カフェオレはありますか?:second

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 ようやく再開したバイトの終わり際に、交流試合の情報を纏めようと薫が提案してきた。纏まってるから特に問題ないと言いたかったが、何やら他の話もしたそうな姿に、渋々首を縦に動かす。交流試合が終わったら、すぐにテストなんだよな。ピアノ以外の時間は勉強に回してるけど、そればっかりだと息が詰まるし。たまには気分転換しとかないとな。着替えを終えて外に出ると、同然の様に千秋と大和が待っていた。そうか、今日は金曜日か。鞄を奪おうとする大和の手をかわして、そそくさと足を動かして先頭を歩く。後ろに強く引っ張られて軽く仰け反ると、竹刀を右手で掴む大和の姿が視界に入る。金曜日の朝は、道場で軽く稽古をしてから、学校に行くようにしてるせいか、最初は剣道部に入ってるのか、と、よく誤解されたっけ。にしても、大和が竹刀に興味あるようには見えねぇな。
「なんだよ」
「竹刀って軽いんだな」
 今更な事を言った大和は、掴んだ竹刀を軽く上下に動かして、あっさり手を離す。
「作戦会議とか言ってたけど、問題発生か?」
「口実だろ。俺等のチームワークを持ってすれば楽勝だっての」
「はっ、頼もしいねぇ」
 だからこそ今回の薫の提案は、なーんか怪しいんだよなぁ。順調なのは知ってるし、作戦会議なら今日のバイト中にでも軽く話すことは出来たはず。それをしなかったってことは、別の用件があるに違いない。後ろからは千秋にベッタリくっついて、だらしなく笑っているであろう薫の声が聞こえる。そんなにベタベタしたいもんなのか?と、思って昔を振り返えるも、呆れてしまうほどベタベタしたいと思ったことがない。先生との時も、あそこまでじゃなかった。てか、そんな資格すら無いとか思ってたし。手を繋げるだけでも贅沢だと思ってた位だったもんな。
「そっちの代表は何を弾くか解ったのか?」
「あー、そういや、なんか渡されたわ」
 大和は制服のポケットの中を上から下まで探して、ズボンの左ポケットからグシャグシャになった紙切れを取り出した。
「グシャグシャじゃん」
「読めれば問題ねぇよ」
 律儀にシワを伸ばして俺に渡してくる姿に息を吐く。
「白井雅、私はこの選曲で戦います。悔いなく、正々堂々戦いましょう」
 一応、薫と千秋の耳にも入るように声に出して読む。何人かの生徒を買収してるヤツが、正々堂々とか言うしかくねぇし。紙の下のシワを伸ばして楽曲を見る。何が来ても負ける気しねぇけど。並ぶ選曲に目を走らせて、息が震えた。
「なに弾くって?」
 千秋の質問にメモを渡すことで答える。
「G線上のアリア弾くんだ。月光だと思ってた。後は革命のエチュード、別れの曲」
 別れの曲。俺が、弾けない曲。
「革命のエチュードを入れた変わりに、月光を止めたって所かな」
 千秋の手元を覗き込む薫は、当然知らない曲ばかりの名前に首を傾げる。
「革命のエチュードって難しいの?」
「すっごくね。三曲連続弾くにしても、腕や指がもたないと意味がない。選曲だけでなく、弾く順番も大切なんだよ」
「へぇー、そうなんだ。雅大変だね」
「他人事みたいに言うな」
 でも、そう言うのも仕方ない。結局は個人戦だ。周りにどれだけ協力してもらっても、最後は俺次第。
「俺の曲も教えないと不公平だよな」
「はぁ!?進んで手の内明かしてどうすんの!教えなくて良いよ!週五で千秋と同じ教室に通ってる奴の事なんて無視!」
「千秋、オマエ嫁さん、個人的な恨みが全面に出てんぞ」
「うん。俺、愛されてるから」
「なんか急激に疲れたわ」
 俺も疲れた。千秋にとって、薫が何よりも大切なのは今更。それに対して異議を唱える事もしない。千秋にとって、薫以外は不要な余所者。それが強く表に出ることがある。その時はなるべく離れる様にしてるけど、理解していない薫が居るときは、それが一苦労。友達といて疲れるなんて嫌だな。折角なら馬鹿みたいにふざけて笑っていたい。でも、千秋の許す一線は、薫が思うよりもずっと手前に引かれてる。千秋さえ居なければ、そう思う自分が、一番嫌いだ。いつもは通り過ぎるコンビニの前で足を止めて、寄り道してから行くとだけ伝えて店内に入る。特に買うものは無いけど、手ぶらで行くのも変だし、何か買わないとな。
「疲れたか?」
 何でいつも隣に居るんだかなぁ。
「友達付き合いは上手い方なんだけどな。でも、どうも息苦しくて」
 スイーツコーナーの前で足を止める俺の頭に、大和の左手が乗る。
「千秋は、薫以外どうでも良いみたいに生きてきたから、友達関係の築き方が歪んでんだよ」
 それくらい、思い出話を聞いてれば察しがつく。薫はそれを知って、俺と光臣を千秋に会わせた様にも思える。世間一般的な友人関係を知ってほしかったんじゃないのか。それが千秋には伝わってない。
「口で言えば早いんだろうけど」
 行動で伝わらないなら、言うしかない。でも、薫にそれが出来るのか、と聞くと、答えは決まってる。
「出来ねぇよ」
「ん?」
「薫には、間違いを口にするなんて出来ねぇよ」
 最初からずっと、千秋に忘れられないように、学校で毎日手紙を書いていた姿を思い出して、目を細めて視線を落とす。
「何で言い切れんの?」
「知らねぇからだよ」
 スイーツを適当に手に取ってレジへ持って行く。財布を取り出そうとする俺の手を制して、大和は自分の財布を取り出す。商品の入った袋も大和が受け取って歩き始める。いつもの流れなのに、未だに違和感が消えない。店の外に出て、大和が振り返って俺を見下ろす。
「薫は、何を知らねぇんだ?」
 俺は一度右へと視線を反らし、少し息を吐いてから大和を見る。
「最愛の無い世界」
 軽く目を見開いた大和は、黙ったまま俺を見る。それと向き合うことを放棄して、目的地へと足を動かす。最愛の無い世界を知ってる人は、人口の何割位いるんだろう。よく後追いしなかったな、と、思う時がある。したところで、惨めなだけだと解ってたからかな。何事も無かったかの様に隣に並んできた大和も、何かしらを惨めに感じるんだろうか。無力とか、そんなものを痛感したことが無さそうな人間程、何かを背負ってたりもする。周りからすればチッポケなものでも、本人からすれば潰されてしまいそうな程の何かだったり。軽はずみには計れないものばかり溢れかえる世界に、俺は今日も沈んでいく。
 見慣れた建物の見慣れた玄関で靴を脱ぐ。いつも流れで薫の部屋に鞄を置いて、脱いだブレザーをその上に置く。手洗いとうがいをするために洗面所へ向かうと、先に大和が手を洗っていた。買ってきたスイーツは千秋に渡したと言われ、食後までお預けをくらった気分だ。大和と入れ代わる形で手洗いとうがいを済ませる。夜飯の準備を始める大和と千秋の姿を尻目に通り過ぎ、薫の待つ部屋へ向かう。携帯を弄る薫に何を見てるのか聞くと、革命のエチュードを調べていると返事があった。千秋が知ってて自分が知らないのが嫌なわけか。変わらないな。千秋が何かを始めた。何かを知った。手紙にそれが書かれる度に、薫はそれを調べて共有する。千秋を遠くに感じないように。千秋の執着も凄いと思うけど、俺からすれば、薫の依存もなかなかだ。
「絶対に選曲教えるの禁止だから」
「はいはい」
「てか、本当に弾けるの?調べたけど、カンパネラって凄い難しいんでしょ。俺からすれば全部難しく見えるけど」
 だろうな。
「楽しく弾いて勝てるくらい余裕」
「楽勝ってのは解った。革命のエチュードも難しいんだね。流して良い?」
「おう」
 薫の携帯から聞こえてきた鍵盤の音に目を細める。あの女は、大和が好き。でも、それは叶わないと知ってる。微かな希望も、こないだ屋上でフラれて無くなった。革命くらい大きな奇跡が起きないと、振り向いてはもらえない。それにすがっての選曲だろうな。別れの曲は、奇跡すら起こせないと悟っているからこその選曲。すがっていたい、けれど叶わない。あの女の矛盾が、悔しいけど俺と似てる。
「指大丈夫?」
「指?」
「千秋が、ピアノは指先を痛めたら終わりって言ってたから」
 それは、ピアニストを目指す人、あるいは極めたいと思っている人の事で、俺は当てはまらない。
「全然痛くねぇよ。それに、騙し騙しやってる人もいる」
「そこまでして弾きたいのかなぁ」
「人それぞれ」
 薫は静かになった携帯を操作して、G線上のアリアを流し始める。
「雅はいつからピアノ弾けるの?」
「まだ田舎に住んでる頃、近所にピアノ教室があってさ。姉貴とよく覗きに行ったんだよ。その家の息子に見つかって、なんやかんや仲良くなって教えてもらったのがきっかけ」
 意地になって我が物にしたのは、中学の時先生に会ってからだけどな。
「お姉さんの初恋?」
「ピンポーン」
「わー、可愛いなぁ」
 小学生が高校生相手に恋をするなんて、今思えば確かに可愛らしい思い出だ。
「雅の初恋っていつ?もしかして環奈ちゃん?」
「恐ろしい事言うなよ」
「恐ろしいって、環奈ちゃんが可哀想だよ」
「どこがだ。環奈がやらかした悪事が、全部俺のせいにされたんだぞ」
 今思い出しても腹が立つ。時効だからと言って笑う環奈を、何度殴りたくなったことか。
「男の子が悪者にされるときってあるよね(経験無いけど)」
「小学校の時は好き嫌いよりも、楽しい事が優先だったからな」
「バレンタインにチョコたくさん貰ってたじゃん」
 バレンタインの一言に頭を抱える。バレンタインに良い思い出なんて一つもねぇ。
「その後の地獄を知らねぇから言えるんだよ」
「地獄?」
「向こうは俺に一個渡せば終わり。俺は貰った相手全員に返して終わり。向こうの一に対してこっちは十。出費が違いすぎる。不公平極まりない。バレンタインが消えれば良いと神社の絵馬に書きまくったのに、未だに消えやがらねぇ」
 海外の行事を取り入れたの誰だよ。日本の行事だけやってれば良いものを。
「もしかして、毎年書いてるの?」
「おう、今年も書いた」
「来年は消えてると良いね(まともに返すだけ無駄なやつだ)」
 何でか薫の反応が薄い。眉をしかめながらも、来年は消えてくれるだろうか、と、不安と期待を抱く。バレンタインそのものが消えないとするならば、俺はどう乗りきれば良いんだ。幸慈に相談したところで、貰わなければ良い、とか、茜が先回りして処分して終わりってところだろうな。良いのか悪いのか、俺に処分する度胸は無い。来年の対策を今から見直して挑めば、バレンタインに勝てるかな。
「大和とはどんな感じなの?」
 ちゃっかり恋ばなを始めようとする薫に息を吐く。
「作戦会議じゃねぇのかよ」
「それもちゃんとするって」
 絶対しないで終わる気がする。
「普通」
「解んないから」
 不満そうな薫の顔に眉をしかめる。
「何が聞きたいわけ?」
「聞いたじゃん。大和とはどこまで進んでるのか知りたいの。こないだ二人で休んだのだって、デートしてたんでしょ」
 決めつけて物事を言うのは昔から変わらないけど、それがあながち間違ってないから怖い。
「あの時は偶然遭遇しただけだって」
「でも一緒だったんでしょ。もう運命だよね」
 その運命は欲しくねぇ。
「カレー屋に行った」
「おー!それでそれで?」
「大食いに挑んで勝った」
 どこの店の何を食べたのかもきちんと伝えるも、薫は呆れた顔をしたままだった。
「……それ、本当にデート?」
 デートの概念は人それぞれ違うと思うけど、それを千秋の居る場所で言うのは、薫の考えを全否定してるって、睨まれそうだから止めとく。
「つーか、薫が求める、どこまでいった?の正解って何?」
 俺が質問すると、薫は顔を近づけてきて、右手を口元に当てて小さな声を吐き出す。
「キスとか、その先の事とか……受け身は、慣れるまでは大変だから」
 やっと聞き取れるくらいの小声だから、台所に居る二人には聞こえないだろうけど、薫にしては意外な所を気にかけていたんだな、と、意表を突かれた。
「その時は心しとく」
「ちゃんとしとくんだよ。どんなに解ってても、その時が来たら……」
 言葉が続かなくなった薫は、徐々に顔を赤くし始めた。何を言いたいのか、予測すら出来ない俺は首を傾げる。
「来たら?」
 聞き返すと、千秋がドアの近くに来て声を掛けてきた。
「ご飯出来たよ」
 言葉を見付けられなかった薫は、千秋に抱き付いて俺を見る。
「雅がはずかしめてくる!」
 薫の言葉に、千秋の目が鋭くなる。
「辱しめく事言ったの自分だろうが」
「俺は心配して言ったの!」
「薫は優しいね。何を心配してあげたの?」
 心配の振りした遠回しの誘導尋問に、薫は俺との会話を思い出して千秋から離れる。
「無理!千秋には言えない!」
「え」
 薫はトイレへ駆け込んで、盛大な音を立ててドアを閉める。千秋は薫に隠し事をされたのがショックだったのか、身動きすら出来ないで居る。
「無事か?」
 大和の言葉に千秋はようやく動き出す。薫の方へ行くのかと思ったら、俺のいる部屋の方へ入ってきて鍵を掛ける。
「何を話した?」
 殺気出すな。幸か不幸か、千秋達の殺気で怯える程、繊細な精神を持ち合わせて無い。
「薫の為にも大声では言えねぇ」
 そう言うと、嫌々俺の近くまで歩いてきた。下心が無いのは解ってんだから、さっさと動けよ。
「何言った?」
 ドアの向こうの大和に聞こえない声量を口から出す。
「言ったのは薫。受け身は慣れるまで大変だからって、心配してくれたんだよ」
 俺の言葉に千秋は目を軽く見開いて、大変、と呟いた後、少し考えてから部屋の鍵を開けて出ていった。入れ替わりで入ってきた大和の姿に、息を吐いて頭を掻く。
「解散だとさ」
 すれ違い様に千秋から言われたんだろう。
「だろうな。荷物そっち持ってく」
「こっちも俺等の分適当に容器詰めとくわ」
「おー」
 脱いだ上着を羽織って、大和と俺の鞄を手に部屋を出る。千秋が大人しくソファーに座ってて驚く。てっきりドア越しに薫を説得してると思ってた。
「小分けにすんの面倒だから、重箱でいいか」
「何でも良いから早く帰れ」
「「(自分達が呼んだくせに)」」
「そっちがコンビニで買ってきたデザートは薫が好きなやつだから置いてけ」
「は!?」
 千秋の一方的な言葉に眉をしかめる。だったら最初から自分達で買ってこいよ。オマエ等二人に気を遣った結果だっての。それでも食うの楽しみにしてたのに。それを我が物顔で奪うとか有り得ねぇ。
「帰りにもっと良いやつ買ってやっから」
「壊すやつも大量に用意しろ」
「あー、探してみるか(ここで暴れられるよりはマシだな)」
 重箱におかずを詰めるのは大和に任せて、炊飯器のご飯でおにぎりを六個作る。ラップで巻かれたそれを見て、大和は苦笑しながら重箱を完成させていく。
「デカイな」
「白井家サイズはこれって決まってんだよ」
「多めに炊いといて正解だったな」
 寝かせて並べることで収まったおにぎりに、海苔を巻き忘れた、と思い出すも今更面倒だし時間もないと判断して言うのを止める。蓋をしてから適当な袋に入れ、大和と荷物を持って玄関へ向かう。
「薫ー、頑張れよー」
 俺の言葉にトイレのドアが勢いよく開く。
「普通この状況で帰る!?」
「「帰る」」
「二人して薄情過ぎ!」
「何とでも言え」
 靴を履いて家のドアを開けて振り返ると、千秋と二人になるのが気まずいのか、居て欲しそうな顔をしてた。けど、薫の背後に居る存在に喜んで殺されるつもりはない。
「薫」
 千秋に呼ばれて肩を跳ねさせた薫は、顔を赤らめた後、色々耐えきれなくなったのか盛大に泣き出した。その姿に、千秋は焦りだす。千秋のあんな姿初めて見たな。
「な、泣かないで」
「もう頭ぐちゃぐちゃー、千秋ごめんねぇー」
 まぁ、喋れるなら大丈夫だろ。玄関のドアをそっと開けて、なるべく音を立てないように閉める。マンションの廊下を歩いて、運良く止まってたエレベーターに乗り込む。ボタンを押してドアが閉まるのと同時に、俺と大和は長い息を吐く。
「「(あの二人、たまにスゲー面倒なんだよなぁ)」」
 まぁ、千秋が上手く解決するだろうから、心配は全くしてない。大和の持つ袋が揺れる音に、どんどん腹が減ってくる。飯どこで食おうかな。俺の考えに答えるみたいに大和が口を開く。
「俺の家で食うか?雅の家に上がるには、時間遅いし」
 確かに大和の家に行った方が後々の事を考えると楽だな。でも、また大和の家に行くのか。最近大和とつるむ度に、家族からの質問攻めに合うんだよな。特に兄貴。でも、大和を連れて帰るよりはマシか。
「で、何言ったんだ?薫のやつ」
 まぁ、大和はベラベラ話す事はしないか。
「受け身は慣れるまで大変らしい」
「は?」
 エレベーターが一階に着いた事を知らせてドアを開く。俺が降りた後も、動こうとしない大和を怪訝に思い、首を傾げる。
「何してんだ?ドア閉まるぞ」
「解ってる(大変か。そうだよな。体の作りを考えても、女以上に大変だよな)」
 変なヤツ。外に出ると、星が無駄に綺麗で、ポツリと残る雲が可哀想に思えた。
「薫は薫で、気にしてくれてたんだなぁ」
「あ?あぁ」
「?」
 いきなり挙動不審になり始めた大和に違和感を感じながら、鞄を肩にかけ直して足を進める。今回の件で、あの二人は何か変わるだろうか。あまり期待出来ないだろうな。でも、ぐちゃぐちゃなら、感情も鈍って、失うことも少しは怖くないはず。それでも変わらなかったら?望まない方へ変わっていたら?そうなったら、きっと、失うのは俺の方。あー、息苦しい。こんなに息苦しいのに、どうして死なないんだろう。死んだところで、先生の横には行けないよな。あの場所は、ずっと前から、一人のものだったし。
 作戦会議、マジでしないまま終わったな。幸慈のお陰で、ピアノは順調に上達していく。そんな日常の中で、毎朝各地の梅雨入りを告げる天気予報に、息を吐いてばかり。窓の外へ視線を向けて、近所の紫陽花を視界に捕らえ、先生を思う。そんな季節がやって来る。それが終われば夏が顔を出す。夏まで、もう少し。ねぇ、先生、夏が来るよ。
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