銀狼【R18】

弓月

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epilogue

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 狼の消えた聖地にはただ沈黙だけが立ち籠める。

 唯一の滝音が虚しく響くばかりだ……。




 ──あの日討伐を終えた兵士達が、此処で見た事を他言することはなかった。

 誰が取り決めた訳でもないが、彼等はひとりとして口を開こうとしない。

 秘められた此の地と
 此処で散った魔狼の男の存在は

 彼等の記憶にしまわれたのだ。

 それは滅びゆく者への礼儀、敬い、恐れ。

 自らが銃口を向けた森の王への、畏怖の念と言ったところか……。



 だがいずれ、人間が此処を見つける時が来るであろう。



 切り立つ崖の向こう側

 洞窟を抜けた先に在る円形の聖地。

 その上に広がる妖しの森……

 セリュスの木々と豊かな湖。

 風と獣が駆け抜ける広大な草原。

 その存在に人が気付くのも遠い先ではない。

 そして人の支配が及び手が加えられ、様が変わってしまうことになるだろう。



 ──しかし、人々は知り得ない。



 此の地に君臨した孤高の魔狼と

 彼を愛したひとりの女性の哀しい物語を。






 想い合い──結ばれることの赦されなかった、人と獣の禁忌の愛が、決して語られることはない。






 妖しの花びらが美しく舞う季節





 森の沈黙が、ただ知るのみぞ───。





























  『 銀狼 』完
   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄







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