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後書き
後書き
しおりを挟む《 滅びゆくもの 》
彼女が愛した男は……
人の手で失われなければならなかった
私にとってのローはまさに《 失われゆくもの 》の象徴です。
失われるもの、滅びゆくもの……
歴史が過ぎ去り後から過去として振り返れば、それを美しく語る人もいるでしょう。
しかし滅ぶ側からしたら、こんなにも悲しくやりきれない。
──そしてその思いが語り継がれることもまたありません。
" オオカミ " について学んだ時、私はとにかく切なかった。
神話の世界では孤児を育てたりと慈悲深い動物としての扱いをされる一方で、実際は人間に危害を加えるからと世界中で殺されてきた彼等は
何を思い、滅んでいったのか……。
これはあくまで、多くの犠牲の中のひとつの例でしかありませんが。
ではどうするのが正解だったのでしょうか?
この物語が悲しい理由は、ここに " 悪者 " がいないことです。
生きるために人間を捕食する狼たちも
仔狼を撃った人間を殺したローも
セレナと街の人々を助けるために、狼討伐に乗り出した侯爵も
ローを撃った兵士たちも…
皆が皆、それぞれの立場で正しいことをしたまでで他の選択肢は無かったのです。
それと同じ……。
迫る危機の前では、共存などと悠長なことを言ってはいられない。
自然は大事?
動物は可愛い?
私たちは自然を、動物を愛しています。
でも人間である以上、彼等を傷つけないと生き残ることができない。
何も持たない私たちは、彼等の犠牲の上で、初めて今の生活を享受できる。
正解のない辛さを……そこに感じてしまいます。
セレナもまた同じように苦しみました。
人間でありながら敵である狼に憐れみと愛を抱いてしまった彼女は、滅びゆく彼等を前にして、板挟みの想いに苦しまなければいけませんでした。
セレナの愛した男は、人間が生き残るために滅びなければならない存在……。
「人と狼」
禁断の愛を表現するのにこれ以上の題材はありませんでした。
セレナは彼を愛し……
そして、彼女によってローは滅びる。
まさに今の私たちの姿ではないでしょうか?
幸せendにしたい気持ちは山々だったけれど、私にはどうしてもできなかったんです。
私はこの物語で共存の大切さを伝えようとか、そんな事を目指したわけではなくって
決して報われぬ愛に囚われた女性の、切ない想いを描きたい
そういう気持ちからでした。
物語を包む哀しい雰囲気に、どこか美しい余韻が合わされば……
二人の愛がより官能的になるのではと、それを目標に書かせて頂きました。
最後は結局
あの世でまた会おう、というベタな終わり方になってしまってすみません…。
でもこれが、精一杯の幸せend。
殺されたローは死ぬ間際でセレナを赦しました。
現実世界で、虐げられた彼等が私たちを赦すことはないでしょう。
それでも…
これが、架空の世界だからこそ存在することができた、二人の愛の形です。
最後になりましたが
悲しいお話にも関わらず読んで下さった皆様へ……
ありがとうございました!
感謝しています。
弓月
 ̄ ̄ ̄ ̄
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