Happinessーハピネスー

たごころたまき

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004.転校初日

 学校の校門で恵介と別れた僕は転校生なのでそのまま教員室へと足を運ぶ。そこでひとまず待機するということになった。その間に担任の先生とも挨拶しておく。

「俺が担任の松坂だ。担当教科は体育、よろしくな」
「あ、はい。五十嵐翔です。よろしくお願いします」
「ああ、よろしく」

 僕の担任になったのはジャージ姿が似合うゴリゴリマッチョの体育教師。これはツイてるのかツイてないのか……きっと体育は厳しいことになりそうだ。

「なんかスポーツはしていたのか?」
「ええ、ソフトボールをちょっと」
「そうかぁ……ここ学校にはソフトボール部はないがね。野球部ならある」
「坊主頭にするのはちょっと」

 そういうと先生は「まあそうだよな」と笑った後、一緒に教室に向かう。まだ僕は入らず、先に先生が入ってホームルームを始めていた。僕が入ってない間のことは春休みの宿題などのことだったらしいので僕には関係ない。

『さて、席が1つ空いていると思うが……今回は転校生だ。入ってきてくれ』

 そして、なぜか僕が気を抜いたタイミングで先生から中に入って来いという声がかかる。あまりにも計算されたタイミングだったので一瞬ビクッとしたものの、しっかりと体制を立て直して中に入る。


『お前、どこが”ダメ”なんだ?』


 この言葉が少しだけ引っかかっていたが、それよりもまずは自己紹介をしなければいけない。

「あー、それじゃあ。挨拶して」
「はい、五十嵐翔といいます。東京から来ました。よろしくお願いします」
「よし、それじゃあ。席は一番廊下側の一番後ろの席だから」

 テンプレの会話が終わると、僕は荷物を持ってまっすぐに席へ。その間に恵介が同じクラスにいないか探してみるもののその姿は見当たらなかった。

 ひとまず僕は席について先生の話を聞くことに。この後は学年集会があるらしく、それが終わったら始業式。そしてホームルームがあって終わるらしい。
 変わっていることは学年集会と始業式は各教室でリアルタイムの映像を見ながらやることだろうか。

「とりあえず今後の予定を言うぞー。明日は午前授業の4時間授業。明後日も同様だ。それで木曜日は模試だ。範囲は学年通信に書いてあったとおりだ。金曜からは通常授業な」
「模試か……」

 たぶん高1で習ったことが出るんだろうなぁ。そこまで頭は悪くないのである程度の点はとれるんじゃなかろうか。

「それじゃ、休憩。学年集会は9時10分から始まるからな。それまでに着席しとけよー」

 すこし走り気味の説明を終えた先生は名簿を持ってクラスを出て行った。この休み時間でこの学年のフロアを少し回ってみて恵介を見つけようと席を立とうとしたら……。背後のドアが開いて恵介が顔を出した。

「お、やっぱここにいたか。ゴリマッチョのクラスとはついてなかったなぁ」
「恵介……」

 ちょうど探そうとしてたんだよ、そう話しかけようとしたその時。クラス全体がザワッとし始めた。

「恵介、お前戻って来たのか!?}
「今回は大丈夫だったのか」
「だから言っただろ、鳴海は大丈夫だって」

 何人かの生徒は彼の元へ集い握手なんかしている。復帰って言ってたからある程度の期間いなかったのだろう。それにしてはオーバーな気もするけど。

「ああ、なんとか今回はな。へへっ、悪運は強いみたいだからな」
「突然だったからだろまったく。音沙汰なかったし」
「そりゃみんないつものことだろ」
「それでもある程度回復したならラインくらい返せ!」
「前に同じことしてた坂本が言えるかそれ」

 集まった人と楽しそうに恵介は笑ってるし……後でいいかと思った僕は席を立って廊下に出ようとする。とりあえずトイレの位置とか知っているのといないとでは安心感が違うし……。

「あ、翔。俺はC組にいるから。困ったときは来てくれよな」

 僕が横を通り過ぎようとしたときに恵介はこっちに声をかけてくれた。僕も「わかった」と返して廊下へ。そのまま廊下を歩いてトイレの位置の確認とか同じ階にある専門教室なども見てみる。

 ……あれ? 僕もしかして転校早々ういちゃってる?

  〇 〇 〇

 20分程度の休憩の後、学年集会が始まった。学年主任の言葉に始まり生徒指導部や進路部などの先生が順々に話していくだけのつまらないものだった。そりゃあこういう改まった場で笑いを取りに行くというのもどうかと思うけど。
 そのあとは始業式。ここの学校の校長はそれほど長い話はしなかった。ただ新年度の抱負なりあって多少は面倒だった。
 その後のホームルームは自己紹介とか配布物とかばっかりだった。どこの学校もそうだけど始業式だけで正直意気消沈なのにこの話聞いてプリントをもらうという作業もなかなか面倒だ。

 そんな単調な時間も10時30分くらいで終わりを告げ、新しい学校での生活1日目はあっという間に終わってしまった。

 もちろん転校1日目ではろくに話せるのは恵介くらいしか居ず……彼と一緒に帰ろうと隣のC組へ行ってみようと思い席を立とうとすると……。再びドアが開いてまた恵介がB組に侵入してきた。

「お、帰ってなかったのか。助かったぜぇ」
「ちょうど僕もそっちに行こうと思ってたところだよ」
「翔がいないとあそこの交差点までの道がわからねぇからな」

 あ、そういえば恵介はここまでの道がわからないんだった……。そういうのも込々でこっち来たってことね。

「恵介は転入生君と帰るの~?」
「せっかくだから駅前の”茜屋”で奢ろうと思ったんだけど……久しぶりにゆっくり話したいし」
「だったらみんなで帰るか? 翔が構わなければだけど」

 やはり恵介は人気者なようで、2名の女子と少し根暗そうな男子生徒が教室の対角線上から寄り道を誘っていた。話を聞いている限り僕も誘ってくれるようだし。友達も作れそうだから行ってみようと思う。

「うん、僕は大丈夫。そっちがよければだけど……」
「転校生君~、別に気を使わなくてもいいよ~」
「よっし、そうと決まったら”茜屋”に行くか!」

 すこし遠慮気味だった僕に女子の一人が手を振って「大丈夫だから~」というそぶりを見せると、もう待ちきれないという感じの恵介が荷物を持って教室へ出ていく。
それを見た僕も慌ててかばんを持って恵介を追っていった。

 もしかしたら、転校早々騒がしいことになるかもしれない。
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