お金がないっ!

有馬 迅

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第4章 アスティアノン大公家亡命編

埋める努力はするけれど -1-

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 互いの認識齟齬を平和的に解決するには、話し合いをするしかない。

 それにはまず、相手にこちらの話しを聞く気があって、ある程度は受け入れる覚悟があり、また、こちらも相手の話しを聞き、全面的にではないにしろ相手の主張を受け入れる用意がなくては成り立たない。

 お互いに譲れない線というものはあるだろう。

 物別れに終わることもあるだろう。

 だが、最初から最後まで相手への上から目線での命令や否定に次ぐ否定を繰り返されて、それを唯々諾々と受け入れ続けるのは、どうしても無理がある。

 そう遠くない未来に必ず限界が来る。

 それは紛れもない事実だ。

(元ワンコ王子の幻覚魔法は、どうやって解けばいい?)

 とにかく一旦、話し合いの場は設けるべきだと判断した俺は応答ウインドウさんに聞いてみる。

【神聖魔法の状態異常全解除で、かけた魔法は全て消去されます】

 ああ、そうか。

 強制睡眠もかけてたっけね。

 今更ながらにそれを思い出して、元ワンコ王子の頭頂を右手で掴む。

「状態異常全解除」
「ふぇあ? …………⁈ そ、そなたっ! 何をしておる! 不敬であるぞ‼︎」
「不敬? そなたの何処に敬わねばならぬ要素がある?」
「お、俺は王族だぞ⁈」
「滅びた国のな」

 悔しそうではあるものの、押し黙る所を見ると自国が既に存在していないことは理解しているらしい。

「勘違いしているようだから、この際はっきり言っておくが」

 最初にこちらのスタンスを明示しておくべきだと考えていたからか、寡黙設定さんが元ワンコ王子の頭を掴んだまま、そう話しを切り出した。

「そなた達を助けたのは、他の者の意志が多少の介在はしているものの、大半の理由はただの偶然だ」

 そうな。

 運良く悠久の地にある森が荒野に姿を現したとか ── そこに神様が関与してるかどうかまでは俺も知らないし ── ってのもあれば、虫人族の追跡隊の中にどうやら戦争の反対派閥の種族なんだろうヤツがいて、ここへ要人を逃がしてるっぽい動きがあったことも逃げ込めたことに大きく貢献しているだろうが、そうできなかった王侯貴族が存在しているだろうことは間違いないので、全ての理由は、裏事情が判明するまで偶然の範疇でしかない。

「そなたが王族だから助けたのではない」

 そうね。

 そんなんどうでもいいし、そもそも会うまで知らんかったし?

「そなたの家臣になってやる為に助けたのでもなければ、そなたの家や国の復興、再興を助けてやる為でもない」

 そこは完全に否定だね。

 ある訳ない。

 俺は食うことに苦労することのない生活しか望んでないし、神様にもそれでいいと認めて貰ってるんだ。

 そこまで面倒見てやる義理はない。

「そなたが元の、王族だった時の暮らしと同等かそれ以上を望んだのだとしても、私にそれを叶えてやらねばならない理由は1つもない」

 嫌だよ。

 王妃と王女に対して妾にしてやるとか言う辺り、お前の望みは女の子全員と好きな時に好きなだけやってやってやりまくり、その他のことは俺と師団長を召使い代わりにして全部やらせて自分は好きなこととやりたいことだけしてたい感じなんだろ?

 俺の悠々自適のんびり自堕落ライフに、何でお前だけが最優先されたハーレムとか作られなきゃなんないんだよ。

 勘弁しろよ。

 ……うん。

 多分、これが俺の本音だな。

「全ては、ただの偶然だ」

 言い切った。

 寡黙設定さん、神様に設定された所為なのか心の中で俺が思っていたり考えていたりすることより、ずっと厳しい。

 言い様が、神様寄りの視点って気がする。

「そなたの国は既にない。ゆえに今のそなたの立ち位置は、種族にも国にも関係なく、地位も序列も全てなくした、ただの亡命者だ」

 そうな。

 そこは動かないな。

 紛れもない事実だ。

「この地より外は決起した虫人族が跳梁跋扈し、対抗手段を持つ国だけが拮抗しているだけに過ぎぬ戦国の世と化している」

 あー……戦国時代って考えると確かに理解しやすいかもな。

「私が今、申したことを何1つ受け入れられぬ、己が身の振り方を改められぬと申すのならば、ここを出て潔く王族として果てるがいい」

 言っちゃった。

 まぁ、言わざるを得ない側面は確かにあるんだけどさ。

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