緋色ノ叉鬼

越子

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十六、掴めない人

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「まさかヨネさんが、鷹匠になりたいなんてねえ。確かにじゃじゃ馬っぽい感じではあるよね。彼女」

 そう言って笑っている右京に、

「なあ、お、何か変わったな?」

 と、彼に違和感を感じていた佐介が突拍子も無く訊いた。

「初めて大館で会った時は、どこか冷めた感じがしてらっだども……今だば何というか……」

 上手い表現が思い浮かばず、佐介は言葉に詰まっていると……

「大和ってさ、何か見ていて面白いよね」

 右京もまた突拍子も無いことを返してきた。言葉探しに集中していた佐介が「あ、ああ」とかろうじて返事をすると、彼は柔和な顔をしていた。

「俺、大和に会うまでは鬼熊を倒す為だけに生きてきたんだよね。いつ死んでも良いように生きてきたんだよね。だから他人なんてどうでも良かったんだ。自分も、どうでも良かったんだ」

 いつもなら笑ってはぐらかしそうな彼が、真面目に答えている。そう思った佐介は、真剣に耳を傾けた。

「だけど、色んな事に巻き込まれながらも、誰かの為に真っ直ぐに生きている大和を見ていたら、いつの間にか俺も感化されちゃったみたいだね」

 更に「一人で死ぬよりも、皆と生きたくなっちゃったのかも」と、右京は笑って見せた。それを見た佐介は目を細めて「んだか」と答えると同時に、彼の心を縛っていた黒くて汚れた紐が緩んだ。

「俺は、親父どこ殺した鬼熊どこにぎくてにぎくて殺してかったけど……阿仁で死んだ鬼熊どこ見てたら……アイツも可哀想な奴だったんだな。んだからよ、俺が本当にしてえ事、おと話っこして分がったかもしれね」

「したい事?」

「んだ。……俺の目の前で誰も死なせたぐねえな。もう、二度と誰も死なせたぐね! 皆と生きるど!!」

 拳を上げて強気に言う佐介に、今度は右京が目を細めた。

「格好良いこと、言ってくれるね。同感だよ」

 ――誰も死なせない。大和も死なせない。

「だから、前回みたいな鬼熊の倒し方では駄目なんだ。大和の負担が大き過ぎる」

 あの時、火薬が弱点だと察した彼らは、花火玉を使って大和諸共に鬼熊を吹き飛ばしたが、二頭目の鬼熊には通用しないかもしれない。否、通用しても大和も吹き飛ぶ為、彼の死は確実だろう。

「これは憶測だけど、鬼熊を倒せば大和の治癒能力は消える気がする。相打ちで死ぬ可能性があるんだよ」

 それは避けたい、と右京が深刻な顔で言った。

「んだな……接近戦は避けねばいけねども……」

 鬼熊の巨大な力に対抗出来るのは大和だけ。一体、接近戦以外にどんな方法が有るのか……。

「――まあ、この話はまた今度だね。とりあえず今はヨネさんを捜そうか」

 右京が佐介の肩を叩くと、「んだったな。まずはヨネさんだ!」と言って、彼も気持ちを切り替えることにした。

(俺、右京どこ少しさっとこ誤解してだな。掴みどころがねぐて狐みたいな奴かと思ってだども――)

「ん? 佐介、何ニヤニヤして笑っているの?」

「なんも、こっちのことだ。気にするでね」

 ふーん? と不可解な顔の右京に、不可解だった彼のことを知る事ができた佐介は嬉しそうに彼の肩を掴んだ。
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