謀殺された王子は 復讐者として淫らに返り咲く 【R18】

弓月

文字の大きさ
81 / 143
第十三章

次の手

しおりを挟む


──…


「職務は順調か?王宮警備兵(ベイオルク)殿」

「──タラン侍従長様」


 シアンが王宮警備兵に任命されてから十日後、王宮の廻廊を巡回中の彼はタラン侍従長とすれ違った。

「先の約束どおり私の権限でその地位に就かせてやったと言うに、挨拶のひとつにも来んとはどういう事か?」

「……僕など、侍従長様へ拝謁はいえつを許されるような身分ではありませんので」

「それは今更すぎる話だろうよ。"元" 賤人という身の上でクオーレ地区はおろか王宮にまで入った者は、後にも先にもキサラジャの歴史にお前ひとりだ」

 会釈をして通りすぎてもよかったのだが、立ち止まったタランが呼び止めたのでシアンはそれに応じた。

「ハムクール・スレマン・バシュの件……いや今はバシュの職を解任されたのであったか。医官が言うには錯乱状態が続いているらしいな。うわごとのようにお前の名を呼んでいるとか」

「…そのようですね」

「どんな手を使ったかは知らんが、伯爵家の人間を手玉にとるとは恐ろしいな。ハムクール家を乗っ取るつもりか?」

「いいえ、僕が養子になったとはいえスレマン様にはすでに後継ぎとなる子息がおります。乗っとるなんて考えませんよ」

「スレマン・バシュにも伯爵家にも興味無しか。……爵位を手にした今、すでに彼等は用済みということらしい」

「……」

 肯定ととれる沈黙でシアンが返す。

「まんまと爵位を手にいれたなら、私が手を貸さずとも王宮警備兵にくらいなれたのでは?」

「何を仰いますか、侍従長様。陛下の身辺は今や貴方の手の者で固められており、僕のような部外者はまっさきに排除されたに決まっています」

「ふ……抜け目の無い男だな、シアンよ。やはりお前は面白い」

「ありがとうございます。ではそろそろ巡回の交代時間ですので」

 失礼しますと頭をさげるシアン。

 彼のためにしつらえられた新しい帽子には、王宮警備兵(ベイオルク)の印である、太陽神の武器、獣角弓の刺繍があった。



 シアンが去り、残ったタラン侍従長のもとへ、別の王宮警備兵の男が近付いた。

「…何か動きはあったか?」

 視線はシアンの去った方向へ向けたまま、タランはその男に問う。

「いいえ、この数日はとくに何も無く……。バヤジット・バシュの邸宅から出た後は、新しく用意された宿舎の部屋で寝泊まりしているようです」

「スレマン伯爵のもとへは?」

「六日前と昨日の二度、スレマン伯爵を訪ねていますね。容態を確認しているのでしょう」

 タランの指示でシアンを見張っているその王宮警備兵が、小さな声で耳打つ。

「何故あのような怪しい者を王宮警備兵に命じたのですか?わざわざ見張るくらいならいっそ遠ざけてしまえばよいでしょうに」

「手を貸す約束をしたのでな」

 ごくごく当然の疑問を持った男の問いかけに、タラン侍従長は不吉な笑みを浮かべて返した。

「アレの目的を見極めるには、早く次の行動を起こさせたほうが楽なのだ。…私の敵であるなら尚更、ということになる」

「侍従長様の敵……?と言うとあの、バヤジット将軍の手先ということでしょうか?」

「さてな、知らん。だが背後にいる何者かについてもじきにわかるだろうよ」

 くれぐれも目を離すな。

 タランは男に念押しした後、いつものように王がいる寝所に向かったのだった。






──





しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

魔王に飼われる勇者

たみしげ
BL
BLすけべ小説です。 敵の屋敷に攻め込んだ勇者が逆に捕まって淫紋を刻まれて飼われる話です。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

後輩が二人がかりで、俺をどんどん責めてくるー快楽地獄だー

天知 カナイ
BL
イケメン後輩二人があやしく先輩に迫って、おいしくいただいちゃう話です。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

飼われる側って案外良いらしい。

なつ
BL
20XX年。人間と人外は共存することとなった。そう、僕は朝のニュースで見て知った。 向こうが地球の平和と引き換えに、僕達の中から選んで1匹につき1人、人間を飼うとかいう巫山戯た法を提案したようだけれど。 「まあ何も変わらない、はず…」 ちょっと視界に映る生き物の種類が増えるだけ。そう思ってた。 ほんとに。ほんとうに。 紫ヶ崎 那津(しがさき なつ)(22) ブラック企業で働く最下層の男。顔立ちは悪くないが、不摂生で見る影もない。 変化を嫌い、現状維持を好む。 タルア=ミース(347) 職業不詳の人外、Swis(スウィズ)。お金持ち。 最初は可愛いペットとしか見ていなかったものの…? 2025/09/12 ★1000 Thank_You!!

処理中です...