29 / 30
第10話Part.2~共同戦線~
しおりを挟む
「この娘は吊り橋で能力者に見つかって殺されかけていた。それを私が助けたのよ。研究所に忍び込むなんてよっぽどイカレているか何か確信があって来るかのどっちかだと思って少し興味を持ってね」
「そうなのか?」
「吊り橋で見つかって死にかけたのは本当。でもそこからは記憶が曖昧」
「医務室でこの娘を治療して、来た理由と誰かと結託しているのかと聞いたらあなたと特徴が一致する男と組んでいるというから、私はここであの2人とこの娘で待った」
「話したのか?」
「分からない。でもあの女が知ってるということは話したのかもしれない。ごめんなさい……」
アイシスは見つかっていなかったわけではなく、見つかって殺されかけていたところをこの女に救われたようだ。そしてアイシスは記憶にはないようだが女に尋問されて情報を吐いてしまったらしい。
言い逃れの可能性も無い事も無いとは思うが、あの森で何度辱められようとも耐え抜いていた彼女が能力者側の人間に対して簡単に情報を吐くとは思えなかった。
もちろん生き延びて機会を伺うために吐いたということもありえるが、本当に生かしてもらえるかどうかも分からないのに1日も経たずに吐くとはやはり思えなかった。
「安心して、その子のせいじゃないわ。それは私のスキル【自白】の効果よ。話す気が無くても私が聞いた言葉に対して連想した想像を読み取るスキルを持っているの。お陰で拷問もせずに情報を抜き出せるわ」
俺は女の言葉を聞いて背筋が凍りつくようだった。これでは偽証も沈黙も通用しない。想像を読み取るのなら別の想像をすれば良いのだろうが、聞かれた言葉に対して少しでもそれに対する連想をすればそれを読み取られてしまう。
だがそれならアイシスから容易に俺の情報を得たというのも納得がいく。
「すると俺をおびき寄せたのか?」
「ええ。3階の階段前で話していた研究員はあなたがさっき始末した能力者よ。スキル【感知】を持っているあの男に姿は見えない能力者が通る時にこの部屋の話をしなさいと言ったのよ」
「なっ!?」
「吊り橋での戦い、見事だったわ。フュンは戦闘に関して言えば相当な力を持っていたのよ?その娘は全く歯が立たなかった」
俺は吊り橋の辺りからほとんど捕捉されていたようなものだったことを女に告げられた。そして透明化のスキルを使用できることも知った上で俺をおびき寄せるため素知らぬふりで会話させていたらしい。
おそらく俺が工事中の看板を見て迂回するためそこを離れた後に工事中となっていた階段を上ってスキル研究室に先回りしたのだろう。俺は完全にこの女の術中に嵌まってしまっていたのだ。
「ところで俺たちとあの2人以外でこれを知っている能力者は居るのか?」
「いいえ。あなたの透明化スキルを見通せる感知と、その娘を操る洗脳は必要だったから適当に嘘言って丸め込んだけどそれ以外には言ってないわ。不自然な呼び出しでもあなたに始末されるんだから問題ないでしょ?」
「そうか。俺と彼女を含めた3人を戦わせた理由は?」
「そうね、フュンとの戦闘でスキルを複数扱えるのは分かったけど、戦闘力についてはあなたは透明化やテレポートで不意を討つ戦闘だから分からなかった。ならそれを扱えない状態にして直接戦闘はどれくらいできるのかを確かめたかったのよ」
俺とアイシスを含めた3人と戦わせた理由は直接戦闘がどれくらいできるかを確かめたかったらしい。結局不意討ちで勝ったような戦闘だった気がするが、筋力強化スキルを持っているし感知スキル持ちが居ても他の手段で戦えるのが分かったので一応合格らしい。
「それで私と手を組みましょう?アムロス。私は私を認めなかったヤツらに復讐したい。そしてそこの娘は妹を助けたい。その娘の妹についても私は知っているわ――」
「――何ッ?!どこ!アイリスはどこにいるの!教えなさい!」
「手を組むなら教えてあげるわ。アムロス、あなたも自分を捨てた研究所に復讐するため来たんでしょう?たとえ復讐ができても能力者はまだかなりの数残っている。いくらあなたでもそれを全て正面から相手にするのは無理よ。だから私が能力者たちを一網打尽にする作戦を考えてあるわ」
彼女の目的は俺たちとの共同戦線だった。その手土産としてアイシスの妹であるアイリスの居場所とここにまだ数百人単位で残っている能力者たちを一網打尽にする作戦を立案しているらしい。
この女が妹の居場所を知っていると言った際にアイシスはいきり立って立ち上がり、今にも飛び掛からんとする体勢を取りながら女に凄んだが女はそれを風に揺られる枝垂れた木のように受け流した。アイシスもまだ妹の場所を知らない、そしてその糸口も無いとなれば彼女が自分を殺せるはずがないと分かっているのだ。
女の提案は魅力的ではあった。もう研究所の深くまで潜行しており、研究所内にも相当な被害を与えた。強さだけならトップクラスの能力者や有用なスキルを持つ能力者も何人も始末している。今撤退すれば次はいつ潜行できるか分からないし、妹の居場所を知ったアイシスがこのまま大人しく帰ってくれるとも思えない。
通常時は落ち着いて自らの身が傷つくことすら厭わず耐える彼女だが、妹の居場所となればもうアイシスはもう冷静では居られない。
その忍耐も執着とも言える姉妹愛もどちらにせよ妹への想いがアイシスを突き動かしているのだ。
俺は帰ると言っても最悪俺を置いて2人で行くと言いかねない。だが女の方は明らかにアイシスのことは気にもかけていない様子で、俺が帰れば共同戦線の話も白紙になることが目に見えていた。
「分かった。共同戦線を組もう」
「そうこなくちゃね。私はツェーンよ。よろしくね」
俺はツェーンの提案する共同戦線に乗ることにした。いや、乗る他なかった。
「そうなのか?」
「吊り橋で見つかって死にかけたのは本当。でもそこからは記憶が曖昧」
「医務室でこの娘を治療して、来た理由と誰かと結託しているのかと聞いたらあなたと特徴が一致する男と組んでいるというから、私はここであの2人とこの娘で待った」
「話したのか?」
「分からない。でもあの女が知ってるということは話したのかもしれない。ごめんなさい……」
アイシスは見つかっていなかったわけではなく、見つかって殺されかけていたところをこの女に救われたようだ。そしてアイシスは記憶にはないようだが女に尋問されて情報を吐いてしまったらしい。
言い逃れの可能性も無い事も無いとは思うが、あの森で何度辱められようとも耐え抜いていた彼女が能力者側の人間に対して簡単に情報を吐くとは思えなかった。
もちろん生き延びて機会を伺うために吐いたということもありえるが、本当に生かしてもらえるかどうかも分からないのに1日も経たずに吐くとはやはり思えなかった。
「安心して、その子のせいじゃないわ。それは私のスキル【自白】の効果よ。話す気が無くても私が聞いた言葉に対して連想した想像を読み取るスキルを持っているの。お陰で拷問もせずに情報を抜き出せるわ」
俺は女の言葉を聞いて背筋が凍りつくようだった。これでは偽証も沈黙も通用しない。想像を読み取るのなら別の想像をすれば良いのだろうが、聞かれた言葉に対して少しでもそれに対する連想をすればそれを読み取られてしまう。
だがそれならアイシスから容易に俺の情報を得たというのも納得がいく。
「すると俺をおびき寄せたのか?」
「ええ。3階の階段前で話していた研究員はあなたがさっき始末した能力者よ。スキル【感知】を持っているあの男に姿は見えない能力者が通る時にこの部屋の話をしなさいと言ったのよ」
「なっ!?」
「吊り橋での戦い、見事だったわ。フュンは戦闘に関して言えば相当な力を持っていたのよ?その娘は全く歯が立たなかった」
俺は吊り橋の辺りからほとんど捕捉されていたようなものだったことを女に告げられた。そして透明化のスキルを使用できることも知った上で俺をおびき寄せるため素知らぬふりで会話させていたらしい。
おそらく俺が工事中の看板を見て迂回するためそこを離れた後に工事中となっていた階段を上ってスキル研究室に先回りしたのだろう。俺は完全にこの女の術中に嵌まってしまっていたのだ。
「ところで俺たちとあの2人以外でこれを知っている能力者は居るのか?」
「いいえ。あなたの透明化スキルを見通せる感知と、その娘を操る洗脳は必要だったから適当に嘘言って丸め込んだけどそれ以外には言ってないわ。不自然な呼び出しでもあなたに始末されるんだから問題ないでしょ?」
「そうか。俺と彼女を含めた3人を戦わせた理由は?」
「そうね、フュンとの戦闘でスキルを複数扱えるのは分かったけど、戦闘力についてはあなたは透明化やテレポートで不意を討つ戦闘だから分からなかった。ならそれを扱えない状態にして直接戦闘はどれくらいできるのかを確かめたかったのよ」
俺とアイシスを含めた3人と戦わせた理由は直接戦闘がどれくらいできるかを確かめたかったらしい。結局不意討ちで勝ったような戦闘だった気がするが、筋力強化スキルを持っているし感知スキル持ちが居ても他の手段で戦えるのが分かったので一応合格らしい。
「それで私と手を組みましょう?アムロス。私は私を認めなかったヤツらに復讐したい。そしてそこの娘は妹を助けたい。その娘の妹についても私は知っているわ――」
「――何ッ?!どこ!アイリスはどこにいるの!教えなさい!」
「手を組むなら教えてあげるわ。アムロス、あなたも自分を捨てた研究所に復讐するため来たんでしょう?たとえ復讐ができても能力者はまだかなりの数残っている。いくらあなたでもそれを全て正面から相手にするのは無理よ。だから私が能力者たちを一網打尽にする作戦を考えてあるわ」
彼女の目的は俺たちとの共同戦線だった。その手土産としてアイシスの妹であるアイリスの居場所とここにまだ数百人単位で残っている能力者たちを一網打尽にする作戦を立案しているらしい。
この女が妹の居場所を知っていると言った際にアイシスはいきり立って立ち上がり、今にも飛び掛からんとする体勢を取りながら女に凄んだが女はそれを風に揺られる枝垂れた木のように受け流した。アイシスもまだ妹の場所を知らない、そしてその糸口も無いとなれば彼女が自分を殺せるはずがないと分かっているのだ。
女の提案は魅力的ではあった。もう研究所の深くまで潜行しており、研究所内にも相当な被害を与えた。強さだけならトップクラスの能力者や有用なスキルを持つ能力者も何人も始末している。今撤退すれば次はいつ潜行できるか分からないし、妹の居場所を知ったアイシスがこのまま大人しく帰ってくれるとも思えない。
通常時は落ち着いて自らの身が傷つくことすら厭わず耐える彼女だが、妹の居場所となればもうアイシスはもう冷静では居られない。
その忍耐も執着とも言える姉妹愛もどちらにせよ妹への想いがアイシスを突き動かしているのだ。
俺は帰ると言っても最悪俺を置いて2人で行くと言いかねない。だが女の方は明らかにアイシスのことは気にもかけていない様子で、俺が帰れば共同戦線の話も白紙になることが目に見えていた。
「分かった。共同戦線を組もう」
「そうこなくちゃね。私はツェーンよ。よろしくね」
俺はツェーンの提案する共同戦線に乗ることにした。いや、乗る他なかった。
0
あなたにおすすめの小説
Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!
仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。
しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。
そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。
一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった!
これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!
S級スキル『剣聖』を授かった俺はスキルを奪われてから人生が一変しました
白崎なまず
ファンタジー
この世界の人間の多くは生まれてきたときにスキルを持っている。スキルの力は強大で、強力なスキルを持つ者が貧弱なスキルしか持たない者を支配する。
そんな世界に生まれた主人公アレスは大昔の英雄が所持していたとされるSランク『剣聖』を持っていたことが明らかになり一気に成り上がっていく。
王族になり、裕福な暮らしをし、将来は王女との結婚も約束され盤石な人生を歩むアレス。
しかし物事がうまくいっている時こそ人生の落とし穴には気付けないものだ。
突如現れた謎の老人に剣聖のスキルを奪われてしまったアレス。
スキルのおかげで手に入れた立場は当然スキルがなければ維持することが出来ない。
王族から下民へと落ちたアレスはこの世に絶望し、生きる気力を失いかけてしまう。
そんなアレスに手を差し伸べたのはとある教会のシスターだった。
Sランクスキルを失い、この世はスキルが全てじゃないと知ったアレス。
スキルがない自分でも前向きに生きていこうと冒険者の道へ進むことになったアレスだったのだが――
なんと、そんなアレスの元に剣聖のスキルが舞い戻ってきたのだ。
スキルを奪われたと王族から追放されたアレスが剣聖のスキルが戻ったことを隠しながら冒険者になるために学園に通う。
スキルの優劣がものを言う世界でのアレスと仲間たちの学園ファンタジー物語。
この作品は小説家になろうに投稿されている作品の重複投稿になります
転落貴族〜千年に1人の逸材と言われた男が最底辺から成り上がる〜
ぽいづん
ファンタジー
ガレオン帝国の名門貴族ノーベル家の長男にして、容姿端麗、眉目秀麗、剣術は向かうところ敵なし。
アレクシア・ノーベル、人は彼のことを千年に1人の逸材と評し、第3皇女クレアとの婚約も決まり、順風満帆な日々だった
騎士学校の最後の剣術大会、彼は賭けに負け、1年間の期限付きで、辺境の国、ザナビル王国の最底辺ギルドのヘブンズワークスに入らざるおえなくなる。
今までの貴族の生活と正反対の日々を過ごし1年が経った。
しかし、この賭けは罠であった。
アレクシアは、生涯をこのギルドで過ごさなければいけないということを知る。
賭けが罠であり、仕組まれたものと知ったアレクシアは黒幕が誰か確信を得る。
アレクシアは最底辺からの成り上がりを決意し、復讐を誓うのであった。
小説家になろうにも投稿しています。
なろう版改稿中です。改稿終了後こちらも改稿します。
異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします
Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。
相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。
現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編
最上級のパーティで最底辺の扱いを受けていたDランク錬金術師は新パーティで成り上がるようです(完)
みかん畑
ファンタジー
最上級のパーティで『荷物持ち』と嘲笑されていた僕は、パーティからクビを宣告されて抜けることにした。
在籍中は僕が色々肩代わりしてたけど、僕を荷物持ち扱いするくらい優秀な仲間たちなので、抜けても問題はないと思ってます。
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
最強無敗の少年は影を従え全てを制す
ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。
産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。
カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。
しかし彼の力は生まれながらにして最強。
そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。
美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった
ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます!
僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか?
『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる