9 / 10
回顧
しおりを挟む西暦XXXX年。
周辺諸国を相手に戦争をおこした某国は、初めこそ、その戦況を優位に進めていた。
そしてとある研究施設にて──非人道的な兵器開発がおこなわれていたという。
施設には身寄りのない少年が集められ、彼らは従順な " 兵器 " たり得るように、脳や身体を改造された。
「恐怖」「怒り」「慈愛」「後悔」
そして「痛覚」にいたるまで…
戦場で敵を殺すのに不要な感情・感覚を麻痺させた、都合の良い兵器の開発だ。
作戦名 【 feeling-ZERO (フィーリング-ゼロ) 】
施設に並ぶ黒い部屋には、そうした少年たちがたくさん囚われていた。
しかしだ。それらの兵器には重大な欠陥があった。
ひとつは、痛覚を鈍くした過程で、視覚・聴覚・味覚といった他の部位にも影響が出たこと。少年兵器はみな視力矯正のためのレンズを付け、耳には補助機を装着することになった。
そしてもうひとつ──
「恐怖」や「愛情」……あらゆる感情の起伏を奪われた結果、生き残ろうとする力までもがなくなってしまったことだ。
生への執着がまるでない。そんな彼らの戦場での功績は、期待されていた数値の半分にも満たなかった。
作戦は失敗だった。
それからちょうど国の戦況が傾き出し、施設は国に見捨てられ、莫大な研究費は打ち切られた。
残った少年兵器たちは秘匿処分となり、ひとり残らず死地に送られた──。
食料も武器も足りない。
祖国に見捨てられた彼らは、敵の攻撃をうけてバタバタと死んでいく毎日だった。
死にたくない、と
泣きだす者はいなかった。
怖い…帰りたい、どうして自分がこんな目に?と
恨む者もいなかった。
例え生きていても「楽しい」と感じる瞬間があるわけじゃない。彼らはそんな──人形、なのだ。
....
「──…死んでやるかよ」
そんな地獄のような日々の中
たったひとりの " 例外 " が生まれた。
機械でいうバグのようなもの。
その少年はある時 感情 を取り戻したのだ。
「俺はあんたらを殺して生き残る」
「ぅ…あああ!…やめろ!やめてくれ!」
「──…どーした?おっさん、" 怖い " のか?」
「し、死にたくない!やめてくれ!助けてくれ!」
「……ふっ」
──ズガン!!
「───」
「…ッ…ハァ……はは、……イイなぁ……あんたら、そんなふうに喚けてさ」
殺されようとする人間の、恐怖や怯えで歪む顔…
それを見ている時だけは、彼は性的に興奮した。
どんな気持ちで泣いているのか…それが理解できずとも、その瞬間だけは満たされている気がする。
祖国が戦争に負けるまでの半年間、彼はそこで戦い続けた。
──
それから4年後
彼は亡命先の夜の街で、バーのカウンターに座っていた。
酒の味はわからないが、アルコールを流し込めば酔えはする。
声をかけてきた売春婦の女を追い払った彼の席に、いつものマスターが近付いた。
「今度も生きて帰ったみたいだな」
「まあね。で?次の依頼か?」
「ああそうだ。依頼内容は、例の施設の調査と壊滅。【 feeling-ZERO 】の作戦失敗後も、ヤツら…何かの研究を続けてるらしい」
「……いくら?」
「600だ」
「チッ…安いな」
「やめるか?」
「いや……受ける」
新しい依頼を受けた彼は、数年ぶりに祖国へ戻ることとなったのだ。
1
あなたにおすすめの小説
大丈夫のその先は…
水姫
恋愛
実来はシングルマザーの母が再婚すると聞いた。母が嬉しそうにしているのを見るとこれまで苦労かけた分幸せになって欲しいと思う。
新しくできた父はよりにもよって医者だった。新しくできた兄たちも同様で…。
バレないように、バレないように。
「大丈夫だよ」
すいません。ゆっくりお待ち下さい。m(_ _)m
人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている
井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。
それはもう深く愛していた。
変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。
これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。
全3章、1日1章更新、完結済
※特に物語と言う物語はありません
※オチもありません
※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。
※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
【R18】幼馴染がイケメン過ぎる
ケセラセラ
恋愛
双子の兄弟、陽介と宗介は一卵性の双子でイケメンのお隣さん一つ上。真斗もお隣さんの同級生でイケメン。
幼稚園の頃からずっと仲良しで4人で遊んでいたけど、大学生にもなり他にもお友達や彼氏が欲しいと思うようになった主人公の吉本 華。
幼馴染の関係は壊したくないのに、3人はそうは思ってないようで。
関係が変わる時、歯車が大きく動き出す。
大嫌いな歯科医は変態ドS眼鏡!
霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
……歯が痛い。
でも、歯医者は嫌いで痛み止めを飲んで我慢してた。
けれど虫歯は歯医者に行かなきゃ治らない。
同僚の勧めで痛みの少ない治療をすると評判の歯科医に行ったけれど……。
そこにいたのは変態ドS眼鏡の歯科医だった!?
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる