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一章
届かない助言
しおりを挟むあれから数週間が立ちました。政府はとても居心地がよく、私にはもったいないくらいの居場所です。ですが、私は脱走をしてみようと思います。ほら、やっぱり人間じっとはしてられない!政府がやたら先輩を仕事に駆り出すので先輩には会えないし、友達100人目指して政府内を走り回れば監視役が着いた。しかもこの監視役、あの眼鏡である。今も目の前でにこやかに微笑みながら圧をかけてくる眼鏡と千羽鶴を折っている。なんでこうなったかは聞かないでほしい。私にも解らない。
「貴女は意外と活発なんですね。彼に大人しく囲われていましたから、もっとお淑やかな方だと思ってました。」
眼鏡が嫌味をねちねち言ってくる。友達作りの何がいけなかったのか解らない。ついでに今はだいたい500個くらいの鶴がテーブルに転がっていたりする。
「え、別に活発じゃないですよ?でも遊び相手いないと一人遊びしかできないじゃないですか。先輩全然いないし、友達一人くらい作ってもっと楽しく生活したいですよ。おかげで監視役という遊び相手ができました。努力は必ず実るって本当だったんですね!」
「私は仕事が増えましたがね。....ところでこの鶴たちはどうするんですか?」
「え?特に考えてないですけど。先輩にあげればよくないですか?お仕事頑張って!って。」
鶴を折っては繋げ折っては繋げを繰り返して行く。千羽鶴を作ることに大して意味はない。腕が痛くなるだけだ。ただの暇潰しにしてはかなり面倒くさい。
「どこぞの親子ですか。彼とは大違いですね。」
「違うに決まってるじゃない。私と先輩では生まれも育ちも考えも違う。同じものなんてないよ。私と先輩の関係に文句つけないでくれます?」
この約束はまだ継続される。
「それより貴方が迎えに来たとき以来先輩に会ってないんですけどー。」
眼鏡は苦笑いをした。今、先輩が遠征に行っているのは知っている。その遠征からしばらく帰らないことも。......そして、先輩がいない間に私を消すつもりであることも。
政府にとって先輩は利用価値がある。異世界者という点においてもそうだが、その点を差し引いても有り余る先輩の器用さが、完璧さが目を惹いたらしい。そして先輩と比べて、まあ比べなくても見劣りする私は邪魔らしい。政府は税金で動いてる。国民から頂いた税金を無駄には使いたくないのだろう。たとえ先輩が大事にしてる私にでさえ。政府は簡単に思ってるのだろう。私みたいな何もできない子を。私より見目のいい子を用意すればいいのだろうと。私と先輩が約束をした意味を知らなければ無理はない。もう一度言おう。
「先輩に常識は通じないよ。」
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