おっさん、黒の全身タイツで異世界に生きる。

しょぼん

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二章(前編)

第八話「一階層」

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 小部屋はランタンの明かりで満たされている。
 ランタンの前を人が移動するたびに影が差し、小部屋の景色をゆらす。

 その発せられる明かりは、オレンジ色でやわらかかった。
 やわらかい明かりが薄汚れた灰色の壁面に、ほんのりと赤みをつける。

 部屋の中に居ると、わずかだが優しいこの明かりは、冒険者たちの心に蜘蛛の糸をたらすよう、頼りない心の救いになっているようにも感じられた。


 小部屋といっても六人全員が入ってまだ、スペースに余裕があり、休憩することができるぐらいの広さはあった。
 俺たちは、今、その小部屋で休憩している。



 緊張した状態。
 人間、その状態を長く続けることはできない。
 俺たちは、休めそうなポイントに来ると、こまめに休み、張りつめた緊張の糸を緩めていた。


 冒険者の彼らも、タルタロスの一階は、新人のうちによく探索していたらしい。
 手書き地図はその時にだいたい完成しているのだそうだ。

 地図は冒険者にとって重要な情報。
 なので、他の冒険者にタダで見せたりはしない。
 それは、多くの冒険者が踏み込んでいるだろう一階ですらそうだった。


 大型カンパニーなどに入っていれば、新人などに見せたりはするらしいが、それでも全てを見せるわけではないそうで、重要な所は主要なメンバーでしか共有してないそうなのだ。

 しかし、そんな情報を出し惜しみもせず、目の前の彼らは俺たちと行動を共にしてくれていた。



 少しは彼らと、打ち解けているのだろうか。
 自分から歩み寄りもせず、都合良く向こうから歩み寄ってくれるのを待っているくせに、そんなことを考えてしまう。
 彼等からすれば俺たちはライバルでもないから気にしてないだけなのかもしれないが。



 さて、現在俺たちのいる小部屋に話は戻ろう。

 彼らの情報では、この部屋には宝箱が出現することもあり、なおかつ休憩所にもなるという場所らしかった。

「――あ、宝箱発見。
 朝一番、入ったから、まだ誰も来てないみたい。

 そういえばキャンプにも、今日が休息日のせいか、人、居なかったわよね」


 ダーナさん。
 元カノ似の彼女が部屋に入ると、さっそく宝箱を見つけ、そう言った。


 この彼女。
 助けた当初は、恋人が殺され、かなり落ち込んでいたが、今は気持ちも落ち着いたのか、少し元気を取り戻しているようだった。
 逆に何か使命感に満ちた目をしているのがちょっと怖い。


 まあ、それも表面的にはではあるがね。
 コミュ障の俺には、人の機微を推し量る器量もない。

 それに、彼女を見ていると元カノを思い出しそうなので、なるべく俺は気にしないよう、近づかないようにしていた。



 俺は怖がっているのだと思う。

 元カノの面影が見えると、なぜ怯えるのかと問われると、返答に窮してしまうわけなのだが――
 とにかく元カノとの思い出にいいものはあまり無かった。
 だってそうだろ。俺って振られたわけだから。

 そんな俺の心の動きなどよそに、皆が思い思いに休憩を始めるなか、彼女は宝箱の罠の有無を調査、その後、罠の無いことを確認し、かかっている鍵を解除しはじめた。


「ねえ、宝箱って――
 誰が置いてるんですか?」

 俺は、疑問に思っていたことを、金髪ローブくんに聞いてみた。


「そうですね――この宝箱。
 不思議な話ですが、今回回収しても時間が経つとまた迷宮ダンジョンのだいたい同じ場所に出現することがあります。
 周期は回収してからだいたい一日で出現するようですね」

 金髪ローブくんは、すぐに俺の質問に答えてくれた。


「おもしろいことに――
 人の見ている前では出現しないんじゃよ。

 この箱を放置し、この部屋からでていかないと、一日待とうが再出現はせん。
 別の迷宮ダンジョンと呼ばれる場所もそうじゃった」

 じじいが、話に割り込んでくる。


「教授の論文には、魔素の濃度と周辺の街の文化が、宝箱や中に入っているアイテムに及ぼす影響について書いてましたね」


 金髪ローブくんが、キラキラした目で話し始めた。

「――迷宮ダンジョン黒の森シュバルツヴァルトなど魔素の満ちる場所では、人の願い意思、感覚などが強く反映され現象に変化を及ぼす。
 出現する魔物も、宝箱内のアイテムも人の深層意識が具現化しているのかもしれない――

 ――と書かれた論文。
 迷宮で出現するアイテムやモンスターの地域性、その法則を当てはめ、統計により検証した教授の話しには、とても感動させられました!」



 なるほど、それが本当なら――
 ゾンビなど、ここで死んでいるだろう冒険者より、はるかに多い死体が動き回っていることも頷ける。
 あれは、この中で自然発生(?)したものなのか。

「ちょうど良い、その話がでたのでちょいと調べさせてもらおうかの――」

 そう言って、じじいは握力計のような型をした機械を背嚢から取り出す。
 迷宮の入口でも取り出していたものだ。

 そして、弾のようなものを握力計もどきにセットするとハンドルを握りしめた。


      ――ガシャン

   ――ターーンッ


 僅かに火薬の煙のようなものが漂う。

「これはの、火薬を使った魔素量を測定する計器じゃ。

 なぜか魔素が濃ければ濃くなるほど、火薬により発生するガスの膨張が抑えられてしまうんじゃ。
 なのでこうやって火薬を爆発させてやり、その威力によって魔素の濃度を量っておる」


 俺たちがガルニア帝国から逃げる際に、銃で撃たれたのは記憶に新しい。
 それを考えると、この世界には銃がないわけではないのだが、今回、この迷宮や黒の森でそれらを使う気配がなかった。


「確かに、銃等……特に火薬を用いたものは、迷宮では大幅に力を落とす。
 何故か剣や弓などは破壊力を落とすことがないので、冒険者にはそちらの方が好まれているな」


 じじいは俺の考えを先読みし、手に持った紙の束をめくりながら応えてくれた。

「こうやっての、少しずつ魔素の性質を解明していくことが、魔法などの現象を理解するために必要なんじゃよ。

 火薬と同じように魔素そのものが反応して魔法が使用されているのか、それとも魔法が使用されるから魔素が生まれるのかは今の所わかっておらん。
 じゃが事実として、魔素のある場所では、無い場所と違った現象がおきておるのが確認できる。

 例えば、もし、魔素そのものが反応しておるのなら、それを集めることができればその性質を利用することができるはずじゃの。

 現在、それに近いことが妖魔結晶石で行われておる。
 あれも魔物が体内に溜め込んだ魔素の結晶だといわれておるが証明はされておらん。
 しかし、反応を研究することによりそれを利用することができておる。

 何を言いたいのかわかるか。
 ワシは世の中が、人間が進歩するためには魔法や魔素の解明が不可欠だと思っているのじゃよ」


「教授は、それを研究するために、この迷宮に入っているんですよね」

 金髪ローブくんがじじいの言葉に相づちを打つ。


「えっ? なら、ここの宝箱を取った後――
 明日、再度突入して宝箱が出現するのを確認したりするんですか? データ採るために」

 俺は確認してみる。


「そう簡単にはいかん。
 ほら、食料などの問題などもあるじゃろう。

 それに、宝箱が出現するのは確認済みじゃ。
 既に、何年も前に、別の冒険者を使ってデータを取ることを依頼しておったのじゃよ。
 そこの研究は既に通過しておる。
 今のは、そのデータとワシ自身が計測したものを照合しておるだけじゃよ。

 ――ふむ。
 今の所、おおむね一致しておるの。

 ただ、頼んでおった冒険者たちも引退してしまっての……研究も行き詰まっておったんじゃ。
 それを打破するには、この迷宮に潜ることがそれにつながるかもしれんと考えておる――
 お主に、最下層までの攻略を依頼したのは、それを願ってのことなんじゃよ」


 とりあえずよかった。
 ここで、いちいちデータを取っていたら、攻略がいつまでも進まない。基地起動がはるか先になる。


 ――ぎぃーっ

 宝箱の蝶番が、音を立てる。
 その音がした方に、皆がいっせいに目を向けた。


「開いたわよ――」

 宝箱を明けた元カノ似は、中から首飾りのようなものと、フラスコのような瓶を取り出す。
 瓶には、何ともしれない緑色の液体が波打っていた。


「回復用ポーションに――逆十字のアミュレット?
 こんなの初めて見るわね、なんだろ、これ……」

 彼女は手に取った首飾りを、ランタンの明かりに近づけ、裏返したり、透かしたりしている。


「魔力の流れを感じますね。
 なにに使うものかわかりませんが……」

 金髪ローブくんが、その首飾りを受け取り眺め始めた。


「魔力を流してみれば、効果が発動するでしょう……。
 今、試して、もし呪われたりしたら危ないので、鑑定は戻ってからにしましょうか」

 金髪ローブくんは首飾りを元カノ似に返す。


「そうだな――
 今日は進むのが早いとはいえ、この階の主と戦う予定だ。急いだ方がいい」

 ん、主って?
 マッチョさんが、さらっと、何か言ってるがそんなの聞いてない。


「――ちょっ、主ってなに?」

「ああ、知らないのか。
 この迷宮は、その階層ごとに主がいる。
 そいつを倒さないと、下へは進めないんだ。

 それに入口に戻るには、主を倒した後にある階層移動用エレベーターを使うしかない。
 来た道を戻ると、夜になってしまうからな」


 説明しておいてくれよと思いつつ、軽く文句を言うと「わかっているのかと思ってた」と返された。

「この階層の主は、たしかボーンゴーレムです。
 一角熊より弱いので安心してください」

 「安心してください」とか、一番安心できない言葉だぜ、金髪ローブくん。


「コウゾウさんもいるし、大丈夫ですよねっ」
 なんだか、楽しそうに金髪ローブくんに言われる。
 期待のこもった目で見られるのがつらい。

 俺たちはその会話を最後に休憩を終え、再び探索を始めることにした。
 俺は、しょうがないなと覚悟を決めて、踏ん張ることにするのだった。




§




 その後も、前進と休憩を繰り返す。
 一階層とはいっているが、軽い階段などはあり、地形の高低差もあったりする。
 そんな山あり谷ありの一階層を進み、俺たちは主とやらがいる扉の前までたどり着いていた。


 目の前の扉は石でできており、幅は通路幅近くある。
 天井近くまで伸びた高さは、大人三人分ぐらいはあった。
 開閉は左右扉が壁へ向けて入っていくスライド式らしく、壁面にあるレバーを下げると開くらしい。


 ――ガッ コン

 さほど重くはない。
 レバーは少しぐらいの抵抗で下がり、止まると、再びゆっくりと上がり始め、もとの位置に戻った。

 ボーンゴーレムと戦うにあたり、特に作戦はない。
 今まで通り冒険者たちは教授を守り、俺たちが敵を倒す。
 打ち合わせではそれだけだった。



 ――ゴゴゴゴ ゴゴ ゴ ゴッ

 パラパラと砂粒を落としながら、石の扉が開き始める。
 扉の開閉機構が動いている音が聞こえた。


 重いもの――
 扉を引きずる音が、微かな振動とともに地鳴りのように響く。緊張するな……。

 地面に溜まっていたのだろう冷えた空気が、扉の隙間から吹き出してくる。
 HMDヘッドマウントディスプレイ端に表示された温度計が2~3℃ほど下がった。



「魔素ですね――」
 金髪ローブくんが呟く。

 色がついているわけではないハズなのに、その吹き出すものは、むせ返るような禍々しい気配を俺たちに感じさせた。

 ヘルメットをしている俺でさえそうなのだ。
 冒険者たちは口元を腕で覆い、押し寄せる濃い魔素に耐えていた。


 侵食する魔素が周囲を満たす。
 人は最初、水に足をつけると、その冷たさを感じ、驚く。
 しかし、水中に潜ってしまうと暖かく感じるように、魔素が満ちてしまえば、体が慣れはじめていくのだった。


 体の自由とともに、周囲を見渡す。
 部屋の中はこれまでで一番広く、天井は少し低いが、ちょっとした体育館ぐらいはあった。


 地面にはたくさんの白骨化した骨が散らばっている。
 壁面も同じく大量の白骨があり、その骨で意匠が施されていた。


 気味の悪いカタコンベのような場所。

 正面の……
 体育館なら、ステージに当たる辺りに鎮座しているものがある。
 骨で作られた壁面の装飾にとけ込んではいるが、いかにもコイツが動くんだろうな、という感じをだしているものだ。


『ウインドウへ――拡大します』

 イノリさんが、その鎮座しているものをHMDに拡大する。

―――――――――――――――――――――――――――
種族:ボーンゴーレム
サイズ:17

筋力:23
耐久:20
知覚:7
魔力:10
機動:13
教育:0

攻撃力(名称:貫通力:ダメージ:動作)
・腕:0:20:2
・大斧:斬り/7:43:2

防護値(名称:装甲値:緩衝値)
・鉄鎧:4:0
―――――――――――――――――――――――――――

 スキャンした情報も一緒に表示。

 冒険者たちがボーンゴーレムと呼ぶそれは、名前の通り骨でできている甲冑を着たゴーレムだった。


 頭は広間の天井に、つきそうなぐらい高い。
 その腕は異様に長く、類人猿のよう。
 大きく禍々しい意匠の斧を両腕で持っており、だらんと力を抜いて地面に近い位置まで腕が下がっていた。

 拡大されたウインドウで見ると、たくさんの骨が集合しているのがよくみえる。
 人体の様々なパーツで構成された頭は醜く歪んで、それはさながらムンクの叫びの様に口をぽっかりと大きく空け、さらに黒い空洞をみせていた。


 俺は深呼吸をして、周囲の仲間に目配せをする。
 皆準備はできているようだ。

 俺は頷き「入るね」と皆に伝え、部屋の中へ踏み出した。



    ――パキッ


 地面に落ちた骨を践む。
 乾いた音が、静かな広間に吸い込まれていった。


  ――パキッ


      ――パキッ


 俺たちが部屋の中心へ着たあたりで――背後から扉の締まる音が聞こえる。



「逃がさない、って感じだね――」
 俺がつぶやくと、イノリさんが『閉める手間がかからず、よかったですよ――』と答えた。



 いつものイノリさん、その声で緊張が少し和らぐ。


「閉めなくても、誰も気にしないって」

 莉奈さんも緊張に負けないよう声を出し、軽くその場で数回ジャンプし屈伸した。


 完全に扉が閉じると、カラカラと乾いた音が、周囲で鳴り始める。
 それは、床に散らばった骨が集まり、形をなしている音だった。


 逆戻しの映像のように、骨が空中に浮かび上がり、それに続いて残りの骨が結合していく。
 俺たちは、またたく間に、人間サイズのスケルトンたちに囲まれていた。冒険者たちは教授の周囲に立つ。



 それを待っていたように、ステージに居たボーンゴーレムがコチラへ向け、その巨体を軋ませて動き始めた。

「莉奈さんは、周囲のスケルトンをやっつけてください。
 俺はあの大っきなのをやりますので――」

 俺は話し終えると同時に、ボーンゴーレム目がけて走り出した。


 ――魔力装填数 6/6

「エネルギー・ボルトッ!」


 ――ドンッ

    ――ドンッ
  ――ドンッ

 ――ドンッ
    ――ドンッ
  ――ドンッ


 ――魔力装填数 0/6


 装填数を全て使い切り、六発のエネルギー・ボルトをボーンゴーレムに叩き込む。
 エネルギーでできた矢は外れることなく、全てボーンゴーレムに命中した。


 魔力を再装填する。
 ――魔力装填数 6/6


 多く命中した右腕と左足は、エネルギー・ボルトによりヒビが入っていた。

 おっ、結構効いてるじゃん。


 ――ズズゥンッ


 破損した腕は、斧の重量に耐えることができなかったのかポッキリと折れて地面に落ちた。
 残りの片手で斧の柄を持っているが、流石に片手では振り回すことができないらしい。
 斧から手を離し、片手で殴りかかってきた。


 俺はそれを躱し、距離を詰める。

 そしてボーンゴーレムのヒビの入った向こう脛を、力の限り蹴りつけた。
 硬球ボールがバットの芯に当たったように、程よい抵抗が足にに伝わってくる。


 その一撃で足はポッキリと折れ、バランスを崩した身体が音を立てて倒れた。
 破損した部位が崩れ、カラカラと骨の崩れ転がる音が響く。


 俺は倒れてもなお動こうとするボーンゴーレムを、手当り次第にストンピング踏みつけ攻撃した。
 踏みつける力は、ヤツを構成する骨たちを砕き、次第に身体を保つ力のなくなったボーンゴレームは、バラバラになって崩れ落ちはじめる。


 ボーンゴーレムを失い、残るはスケルトンのみとなった部屋。
 莉奈さんは、ゾンビや犬などよりかは、躊躇い無くスケルトンを攻撃できている。


 流石に全身タイツを着ているので強い。
 瞬く間にスケルトンをスタンロッドで破壊していった。

 こうして主とやらを片付けた俺たちは、難なく一階層を攻略することができたのだった。




§




「やった、みてみてっ!
 あいつら倒せたんだって!」

 莉奈さんはしゃぎながら、砕けたスケルトンの残骸を指差す。


「楽勝! 楽勝! 莉奈すごくない!?
 おじさん、これからは、ぜーんぶ、任せてくれちゃっていいよーっ♪」


 スケルトンは、生もの感が全然なかった。
 理科室の標本を破壊している感覚だから、ギャルちゃんはビビることなく倒すことができたんだな……たぶん。
 俺は、そう分析している。みんなはどう思うよ?


『それは頼もしい――リナ。
 では、次の階層の妖魔討伐は期待してもいいようですね』


 イノリさんも同じこと考えてたか。
「うぇっ、やっぱ無理かも」と莉奈さんは渋い顔をした。



「コウゾウさん、やりましたね!
 石棺が開いているハズですよ!!」


 金髪ローブくんが、キャッキャッと駆け寄ってきた。
 一階層の主を倒せたことに興奮しているのが見て取れる。

 彼の指す方には、石で出来た棺桶のような箱が置いてあった。

「主の部屋の石棺は鍵も罠もないわ」

 元カノ似はその石棺を覗く。
 続いて他の皆もその中を覗き始めた。


 石の箱は石棺とよばれているらしい。
 主を倒すと、そのフタの鍵が解除され開くようだった。


「これが、階層の鍵……。
 初めて見ました……」

 金髪ローブくんが石棺の中から、びっしりと模様の刻まれた棒を取り出す。
 他には数枚の金貨と盾が入っていた。
 元カノ似がそれらを回収している。
 そして盾を見ながらマッチョさんに聞いた。

「マジックアイテムかな?」

「たぶんそうじゃないか――
 おい、ユアンわかるか?」


 マッチョさんが盾を金髪ローブくんに渡す。

 しばらく金髪ローブくんが盾に手をかざすと
「おそらくだけど――盾に少し強化の加護がかかっているようだね、+1ってとこかな」と言った。

「ちっ、バックラーの+1って外れか――」

「売ればそこそこになると思うよ……
 今回の探索の食費ぐらいにはなるから、外れというわけではないかな」

 そんな会話がかわされている。


「ところで来るとき、エレベーターがどうとか言ってましたけど、どこにあるんですか?」

 ガンガン進んでいたので、これから引き返すとなると結構かかるよな。



「ああ、そのことですね。これから説明します――」

 そう言って金髪ローブくんは、俺たちを誘導した。

「ありました、たぶんここですよ」



 金髪ローブくんは、入口と対角にある壁についてあるレバーを動かした。


 重い壁が動き、両サイドに割れる。
 そこには下層へ続く階段が伸びていた。

 カーブを描く階段は螺旋に下降して随分と深そうだ――
 ここに異世界に来る時、通った階段を思い出す。


 その光景に――
 今の所、順調に進んでいる迷宮攻略なのだが、思い出される記憶に影響され、不安を拭えないでいるのだった。




§

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