今更謝ってももう遅い!落ちこぼれ無能者の復讐譚~使えないスキルだと言われ『廃棄』された能力者のスキルは実は最強だった~

三浦ウィリアム

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第10話Part.2~共同戦線~

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「この娘は吊り橋で能力者に見つかって殺されかけていた。それを私が助けたのよ。研究所に忍び込むなんてよっぽどイカレているか何か確信があって来るかのどっちかだと思って少し興味を持ってね」
「そうなのか?」
「吊り橋で見つかって死にかけたのは本当。でもそこからは記憶が曖昧」
「医務室でこの娘を治療して、来た理由と誰かと結託しているのかと聞いたらあなたと特徴が一致する男と組んでいるというから、私はここであの2人とこの娘で待った」
「話したのか?」
「分からない。でもあの女が知ってるということは話したのかもしれない。ごめんなさい……」

 アイシスは見つかっていなかったわけではなく、見つかって殺されかけていたところをこの女に救われたようだ。そしてアイシスは記憶にはないようだが女に尋問されて情報を吐いてしまったらしい。
 言い逃れの可能性も無い事も無いとは思うが、あの森で何度辱められようとも耐え抜いていた彼女が能力者側の人間に対して簡単に情報を吐くとは思えなかった。
 もちろん生き延びて機会を伺うために吐いたということもありえるが、本当に生かしてもらえるかどうかも分からないのに1日も経たずに吐くとはやはり思えなかった。

「安心して、その子のせいじゃないわ。それは私のスキル【自白】の効果よ。話す気が無くても私が聞いた言葉に対して連想した想像を読み取るスキルを持っているの。お陰で拷問もせずに情報を抜き出せるわ」

 俺は女の言葉を聞いて背筋が凍りつくようだった。これでは偽証も沈黙も通用しない。想像を読み取るのなら別の想像をすれば良いのだろうが、聞かれた言葉に対して少しでもそれに対する連想をすればそれを読み取られてしまう。
 だがそれならアイシスから容易に俺の情報を得たというのも納得がいく。

「すると俺をおびき寄せたのか?」
「ええ。3階の階段前で話していた研究員はあなたがさっき始末した能力者よ。スキル【感知】を持っているあの男に姿は見えない能力者が通る時にこの部屋の話をしなさいと言ったのよ」
「なっ!?」
「吊り橋での戦い、見事だったわ。フュンは戦闘に関して言えば相当な力を持っていたのよ?その娘は全く歯が立たなかった」

 俺は吊り橋の辺りからほとんど捕捉されていたようなものだったことを女に告げられた。そして透明化のスキルを使用できることも知った上で俺をおびき寄せるため素知らぬふりで会話させていたらしい。
 おそらく俺が工事中の看板を見て迂回するためそこを離れた後に工事中となっていた階段を上ってスキル研究室に先回りしたのだろう。俺は完全にこの女の術中に嵌まってしまっていたのだ。

「ところで俺たちとあの2人以外でこれを知っている能力者は居るのか?」
「いいえ。あなたの透明化スキルを見通せる感知と、その娘を操る洗脳は必要だったから適当に嘘言って丸め込んだけどそれ以外には言ってないわ。不自然な呼び出しでもあなたに始末されるんだから問題ないでしょ?」
「そうか。俺と彼女を含めた3人を戦わせた理由は?」
「そうね、フュンとの戦闘でスキルを複数扱えるのは分かったけど、戦闘力についてはあなたは透明化やテレポートで不意を討つ戦闘だから分からなかった。ならそれを扱えない状態にして直接戦闘はどれくらいできるのかを確かめたかったのよ」

 俺とアイシスを含めた3人と戦わせた理由は直接戦闘がどれくらいできるかを確かめたかったらしい。結局不意討ちで勝ったような戦闘だった気がするが、筋力強化スキルを持っているし感知スキル持ちが居ても他の手段で戦えるのが分かったので一応合格らしい。

「それで私と手を組みましょう?アムロス。私は私を認めなかったヤツらに復讐したい。そしてそこの娘は妹を助けたい。その娘の妹についても私は知っているわ――」
「――何ッ?!どこ!アイリスはどこにいるの!教えなさい!」
「手を組むなら教えてあげるわ。アムロス、あなたも自分を捨てた研究所に復讐するため来たんでしょう?たとえ復讐ができても能力者はまだかなりの数残っている。いくらあなたでもそれを全て正面から相手にするのは無理よ。だから私が能力者たちを一網打尽にする作戦を考えてあるわ」

 彼女の目的は俺たちとの共同戦線だった。その手土産としてアイシスの妹であるアイリスの居場所とここにまだ数百人単位で残っている能力者たちを一網打尽にする作戦を立案しているらしい。
 この女が妹の居場所を知っていると言った際にアイシスはいきり立って立ち上がり、今にも飛び掛からんとする体勢を取りながら女に凄んだが女はそれを風に揺られる枝垂れた木のように受け流した。アイシスもまだ妹の場所を知らない、そしてその糸口も無いとなれば彼女が自分を殺せるはずがないと分かっているのだ。

 女の提案は魅力的ではあった。もう研究所の深くまで潜行しており、研究所内にも相当な被害を与えた。強さだけならトップクラスの能力者や有用なスキルを持つ能力者も何人も始末している。今撤退すれば次はいつ潜行できるか分からないし、妹の居場所を知ったアイシスがこのまま大人しく帰ってくれるとも思えない。
 通常時は落ち着いて自らの身が傷つくことすら厭わず耐える彼女だが、妹の居場所となればもうアイシスはもう冷静では居られない。
 その忍耐も執着とも言える姉妹愛もどちらにせよ妹への想いがアイシスを突き動かしているのだ。
 俺は帰ると言っても最悪俺を置いて2人で行くと言いかねない。だが女の方は明らかにアイシスのことは気にもかけていない様子で、俺が帰れば共同戦線の話も白紙になることが目に見えていた。

「分かった。共同戦線を組もう」
「そうこなくちゃね。私はツェーンよ。よろしくね」

 俺はツェーンの提案する共同戦線に乗ることにした。いや、乗る他なかった。
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