25回目のごめんね

蜜花

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八話目 すねる王様とねずみたち

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🐾  
 いつもはね、あったかい春に行ってたんだ。  

 でもね、前に行ったとき、できなかったの。  
 ハグしたかったのに、穴へ帰っちゃったの。
  
 暑かったのかな……? 
 
 だからね、今度は冬にしたんだ!  
 猫の国はいつもぽかぽかだけどね。  
 他の国はすごく寒いんだって!  
 
 だから、会いに行くって決めたんだ!  
🐾  

ʢ•·̫•ʡ  
 冬でした。 
 
 私たちは、穴の中で、体を寄せ合っていました。  
 やっぱり、あたためあっていたんです。  
 みんなでぎゅっとすると気持ちいいんです。  
 
 これが幸せだって、おじいちゃんが言ってました。  

 寒いときは、みんなで歌をうたいます。  
 小さな声で、順番に。 
 
 それが、あたたかさになるんです。  
 誰かがくしゃみをすると、みんなで笑います。  
 それも、あたたかさになるんです。  
ʢ•·̫•ʡ  

 王様は、温かいコートとイヤーマフ、手袋をつけてやってきた。  
 猫の国の民たちは王さまを温めようと、代わる代わるにハグをしていた。  
 門の前には、みんなが乗れるサイズのソリが置かれていた。  
 王様は、それにねずみたちを乗せて、連れて帰るつもりだった。  

🐾  
「ねずみさん、ここはさむいね」  

 なんて寒いんだろ。  
 猫の国にはずっとぽかぽかなのにな。  
 ほんとうにびっくりしちゃったよ。  
 早くねずみさんたちを助けなきゃ。  
 すてきなソリはびゅーんと早いよ。  

「みんな出てきて、うちの国に住んでいいよ!」  

 あっ、ねずみさんが出てきてくれた。  
 やっぱりかわいい。  
 とーっても小さいんだ。  
 よちよち動くのがすごく素敵。  

「寒いよね、穴なんて、もういらないよ」  

 なーんにもない穴のなかは、すごく寒いだろうな。  

「出てきて、ハグしよう。あったかいよ」  

 ぼくの自慢のコートの中に入れてあげる。  
 ねずみさんたちは小さいから。  
 みーんな入れるよね。  
🐾  

 王様は、門の前で待っていた。  
 ねずみたちは、穴の奥でじっとしていた。  
 雪がちらちらと降り始めていた。  
 王様のコートには、白い粒が積もっていた。  

 一匹のねずみが、王様の前に立ちはだかった。  
 その子は、体をふるわせながらも、まっすぐ王様を見ていた。  

ʢ•·̫•ʡ  
「私たちはいきません!いきません!」  

 私たちは、王様を嫌いじゃありません。  
 嫌いじゃないけど、こわいです。  
 暖かい猫の国にも憧れます。  
 でも、そこは私たちの国じゃない。  

 だから、私たちは穴の中でぎゅっとします。  
 それなら、だいじょうぶなんです。  

 私たちは、この穴でみんなで暮らします。  
 暮らしているんです。  
 私たちのしあわせは、ここにあるんです。  
ʢ•·̫•ʡ  

 王様は、贈り物のソリをそっと引き上げた。  
 ソリの上には、誰も乗っていなかった。  
 門の前には、何も残っていなかった。  

🐾  
「ゴマみたいな鼻だったな」  

 ぼくは心のなかがむずむずしてた。  
 ぽかぽかな猫の国にきてほしかったから。  
 すごくいいところなんだよ、猫の国って。  
 あったかくて、楽しくて、ご飯がおいしい。  
 ねずみさんたちの声を初めてきいたんだ。  
 ちゅうちゅうなくの以外にね。  
🐾  

 部下たちは、王さまの言葉にうなずいて、口々にねずみたちの悪口を言い始めた。  

 「そーだそーだ、黒ゴマです」  
 「ちんちくりんでしたね」  

 王様はもう何も言わなかった。  
 黙って、空を見ていた。
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