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舞台2ー5

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 那智は扇子越しに品定めをする。

 この場にいるのはオークションで舞台子との春を求める客か、
 俺の演舞目当ての客か……それとも……。

 扇子を左から右へともう一度、一往復したところで一人の男に目が行った。

 俺の知る限り初の客だ。

 通い馴れた男共と毛色が違う……何処か世俗から遠い匂いがした。
 此処に通う客は男好き或いは男を好むのをひとつの趣だということでそれを実践する者共。それには属さない、初さが窺える。

 ふぅーん、こういうヤツでもこんなところに来るんだ……。

 女も男も知らなさそうな……男との秘め事に嫌悪しているようでもない。

 何をしに来たのか、興味を持った。

 扇子の先をその男に止めた。

「おまえさん、俺の此処に金子幾らはる気ある?んん?」

 とびきりの流し目とウインク付き。

 この俺が客に媚びるなんざ、滅多なことじゃあすまい。

「……私のことですかい?」

 大袈裟にキョロキョロ周囲を見渡し、自分の鼻を人差し指で指してから俺に問う。その様子でさえ白々しく見えて何を考えてるのかわかんねぇ。

「そう、おまえさんだ。で、幾らはる?」

 俺は舞台に後ろを向いて顔を客席に向け、右側の着物の衿をはだけさせた。色っぽい首筋から肩が少し白肌が項との濃淡で艶っぽく際立つ。

「うーん、何をさせてくれるんです?」

 とぼけて言ってんのか、それともマジで知んねぇのか?

「片方を十(秒)ほど、しゃぶらせてやんよ」

 さぁ、おまえさんはどう出るんだ?

「おおー!」
「で、でたぁああー!」
「カウントダウン!」

 客たちの盛り上がりは最高潮に達したかに見える。
 ……が、もちろんそんな筈はない。

 最高潮は……いずれおとずれるのだから。

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