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第4章 集まれ仲間達

1度きりのチャンス -8-

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 迫り来るお父様とお兄様が、剣と馬上槍を振り上げる。

 宮殿の入口から、わたしを守ろうと駆け込出す女性騎士の人も通路の向こうから現れた近衛騎士の人も間に合わない。

 殺される。

 そう思った。

「っ!」
『サセルカヨ!』
『ヤルゾ、ミナノシュウ!』
『オー!』
『ディフェンド・セクステンション!』

 チビ精霊ちゃん達の声が聞こえて、教会のステンドグラスみたいに様々な色をした光の壁が、半球状になって、わたしを覆った。

「ぐわっ!」
「うわあっ!」

 お父様とお兄様が、極彩色の光の壁に阻まれて元来た方へ吹き飛ばされたことで、叫び声を上げる。

『エルドレッド! ヤッチマエー!』
「はいよ」

 チビ精霊ちゃんの声に答える、聞いたことのない男の子の声。

「リリエンヌと、こくおうのてまえ、とりあえずは、ころさねぇ。いまはな」

 冷たい、低い声で告げた少年が、右手の指を鳴らすとお父様とお兄様の姿が一瞬で消え去ってしまった。

 一体、どこへ⁈

 驚きに次ぐ驚きの連続で、もう声も出なくなっていたわたしは、いつの間にやらその場にペッタリと座り込んでいた。

「 “六精霊の魔導術士” 様。彼等を何処いづこへお隠しあそばしましたのかしら?」

 え? 彼が、六精霊の魔導術士様⁈

 青蘭夫人の言葉に、わたしの位置からは同い年くらいにしか見えない少年の後ろ姿を光の壁越しに見詰めた。

「うまやのこえだめのそこ」

 えっ⁈

 い、今、何て? 厩の、肥溜の、底⁈

 わたしの聞き違い⁈

「中々扱いが酷ぇな」
「何で男の子って、う○ち好きなのかしら?」
「つか、何か居るのか? さっきから声だけするけどよ?」
「バカね。彼 “六精霊の魔導術士” 様よ。だったら居るのは精霊に決まってるじゃない」

 宮殿の入口で、女性騎士と近衛騎士の方達がヒソヒソしているのが聞こえて来る。

 どうやら彼等にもチビ精霊ちゃん達の声は聞こえているようだ。

「べつに、それじたいをすきなわけじゃありませんけどね? こどもでひりきなぼくでも、てんいまほうひとつで、おてがるに、かくじつに、ぶつり・せいしんりょうめんで、あいてにダメージあたえられるから、つかってるだけです」

 騎士の方々が紡いだ疑問に少年の声が、そう返したのと同時にわたしを包んでいた光の壁が、キラキラと光り輝く粒となって霧散した。

 その向こうに、わたしへ背を向けて立つ男の子の姿は、スッキリとしたラインをした深緑色のスーツと黒のショートブーツ。

 周囲を属性色である6色の光塊が飛び回っていて、左右で綺麗に色が分かれている髪が、後ろ姿でも彼の印象を強くしていた。

『エルドレッド。コノテイドデ、コリルヤツラジャネーゾ? アイツラ』
「わかってる。こくおうともやくそくしてた。れんちゅうにくれてやるチャンスは、このいちどきり。ダメならそのときは、おれのすきにしていいってな」
『コロスノカ?』

 チビ精霊ちゃんの問いかけに、自分のことではないのに無意識で身体がビクリと跳ねた。

「おれこじんとしては、いますぐにでもそうしたいが、あくまでもリリエンヌのいしがゆうせんだ。かのじょがのぞまないことをするきはない」
『ダッテサ?』

 少年と話していたチビ精霊ちゃんが、そう言って、唐突にわたしへと水を向けると彼の傍を回っていた白い光の塊が、その頭上へと飛んで行き ”ヤベッ、後ろに本人居んの忘れてたっ!” という光文字を描き出した。

 これは、何?

『マ。ソノキナラ、コエダメドコロカ、ユキヤマノテッペンダロウガ、フカイウミノソコニダロウガ、イッシュンデトバセンノニ、ヤンネーンダカラ、コイツノイウコトニ、ウソハネーヨ』
“ちょ、ヤメロてめーら! この状況で雪山とか深海なんて物騒な転移先並べたら余計にビビるだろうが! 俺が愛しのリリエンヌにまでそんなことするような男だと思われたらどうしてくれんだよ⁈”

 チビ精霊ちゃんが、お父様とお兄様が殺されたりなんてしていないことを説明してくれていると彼の頭上の文字が書き変わった。

 愛しのリリエンヌ? ……それ、わたしの名前
……え? えっ⁈ 誰か違う人のこと? えっ⁈

「プッ」

 わたしが混乱して固まっていると、女性騎士の1人が思わずと言った感じで吹き出した。

「やぁん、2人とも初々しくて可愛いー」
「心配しなくても大丈夫よー」
「あ?」
「え?」

 言われて彼はピンと来たのか自分の頭上を見上げて、つられてわたしも自分の上を見れば、彼と同じように、わたしが混乱しまくっているのがありありと分かる文字列が並んでいた。

「ざけんな、てめーら! おれのまでバラさなくていいんだよッ!」
『リリエンヌ、コワガッテナイ。バカフタリ、コロサレテナイカ、シンパイデ、フアンソウダッタカラ、エルドレッド、カッテニソンナコトシナイ、オシエタカッタ』
『リリエンヌ、コンランノ、ジョウタイジョウ。コノママ、ホウチ、ヨクナイ』

 彼の発した文句に、またわたし達の上にある光文字の内容が変わった。

 わたしが、不安そうにしていたから、多分、彼の考えていること? と口にしていることに差異がないことを教えようとしてくれていて、更にわたしが混乱していることを彼に教えていたらしい。

「……しょうがねぇな。もうだすなよ?」
『エヘッ♡』
「をい……ったく」

 最後に誤魔化してるみたいな言葉をわたしと彼、両方の頭上へ同時に描き出して消えた光の文字に彼は、後ろ頭を掻きながら短く悪態をついて、溜息じみた息を吐き出すと、ゆっくりとわたしの方へ振り向いた。

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