あみdan

わらいしなみだし

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女人禁制の☆あみだん☆開始!

64 早いけど何故か文化祭の話 2

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 編み物初心者の俺たちに何が作れるというのだろうか……?

 シンプルなかぎ針のマフラーなら編めるけどそれ以外編んだことがない歴はあっても初心者のようなものだ。

「何が展示できると思う?」問いかけるのは戸神先輩。
「何があるだろう?」俺も真剣に考えている。
「俺全然わかんねー」考えるのを諦めたような顔の相沢君。
「僕だって……マフラーが編めるかどうかさえ不安なんだけど」呟くように坂口君。
「まだ何も編めてないからわかんないよ」消え入るような声の朔田君。

「練習の成果なんか発表するのもいいんじゃない?編み物経験者鳴海だけだろ?最初はこんなに下手でもここまで編めるようになりましたみたいなのを展示してもいいんじゃね?部活だし?俺等男だけだし?展示出来るような作品編めるかー?」
 
 ストローを弄びながら田岡先輩が面倒くさそうに言い放つ。

 展示出来るような作品……。

 その言葉に一年の俺たちは下を向いてしまった。

「そこはこれからの努力じゃないの?でしょ?」

 言い出しっぺの戸神先輩は爽やかな笑顔で諭す。

 回りを見渡しても一年はその言葉に反応しない。
 このままではいけない気がする。
 でも、下を向く彼らに何を言えばやる気になってくれるのだろう?
 文化祭なんて……まだまだ先のことなのに。

 このままだと空中分解しかねない。

 先を見据えて教えてくれた戸神先輩の心遣いをふいにすることなんて出来ない。
 悩んでいる俺を気遣ってかどうかわからないけど俺を朔田君越しで見ていたのか、突然ぶっきらぼうに話し始めたのは相沢君だった。

「まだ……最初のチェーンしか出来ねーし?でも練習しなきゃ上手くなんねーよな。編み物するために入部したんだからちょっとずつ上達すればいいんじゃね?競うようなもんじゃねーし?」

 まさか相沢君の口から『編み物するために入部した』なんて言葉が聞けるとは思わなかった。
 だって彼は本当に冷やかし半分だったのだから。
 それをいちばん知っているのは俺なのだから。

「一緒に頑張ろうね!」
 
 思わず身を乗り出して相沢君の顔を見つめた。

「二人羽織でよろしくな!」

 ……そこはかなり違うと思うんだけど。

 想像したのだろう……。

 あちらこちらから笑いを堪えたような声が漏れてくる。

 でもその相沢君の最後の言葉で場が和んだのは正直ありがたかった。
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