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3章
鶴羽さんと脱出劇
しおりを挟む「さあ、脱出する前には準備が必要だ。なんたって、世紀の脱出劇だからな!」
鶴羽さんはにやりと笑い、顎に手をあて考える。楽しんでるとこ悪いが、前回も脱出したとこで世紀の脱出劇はないと思う。
「前回は結局かなり派手な逃走劇になったからな。今回は気づいたらいないみたいな感じにしようか。でも、少し地味に感じるな。」
ぶつぶつと計画を練り始める鶴羽さん。どうやら計画を考えたうえで来たわけではなかったらしい。
「そんな悠長に作戦考えてていいの?瑠璃くん帰ってきちゃうよ。もしもがあれば、眼鏡がくるし。」
「わかってる。そこはしっかり対策してある。」
にっこりピースサインをする鶴羽さん。なにをしたのかはわからないが、かなり自信があるらしい。相変わらずのようだ。
「まあ、一応悩んでみたがやっぱり派手なのが一番だな。」
不穏な言葉が聞こえた気がした。
かつて、私は鶴羽さんの助けを借りて、ここを脱出したことがある。
その際、私たちはかなりの苦戦を強いられた。鶴羽さんもそのときは幹部だったので、私を探す振りをして密かに逃亡ルートを確保していった。けれど、やはり追っ手はくるもので、私は学校でワースト2位ながらも命懸けの走りを実行する羽目になった。それはもう、大変だったのだ。
そんな大変な方法をわざわざとる必用はないと思う。
「また、あんな逃亡劇をやるくらいなら私、ワースト1位になってもいい所存です。」
「だーめ。契約は成立された。今更引き返すのは無理だ。」
「無駄にこの世界シビアだな。」
私たちは今通気孔の中にいる。派手に逃げると言ったのにかなり地味なところにいる。鶴羽さん、諦めてくれたのだろうか。・・・・ないな。
「おっと、ようやく目的の人物を見つけたぞ。」
鶴羽さんが指す先にいたのは、あの眼鏡であった。こんな嫌な眼鏡になんの用があるのだろうか。ただの眼鏡ではないのは確かではあるが、別に眼鏡でなくてもいいと私は思う。
批難の視線を送り続ければ、鶴羽さんは突然、眼鏡の前へと飛び降りた。
ドサッ
「貴方様は・・・、お久し振りでございます。」
恭しく、鶴羽さんに頭を垂れる。どうやらまだ上にいる私には気づいていないようだ。
鶴羽さんはそんな眼鏡に軽く手を挙げる。
「ああ、少し頼みたいことあるんだがいいか?」
「なんなりと。」
「君のおひいさん、俺のにしちゃった。」
凍りついたのは、空気か、それとも。
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