない。ランチタイムは大忙しなんだから。

「お、お久しぶりです。ペルテト様。こんな田舎までどうして?」

 『田舎で悪かったね!』とアンナおばさんの怒号が飛ぶ。振り返って顔の前で手を合わせれば、ニヤッと笑われた。

「一ヶ月間だけ、こちらの応援に来ていたんだ。あと二週間で街に戻る」
「ペルテト、この子は?」

 ペルテト様は言いにくそうだった。元カノですなんて確かに紹介しにくいからわかる。

「昔、親しくしていただきました。その節はお世話になりました」

 腰を折って、頭を下げる。ずっと言いたかったお礼を伝えるチャンスを神様がくれたのかもしれない。

「ご注文はお決まりですか? 」
「初めてきたから……君に任せてもいいかな」

 対応がなかなかだったのか。ペルテト様は戸惑って見える。メニューを返されたので私は精一杯の笑顔で言った。
 
「はいっ、皆さまわたくしにお任せいただいてよろしいですか??」

 まだ声を聞いていなかった奥の方の席にいる男性が、はーい!と手を挙げた。

「ぜひぜひ、召し上がっていただきたいお料理がございます。アンナおばさんの名にかけて後悔はさせませんっ」

 後ろを振り返ると、アンナおばさんは親指を立てていた。やっぱり、肉体労働する男性にはこれだよね!仕込みを手伝うために、私も厨房へと入った。

「リリーちゃん、あの綺麗な人とワケアリかい?」

 おもわずぶっと吐き出すところだった。

「やや、違いますよ。その……前に少しだけお付き合いしてた方で……」
「あんないい男と?別れたのかい?勿体ない、アタシなら足を絡めてはなしゃしないよ」

 おばさんが楽しそうから恥ずかしくなってきた。確かに、二年ぶりに会うペルテト様は変わらずお綺麗で、付きあっていただけた奇跡のきっかけを思い出してしまった。

「あー、残念だ。でも人生は何があるかわからないものね、今度はアタシが付き合うかも」
「ペルテト様とですか??」
「ああ。この豊満な肉体と年上の魅力にどっぷりはめてやるさ」
「結婚式には呼んでくださいね」

 話をしながらも、鶏肉を下味にしっかりと揉み込む作業の手は止めない。何せ5人分だし、他のお客さんはデザートまで進んでいるからよかった。

 アンナおばさんの冗談に、心が痛まなくてよかった……。
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