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舞台1ー50 終幕

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 客席から黄色い歓声が怒号のように響いてくる。
 余程、この舞台がお気に召したらしい。

『伊久……よく頑張ったな……。今日はこれで終わりだ。ゆっくり休みな』

 伊久を自分の方に向かい合わせ、伊久の下半身の着物だけを丁寧にもとの位置に戻していく。
 はだけたままの乳首も着崩した上半身はそのままで乳首はつんとつき出されたまま。
 顔は紅く額から汗が次から次へ流れていく。
 脈は乱れ、息も絶え絶えで、かなり消耗させてしちまった。

 すべて、俺のせいか……。

『玄、よく崩れずに耐えたな。偉いぞ。次は那智だからこのあとは暫くは休めるだろう。ひとときだが休め』

「は、はい……」

 伊久のからだを支える為にうずくまるように固まっていた玄の声はか細く、かなり精神的にも体力も持っていかれちまったようだ。

 玄が袖幕の中に消えるのを見計らって、俺は片手で自分の半分ほど萎えたモノを手拭いで拭いそれを自分が精を放った肌襦袢の手前に放り投げ自分の着物を整えた。

 伊久を支えながら、舞台を隅から隅まで見渡す。

 大歓声の中、俺は伊久を横抱きに抱えながら舞台をあとにした。



 舞台の袖幕の内側では那智の姿が……

 袖幕に持たれるように腕を組んでこっちを睨み付けるように見ていた。ぶっきらぼうないつもの口調で俺に問いかける。

「体力残ってんだろーな?正兄ぃ……今日は乗るからな」
「ああ……あれぐらいじゃあ大丈夫だ。別のに着替えるのか?」
「伊久にあれだけ煽られたんだ。俺が締めなきゃ、大トリじゃねーだろ?」
「わかった。あとでな……」

 最後の舞台……那智が魅せる
 これは他の舞台子とは違う、那智だけの世界……

 那智が袖幕からその場から去り、俺たちもそこから去る。





 伊久の舞台は終わった……。
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