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出会編
10.疑惑
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私が目を覚ますと体が軽くなっていた。ずっと抱えていた感情を吐き出して、愛を受けたからだろう。
隣を見ると彼はいない、窓から見える空はすっかりと暗く日が落ちていた。
「ノイエ……さ、わっ、びっくりした」
彼を探して部屋を見回すと、中央に椅子を置いて騎士の制服を着込たノイエさんが座っていた。
部屋の明かりは消えたままで表情も暗い。
「どうしたんです……?」
明るい場所で散々見せたのだし今更と、裸のままでノイエさんに近づいていく。肩に手を置いても反応がない。あんなに愛し合った後だから、甘い目覚めと反応を期待したのに。
「君が……オレを惑わすからっ」
「惑わすですか」
なんだか様子がおかしい。ノイエさんには活発で明るいイメージがあった。今は逆だ、風呂場の隅に生えたキノコに似ている。
「私に話せないのですか」
握りしめていた手をほぐして開かせ、胸に触れさせた。大先輩たちから、大抵の男性はこれで元気を取り戻すと聞いている。
「ペルテトに教わったのか……」
「はい?」
「すまない。失言だった」
もしや、私がセックスに慣れすぎていて幻滅した?
ペルテト様とのときは翻弄され、愛し愛される行為とは思えなかった。まるで食べつくされるようで。心から満足して優しい幸せを得たのは初めてだったのに。
「なんでも話し合える関係になりたいのです」
ペルテト様とはできずに心が離れる結果となったから。ノイエさんとは、心を通じ合わせいたい。
胸に置いていた手を自分の顔に当てる。硬く節くれだった、剣を握る人の手だ。
「素晴らしい手ですね」
唾を飲み込み、口を開く音が聞こえた。ゆっくりと、ノイエさんの言葉を待つ。
「将来の話をしたかったんだ」
態度の変化が腑に落ちた。
「あなたは、オレを思ってくれていないのかと思うと辛くて」
眠りにつく前に見た表情と同じだ。私が目覚めるまで、胸に不安が詰まっていたのだろう。
「私がプロポーズを断ったと思ったんですね」
「……違うのか?」
「違います。ノイエさんが望んでくださるなら、私もそうしたいです」
ノイエさんの顔がパァッと明るくなる。急いで部屋の明かりをつけに走り、勢いを殺さずにぎゅっと抱かれた。香水だろうか。水を連想する香りがして、心地いい。
「心が張り裂けそうだった」
「申し訳ありません」
「でも今は幸せだ」
あんなに苦しそうだったのに上機嫌になり、髪へ鼻を埋めてかいでいる。すぐに笑うし、コロコロと表情が変わる。私よりも面白い人なのはノイエさんだと思う。
「服を着せてください」
「確かに。風邪をひいたらいけないな」
少し離れてクローゼットからマシな服を探していたら、背後からノイエさんに抱きしめられた。
「着替えたら団長へ挨拶に行こう」
「マジェレド団長にですか。なにをです」
「結婚と、退団の挨拶だ」
驚きの声は呑み込んだ。結婚自体はぜひしたい。必ず幸せになれると思う。ただ、いくらなんでも展開が早すぎる。
「ノイエさん。私に嘘をつかないと約束してくださいますか」
びくっと跳ねた体を宥めるため、胸に置かれた腕を撫でた。
「私を……いつからご存知だったんです?」
彼は私を愛している。これは揺るがない。でも、結婚をするなら、全てを明らかにしたい。
「なんだろう」
「私たち、食堂で会ったのが初対面ではないんですね?」
抱きしめる力が強まった。
「オレの話を聞いても、逃げないと約束してくれ」
おおげさな前振りをされたら怖い。何を聞かされるのか。
「善処します」
隣を見ると彼はいない、窓から見える空はすっかりと暗く日が落ちていた。
「ノイエ……さ、わっ、びっくりした」
彼を探して部屋を見回すと、中央に椅子を置いて騎士の制服を着込たノイエさんが座っていた。
部屋の明かりは消えたままで表情も暗い。
「どうしたんです……?」
明るい場所で散々見せたのだし今更と、裸のままでノイエさんに近づいていく。肩に手を置いても反応がない。あんなに愛し合った後だから、甘い目覚めと反応を期待したのに。
「君が……オレを惑わすからっ」
「惑わすですか」
なんだか様子がおかしい。ノイエさんには活発で明るいイメージがあった。今は逆だ、風呂場の隅に生えたキノコに似ている。
「私に話せないのですか」
握りしめていた手をほぐして開かせ、胸に触れさせた。大先輩たちから、大抵の男性はこれで元気を取り戻すと聞いている。
「ペルテトに教わったのか……」
「はい?」
「すまない。失言だった」
もしや、私がセックスに慣れすぎていて幻滅した?
ペルテト様とのときは翻弄され、愛し愛される行為とは思えなかった。まるで食べつくされるようで。心から満足して優しい幸せを得たのは初めてだったのに。
「なんでも話し合える関係になりたいのです」
ペルテト様とはできずに心が離れる結果となったから。ノイエさんとは、心を通じ合わせいたい。
胸に置いていた手を自分の顔に当てる。硬く節くれだった、剣を握る人の手だ。
「素晴らしい手ですね」
唾を飲み込み、口を開く音が聞こえた。ゆっくりと、ノイエさんの言葉を待つ。
「将来の話をしたかったんだ」
態度の変化が腑に落ちた。
「あなたは、オレを思ってくれていないのかと思うと辛くて」
眠りにつく前に見た表情と同じだ。私が目覚めるまで、胸に不安が詰まっていたのだろう。
「私がプロポーズを断ったと思ったんですね」
「……違うのか?」
「違います。ノイエさんが望んでくださるなら、私もそうしたいです」
ノイエさんの顔がパァッと明るくなる。急いで部屋の明かりをつけに走り、勢いを殺さずにぎゅっと抱かれた。香水だろうか。水を連想する香りがして、心地いい。
「心が張り裂けそうだった」
「申し訳ありません」
「でも今は幸せだ」
あんなに苦しそうだったのに上機嫌になり、髪へ鼻を埋めてかいでいる。すぐに笑うし、コロコロと表情が変わる。私よりも面白い人なのはノイエさんだと思う。
「服を着せてください」
「確かに。風邪をひいたらいけないな」
少し離れてクローゼットからマシな服を探していたら、背後からノイエさんに抱きしめられた。
「着替えたら団長へ挨拶に行こう」
「マジェレド団長にですか。なにをです」
「結婚と、退団の挨拶だ」
驚きの声は呑み込んだ。結婚自体はぜひしたい。必ず幸せになれると思う。ただ、いくらなんでも展開が早すぎる。
「ノイエさん。私に嘘をつかないと約束してくださいますか」
びくっと跳ねた体を宥めるため、胸に置かれた腕を撫でた。
「私を……いつからご存知だったんです?」
彼は私を愛している。これは揺るがない。でも、結婚をするなら、全てを明らかにしたい。
「なんだろう」
「私たち、食堂で会ったのが初対面ではないんですね?」
抱きしめる力が強まった。
「オレの話を聞いても、逃げないと約束してくれ」
おおげさな前振りをされたら怖い。何を聞かされるのか。
「善処します」
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