おっさん、黒の全身タイツで異世界に生きる。

しょぼん

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二章(前編)

第七話「迷宮初日」

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§




〈三人称 視点〉


 ――魔素の漂う森を進む者たち。

 視界を明るく照らすはずの光は、磨りガラスを通したように拡散し、周囲を淡く照らす。
 彼等は現実感の無い、夢の中を進んでいる気分だった。



 そんな朧げな風景の中。
 歩いていると、突如切り替わる光景に、初めて訪れる者は圧倒されてしまう。


 黒の森シュバルツヴァルト
 その森へは、ブリストルを出て二日後に着くことができる。
 そしてさらに、二日ほど森の奥へ進み、やっと、迷宮ダンジョンへとたどり着けるのだ。



 コウゾウたちが今居るのは、その迷宮の前。
 広く開けた丘の上に立つ、祭壇をイメージさせる形状の古代遺跡がある場所だった。


 遺跡は、多面を持った巨石が隙間なく積み重なることで構成されている。
 表面の風化具合からは想像できないほどの、かみそり一枚差し込めない精密さで噛み合っていた。

 遺跡を構成している煤けた灰色の巨石は苔むし、遥か昔から自分がそこに座っていたことを雄弁に語りかけてくる。
 見上げるほど高い建造物は魔素と絡み合い、それはまるで、強大な妖魔が矮小な者たちを見下ろしているようにも感じさせるものだった。




 ――目的の場所。
 遺跡の壁面、北側に位置する面に、迷宮への入口がある。


 コウゾウたちは冒険者の誘導のもと、その入口を下りて行く。
 一応バイクXanthosも自動無人運転で一緒に付いてきている。


 中は思ったより広く、通路幅は大人が三人両手をひろげたよりも倍近く広い。

 パーティの一人。
 ウインブルク大学教授、モーリッツは中に入ると、なにやら計器のようなものを使い、色々と作業を進め始める。
 その助手であるユアンもその作業を手伝っていた。


 外と同じく石が積まれた壁面は、天井にもそれと同じようにして石が覆っている。

 ――タルタロスの迷宮。


 煉獄への入口と称される迷宮には腐臭が漂い、外よりも遥かに濃い魔素と闇で満たされていた。
 迷宮の中は、まるで生き物の腹の中に入るような感覚。

 それら様々な要素は、恐れや不安といった負の感情を湧き上がらせるのには十分な材料だったのだ。




§




〈コウゾウ視点〉


『そのまま通路を進むと――
 突き当たり丁字路左から敵性反応、四体が徘徊しています』


 被っているヘルメットからイノリさんの声が聞こえた。
 HMDヘッドマウントディスプレイにウインドウが開く。

 そこには小型の地図が表示され、敵性反応を現す赤い光点が反映されていた。


「突き当たり、丁字路左に敵四体」

 俺は通信を使い莉奈さんに呼びかける。
 そしてその後方にいる冒険者たちにもよく見えるよう、片手を大げさに上げ指を四本立て敵のいる方を指差した。

 ランタンの明かりのみで、視界を確保している彼らにも俺の合図は確認できたようで俺に頷いてみせる。
 だが懸命に暗闇を凝視している彼等の姿は、通路先の敵までもは見えてない様子だ。



「またゾンビかな?」

 横にいた莉奈さんは、俺に問いかける。
 その問いに答えるため、俺は目をこらし通路の先を見た。

 ここから、突き当たりの丁字路は……
 見えるな。

 ヘルメットの機能により、光を使わなくとも暗闇を見通すことができた。明かりのある場所との明度差も違和感無く処理されている。
 さらに便利なことに、俺が目を凝らすことによって、見つめている先が次第にズームされていくのだ。

 イノリさんのサポートにより、ストレスの無いダンジョンライフを送れることがありがたい。
 まあ、イノリさんの指示で、こんな所に来ているわけなのだが……。


 ところで、壁の向こう――
 丁字路の左へ抜ける通路にいるはずの敵の姿が、赤く光るラインで輪郭を強調されている。
 その赤く光るラインは、人の形をしており、動きは遅い。
 さらには足を引きずるようにして、通路を徘徊していた。



「たぶんゾンビだ。動きがそれっぽい」
 俺は莉奈さんに、先ほどの質問にたいする返事をした。

『はい、スキャンした結果。動く死体だと確認できました。
 死体の種族は全て人間、性別もすべて男ですね。

 腐敗状況は死後一週間と数日――
 といったところでしょうか』

 イノリさんは、追加で敵の情報を伝えてくれる。
 この内容は、莉奈さんのヘルメットにも伝えられているはずだった。



 さて――
 俺たちは今、タルタロスの迷宮にいる。

 約一週間前。
 俺たちはブリストルと呼ばれる街に、たどりついていた。
 それから、生活するための金銭、装備を整え、再度、黒の森シュバルツヴァルトに挑んでいるのだ。


 なぜ、再突入に一週間もかかるんだ――だって?

 確かに、そんな疑問もあるだろう。
 俺たちに、この世界の武器や防具はあまり必要ない。

 迷宮探索に必要なのは、この全身タイツの上に着る、探検用の服装ぐらいだ。準備なんて二~三日あれば十分じゃないのかよ、って思うのも致し方ない――


 実のところ、その準備にはそれほどかかってないしね。

 ただ、ここに来るまでに四日かかっており、単純に移動に時間がかかってしまっているだけなのだ。

 しかし、かかってしまっていたと俺は言ったが、特別、行程が遅れてしまっているわけではない。
 ここでの活動は、冒険者たちにとってその位の時間をかけるのは当然のことだったのだ。


 まず、街から蒸気自動車の定期便に乗り、二日目で黒の森の入口――国が管理している資源採取拠点村に到着する。
 そこからさらに森の中に入って二日歩くと、やっとこの遺跡へ到着するのだった。


 こんな感じで、苦労して俺たちはタルタロスの迷宮まで来ている。
 遺跡に到着後、その近くのキャンプのできる国営アングリア王国施設(施設といっても結界の張られた広場)にて一泊したのち、俺たちは朝から迷宮に入っていた。

 今回は一階を探索した後、ダンジョンより脱出。
 また、そのキャンプで一泊し、街へ帰るという段取りだった。


 交通のみを考えても、街までの往復に八日はかかる。
 それを考えると、一階だけでなく一気に下りられるだけ下りた方がいいんじゃないかと思うかもしれないが、そうもいかないのが現状、ここでも食料などの問題が再燃してしまうのだ。


 俺たちのグループの場合、荷物を持ち運べる量がそれほど多くない。
 自分の生活用品や食料は自分で持ち運ぶ。
 ポーター荷役労働者を雇っているわけでもない俺たちは、そうするしかなかった。
 しかも、そうなると限界は自ずと決まってくる。

 だよな、一人五日分の食料を入れると背嚢はパンパンで、重さも20kgを軽くオーバーするんだぜ。
 じじいも居るんだし難しいだろ?

 あ、車で運ぶとかいうのは無理な。
 そもそも、この黒の森では、道が悪すぎて車は走らせることができない。 
 イノリさんのバイクなら大丈夫だが、そこはあまり当てにされると嫌なので、戦利品を積む位にしか使わないことにしている。

 まあ、そんなわけで黒の森に滞在できるのは五日。
 森の入口にある資源採取拠点に往復で四日かかるのなら探索は一日しかできないという結果となる。


 そして、今現在、一階層を探索中。
 急いでいるのなら、一気に五階層まで、間の階を飛ばすこともできるらしいのだが、今回は、俺たちの初めて探索なので、練習という理由で一階層のみの攻略となった。


 これを言い出したのは金髪ローブくんで、そのとき元カノ似の冒険者は先を急ぎたいのか、彼の意見に反対していた。
 しかし俺、莉奈さん、金髪ローブくん、じじいは今回初挑戦である。
 経験者は元カノ似とマッチョさんのみ。正直不安じゃん、初めてって。
 そこで多数決にて決めることとなり、今回は渋々元カノ似が折れることになったのだ。


 さて、これまでのことは、これでわかっただろう。
 今はとにかく、目の前の迷宮のことを考えないといけない――

 この迷宮ダンジョン
 俺たちならどのくらいで一階層を攻略できるか、今回はそれも量っている。
 冒険者たちの基準だと、だいたい安定して一日(十時間位)で一階層攻略できるようなら次の階層でも通用するらしい。

 今の所、妖魔の強さからいっておそらく大丈夫だと思う。
 俺たちは、軽く流すぐらいの気持ちでいた。


 イノリさんも、基地の起動をそれほど急いでいないのか、急かしてくるようなことはなかったからだ。


「暗いのに、よく見えるな……後方は――大丈夫だ。
 教授の安全は俺たちが守る。
 だから安心してくれ」

 冒険者の一人、マッチョさん。
 彼がランタンの光を揺らしながら、俺の呼びかけに返事をしてきたのだ、俺はそれに頷きで返す。

「莉奈さん。
 俺たちで、先行してゾンビを倒すからね……。
 死んでるの相手だから……大丈夫でしょ?」



 莉奈さんは、いまだに生き物を殺すことができない。

 それが妖魔であってもである。
 狼型の妖魔ですら「キャン」と泣かれるとかわいそうになって攻撃できなくなるんだとさ。おやさしいことで。

 今回、生きてない敵なのだから、ゾンビぐらいは倒して欲しい。

 あ、ちなみに俺の今のステータスはこんな感じである。

―――――――――――――――――――――――――――
名前:倉井 耕蔵
種族:人間(35)
容姿:6
言語:日本語
サイズ:8 168cm

筋力:6(106)
耐久:8
知覚:7
魔力:0(10)
機動:6(16)
教育:7

妖魔加護効果
[言語翻訳(妖魔)]
[印象上昇(妖魔)]


攻撃力(名称:貫通力:ダメージ:動作)
・素手:0:106:1
・高周波振動発生機付きダガー:35:126:1

防護値(名称:装甲値:緩衝値)
・ACHILLES装甲(頭部):40:35
・ACHILLES装甲(頭部以外):30:20

ACHILLES機能
[筋力1][機動1][装甲1][緩衝1]
[生命維持機能1][修復機能1][基本機能1]
[ワイヤー操作1][魔力1][エネルギー・ボルト1]
[プロテクション1][ヒール1][白兵戦1]

拡張ポイント:193
―――――――――――――――――――――――――――

 まあ、全然変わってない。
 森を抜ける時に集めた妖魔結晶石は吸収せずにほとんど売ってしまっていた。

 最初のうちは吸収していたのだが……そもそも狼やその他、雑魚妖魔を一体倒しても拡張ポイントは5にも満たない。強化に必要な一番低い2000でもためるのは難しいので売ったのだ。

 なので、莉奈さんはこんな感じである。

―――――――――――――――――――――――――――
名前:アッカネン 莉奈
種族:人間(17)
容姿:9
言語:日本語
サイズ:8 175cm

筋力:7(107)
耐久:7
知覚:7
魔力:0(10)
機動:8(18)
教育:7


攻撃力(名称:貫通力:ダメージ:動作)
・素手:0:107:1
・スタンロッド:0:117:1

防護値(名称:装甲値:緩衝値)
・ACHILLES装甲(頭部):40:35
・ACHILLES装甲(頭部以外):30:20
 修復機能あり

ACHILLES機能
[筋力1][機動1][装甲1][緩衝1]
[生命維持機能1][修復機能1][基本機能1]
[ワイヤー操作1][魔力1][エネルギー・ボルト1]
[プロテクション1][ヒール1]

拡張ポイント:47
―――――――――――――――――――――――――――

 彼女と俺の大きく違う点は[白兵戦1]を持っているか持ってないか。

 この[白兵戦1]だが、ステータス上では数字には現れない。
 しかし、数字が上がらないから役に立たないわけではなく、武器の扱いをサポートしてくれることにステータスの数字以上の価値があるのだ。

 脳内にインストールされた戦闘技術をさらに[白兵戦1]がサポートしてくれることで、自分でいうのも恥ずかしいが、俺の近接戦闘能力は人類としてはかなりのものだとイノリさんは言っていた。

 だから戦闘技術をインストールされてない、ましてや[白兵戦1]などなく、何も戦闘技術を補助してくれるものがない莉奈さんに、戦闘を期待するのは酷な話でもあった。


 とりあえずは早急に妖魔エネルギーを溜めて[白兵戦1]を取ってもらうのが彼女の目標だといえるだろう。

 ただ、2000ポイントは遠い。

 近々にできることといえば、普通に莉奈さん自身が戦闘経験を積むことだった。
 全身タイツがしてくれているのは、体や魔力操作などの補助なので、素の肉体の能力アップ、戦闘経験は無駄ではないのだ。

 肉体が力を持てば、その分力は上がるし、戦闘を繰り返すことでそれが経験となって生きてくる。
 なので、[白兵戦1]取れるまで、単純に妖魔結晶石を吸収しているではもったいない。
 これから一緒に、この世界で危険に立ち向かうなら、できるだけ、殺せないのだとしても、戦闘経験は積んで欲しかった。



「が、がんばっては……みる……」
 莉奈さんは、ぎゅっと拳を握った。

 その、握りこぶしの震えから見て取れる緊張具合。
 無駄ではないと彼女もわかっているから頑張っているのだろう。

 俺もなったが、動いた次の日には筋肉痛がどうとか言ってたしな。
 幸い彼女は若い。なのですぐに避けるのも旨くなっていたので、本人の戦闘経験は積んでいるのだと思う。
 彼女を信用して、ここは頑張ってもらう他なかった。


 まあ、ゾンビ程度、噛まれたって何したって、全身タイツのおかげで俺たちの肉に攻撃が通ることはない。
 彼女が怪我することはないだろう。

 それこそポベートールぐらいの敵がでてこないと、俺たちがピンチになることはないと思われる。

「……」

 あ……
 俺、今フラグたてちゃった?

 危ない……。
 口は災いの元だ。いろんな意味でね。

『早く行かないんですか?』
 イノリさんが俺に聞いてくる。


 よし――
 余計なことは考えずに戦おう。

 俺は、緊張する莉奈さんの肩を優しく叩く。
 莉奈さんはそれを受けて頷くと、敵へ向けて走り出したのだった。




§




 四体目のゾンビの首を跳ね飛ばし、戦闘は終了した。

 跳ね飛ばされた頭はガチガチと歯を噛み合わせ、連続する動きは止まらない。
 振動により、地面にて、死んだと思ってた蝉が突然復活したように床の上を暴れ回っている。

 邪魔なので俺はそれを踏みつぶし、動きを完全に停止させた。

 黒ずんだ緑色の気持ちの悪い体液が周囲に四散。
 潰れた際、ぐしゃりと不快な音が耳の中に残る。

 俺は我慢したつもりだったが表情にでてしまい、顔が引きつってしまっていた。


「これだったらダガーより、直接、バットみたいな鈍器で、頭潰した方が早いかもしれないね――」

『素手でも可能ですが、今のように衣服が汚れてしまいます。
 スタンロッドなら素手のように直接接触することはありませんが――
 結局、リナは動く死体を倒すことができませんでしたか……』

「だ、だって! こいつらグロいし……
 人の形して、ヴぉ~~っ、とか唸ってるじゃん!
 怖いって!」

 ああ、唸ってるけどさ。
 たしかにフレッシュなやつもいて人間っぽくて嫌だけど、死んでるんだって。

「まあ、いいよ――今のところはね。
 訓練ってことで。
 でも、これから全ての戦闘には参加してもらうから」


 莉奈さん「うげぇ」とか言ってる。

 この娘は……。
 ビビったり、怖がったりする割には危機感がないな。
 ゾンビなんか格好の練習相手だと思うのに――


 ゾンビの動きは遅く、一対一ならその攻撃を受けることはめったにない。
 しかし、出る時は数が多いので囲まれると厄介だった。

 奴らの怖さはスペースの占有にある。
 避けようにも、逃げる場所まで敵で埋まっていれば、避けようがないからだ。
 さらに掴まれてしまうと、その力は以外と強く、普通の人間では無傷で振りほどくことが難しかった。

 参考にゾンビと冒険者たちのステータスを比べてみるとしよう。

 とはいえこれも、イノリさんがスキャンし身体の構造や魔力の流れを全身タイツと比較して、数値化しているにすぎないので、信用しすぎるのも考えものなのだが――

―――――――――――――――――――――――――――
種族:動く死体
サイズ:8

筋力:9
耐久:5
知覚:5
魔力:1
機動:5
教育:0

攻撃力(名称:貫通力:ダメージ:動作)
・噛み付き:突き/2:14:1

防護値(名称:装甲値:緩衝値)
・布の衣服のみ:0:1
―――――――――――――――――――――――――――
―――――――――――――――――――――――――――
名前:ユアン・エルウッド(金髪ローブくん)
種族:人間(19)
容姿:8
言語:西方言語
サイズ:7 159cm

筋力:6
耐久:7
知覚:7
魔力:7
機動:6
教育:5

攻撃力(名称:貫通力:ダメージ:動作)
・素手:叩き/0:6:1
・精霊杖(風):叩き/0:3 動作:2

〈魔法〉
・エアハンマー
 射程:100m 貫通力:0 ダメージ:50

防護値(名称:装甲値:緩衝値)
・ローブ+1:2:3 耐久度:20
―――――――――――――――――――――――――――
―――――――――――――――――――――――――――
名前:ドミニク・ボード(マッチョさん)
種族:人間(19)
容姿:7
言語:西方言語
サイズ:9 188cm

筋力:8
耐久:8
知覚:7
魔力:5
機動:7
教育:3

攻撃力(名称:貫通力:ダメージ)
・素手:叩き/0:8:1
・片手斧+1:斬り/4:25:2
・戦闘用ナイフ:突き/4:14:1
        斬り/3:15:1

防護値(名称:装甲値:緩衝値)
・布服:0:1
・ブリガンダイン+2:6:2
〈兜〉
・アイアンヘルム:4:0
〈小手・脚〉
・アイアンガントレット:4:0
・アイアングリーブ:4:0
〈盾〉
・スクトゥム+1:8:1
―――――――――――――――――――――――――――
―――――――――――――――――――――――――――
名前:ダーナ・ミルズ(元カノ似)
種族:人間(20)
容姿:7
言語:西方言語
サイズ:8 165cm

筋力:7
耐久:7
知覚:8
魔力:5
機動:8
教育:3

攻撃力(名称:貫通力:ダメージ:動作)
・素手:叩き/0:7:1
・戦闘用ナイフ:突き/4:13:1
        斬り/3:14:1
〈射撃武器〉
・クロスボウ+1
 射程:400m 貫通力:9 ダメージ:25
 装填時間:9


防護値(名称:装甲値:緩衝値)
・布服:0:1
・レザーアーマー+1:4:2
―――――――――――――――――――――――――――

 少し尺を取りすぎてしまったがこんな感じだ。
 彼らはブリストルでも、中クラスの冒険者らしい。
 本人たち曰くだから当社比ってやつだが……。

 中クラスでこの程度なら、一角熊であれだけ騒がれたのもわかる気がする。
 ちなみに個体差はあるが、俺たちが森で出会った一角熊さんはこんな感じだった。

―――――――――――――――――――――――――――
種族:一角熊
サイズ:45

筋力:103
耐久:67
知覚:8
魔力:45
機動:15
教育:0

攻撃力(名称:貫通力:ダメージ:動作)
・腕:0:103:2
・爪:斬り/7:103:2
・牙:突き/10:103:2

防護値(名称:装甲値:緩衝値)
・体毛:4:20
―――――――――――――――――――――――――――

 こんな感じだから、ステータスを比較してもわかるように、全身タイツの能力が凄いのはわかるだろう。
 そういったわけで、莉奈さんが全身タイツを着ているうちは死ぬことはない――ハズだ。


 ただ、ポベートールみたいなのが出てきたら別だ。
 俺だって危なくなってくる。
 当面の目標は、施設の起動もさることながら、同じクラスの妖魔がでても大丈夫なよう、全身タイツをパワーアップすることの方が優先度が高かった。


「……あ。
 またフラグ立てちゃったかな?」
 思わず、声に出してしまった。


「目つぶって、攻撃すればいいのかなぁ……
 って、それじゃあ、攻撃、当てられないか。
 ――ところで、フラグって何の話?」


 莉奈さん。聞こえていたのか……。
 いらんことは聞いてるのな。

『美少女ゲームのフラグですね。
 リナの恋愛フラグがたったと、コウゾウが勘違いしているのかもしれません』

「ち、ちがっ――」

「なななな、おじさん!!
 バッかじゃない!! ばーかっ! ばーか!!」

 HMDの角に表示されたウインドウに、顔を真っ赤にしながら唸っているギャルちゃんが映っている。

 ヘルメットを被っていても丸見えだ。
 しかし、それは向こうにも同じようだった。


「あ、笑ってるし!
 ぜったい、莉奈のことバカにしてんでしょっ!

 んーーーッ、もう戦わない!
 おじさんが全部やっつけて!!」


 やれやれ……。
 見かけはビッチ度高いのに案外ウブなギャルちゃん。いじるのが楽しい。
 普段リア充たちは元の世界で、こんな楽しいことをしてたのかと嫉妬してしまう。

 なんか、俺って……。
 この世界へ転移してから、やれやれ系の主人公みたいになってるじゃん。

 だが、たしかに主人公になりたかったが、しかしこれはイケメンの枠だと思う。
 もっとブサメンに似合ったつつましいのでいい。

 どうせイケメンの元へ返ってしまうギャルちゃん。
 彼女との楽しさに慣れてしまうと後が辛そうだし。


 まあ、それはさておきとしてだ。
 彼女にはもっと厳しくしたほうがいいのだろうか。
 いずれチートイケメンの元へ戻った時に、彼女がお荷物になってしまうのは忍びない。

 しかし、その厳しさのバランスが難しい。
 何度も言うようだが、俺は戦闘術を入れてもらったので、この過酷な状況に耐えることができるのだと思う。
 普通の人とはストレスの感じ方が違うのかもしれない。
 相互の認識のズレで生じるストレス差は大きいと思う。
 それで彼女に負荷をかけすぎるのはよくないだろう。


 自分が大丈夫なことが、人も一緒だとはかぎらない。

 そんなことを考えながらも、元の世界では体験できなかった状況を少し楽しみつつ、ギャルちゃんをなだめた。

 今までニートになって逃げてきた、人と付き合うことで生まれる齟齬が再び立ちふさがってくる。

 今度は逃げないように立ち向かえるのか。
 心の中に、これで大丈夫なのかと不安が芽生えていたが、俺は彼女のキャラクターに助けられ、この場は何とか気にしないようにすることができたのだった。




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