28 / 38
28
しおりを挟む
この世界は好きじゃない。そう言い切れなくなったのは、たった一人を見付けてから。
黒板に書かれた幾つもの候補に悩むクラス連中を他所に、幸は持参しているAO入試の過去問に意識を集中させてる最中。こうなったら何がなんでも会話に入らないんだよね。ま、目の前に居るってだけで、今は満足しときましょう。幸の代わりに、文化祭の出し物の話し合いに耳を傾けて、面倒な役割に割り振られないよう監視しないと。黒板に書かれたのはどれも飲食を扱うもので、色々と手間がかかりそうで嫌だな。ミーちゃんなんて接客当番から逃げれたとしても、残された調理当番も逃げたいくらいに嫌だろうし。秋谷もミーちゃんの役割には神経質になってるせいか、いつもより俺達の空気はピリピリしてる。そもそも男子校の文化祭で飲食って限界あるでしょ。誰が喜ぶんだよ。それ以前に幸の手料理を他の男共に食わせるなんて絶対させねぇ。幸を迎えに行った時点でサボる気満々だったけど来て良かった。危うく接客やらされるところだったよ。幸の営業スマイルすら見せたくない俺はクラスを見回して、提案内容に不服だと伝える為に軽く睨む。軽くね。軽く。本気だと相手がビビって話し合いが出来なくなるからね。俺って優しい。あー、早く他の案出せよ。黒板を睨み付けてると、幸が問題集を閉じて短く息を吐き出した。その息に、頬杖を付いていた手を幸の髪に伸ばす。構ってもらえるチャンスに俺の心は期待で膨らむ。
「これも飽きたな」
参考書いっぱい持ってるもんね。それで飽きたの何冊目?って感じ。千秋からのお下がりは未だに気に入ってるみたいだけど、それ以前に参考書の増えるペースが凄いんだよね。
「多木崎、少しはクラスの事に関心を持ってくれないか?」
「無理ですね」
担任の言葉を幸は一刀両断で切り捨てる。
「ぶっは!」
マジ最高。腹を抱えて机に突っ伏した俺は声を出して笑う。初めて会ったときもだけど、幸は不利益と感じたものはすぐに切り捨てる。その判断に迷いが無さすぎて今回みたいに言い返す訳だけど、俺にはそれが堪らない。
「香山、多木崎に話し合いに参加する様に言ってくれ」
「あー、俺も今回の案件には興味無いので、叱る権利が無いです」
「「ぶっは!」」
ミーちゃんまで最高過ぎる。潔い。潔すぎるよ。秋谷と二人して腹を抱えて笑う姿は、今じゃ珍しくなくなったけど、それでもクラスの空気がざわつくのは変わらない。
「ひー、無理無理、はー、ははっ、笑い死ぬ」
目元の涙を拭って前を向くと呆れた顔の幸と目があった。
「わー、良い男ー」
「脳ミソ取ってこい」
「ちゃんと入ってまーす」
呆れる幸の横には不機嫌なミーちゃんが居た。
「何も面白くないよ」
「わ、悪い。ははっ」
「もー」
秋谷をあんだけ笑わせられるのは、この世界でミーちゃんだけだよ。改めて黒板に目を向けると、四時間目ってこともあって腹が空腹を訴えだした。これは早期解決せねば。
「カレーは去年大赤字のクラスあったよねー」
「焼きそばも腹痛騒動があったとか聞いたな」
秋谷も早期解決に動き出した所を見ると、ミーちゃんの機嫌取りを今すぐにでもしたいって所かな。
「火がちゃんと通ってなかったんでしょ。最悪だよね。幸慈ー、煮ない焼かない切らない食べ物ってない?」
残念ながら俺の辞書にそんな食べ物はない。
「……かき氷とか」
「わー、それ凄く素敵ー!」
幸の知識に惚れる。惚れてるけど。俺は立ち上がって、左手で自分と幸の鞄を持つ。鞄を取り返そうとした幸の右手を避けて、代わりに左腕を掴んで立たせてからドアの方へ足を動かす。
「お、おいっ」
「あー、そうそう」
足を止めて幸の腕を掴んでいた右手を腰に移して抱き寄せる。
「接客なんてやらせようもんなら、客寄越させねぇようにするから」
裏方の役割をやらせるように脅迫してから教室を出る。秋谷も少ししてから、ミーちゃんと鞄を抱き抱えて教室から出てきた。授業の途中だからって正論を言ったミーちゃんを、無理矢理連れてきた様にも見えるけど、まぁ良いか。
「歩き憎い」
「あ、ごめんね」
腰に回していた手を離して、幸の左手を握る。それが理解できないと言うように、幸は眉間にシワを作った。
「何でこうなる?」
「普通でしょ。秋谷とミーちゃんもよくやるよ」
「立場が違うだろ」
誰の立場と比べてるのさ。本当、悲しい位に真面目過ぎ。
「行くよー」
「ちょっ」
恋人じゃないなら手を繋ぐ資格はない。そんな事は無いのに。家族と手を繋がないの?友達とも繋いだことないの?そう聞いたら、きっと幸は考え込んで、黙ってしまう。だから言わない。言わないけど、振り回す位は許してよ。どうしようもない位に好きなんだから。
「雨か」
秋谷の言葉に外を見ると、遠くで空が光ってるのが見えた。
「通り雨があるかもってテレビで言ってたよ」
抱っこ状態のミーちゃんの言葉に秋谷は、そうか、と頷く。
「なら帰りまでには止むな」
「でも屋上使えないね」
「その辺の空き教室で食べよっか」
仕方なく空き教室を目指す事にした。梅雨になると屋上が使えなくなるの忘れてたよ。しばらくは空き教室だね。湿気嫌だな。髪セットするの時間掛かるじゃん。右側を歩く幸に目を向けると、通り雨に興味無いのか、腕時計に目を向けていた。幸の髪はさらさらだよね。髪質がそうなのかな。羨ましい。見つけた空き教室に入って、内側から鍵を掛ける俺の動きに、誰一人疑問を口にする事なく、教室と同じ席に座り出す。俺達が空き教室を勝手に使った所で、誰も注意なんてしに来ない。俺が好きな時間を邪魔されたら、どんだけ怒るかを知ってるからこそ、好きにさせてくれてるんだろうな。優しさなのか、触らぬ神になんとやら精神かは知らないけど。俺も椅子に座って鞄から幸専用の弁当箱を取り出す。喧嘩の時に鞄を地面に放り投げた事を思い出して、慌てて弁当箱を確認する。外見は大丈夫そう。これなら中身も大丈夫かな。
「さて、今日のお弁当は何でしょうか?」
「ゼリー飲料」
当然のように返ってくる幸からの答えに肩を落とす。
「いい加減出てこないって学ぼうね。お弁当箱からゼリー飲料出てくるの見たことある?」
「はぁー」
「溜め息止めて」
そんなに俺の持ってくる弁当食べるの嫌かなぁ。幸のに比べれば、足元にも及ばないけど。それでも頑張ってるんだよ。
「どうせおにぎりだろ。他に作れるの知らねぇし。まん丸が三角になっただけでも立派か」
「レトルトとインスタントは作れますぅ」
秋谷の言葉に言い返すと、幸は短く息を吐き出した。
「自慢する事じゃないな」
「えっ!そうなの!?」
幸の言葉にショックを受ける俺の前で三人仲良く頷く。俺のレパートリーおにぎりしかないって事じゃん!
「保冷剤の数すごいな」
秋谷の言葉にミーちゃんのお弁当袋の中を覗くと、保冷剤が五個入ってた。何でこんなに?ミーちゃんの手が弁当箱を取り出して蓋を開ける。出てきた中身に幸以外の三人が驚いて、即座に携帯を取り出す。プチ撮影会が始まる位に凄かった。
「幸慈天才!どうやって作ったの!?」
フルーツサンドは今や主流の食べ物で、若者を中心に流行ってる。でも、幸が作ったのは萌え断とやらのフルーツサンドで、イチゴの断面がチューリップだったりと、可愛さ満点の出来映えだった。俺の幸天才!つーか、これ作ってる姿を想像するだけでキュンが止まらない!
「何で秋谷まで写真撮ってんの?」
「参考資料用だ」
あー、ミーちゃん用の特別レシピに追加するのね。俺も幸用のレシピ増やしたいな。
「野菜サンドも作ってる所は流石だね」
「騒ぎすぎだろ」
そう言う幸の手にゼリー飲料が握られていることに気付いた俺は、慌てて取り上げた。
「どこに隠し持ってたの!?」
「鞄」
机の上に置いた鞄を見ると、幸の鞄の口が開いていた。
「やっぱり合鍵を作るしか……」
「ヒーくん、携帯のフォルダーいっぱいになってきたね。整理してあげよっか?」
ミーちゃんの言葉に俺は涙を飲むことにした。パソコンのデータだけでなく、最近集めた幸の写真まで人質にされるなんて、たまったもんじゃない。携帯を握り締めて項垂れる俺の気持ちを理解したのか、ミーちゃんはポテトサラダサンドを手にとって一口噛る。あー、めちゃくちゃ美味しそう。
「美味しいっ」
だよねぇ。
「良かったな」
「うんっ」
俺もあんな会話を幸としたい。勇んで幸を見ると、ゼリー飲料を飲んでいた。
「どっから出したの!?」
「鞄」
「何個入れてるの!?」
幸の鞄を漁ろうとした所で、ミーちゃんと目があって手を止める。挑む前から負けが見える日が来るなんて。俺は手を引っ込めて、降参する様に息を吐く。
「鹿沼も最近は弁当なんだな」
幸の言葉にミーちゃんが秋谷の弁当を見る。幸ってば、ミーちゃんがわざと秋谷の弁当を見るように仕向けちゃって。秋谷の料理の上達スピードには、幸が関与してるって解ってるんだからね。周りの恋を応援するのは良いけど、俺の恋にも目を向けてほしいです。
「あぁ、やってみると案外面白い」
「お弁当箱に詰めるの楽しいよねー」
「未来が詰める事なんてほとんど無いだろ」
「何回かはあるよ!」
ごめんねミーちゃん。今のは幸に同意しちゃう。去年ピクニックを無理矢理やった時しか見た記憶がないからね。
「詰めるのは楽しいが、センスはあんまりだ」
いやいや、きっちり収まってるよ。ミーちゃんに見られるからって張り切ってるの丸解りだから。
「そんな事ないよ!色合いとか凄く綺麗に並べられてて、開けただけで笑顔になるお弁当だよ!」
「そ、そうか。ありがとう」
「うん!」
俺の弁当って質素だよね。こんなのを好きな子に、なんて、普通なら有り得ない。でも幸は違う。俺が没収したゼリー飲料に伸ばす左手を、右手で掴んで幸を睨む。
「ゼリー飲料は禁止したでしょ。はい、これ食べて。量も減らしたから、今日こそは食べきってよね」
幸の手に無理矢理弁当を持たせて息を吐くと、幸まで息を吐いた。
「ゼリー食べたし」
「それは俺も予想外だったよ」
ゼリー食べたから完食は無理って事みたい。食べなきゃ良いのに。いつまで経っても開けそうにない弁当箱の蓋を開けると、秋谷が首を傾げた。
「俵じゃねぇか。三角諦めたのか?」
秋谷のチョットした疑問に、俺も三角を作りたかったよ、と、内心で肩を落とす。
「一口サイズと言って」
「団子サイズにならないと良いな」
これ以上小さいおにぎりを作ると、具が入れられなくなるんだけど。
「団子かぁ、幸慈なら有り得そう」
「ミーちゃん、怖いこと言わないで」
「今の話の何が怖いんだ?」
幸の他人事発言に涙が出そうだよ。
「自分の弁当は?」
秋谷の質問に苦笑する。
「これから購買。朝買えなくてさ」
「我が儘言うからだろ」
「だって!あそこの店員共、幸慈に色目使うじゃん!」
「んなわけあるか」
「あるの!」
幸には何で好意の有り無しが解らないのかなぁ。解ればこんなに苦労しなくて済むのに。チャイムが鳴って、靴音が廊下に響く。急がないと食べるの無くなるじゃん!
「もぉー、戻ってきたら会議だからね!」
嫌そうな顔をする幸の額に、軽くデコピンしてから財布を持って教室を出る。急ぐ振りも最初だけ。周りが急いで購買に向かう中、俺は慌てず騒がず、のんびり歩く。幸は、俺の前で食べるのを好まない気がするから、わざとこうするようになった。まぁ、嫌でも皆順番を俺に譲ってくれるから、買えないなんて有り得ないけど。本当は幸の手作り弁当が食べたいけど、それは幸の負担になりそうだから今は我慢。でもあのサンドイッチはずるい。めちゃくちゃ可愛いし、美味しいの確定じゃん。ミーちゃんが羨ましいよー。項垂れながら校門の方へ目を向ける。幸はまだ知らない。アイツがこの周りを彷徨いている事を。幸がこのまえ俺に返却しろと言ったラブレターは、紛れもなくアイツからだった。どんな手を使って下駄箱に入れてるんだろうね。オジィにも伝えてるから、優秀なガードマンが幸を守ってる。千秋の所のヘッポコ共とは違って、上手く動いてくれてるから、敏感な幸も気付いてない。まぁ、千秋の場合は薫が鬼ごっこしたがるから、丁度いいのを宛がってる気もするけど。出来るなら、幸に被害が出る前にどうにかしたいのが本音。相手の親と弁護士を通して、何度も話してるみたいだけど、一向に進展がないんだよね。警察も絡んだ案件だからオジィに任せてるけど、その分自由に動けない。歯痒いなぁ。こういうとき、早く大人になりたいと思う。でも、なったらなったらで、子供に戻りたいとか思うんだろうな。購買に入ると、面白いぐらいに道が出来た。見つけたフルーツサンドを真っ先に手に取る。他にも適当に選んでレジに持っていく。袋にまでお金を払う日が来るなんて思わなかったよ。購買を出て、パトロールとして下駄箱に向かう俺の耳に、アイツの名前が届いて足を早める。ここで捕まえられれば、向こうの親も動かずにはいられないはず。下駄箱に着いて直ぐに外を見回すも、アイツの姿はなかった。けど、幸の下駄箱にはアイツからの手紙が入ってる。オジィにメールだけして手紙をズボンに突っ込む。守ってみせる。今度こそ。もう、あんな思いはさせない。
「傷んできたな」
傷や汚れの増えた幸の靴を見て、雅と鬼ごっこしてた時の事を思い出す。あの時の服は捨てたけど、新しい服を届けることが出来ないでいる。バカ女のせいで幸に迷惑かけたな。オジィは話を付けたって言ってるけど、バカに効果があるかどうかは別。てか、最近雅と仲良過ぎでしょ。祭の件もあったせいかもだけど、俺としては喜ばしくない。でも、幸の笑顔が増えたのは、薫達に会ってからだ。それが悔しい。幸の世界を変えている。その事実が、俺に無力さを突き付けて、嘲笑う。
「始まりからして違うもんなぁ」
「何のだ?」
「いやー、普通はさぁ、もっとこう、ドキドキするような感じの出会いとかしたいわけよ」
「ドキドキ?」
「そう!」
反射的に顔を左に向けて同意を求めた視線の先に、不思議そうな顔をした幸が居た。
「初対面でドキドキは無いだろ。してるなら、心疾患の何かかもな」
恋愛のドキドキを心疾患って。さすが幸。とてつもない感性をお持ちでいらっしゃる。
「いつからそこに?」
「そんなのは大した問題じゃない」
大した問題だよ!
「何かあった?一人で歩き回るのは控えてよね。ナンパされちゃうよ」
ナンパと聞いて、幸は少し考え込む。
「途中で飲み物を献上してくれそうなのは居たな」
「どこで?何年?見た目の特徴は?触られてない?ちゃんと断れた?」
幸の髪や制服を確認しながら、矢継ぎ早に聞く俺の言葉に、面倒臭そうな顔を向けてくる。
「てか、何で安全な場所に居ないの?」
「安全?俺にとっての障害は檜山一人だ」
「え、待って、冷静になろ。早まらないで」
障害は俺だけってこと?何で?その辺の奴より俺の方が問題なの?理解できない。これ解決しないと安心して見守れないんですけど。
「コーヒー」
幸の言葉に、あぁ、と、袋を軽く揺らす。コンビニ行かなかったから、幸のコーヒー買わないで終わっちゃったんだよね。でも、たかがコーヒーだよ。幸慈を狙ってるヤツ等の中を歩いて来るほど、大層なものじゃないのに。本当、幸は学校での自分の立場が解ってない。俺と恋人って話が、どれだけ身の安全に繋がってるのか知らな過ぎ。まぁ、怯えながら毎日を過ごされるよりは良いけど。無自覚というのも問題だよ。
「茜くん、コーヒー」
可愛らしいおねだりの言葉に、心配事は頭の隅に追いやられてしまう。仕方ないよね。幸が欲しいものを与えるのが俺の至福なんだから。
「ブラックで」
「えー。カフェオレにしてみない?」
「みない」
だよねー。幸の右手を左手で掴んで、一階の渡り廊下の自販機に向かう。何故手を繋ぐ必要があるのか聞かれたけど、好きだから以外の理由なんて無いよね。笑顔だけ返すと、無表情に首を傾げた。可愛い。自販機の前に着いてしまい渋々手を離す。財布を取り出して、お金を投入口に入れブラックコーヒーを迷わずに選ぶ。ガコンッと出てきた缶コーヒーを取り出して幸に渡す。直ぐに教室へ戻るのかと思ったけど、近くの柱に背を預けて動こうとしない。
「ミーちゃんと秋谷に気を遣ってる?」
缶コーヒーを両手の中で遊ばせながら、軽く息を吐く姿にすらキュンとする。
「色々迷惑かけてるからな。少しは二人の時間を作ってやらないと」
律儀。
「じゃあ、俺も気を遣わないとだね」
「大半は檜山が原因だからな」
「返す言葉もない」
そう、大半は俺のせい。大半どころじゃなくて、全部か。でも、結果的に幸と二人で過ごせてるのはラッキーかな。幸の前に立って、髪に鼻先を当てる。
「何だよ」
「んー、幸の匂いだなぁって」
「離れろ」
渋々顔を離すかわりに、缶コーヒーを持つ幸の両手を、自分の両手で包む。
「じゃあ質問」
「質問?」
「何で雅と京崎が幸の家に泊まったの?」
俺の質問に幸は長い溜め息を吐いた。
「勉強の話じゃないのか」
「あからさまにガッカリしないで。ほら、答えてくれないと誘拐するよ」
「それは困る。檜山の保護者が迎えに来るんだ」
「それもだよ!」
大声を出した俺に驚いたのか、幸は肩を跳ねさせた。
「ど、どれだ?」
瞬きを繰り返しながら聞いてくる姿がメチャクチャ可愛い。でも今はそれどころじゃない。
「何でオジィとそんなに仲良しなの?俺対策する理由って何?」
「本気で解らないのか?」
「解んない」
信じられない、みたいな顔をして息を吐き出す幸の姿に泣きたくる。
「保護者に聞いてこい」
柱から背中を離そうとした幸の両肩を掴んで動きを止める。
「何だよ」
「俺に死ねと?」
「……死なないだろ」
「死ぬほど怖いんだってば!」
オジィが怒るとどれ程怖いのか力説しても、幸には全く伝わらない。まぁ、恩を感じても、恐怖を感じることは経験ないから、イメージわかなくても仕方ないか。
「俺との時間も作ってよ!」
「作ってるだろ」
「いつ!?」
「今」
当たり前のように吐き出された言葉に、思考が止まる。今。確かに二人だ。コーヒー目当てとは言え、結果的に幸と二人。朝は俺が迎えに行ったから二人だったけど、今は幸の方から会いに来てくれたわけで。今だけはブラックコーヒーに感謝!状況を理解した俺は幸を抱き締めて、さらさらの髪に頬擦りをする。
「好き過ぎてヤバイ」
「(今更な事を何度言うつもりなんだか)コーヒー飲んでも良いか?」
「もちろん」
「離れてくれないと飲めない」
「離れたくない」
「保護者にでも相談するか」
幸の言葉に素早く離れる。変わりに缶コーヒーを昼飯の入った袋に入れて、幸の右手を掴んで歩き出す。
「どこ行くんだ?」
「ミーちゃんの所帰るの。コーヒー飲んでお腹一杯って言われたら困るからね」
「ゼリー食べたし」
「本当勘弁して」
少食大会があれば優勝してただろうな。今日も今日とて痩せてるし。抱き心地は最高だけど、心配に変わりはない。
「あ、忘れてた」
足を止めた俺の背中に幸の顔がぶつかる。慌てて振り向くと、鼻を擦る幸の姿があって血の気が引いた。持ってた袋を地面に落とし、両手で幸の頬を包む。
「ご、ごめん!大丈夫!?血出てない?」
顔を覗き込む俺の鼻を幸の左手が摘まむ。
「歩幅考えろ」
「ごめんなさい」
何度目かの同じお叱りに肩を落とす。この間学んだばっかりなのに。
「で、何だ?」
「んー、本当にしたの?お泊まり会」
「した」
薫の勘的中。やっぱりしたのね。俺抜きで。でも、あの家に布団は一セットだけだったはず。どっちかが幸と同じベッドで寝たってことだよね。嫉妬がヤバイんですけど。
「俺は当然嫉妬しまくりだけど、薫が拗ねてたよ。夏休みに千秋と突撃お泊まり会しに行くって言ってるし」
「事前連絡も無しにか?」
「突撃って付く位だし。俺、いつになったら幸の部屋入れるの?」
「未来と保護者の許可書持ってこい」
「一生入れる気がしない」
幸は大袈裟だと呆れるけど、実際はかなり難易度が高い。祭前の一件以来、ミーちゃんは俺に対して反抗期丸出し状態で、オジィは見張りを付けてまで俺を監視してる。幸を迎えに行けただけでもラッキーなのに。ラッキーを越える程の実績を求められるなんて。いや、まぁ、幸らしいけど。
「デートしたいです」
「どうぞ」
「え、他人事?」
「デートしてくれる相手が出来たんだろ。良かったな」
「いや、待って。え、待って待って待って」
その場にしゃがみこんで頭を抱える。今のやり取りってどうなの?幸じゃない相手とデートしたいって思われたって事?どうぞって言った?気にしないって意味?ヤバイ、整理出来ない。ズボンの右ポケットから携帯を取り出して、オジィのアドレスを探して通話をタッチする。数回のコールで出たオジィの声に目からは涙が溢れた。
「オジィ!幸慈がデートしてくれない!」
「はぁ!?」
『……そうか、それは残念だな』
「電話切れ!仕事中に迷惑だろ!」
携帯を取り上げ様としてくる幸の手を阻止しながら、デートしたいと訴える。
「じゃあデートしてよ!」
「しない!」
「じゃあ切んない!」
オジィ、人質みたいにしてごめん。
「子供かオマエは!」
「オマエじゃないし!」
『(何を聞かされているんだろう。しかし、そうか。幸慈くんは茜にきちんと意見を言って、叱る事が出来るんだな)』
「忙しい相手に電話して我が儘言う子供はオマエ呼びで十分だ!」
「子供相手なら、くん付けとか、ちゃん付けとかしてよ!」
『二人とも落ち着きなさい』
「「……はい」」
言い合ってるとオジィの声が聞こえて、俺も幸も口を閉じる。
『幸慈くんにも都合と言うものがあるのだから、無理強いをしてはいけないよ。茜の場合は直ぐに日程を決めたがるだろ。予定の無い日であれば、遊んでくれるだろうから、合わせることをしてあげなさい』
また幸を庇ってる。最近は幸を優先する言葉や行動が多くなってきたとは思ってたけど、まさかオジィ、幸に惚れちゃった?いや、そうならとっくに行動に出してるはず。
「幸に合わせてたら一生恋人になれないし」
「ならないし」
キッ、と、幸を睨むと、フンッ、とそっぽを向かれた。うー、と、唸ると、オジィから唸るなと叱られる。嫌いじゃないのに、好きじゃないとか、全然意味解んないってば。
「今日は諦めます」
ずっとで良いのに、と、ぼそりと呟いた幸をもう一度睨む。オジィとの電話を終えて、落とした袋を拾う。
「今日は、だからね!」
聞こえない振りをして、ミーちゃんの所へ帰ろうとする幸を、後ろから抱き締める。そんな俺を邪魔にする幸の反応が、さっきまで言い合ってた子供みたいなやり取りを思い出して、息を溢すように笑う。
「なんか楽しい」
「は?」
「こうして幸と話すの。すっごい楽しい」
「こっちは疲れる」
「えー」
考え方が違うって事くらいじゃ、落ち込まない。それは当たり前だって知ってるからね。缶コーヒー理由にでも、二人の時間が出来た事に大満足しないと。幸に不満は無いけど、心配だけは影みたいに付きまとう。コーヒーを献上されそうになるとか、聞いただけでイライラする。それをなんとも思ってないところが心配だよ。学校はボディーガードの目が離れるから、俺が見ておかないと駄目なのに。でも、仕方ないよね。あのクズが居るなんて教えたら、絶対に怖がる。また父親を思い出す。気に入らない。幸の深いところに、未だに居座る存在と恐怖に殺意が沸く。母さんを捨てないで。幸が無意識に発した言葉が頭から離れない。それは、間違いなく父親に向けた言葉。自分はどうでも良いから、なんて、そんな事を思わせる親の方が悪いのに。当時の幸にはそんな事解るはずもなかった。とても小さかったんだから。
「止んできたな」
幸の言葉に、空へ目を向ける。
「本当だ。虹見れるかな」
「屋上からなら見れたかもな」
「よし、行こう」
「は?おいっ」
幸の体を横抱きにして、屋上へ走り出す。幸の抗議の言葉は一旦無視して、人通りの少ない道を選んで足を動かした。本当は、虹なんてどうでも良いんだ。ただ、幸との時間をもう少し伸ばしたいだけ。本当はゆっくり屋上に行きたい。でも、虹をみたいって口実があるから、走らないと怪しまれる。泣く泣く駆け上がった階段の先にあるドアの前で幸を下ろす。すっごい睨まれたけど無視する事にした。右手でトアノブを捻って扉を開ける。雨独特の匂いが一気に肺を支配しだす。所々出来た水溜まりを避けるように、虹が出そうな場所を探す為に足を動かすけど、そもそも虹が出そうな空が解らない。ここまで来たからには見たかったけど、諦めよう。肩を落とす俺の左腕を幸が引っ張ってきて、顔を向ける。
「出てるぞ」
そう言って幸は右手の人指し指で、俺が見てるのとは正反対の方を指す。そっちへ目を向けると、うっすらした何かが、確実な形として現れる。
「デッカ!」
ホースとかで小さな虹を出したことはあるけど、あんなに大きな虹は初めて見た。急いで携帯を取り出してカメラを起動する。取り敢えず、連写しとけば気に入るのが一枚はあるでしょ。
「撮ったやつ見る?欲しいのあったらプリントしてくるよ」
「要らない」
「前から思ってたんだけど、幸って写真嫌い?」
「笑顔を強要されるのが嫌いなだけだ」
解る気がする。
「本当に大事なことは、写真にしなくても忘れない」
虹を見ながら言う姿に、俺の事はどれだけ覚えててくれているのか、聞きたくなった。俺は大切だから目に見える形で残したい。幸は、残そうとカメラを構える時間すら惜しい位、それを見つめていたいんだろうな。その場所に居るのは、俺が良い。少しでもその瞳に写りたくて、左手で幸の体を抱き寄せる。また横抱きされると思ったのか、幸の体が一瞬強張った。何も無いと判断して力を抜いた体を、更に抱き寄せる。怪訝そうに見上げてくる顔も、ただただ愛しい。ねぇ、幸。いつか、デートしようね。今日みたいに手を繋いで、同じ歩幅で歩いて、些細な事を笑い合えたりするような、そんなデートをさ。
黒板に書かれた幾つもの候補に悩むクラス連中を他所に、幸は持参しているAO入試の過去問に意識を集中させてる最中。こうなったら何がなんでも会話に入らないんだよね。ま、目の前に居るってだけで、今は満足しときましょう。幸の代わりに、文化祭の出し物の話し合いに耳を傾けて、面倒な役割に割り振られないよう監視しないと。黒板に書かれたのはどれも飲食を扱うもので、色々と手間がかかりそうで嫌だな。ミーちゃんなんて接客当番から逃げれたとしても、残された調理当番も逃げたいくらいに嫌だろうし。秋谷もミーちゃんの役割には神経質になってるせいか、いつもより俺達の空気はピリピリしてる。そもそも男子校の文化祭で飲食って限界あるでしょ。誰が喜ぶんだよ。それ以前に幸の手料理を他の男共に食わせるなんて絶対させねぇ。幸を迎えに行った時点でサボる気満々だったけど来て良かった。危うく接客やらされるところだったよ。幸の営業スマイルすら見せたくない俺はクラスを見回して、提案内容に不服だと伝える為に軽く睨む。軽くね。軽く。本気だと相手がビビって話し合いが出来なくなるからね。俺って優しい。あー、早く他の案出せよ。黒板を睨み付けてると、幸が問題集を閉じて短く息を吐き出した。その息に、頬杖を付いていた手を幸の髪に伸ばす。構ってもらえるチャンスに俺の心は期待で膨らむ。
「これも飽きたな」
参考書いっぱい持ってるもんね。それで飽きたの何冊目?って感じ。千秋からのお下がりは未だに気に入ってるみたいだけど、それ以前に参考書の増えるペースが凄いんだよね。
「多木崎、少しはクラスの事に関心を持ってくれないか?」
「無理ですね」
担任の言葉を幸は一刀両断で切り捨てる。
「ぶっは!」
マジ最高。腹を抱えて机に突っ伏した俺は声を出して笑う。初めて会ったときもだけど、幸は不利益と感じたものはすぐに切り捨てる。その判断に迷いが無さすぎて今回みたいに言い返す訳だけど、俺にはそれが堪らない。
「香山、多木崎に話し合いに参加する様に言ってくれ」
「あー、俺も今回の案件には興味無いので、叱る権利が無いです」
「「ぶっは!」」
ミーちゃんまで最高過ぎる。潔い。潔すぎるよ。秋谷と二人して腹を抱えて笑う姿は、今じゃ珍しくなくなったけど、それでもクラスの空気がざわつくのは変わらない。
「ひー、無理無理、はー、ははっ、笑い死ぬ」
目元の涙を拭って前を向くと呆れた顔の幸と目があった。
「わー、良い男ー」
「脳ミソ取ってこい」
「ちゃんと入ってまーす」
呆れる幸の横には不機嫌なミーちゃんが居た。
「何も面白くないよ」
「わ、悪い。ははっ」
「もー」
秋谷をあんだけ笑わせられるのは、この世界でミーちゃんだけだよ。改めて黒板に目を向けると、四時間目ってこともあって腹が空腹を訴えだした。これは早期解決せねば。
「カレーは去年大赤字のクラスあったよねー」
「焼きそばも腹痛騒動があったとか聞いたな」
秋谷も早期解決に動き出した所を見ると、ミーちゃんの機嫌取りを今すぐにでもしたいって所かな。
「火がちゃんと通ってなかったんでしょ。最悪だよね。幸慈ー、煮ない焼かない切らない食べ物ってない?」
残念ながら俺の辞書にそんな食べ物はない。
「……かき氷とか」
「わー、それ凄く素敵ー!」
幸の知識に惚れる。惚れてるけど。俺は立ち上がって、左手で自分と幸の鞄を持つ。鞄を取り返そうとした幸の右手を避けて、代わりに左腕を掴んで立たせてからドアの方へ足を動かす。
「お、おいっ」
「あー、そうそう」
足を止めて幸の腕を掴んでいた右手を腰に移して抱き寄せる。
「接客なんてやらせようもんなら、客寄越させねぇようにするから」
裏方の役割をやらせるように脅迫してから教室を出る。秋谷も少ししてから、ミーちゃんと鞄を抱き抱えて教室から出てきた。授業の途中だからって正論を言ったミーちゃんを、無理矢理連れてきた様にも見えるけど、まぁ良いか。
「歩き憎い」
「あ、ごめんね」
腰に回していた手を離して、幸の左手を握る。それが理解できないと言うように、幸は眉間にシワを作った。
「何でこうなる?」
「普通でしょ。秋谷とミーちゃんもよくやるよ」
「立場が違うだろ」
誰の立場と比べてるのさ。本当、悲しい位に真面目過ぎ。
「行くよー」
「ちょっ」
恋人じゃないなら手を繋ぐ資格はない。そんな事は無いのに。家族と手を繋がないの?友達とも繋いだことないの?そう聞いたら、きっと幸は考え込んで、黙ってしまう。だから言わない。言わないけど、振り回す位は許してよ。どうしようもない位に好きなんだから。
「雨か」
秋谷の言葉に外を見ると、遠くで空が光ってるのが見えた。
「通り雨があるかもってテレビで言ってたよ」
抱っこ状態のミーちゃんの言葉に秋谷は、そうか、と頷く。
「なら帰りまでには止むな」
「でも屋上使えないね」
「その辺の空き教室で食べよっか」
仕方なく空き教室を目指す事にした。梅雨になると屋上が使えなくなるの忘れてたよ。しばらくは空き教室だね。湿気嫌だな。髪セットするの時間掛かるじゃん。右側を歩く幸に目を向けると、通り雨に興味無いのか、腕時計に目を向けていた。幸の髪はさらさらだよね。髪質がそうなのかな。羨ましい。見つけた空き教室に入って、内側から鍵を掛ける俺の動きに、誰一人疑問を口にする事なく、教室と同じ席に座り出す。俺達が空き教室を勝手に使った所で、誰も注意なんてしに来ない。俺が好きな時間を邪魔されたら、どんだけ怒るかを知ってるからこそ、好きにさせてくれてるんだろうな。優しさなのか、触らぬ神になんとやら精神かは知らないけど。俺も椅子に座って鞄から幸専用の弁当箱を取り出す。喧嘩の時に鞄を地面に放り投げた事を思い出して、慌てて弁当箱を確認する。外見は大丈夫そう。これなら中身も大丈夫かな。
「さて、今日のお弁当は何でしょうか?」
「ゼリー飲料」
当然のように返ってくる幸からの答えに肩を落とす。
「いい加減出てこないって学ぼうね。お弁当箱からゼリー飲料出てくるの見たことある?」
「はぁー」
「溜め息止めて」
そんなに俺の持ってくる弁当食べるの嫌かなぁ。幸のに比べれば、足元にも及ばないけど。それでも頑張ってるんだよ。
「どうせおにぎりだろ。他に作れるの知らねぇし。まん丸が三角になっただけでも立派か」
「レトルトとインスタントは作れますぅ」
秋谷の言葉に言い返すと、幸は短く息を吐き出した。
「自慢する事じゃないな」
「えっ!そうなの!?」
幸の言葉にショックを受ける俺の前で三人仲良く頷く。俺のレパートリーおにぎりしかないって事じゃん!
「保冷剤の数すごいな」
秋谷の言葉にミーちゃんのお弁当袋の中を覗くと、保冷剤が五個入ってた。何でこんなに?ミーちゃんの手が弁当箱を取り出して蓋を開ける。出てきた中身に幸以外の三人が驚いて、即座に携帯を取り出す。プチ撮影会が始まる位に凄かった。
「幸慈天才!どうやって作ったの!?」
フルーツサンドは今や主流の食べ物で、若者を中心に流行ってる。でも、幸が作ったのは萌え断とやらのフルーツサンドで、イチゴの断面がチューリップだったりと、可愛さ満点の出来映えだった。俺の幸天才!つーか、これ作ってる姿を想像するだけでキュンが止まらない!
「何で秋谷まで写真撮ってんの?」
「参考資料用だ」
あー、ミーちゃん用の特別レシピに追加するのね。俺も幸用のレシピ増やしたいな。
「野菜サンドも作ってる所は流石だね」
「騒ぎすぎだろ」
そう言う幸の手にゼリー飲料が握られていることに気付いた俺は、慌てて取り上げた。
「どこに隠し持ってたの!?」
「鞄」
机の上に置いた鞄を見ると、幸の鞄の口が開いていた。
「やっぱり合鍵を作るしか……」
「ヒーくん、携帯のフォルダーいっぱいになってきたね。整理してあげよっか?」
ミーちゃんの言葉に俺は涙を飲むことにした。パソコンのデータだけでなく、最近集めた幸の写真まで人質にされるなんて、たまったもんじゃない。携帯を握り締めて項垂れる俺の気持ちを理解したのか、ミーちゃんはポテトサラダサンドを手にとって一口噛る。あー、めちゃくちゃ美味しそう。
「美味しいっ」
だよねぇ。
「良かったな」
「うんっ」
俺もあんな会話を幸としたい。勇んで幸を見ると、ゼリー飲料を飲んでいた。
「どっから出したの!?」
「鞄」
「何個入れてるの!?」
幸の鞄を漁ろうとした所で、ミーちゃんと目があって手を止める。挑む前から負けが見える日が来るなんて。俺は手を引っ込めて、降参する様に息を吐く。
「鹿沼も最近は弁当なんだな」
幸の言葉にミーちゃんが秋谷の弁当を見る。幸ってば、ミーちゃんがわざと秋谷の弁当を見るように仕向けちゃって。秋谷の料理の上達スピードには、幸が関与してるって解ってるんだからね。周りの恋を応援するのは良いけど、俺の恋にも目を向けてほしいです。
「あぁ、やってみると案外面白い」
「お弁当箱に詰めるの楽しいよねー」
「未来が詰める事なんてほとんど無いだろ」
「何回かはあるよ!」
ごめんねミーちゃん。今のは幸に同意しちゃう。去年ピクニックを無理矢理やった時しか見た記憶がないからね。
「詰めるのは楽しいが、センスはあんまりだ」
いやいや、きっちり収まってるよ。ミーちゃんに見られるからって張り切ってるの丸解りだから。
「そんな事ないよ!色合いとか凄く綺麗に並べられてて、開けただけで笑顔になるお弁当だよ!」
「そ、そうか。ありがとう」
「うん!」
俺の弁当って質素だよね。こんなのを好きな子に、なんて、普通なら有り得ない。でも幸は違う。俺が没収したゼリー飲料に伸ばす左手を、右手で掴んで幸を睨む。
「ゼリー飲料は禁止したでしょ。はい、これ食べて。量も減らしたから、今日こそは食べきってよね」
幸の手に無理矢理弁当を持たせて息を吐くと、幸まで息を吐いた。
「ゼリー食べたし」
「それは俺も予想外だったよ」
ゼリー食べたから完食は無理って事みたい。食べなきゃ良いのに。いつまで経っても開けそうにない弁当箱の蓋を開けると、秋谷が首を傾げた。
「俵じゃねぇか。三角諦めたのか?」
秋谷のチョットした疑問に、俺も三角を作りたかったよ、と、内心で肩を落とす。
「一口サイズと言って」
「団子サイズにならないと良いな」
これ以上小さいおにぎりを作ると、具が入れられなくなるんだけど。
「団子かぁ、幸慈なら有り得そう」
「ミーちゃん、怖いこと言わないで」
「今の話の何が怖いんだ?」
幸の他人事発言に涙が出そうだよ。
「自分の弁当は?」
秋谷の質問に苦笑する。
「これから購買。朝買えなくてさ」
「我が儘言うからだろ」
「だって!あそこの店員共、幸慈に色目使うじゃん!」
「んなわけあるか」
「あるの!」
幸には何で好意の有り無しが解らないのかなぁ。解ればこんなに苦労しなくて済むのに。チャイムが鳴って、靴音が廊下に響く。急がないと食べるの無くなるじゃん!
「もぉー、戻ってきたら会議だからね!」
嫌そうな顔をする幸の額に、軽くデコピンしてから財布を持って教室を出る。急ぐ振りも最初だけ。周りが急いで購買に向かう中、俺は慌てず騒がず、のんびり歩く。幸は、俺の前で食べるのを好まない気がするから、わざとこうするようになった。まぁ、嫌でも皆順番を俺に譲ってくれるから、買えないなんて有り得ないけど。本当は幸の手作り弁当が食べたいけど、それは幸の負担になりそうだから今は我慢。でもあのサンドイッチはずるい。めちゃくちゃ可愛いし、美味しいの確定じゃん。ミーちゃんが羨ましいよー。項垂れながら校門の方へ目を向ける。幸はまだ知らない。アイツがこの周りを彷徨いている事を。幸がこのまえ俺に返却しろと言ったラブレターは、紛れもなくアイツからだった。どんな手を使って下駄箱に入れてるんだろうね。オジィにも伝えてるから、優秀なガードマンが幸を守ってる。千秋の所のヘッポコ共とは違って、上手く動いてくれてるから、敏感な幸も気付いてない。まぁ、千秋の場合は薫が鬼ごっこしたがるから、丁度いいのを宛がってる気もするけど。出来るなら、幸に被害が出る前にどうにかしたいのが本音。相手の親と弁護士を通して、何度も話してるみたいだけど、一向に進展がないんだよね。警察も絡んだ案件だからオジィに任せてるけど、その分自由に動けない。歯痒いなぁ。こういうとき、早く大人になりたいと思う。でも、なったらなったらで、子供に戻りたいとか思うんだろうな。購買に入ると、面白いぐらいに道が出来た。見つけたフルーツサンドを真っ先に手に取る。他にも適当に選んでレジに持っていく。袋にまでお金を払う日が来るなんて思わなかったよ。購買を出て、パトロールとして下駄箱に向かう俺の耳に、アイツの名前が届いて足を早める。ここで捕まえられれば、向こうの親も動かずにはいられないはず。下駄箱に着いて直ぐに外を見回すも、アイツの姿はなかった。けど、幸の下駄箱にはアイツからの手紙が入ってる。オジィにメールだけして手紙をズボンに突っ込む。守ってみせる。今度こそ。もう、あんな思いはさせない。
「傷んできたな」
傷や汚れの増えた幸の靴を見て、雅と鬼ごっこしてた時の事を思い出す。あの時の服は捨てたけど、新しい服を届けることが出来ないでいる。バカ女のせいで幸に迷惑かけたな。オジィは話を付けたって言ってるけど、バカに効果があるかどうかは別。てか、最近雅と仲良過ぎでしょ。祭の件もあったせいかもだけど、俺としては喜ばしくない。でも、幸の笑顔が増えたのは、薫達に会ってからだ。それが悔しい。幸の世界を変えている。その事実が、俺に無力さを突き付けて、嘲笑う。
「始まりからして違うもんなぁ」
「何のだ?」
「いやー、普通はさぁ、もっとこう、ドキドキするような感じの出会いとかしたいわけよ」
「ドキドキ?」
「そう!」
反射的に顔を左に向けて同意を求めた視線の先に、不思議そうな顔をした幸が居た。
「初対面でドキドキは無いだろ。してるなら、心疾患の何かかもな」
恋愛のドキドキを心疾患って。さすが幸。とてつもない感性をお持ちでいらっしゃる。
「いつからそこに?」
「そんなのは大した問題じゃない」
大した問題だよ!
「何かあった?一人で歩き回るのは控えてよね。ナンパされちゃうよ」
ナンパと聞いて、幸は少し考え込む。
「途中で飲み物を献上してくれそうなのは居たな」
「どこで?何年?見た目の特徴は?触られてない?ちゃんと断れた?」
幸の髪や制服を確認しながら、矢継ぎ早に聞く俺の言葉に、面倒臭そうな顔を向けてくる。
「てか、何で安全な場所に居ないの?」
「安全?俺にとっての障害は檜山一人だ」
「え、待って、冷静になろ。早まらないで」
障害は俺だけってこと?何で?その辺の奴より俺の方が問題なの?理解できない。これ解決しないと安心して見守れないんですけど。
「コーヒー」
幸の言葉に、あぁ、と、袋を軽く揺らす。コンビニ行かなかったから、幸のコーヒー買わないで終わっちゃったんだよね。でも、たかがコーヒーだよ。幸慈を狙ってるヤツ等の中を歩いて来るほど、大層なものじゃないのに。本当、幸は学校での自分の立場が解ってない。俺と恋人って話が、どれだけ身の安全に繋がってるのか知らな過ぎ。まぁ、怯えながら毎日を過ごされるよりは良いけど。無自覚というのも問題だよ。
「茜くん、コーヒー」
可愛らしいおねだりの言葉に、心配事は頭の隅に追いやられてしまう。仕方ないよね。幸が欲しいものを与えるのが俺の至福なんだから。
「ブラックで」
「えー。カフェオレにしてみない?」
「みない」
だよねー。幸の右手を左手で掴んで、一階の渡り廊下の自販機に向かう。何故手を繋ぐ必要があるのか聞かれたけど、好きだから以外の理由なんて無いよね。笑顔だけ返すと、無表情に首を傾げた。可愛い。自販機の前に着いてしまい渋々手を離す。財布を取り出して、お金を投入口に入れブラックコーヒーを迷わずに選ぶ。ガコンッと出てきた缶コーヒーを取り出して幸に渡す。直ぐに教室へ戻るのかと思ったけど、近くの柱に背を預けて動こうとしない。
「ミーちゃんと秋谷に気を遣ってる?」
缶コーヒーを両手の中で遊ばせながら、軽く息を吐く姿にすらキュンとする。
「色々迷惑かけてるからな。少しは二人の時間を作ってやらないと」
律儀。
「じゃあ、俺も気を遣わないとだね」
「大半は檜山が原因だからな」
「返す言葉もない」
そう、大半は俺のせい。大半どころじゃなくて、全部か。でも、結果的に幸と二人で過ごせてるのはラッキーかな。幸の前に立って、髪に鼻先を当てる。
「何だよ」
「んー、幸の匂いだなぁって」
「離れろ」
渋々顔を離すかわりに、缶コーヒーを持つ幸の両手を、自分の両手で包む。
「じゃあ質問」
「質問?」
「何で雅と京崎が幸の家に泊まったの?」
俺の質問に幸は長い溜め息を吐いた。
「勉強の話じゃないのか」
「あからさまにガッカリしないで。ほら、答えてくれないと誘拐するよ」
「それは困る。檜山の保護者が迎えに来るんだ」
「それもだよ!」
大声を出した俺に驚いたのか、幸は肩を跳ねさせた。
「ど、どれだ?」
瞬きを繰り返しながら聞いてくる姿がメチャクチャ可愛い。でも今はそれどころじゃない。
「何でオジィとそんなに仲良しなの?俺対策する理由って何?」
「本気で解らないのか?」
「解んない」
信じられない、みたいな顔をして息を吐き出す幸の姿に泣きたくる。
「保護者に聞いてこい」
柱から背中を離そうとした幸の両肩を掴んで動きを止める。
「何だよ」
「俺に死ねと?」
「……死なないだろ」
「死ぬほど怖いんだってば!」
オジィが怒るとどれ程怖いのか力説しても、幸には全く伝わらない。まぁ、恩を感じても、恐怖を感じることは経験ないから、イメージわかなくても仕方ないか。
「俺との時間も作ってよ!」
「作ってるだろ」
「いつ!?」
「今」
当たり前のように吐き出された言葉に、思考が止まる。今。確かに二人だ。コーヒー目当てとは言え、結果的に幸と二人。朝は俺が迎えに行ったから二人だったけど、今は幸の方から会いに来てくれたわけで。今だけはブラックコーヒーに感謝!状況を理解した俺は幸を抱き締めて、さらさらの髪に頬擦りをする。
「好き過ぎてヤバイ」
「(今更な事を何度言うつもりなんだか)コーヒー飲んでも良いか?」
「もちろん」
「離れてくれないと飲めない」
「離れたくない」
「保護者にでも相談するか」
幸の言葉に素早く離れる。変わりに缶コーヒーを昼飯の入った袋に入れて、幸の右手を掴んで歩き出す。
「どこ行くんだ?」
「ミーちゃんの所帰るの。コーヒー飲んでお腹一杯って言われたら困るからね」
「ゼリー食べたし」
「本当勘弁して」
少食大会があれば優勝してただろうな。今日も今日とて痩せてるし。抱き心地は最高だけど、心配に変わりはない。
「あ、忘れてた」
足を止めた俺の背中に幸の顔がぶつかる。慌てて振り向くと、鼻を擦る幸の姿があって血の気が引いた。持ってた袋を地面に落とし、両手で幸の頬を包む。
「ご、ごめん!大丈夫!?血出てない?」
顔を覗き込む俺の鼻を幸の左手が摘まむ。
「歩幅考えろ」
「ごめんなさい」
何度目かの同じお叱りに肩を落とす。この間学んだばっかりなのに。
「で、何だ?」
「んー、本当にしたの?お泊まり会」
「した」
薫の勘的中。やっぱりしたのね。俺抜きで。でも、あの家に布団は一セットだけだったはず。どっちかが幸と同じベッドで寝たってことだよね。嫉妬がヤバイんですけど。
「俺は当然嫉妬しまくりだけど、薫が拗ねてたよ。夏休みに千秋と突撃お泊まり会しに行くって言ってるし」
「事前連絡も無しにか?」
「突撃って付く位だし。俺、いつになったら幸の部屋入れるの?」
「未来と保護者の許可書持ってこい」
「一生入れる気がしない」
幸は大袈裟だと呆れるけど、実際はかなり難易度が高い。祭前の一件以来、ミーちゃんは俺に対して反抗期丸出し状態で、オジィは見張りを付けてまで俺を監視してる。幸を迎えに行けただけでもラッキーなのに。ラッキーを越える程の実績を求められるなんて。いや、まぁ、幸らしいけど。
「デートしたいです」
「どうぞ」
「え、他人事?」
「デートしてくれる相手が出来たんだろ。良かったな」
「いや、待って。え、待って待って待って」
その場にしゃがみこんで頭を抱える。今のやり取りってどうなの?幸じゃない相手とデートしたいって思われたって事?どうぞって言った?気にしないって意味?ヤバイ、整理出来ない。ズボンの右ポケットから携帯を取り出して、オジィのアドレスを探して通話をタッチする。数回のコールで出たオジィの声に目からは涙が溢れた。
「オジィ!幸慈がデートしてくれない!」
「はぁ!?」
『……そうか、それは残念だな』
「電話切れ!仕事中に迷惑だろ!」
携帯を取り上げ様としてくる幸の手を阻止しながら、デートしたいと訴える。
「じゃあデートしてよ!」
「しない!」
「じゃあ切んない!」
オジィ、人質みたいにしてごめん。
「子供かオマエは!」
「オマエじゃないし!」
『(何を聞かされているんだろう。しかし、そうか。幸慈くんは茜にきちんと意見を言って、叱る事が出来るんだな)』
「忙しい相手に電話して我が儘言う子供はオマエ呼びで十分だ!」
「子供相手なら、くん付けとか、ちゃん付けとかしてよ!」
『二人とも落ち着きなさい』
「「……はい」」
言い合ってるとオジィの声が聞こえて、俺も幸も口を閉じる。
『幸慈くんにも都合と言うものがあるのだから、無理強いをしてはいけないよ。茜の場合は直ぐに日程を決めたがるだろ。予定の無い日であれば、遊んでくれるだろうから、合わせることをしてあげなさい』
また幸を庇ってる。最近は幸を優先する言葉や行動が多くなってきたとは思ってたけど、まさかオジィ、幸に惚れちゃった?いや、そうならとっくに行動に出してるはず。
「幸に合わせてたら一生恋人になれないし」
「ならないし」
キッ、と、幸を睨むと、フンッ、とそっぽを向かれた。うー、と、唸ると、オジィから唸るなと叱られる。嫌いじゃないのに、好きじゃないとか、全然意味解んないってば。
「今日は諦めます」
ずっとで良いのに、と、ぼそりと呟いた幸をもう一度睨む。オジィとの電話を終えて、落とした袋を拾う。
「今日は、だからね!」
聞こえない振りをして、ミーちゃんの所へ帰ろうとする幸を、後ろから抱き締める。そんな俺を邪魔にする幸の反応が、さっきまで言い合ってた子供みたいなやり取りを思い出して、息を溢すように笑う。
「なんか楽しい」
「は?」
「こうして幸と話すの。すっごい楽しい」
「こっちは疲れる」
「えー」
考え方が違うって事くらいじゃ、落ち込まない。それは当たり前だって知ってるからね。缶コーヒー理由にでも、二人の時間が出来た事に大満足しないと。幸に不満は無いけど、心配だけは影みたいに付きまとう。コーヒーを献上されそうになるとか、聞いただけでイライラする。それをなんとも思ってないところが心配だよ。学校はボディーガードの目が離れるから、俺が見ておかないと駄目なのに。でも、仕方ないよね。あのクズが居るなんて教えたら、絶対に怖がる。また父親を思い出す。気に入らない。幸の深いところに、未だに居座る存在と恐怖に殺意が沸く。母さんを捨てないで。幸が無意識に発した言葉が頭から離れない。それは、間違いなく父親に向けた言葉。自分はどうでも良いから、なんて、そんな事を思わせる親の方が悪いのに。当時の幸にはそんな事解るはずもなかった。とても小さかったんだから。
「止んできたな」
幸の言葉に、空へ目を向ける。
「本当だ。虹見れるかな」
「屋上からなら見れたかもな」
「よし、行こう」
「は?おいっ」
幸の体を横抱きにして、屋上へ走り出す。幸の抗議の言葉は一旦無視して、人通りの少ない道を選んで足を動かした。本当は、虹なんてどうでも良いんだ。ただ、幸との時間をもう少し伸ばしたいだけ。本当はゆっくり屋上に行きたい。でも、虹をみたいって口実があるから、走らないと怪しまれる。泣く泣く駆け上がった階段の先にあるドアの前で幸を下ろす。すっごい睨まれたけど無視する事にした。右手でトアノブを捻って扉を開ける。雨独特の匂いが一気に肺を支配しだす。所々出来た水溜まりを避けるように、虹が出そうな場所を探す為に足を動かすけど、そもそも虹が出そうな空が解らない。ここまで来たからには見たかったけど、諦めよう。肩を落とす俺の左腕を幸が引っ張ってきて、顔を向ける。
「出てるぞ」
そう言って幸は右手の人指し指で、俺が見てるのとは正反対の方を指す。そっちへ目を向けると、うっすらした何かが、確実な形として現れる。
「デッカ!」
ホースとかで小さな虹を出したことはあるけど、あんなに大きな虹は初めて見た。急いで携帯を取り出してカメラを起動する。取り敢えず、連写しとけば気に入るのが一枚はあるでしょ。
「撮ったやつ見る?欲しいのあったらプリントしてくるよ」
「要らない」
「前から思ってたんだけど、幸って写真嫌い?」
「笑顔を強要されるのが嫌いなだけだ」
解る気がする。
「本当に大事なことは、写真にしなくても忘れない」
虹を見ながら言う姿に、俺の事はどれだけ覚えててくれているのか、聞きたくなった。俺は大切だから目に見える形で残したい。幸は、残そうとカメラを構える時間すら惜しい位、それを見つめていたいんだろうな。その場所に居るのは、俺が良い。少しでもその瞳に写りたくて、左手で幸の体を抱き寄せる。また横抱きされると思ったのか、幸の体が一瞬強張った。何も無いと判断して力を抜いた体を、更に抱き寄せる。怪訝そうに見上げてくる顔も、ただただ愛しい。ねぇ、幸。いつか、デートしようね。今日みたいに手を繋いで、同じ歩幅で歩いて、些細な事を笑い合えたりするような、そんなデートをさ。
0
あなたにおすすめの小説
劣等アルファは最強王子から逃げられない
東
BL
リュシアン・ティレルはアルファだが、オメガのフェロモンに気持ち悪くなる欠陥品のアルファ。そのことを周囲に隠しながら生活しているため、異母弟のオメガであるライモントに手ひどい態度をとってしまい、世間からの評判は悪い。
ある日、気分の悪さに逃げ込んだ先で、ひとりの王子につかまる・・・という話です。
真空ベータの最強執事は辞職したい~フェロモン無効体質でアルファの王子様たちの精神安定剤になってしまった結果、執着溺愛されています~
水凪しおん
BL
フェロモンの影響を受けない「ベータ」の執事ルシアンは、前世の記憶を持つ転生者。
アルファ至上主義の荒れた王城で、彼はその特異な「無臭」体質ゆえに、フェロモン過多で情緒不安定な三人の王子たちにとって唯一の「精神安定剤」となってしまう。
氷の第一王子、野獣の第二王子、知略の第三王子――最強のアルファ兄弟から、匂いを嗅がれ、抱きつかれ、執着される日々。
「私はただの執事です。平穏に仕事をさせてください」
辞表を出せば即却下、他国へ逃げれば奪還作戦。
これは、無自覚に王子たちを癒やしてしまった最強執事が、国ぐるみで溺愛され、外堀を埋められていくお仕事&逆ハーレムBLファンタジー!
【完結】毎日きみに恋してる
藤吉めぐみ
BL
青春BLカップ1次選考通過しておりました!
応援ありがとうございました!
*******************
その日、澤下壱月は王子様に恋をした――
高校の頃、王子と異名をとっていた楽(がく)に恋した壱月(いづき)。
見ているだけでいいと思っていたのに、ちょっとしたきっかけから友人になり、大学進学と同時にルームメイトになる。
けれど、恋愛模様が派手な楽の傍で暮らすのは、あまりにも辛い。
けれど離れられない。傍にいたい。特別でありたい。たくさんの行きずりの一人にはなりたくない。けれど――
このまま親友でいるか、勇気を持つかで揺れる壱月の切ない同居ライフ。
【16+4話完結】虚な森の主と、世界から逃げた僕〜転生したら甘すぎる独占欲に囚われました〜
キノア9g
BL
「貴族の僕が異世界で出会ったのは、愛が重すぎる“森の主”でした。」
平凡なサラリーマンだった蓮は、気づけばひ弱で美しい貴族の青年として異世界に転生していた。しかし、待ち受けていたのは窮屈な貴族社会と、政略結婚という重すぎる現実。
そんな日常から逃げ出すように迷い込んだ「禁忌の森」で、蓮が出会ったのは──全てが虚ろで無感情な“森の主”ゼルフィードだった。
彼の周囲は生命を吸い尽くし、あらゆるものを枯らすという。だけど、蓮だけはなぜかゼルフィードの影響を受けない、唯一の存在。
「お前だけが、俺の世界に色をくれた」
蓮の存在が、ゼルフィードにとってかけがえのない「特異点」だと気づいた瞬間、無感情だった主の瞳に、激しいまでの独占欲と溺愛が宿る。
甘く、そしてどこまでも深い溺愛に包まれる、異世界ファンタジー
【完結】ルガルの星―冷徹な社長は、僕の運命を知っていた―
綾波絢斗
BL
この世界には、二つの特別な称号を持つ者たちが存在する。
一つは、絶対的な権力を持つ王の称号――ルガル(lugal)。
もう一つは、ルガルと対をなし、その力を補う「番」――ムル(mul)。
ルガルは生まれながらに選ばれし存在。
国家からエリート教育と地位を与えられ、能力に応じて厳格なランク分けが行われる。
最上位のルガルは、政治さえも動かす絶対者だ。
一方で、ムルは生まれた瞬間にはその正体がわからない。
遺伝子検査や学力テストを経て候補が絞られるが、
最終的に「真のムル」かどうかを見極められるのは――ルガルだけ。
ムルが覚醒したとき、同じ場所に「紋章」が現れ、その瞬間から、ルガルとムルの力は共鳴し始める。
ムルの能力はルガルの力を最大限に引き出す。
ゆえにルガルたちは、自らのムルを求め、時には他人のムル候補を奪い合う。
そして、すべての出生データと遺伝情報を管理するのは、
巨大企業イルジオン――国家をも超える存在。
その頂点に立つ社長、一条レイ。
冷徹なルガルの頂点に君臨する彼が「自分のムル」と出会った。
異世界転生した俺のフェロモンが「全種族共通の特効薬」だった件 ~最強の獣人たちに囲まれて、毎日代わりばんこに可愛がられています~
たら昆布
BL
獣人の世界に異世界転生した人間が愛される話
一部終了
二部終了
ジャスミン茶は、君のかおり
霧瀬 渓
BL
アルファとオメガにランクのあるオメガバース世界。
大学2年の高位アルファ高遠裕二は、新入生の三ツ橋鷹也を助けた。
裕二の部活後輩となった鷹也は、新歓の数日後、放火でアパートを焼け出されてしまう。
困った鷹也に、裕二が条件付きで同居を申し出てくれた。
その条件は、恋人のフリをして虫除けになることだった。
闘乱世界ユルヴィクス -最弱と最強神のまったり世直し旅!?-
mao
BL
力と才能が絶対的な存在である世界ユルヴィクスに生まれながら、何の力も持たずに生まれた無能者リーヴェ。
無能であるが故に散々な人生を送ってきたリーヴェだったが、ある日、将来を誓い合った婚約者ティラに事故を装い殺されかけてしまう。崖下に落ちたところを不思議な男に拾われたが、その男は「神」を名乗るちょっとヤバそうな男で……?
天才、秀才、凡人、そして無能。
強者が弱者を力でねじ伏せ支配するユルヴィクス。周りをチート化させつつ、世界の在り方を変えるための世直し旅が、今始まる……!?
※一応はバディモノですがBL寄りなので苦手な方はご注意ください。果たして愛は芽生えるのか。
のんびりまったり更新です。カクヨム、なろうでも連載してます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる