婚約者に嫌われております

眞白

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〜何度生まれ変わっても貴女を愛する〜

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物心着いた時にはもう彼女は隣にいた。ふとした仕草にデジャブを感じる事がある。前世…というものだろうか。ロゼッタは小さい頃はとてもお転婆で淑女教育をよく嫌がっていた。歳を重ねる事に美しく立派な淑女になっていった彼女は、もうデジャブを感じない。前世の記憶にある女性とは別なのだと感じる事が多くなっていった。



「アル様、薔薇の花言葉を知っておりますか?」

「…バラ…??」

「申し訳ありません、ローズ…ですわ」

「いや、知らない」

「そうですか…」



幼い頃、庭園で交流をしていた時にふられた言葉。


薔薇。日本人にしか分からない言葉。
薔薇はこの世界ではローズと呼ばれ、薔薇という言葉は存在しない。まさか、本当は彼女には…?

その日、夢を見た。
ロゼッタに感じていた懐かしく感じる女性が微笑む。


あぁ“彼女”だ。前世での最愛の妻。
不器用であまり構いもせずにいた俺を愛してくれていた妻。
自分の好きな事ばかりする俺をいつもニコニコと隣にいた彼女だ。

そうか、ロゼッタが“彼女”だったのか。


それから、俺はロゼッタに伝えようと思うがなかなか伝えれなく貴族学園もあと二年半で終わるという時にあることを思いついた。


「ロータス、ロゼッタ宛に毎日ローズを1本贈ってくれ」

「ローズですか、ロゼッタ様も喜びになりますね」

「そうだと、いいのだがな」


学園ではアイビー・カストが殿下たちの周りを彷徨いている。なにか企みがあるのかと思い、学園では婚約者から離れ監視を目的として傍に来ても追い払わなかった。殿下達も婚約者へ説明をし、学園ではなく互いの家で会うようにしているそうだ。
俺は反勢力の調査でロゼッタに会う時間はなかったが、あいつなら分かってくれていると思っていた。

卒業間近にやっと、反勢力をまとめあげる事に成功した。そしてカスト家はアイビー・カストのことがあり唯一表立って処分をされた。


前世から俺は自分のこの気持ちをきちんと伝えた事はなかった。“彼女”は花言葉が好きだった。108本の薔薇を携えてロゼッタを訪問し、求婚する。


嫌っていると思われていたなんて…、そして泣かれるとは思わなかった。


なぁ“ーー”
俺はあの時からずっとお前の事を愛していた。
お前は不器用でなかなか愛情表現出来ない俺をそれでも愛してくれていた。

生まれ変わって、またこうして夫婦になれるとは思わなかった。また愛し愛されるとは思わなかった。こんな俺でも本当にいいのか?


「アル様、お待たせ致しました」


もっとちゃんと愛してくれる奴はいると思うが、俺は前世の頃からもう手放せない。お前のその笑顔があるだけで俺は幸せなんだと実感する。


「ロゼ」

「はい」



昔も今も、そしてこれからも
俺を愛してくれるのは
お前を愛せるのは












ーー999本の薔薇の花言葉を知っているか?

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