今更謝ってももう遅い!落ちこぼれ無能者の復讐譚~使えないスキルだと言われ『廃棄』された能力者のスキルは実は最強だった~

三浦ウィリアム

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第5話Part.2~アイシスの深い怒り~

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 俺から少し離れた場所でおそらく彼女は男を拷問しているのだろう。彼女の恨みは相当深く、すぐに命を奪わないように、それでいて最大限の苦痛を与え続けている。
 ヤツの苦痛の叫びは口に布を突っ込まれているため聞こえないが、彼女の怒りの鉄槌の音とぐぐもった声が交互に聞こえる。

 どれくらいの時間が経ったのだろう。彼女は飽きずに制裁を続けていた。男のうめき声は弱弱しくなってきているが一応生きているようだ。

「答えなさい!」
「……。」
「アムロス!」
「どうした?」
「痛みを和らげる毒を。」

 制裁を加える度に少しずつ衰弱していき何も答えられなくなってきた男。ヤツの身体を打ちながら返答しろと強い口調で言うアイシス。だがそれでも返答をしない男を見て俺を呼ぶ彼女。俺は彼女に呼ばれるままに彼女が男に制裁を行っている現場へ行く。

「ウッ……。こ、これは……。」

 ヤツは服を全て脱がされ、足と指の爪は全て無理矢理剥がされ、手足は全て向いてはいけない方向に向けられている。そして身体中傷が無い部分がないというほどに刺され、打たれ。特に下腹部は執拗に痛めつけられており、これでよく生きているものだと呆れる。

「あなたもさすがにここまではしない?」
「い、いや……。少しキンタマが縮み上がった。」
「そう。安心して。あなたにはしないから。」

 息を飲んだ俺の様子を見てアイシスに尋ねられた。たしかにここまでしたことはなかったが、それはそこまで問題ではないのだが、やはり男としては下腹部の損傷は震えが来てしまう。
 もうアイシス相手の拷問には反応すら見せていなかったようだが、俺が近くに来たことで男の口がパクパクと動いて声のようなものが出ている気がするが、やめさせてほしいとでも言ってるのだろう。だが俺も止める理由も義理も無い。俺はさっさと興奮作用のある毒をヤツに注入してやった。

「ガハッ。ゆ、ゆるひ。ガアッ……ゆるひガアッハッ……ガアァッ……。」
「ああそうだ、俺の毒はあくまで毒だ。これは脳内に作用し身体を壊す。その副次作用で痛みを紛らわせるにすぎない。回復したわけじゃないしむしろ相手の死期を早めるだけというのは覚えておいてくれ。」
「分かった。…………さあ続けましょ?早く死ねるといいわね。」

 深い憎悪に支配されたアイシスはまた反応を見せるようになった男に拷問を続ける。そして反応しなくなれば俺の毒を注入。そしてまた痛めつける。ヤツの身体は常人よりも強い。それ故に苦痛も長く続く。
 何度目かもう数えてもいなくなった頃、再び彼女に呼ばれる。随分と小さくなったものだ。だがこれは明らかに……。

「死んでるな……。」
「そう。分かった。じゃあもういい。」

 ヤツの脈を取れる場所すら限られているほどしか残っていなかったが、ヤツの首に手を当てて脈を取ろうとしたが、もう脈を打っていない。これは明らかに死んでいた。
 それをアイシスに伝えると、それならもういいと言って手の甲を向けて下から上へ振る。どうやらあっちに行ってほしいらしい。
 俺は彼女の望み通り彼女から離れたが、もう既に死んでいる奴をどうするつもりなのかと彼女の様子を見ていると、鞭の代用としていたヤツのベルトで死体に鞭打ち始めた。

 死んでも許さない。アイシスの背中はそう言っているように見えた。彼女は何の反応も見せない死体を飽きることなく打ち続けた。
 俺は声を掛ける事ができなかった。ただただ彼女の深い憎悪を見ることしかできなかった。

「もう全部消えた。」
「あ、あぁ……。」
「粉々にしてやればもう二度と生まれ変わらない。」

 何も掛けてやる言葉が無かった俺だが、アイシスから俺に話しかけてきた。これも中々珍しい事だ。普段は大体俺から声を掛けているのだが。
 そして彼女は全て消えたと言う。俺は彼女が打っていた場所を見た。血だまりと肉塊が多少残っているが、最早あの男と分かるものは残っていなかった。

 続けてアイシスが言った言葉。これはこの国で広く普及している教えらしく、生きとし生けるものは全て死んだ後にまた新たな命に生まれ変わるらしい。だがそれには元の身体が残っていなければならないようで、彼女はあの男が二度と生まれ変われないように跡形も残らないようにしてしまったようだ。

「アイシス、これだけやったんだ。疲れただろう?とりあえず今日は休もう。」
「そうね。」
「まず俺が見張りをしよう。ゆっくり休め。」
「分かった。」

 とりあえず一段落ついたので今日は休むことにした。今日は敵への襲撃、尋問、操作と色々やったのでさすがにこれ以上の行動は難しい。
 だが今日はあれだけずっとあの男を拷問していたアイシスをまず先に休ませることにした。その申し出を受けた彼女は横になると、やはり相当疲れがあったようですぐに眠りに落ちてしまっていた。
 さて、責任重大だ。俺も相当疲れたがあともうひと踏ん張り。俺は気合を入れて周囲の見張りを始めた。
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