無色の男と、半端モノ

越子

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五、白雪と山桜

親しき仲にも

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(俺の丹、だいぶ良い具合になってきたんじゃないか?)

 集中力もそろそろ限界を迎えてそっと目を開けると、セツの琥珀色の目は大きく丸くなった。

「な、何だ!? これは……」

 セツの目の前には、鬼たちがボロ雑巾のように山積みにされていた。

「おお! セツ! ようやく終わったか。お疲れさん」

 カズキがニカッと笑ってセツの肩に手を置いた。

「いつの間に、こんなに鬼が寄って来ていたのか!?」

「ああ。君の集中力はたいしたものだ」

 声のする方向にセツが振り向くと、ハクが立っていた。彼女が彼の名を呼ぼうと口を開いた時、彼女の腹からへそ辺りへと彼は無遠慮に掌を押し当てると、今度は彼女の腹周りを擦り始めた。

「非常に小さいが、丹が形成されている。この調子だと、あと数週間あれば大丈夫そうだ」

 セツは口をあんぐりと開いたまま固まっている。慌てたカズキは勢いよく二人を剥がした。

「近い! 触るな! セツは一応、女だぞ。 親しき仲にも距離ありだ!!」

「そんな言葉はない」

「ある! 今、俺が作った!」

 以前とは違うカズキとハクの様子を見て、セツが口を挟んだ。

「アンタら、いつの間に仲良くなったんだ?」

 はぁっ!? と言いながら、カズキの目はカッと見開いた。

「コレっっぽっちも仲良くなんかなってねえぇぇぇぇ!!」

 親指と人差し指をぎっちりとくっつけて、カズキは全力で否定した。

 彼の声は山中にしばらくの間こだましていた。
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