私の人生に貴方はもういらない

三同もこ

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チャンスを手に入れたオレ(レオンside)

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 ジョアンナとオレが出会ったのは物心ついてすぐの事だった。

 幼いジョアンナはとても綺麗な女の子で、幼いオレはポカンと口を開けてずっと彼女を見ていたらしい。勿論、今も綺麗だけど。
 オレは直ぐにジョアンナに夢中になった。多分、一目惚れだったのだろう。優しくて可愛いジョアンナがオレの一番になったのはその頃だ。
 ジョアンナは直ぐに転ぶような危なっかしい子だったから、オレはいつもジョアンナの傍にいて彼女を助けた。
 オレが手助けする度に、ジョアンナは顔を綻ばせてありがとうと笑う。
 その顔が見たくて、オレはいつもジョアンナの傍に纏わりついていた。


 少し成長した頃、オレは結婚というものを知った。
 結婚すれば、ずっとジョアンナと一緒にいられる。

「姉さん、姉さん。どうすれば、ジョアンナと結婚できるの?」

 オレは、オレの知る中で一番賢くて物知りだった姉にそう尋ねた。
 いつも誰よりも詳しく、そして、分かり易く答えを教えてくれる姉は顔を曇らせる。
 そんな姉の顔は初めてで、驚くオレに姉は残酷な事実を教えてくれた。

「レオン。とても残念だけど、ジョアンナとお前は結婚できない」
「ど、どうして? どうしてそんな意地悪言うの?」

 姉の言葉に目を潤ませながら聞けば、姉は子供だからと誤魔化さず、オレの目を見て言う。

「ジョアンナは貴族のお姫様なんだ。貴族のお姫様は、同じ貴族のお坊ちゃんと結婚するんだよ。レオンや私は平民だから、貴族のジョアンナとは結婚できない。住む世界が違うんだよ」
「で、でも、ジョアンナはここにいるのに…!」
「レオン…」
「どうしても、どうしても出来ないの?」

 べそべそ泣きながら姉に聞けば、姉は難しい顔で考えた後、オレに言った。


「一つだけ、方法がある」


 姉が言った方法。
 それが『騎士になる事』だった。
 騎士ならば、武勲次第で爵位を得られる。
 爵位を得ることが出来れば、貴族とも――――ジョアンナとも結婚できるかもしれないと。

 その言葉だけで十分だった。
 可能性が少しでもあるなら、可能性に賭けたい。
 オレは死に物狂いで騎士を目指し、少しづつ武勲を重ねていった。

 そんな時だ。
 ジョアンナに婚約者が出来たのは。

 ショックだった。
 今までの頑張りが全て無駄になった絶望。やるせなさ。
 貴族というだけで、ジョアンナを奪っていく男がひたすら憎かった。
 当然のような顔をしている男を見る度、ジョアンナにきつく当たる男を見る度に、いっそ殺してやりたいとすら思う。
 けれど、我慢した。
 ジョアンナが選んだ男なのだからと、悔しさを飲み込んで、腹立たしさを噛みしめて、必死で堪える。

 まだ、終わりじゃない。――――ジョアンナがいる限り、まだ終わりじゃないんだ。

 自分でも驚くほどの執念だった。最早意地だったのかもしれない。
 一番傍にいられなくてもいい。
 隣じゃなくてもいい。――――ジョアンナの傍にいられるのならば。

 何度も女性を勧められたが、オレは絶対に頷かなかった。
 結婚する気はない。だって、本当にしたかった人とは出来ないんだから。
 ならば、彼女の傍にいる為に、自分は身軽なままでいい。
 父も母も残念がっていたし、姉には呆れられたが、どうしても曲げられなかった。

「諦めるのはいつでも出来る。だから、オレはオレが納得するまで頑張りたい」

 自分でも呆れてしまうほどの想い。何故、こんなに好きなんだろう。分からない。分からないのに、愛しさだけは溢れ続ける。

 だからかもしれない。
きっと、あんまりにもしつこかったから、神様がチャンスをくれたのかもしれない。


「ジョアンナ・ディンプル男爵」


 オレを見つめるまんまるな目。小さくて温かな手。
 少し色づいた頬。僅かに緩んだ口。

 ウットリと目を細める。


 ――――ああ、その全てが愛しくて堪らない。



「貴女が好きだ。どうか、オレと結婚してほしい」
「ふへっ!?」



 ようやく言えた言葉は、とろりと蕩ける様に甘く甘く響いた。
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