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3章
上司の悩みpart.3
しおりを挟む鶴羽が後輩を見に行くと行ったきり帰ってこない。隊員1人1人には位置情報が本部に送られてくるはずなのだが、鶴羽だけあの日以降送られてこないのだ。まさか、宵月の本拠地に辿り着けてる訳ではないだろう。政府でさえ、まだ見つけることができてない本拠地を鶴羽が知ってるはずがない。
まあ、それよりも月宮の様子を見に行く。他の扉とは違う、かなり重い扉を押してその先にある薄暗い通路にでる。その通路を進んだ先には荒れ果てた社にたどり着く。その社の中に入れば、そこには拘束された月宮がぐったりと横たわっていた。手足を縛られ、猿轡をつけられ、目隠しをされている。極めつけに札をべったべたに貼った首輪で鎖に繋がれている。
「よお、月宮。調子はどうた?っつても、良いわけないよな。」
俺の声に応えるように身動ぎする。普段話してるときと同じくらいの距離に座る。月宮は俺の気配を感じたのかコロコロと距離をとる。月宮的には必至の行動なのだろうが、見てる側にしてみればなかなかに酷い絵面である。そんな月宮には構わず、話しかけた。
「なあ、後輩を探しに出掛けた鶴羽はまだ戻ってこないよ。どこまで探しに出掛けたんだろうな。」
後輩という言葉を口にした途端、月宮は話を聞く気になったのか、コロコロと戻ってきた。やっぱりもう少し移動方法をどうにかしてほしいものだ。
「お前はいつまでここにいるつもりだ?こんなちゃっちいもので大人しくなるほど、弱くないだろ。」
何かが砕ける音がした。音の方を見れば、ものの見事に猿轡が破壊されている。猿轡の破片を吐き捨てた。口のなかは無事だろうか。
「貴方を待っていたんですよ。鶴羽の居場所がわかるのは貴方だけですから。」
鶴羽の居場所?上司だとしてもそこまでの管理はしてはいない。プライベートはノータッチだ。鶴羽は用意周到なことに有給休暇とってまで姿を眩ましている。上司として、そこまで干渉は許されていない。
「いやいや、流石にわからんよ。政府の探索隊駆り出す訳にもいかないしな。」
頭の上に疑問符でも浮かんでいたのだろう。先生が生徒に教えるよう、暗殺者がターゲットにナイフを突きつけるように月宮は答えた。
「政府としてじゃない。鶴羽の契約相手として聞いてるんだ。」
ああ、こいつは気づいていたのか。俺が鶴羽の契約相手だということに。
「そうか。じゃあ、お前らの上司でいるのはここまでだな。」
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