私が壊した宝物

一章

肯定しか許さないのは誰？

｢どーゆう意味？｣

先輩の普段柔らかい声が明らかな拒絶を孕んだ。これは不味い。何がと言えば、私のニートライフが終了のお知らせを受けようとしていることにだ。元の世界でできなかったあれこれを実行できる日々が一気に終わる。初めての料理でダークマターを作ってみたり、新婚の真似を全力でやってみたり、ゾンビを撃ち殺してみたりしたあの日々が消えていく。ああ、私の素敵ライフ。時には先輩から全力で逃げ、時には先輩に常識を叩き込むというあの素敵ライフ....あれ、違くない？

｢後輩との約束があるから無理なんだけど。｣

おっと、素敵ライフに思いを馳せていたら話が進んで....どこまで話したの？

｢では、後輩さんもご一緒に政府の監視下に入りませんか？あのような所よりずっといい生活をお約束いたしますよ。｣

やばい、話聞いてなかった。まあ、先輩が私いないと嫌だと駄々こねたからお前も来いよ、不自由はさせないぜ？みたいな感じだろう。約束の縛りは強固だ。先輩と私の約束は固く脆い。両者が壊れる可能性が高いくせに、約束が破棄されることがまずないと言っていい。眼鏡よ、ざまあないな！

｢....後輩も一緒で、よりいい生活？｣

ぼそりと先輩が呟く。惹かれてるらしい。まあ、先輩にとって第一優先の私が通過しちゃえば後は他の奴らが求めるような条件しかないのだろう。眼鏡が言うには欲しいものはなんでも買ってあげちゃうし、嫌なことはやらなくていいよ！らしい。
いや、まず嫌なことをお願いされる可能性があることに恐怖を感じるよ。なんだよ、近所の子に目を抉る手伝いさせられそうになったときより怖いことそれ？

｢ねえ、後輩。どう思う？｣

うわ、先輩が話振ってきたよ。そろそろきてもおかしくないと思ってたよ。でもね？ただでさえさっきから眼鏡の威圧やばいのに今倍になったよ。どうしてくれんだ。これ頷かないと何されるか分かったもんじゃないぞ。最悪死ぬことはない。なんせ先輩がいるから。でも先輩常識がないから、私が嫌だと意思表示しないと動かない。暴力反対と以前言ったせいか暴力は止めてくれるが、いじめや言葉の暴力は先輩レーダーには引っ掛からないらしい。先輩の基準がわからない。
それよりもこの眼鏡、白々しく私たちに選択肢与えてるように見せてるが私たちのアパート燃やしてるの知ってるからね。ここで家に帰っても、あっ！お家が火事に？残念でしたね、どうぞ政府がお家用意してみました。とかやるんだよ。
ここはしょうがないからはいと言おうそうしよう。