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第4章 集まれ仲間達
だってオタクなんだもん
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女性騎士さんにネストールを牢獄へ放り込むかと問われて、俺はそれに否を返した。
「何故、とお聞きしても?」
「すうねんかけてじゅんびして、はつどうから3ねんもついやして、あとすこし、というところまでいったこっかのけいりゃくが、すいほうにきすしゅんかんくらい、たちあわせてやらないと、かわいそうだろ?」
再び女性騎士さんから問われたことに俺はそう答えて、氷檻の中の変態女装子へ目をやった。
既に職業人としての矜持をフランソワーヌとエンディミオン殿下に消し飛ばされ、人としての尊厳も俺とアリューシャに折り砕かれ、唯一慰めてくれたっぽいリリエンヌは、事もあろうに自分が国の命令でその命を狙った家の御令嬢で、全員揃って3歳児ときた。
おまけに現状を冷静に分析すれば、どう考えても360°退路はゼロ。
負け犬街道まっしぐら。
なら、やることは1つだろ?
「まどうおこくなどどいう、かこのえいこうにすがったままのにんしきで、しゅうへんしょこくに、いほうなまどうぐや、いほうのまほうやくをばらまく、ベーターグランディアにつぐめいわくこっか、デルタズマフェン」
女性騎士さんと話していた格好の状態で、首だけを左斜め後ろへと、横ではなく縦で傾けるようにして氷檻の中へと言葉を投げる。
心なし、ビクッとしたヤツにその態勢を変えず酷薄な笑みを口元に貼り付けて続ける。
「おまえらが、くすりをつかい、しゅうへんしょこくをうちがわから、くさらせてゆこうとするたくらみ。“ラザエリーのはこにわ” けいかくにおいて、もっともしょうがいとなるだろうそんざいは、かっこくにねづく、ちょうやくしたちと、うけつがれるちに、そのさいをもつ、くすしのかけいと、そのけいふ」
死んだような目をしてる癖に、ヤツは俺が口にすることへ僅かながら瞳を揺らした。
「わが、シグマセンティエにおいては、まもられた。これがなにをいみするか、わからぬはずはあるまい?」
檻の中で凍った身の冷たさからか、それとも。
捕らえられたままでも地獄、戻っても地獄な状況を理解したからなのか、震えている身体。
「そうとおくないみらい、デルタズマフェンのなまえは、たいりくじょうからきえてもらうことになる」
「あら、いいじゃない。まおうせんのときだって『これぞこうき』なんて、こくおうみずからいっちゃったりしてさ? しゅうへんこくガンむしして、ベーターグランディアといっしょになって、じゃましかしないんだから。いまのうちからなくしちゃえばいいのよ!」
「魔、王、戦……?」
俺の後を続けたアリューシャが、口走ったワードを驚愕と共に拾い上げたらしいネストールが、切れ切れに呟く声。
アリューシャは、スタスタと氷檻の前へ行き。
「ステータスオープン!」
ヤツの前で自分のステータスボードを開き、現れたその光板を右手の掌で思い切り叩いた。
「みなさい! これがしょうこよ!」
アリューシャが、掌で叩いた場所の傍には “聖女[覚醒前]” の表示。
「っ‼︎」
「わかったなら、もう、わたしたちのじゃまはしないで。つぎにわたしたちのまわりをうろちょろしたら、アンタんとこのしろと、おもだったきぞくのやしきに」
要求しているというより、完全に脅す気配を纏っていたアリューシャは、何故かそこで言葉を切って、変なタメを作ったと思ったら、ずびしぃ! と音が鳴りそうな勢いで俺を指差した。
「6せいれいおうをけしかけるわよ! エルが!」
「おれかよ⁈ たんかきったの、おまえじゃねぇか‼︎ つか、かかわってこられたときのたいおうどうすんのか、きめてねぇくせに、てきこくのちょうほうぶいんをおどそうとすんな!」
「うるさいわね! かくせいしてんのアンタだけなんだから、アンタいがいにだれがなにできるっていうのよ⁈」
「やだな、アリィ。そんなのくにとしてもんくつけるにきまってるじゃないか」
俺とアリューシャの不毛な会話に割って入ってきたのは、不思議と物凄く機嫌が激悪い感じの声を出したエンディミオン殿下だった。
「ぼくだって、おうぞくなんだよ? なかまをがいされて、くにとたみをきけんにさらして、かんけいきぞくのメンツをまるつぶしされたあげく、くににつくす、ぶんかんや、ぶかんのものたちを、これほどまでにコケにされて、だまってなんかいられないよ」
その暗黒オーラ、魔王級⭐︎
「じゃなくて! エンディ! おまえは、ゆう……」
「きゃあああああああっ‼︎ エンディミオンでんかかっこいいいいいいいいいいいいいい‼︎」
俺のセリフにモロ被りする形で、アリューシャが叫んだ。
「なかまのために! くにのために! たみのために! そしてひび、しんめいをとしてしょくむにはげむものたちのために! ふだんおだやかなエンディミオンでんがが、いかりといきどおりもあらわに、てきこくのかんじゃをあいてに、いさましくもはげしいおもいをぶつけ、ついに! こくさいせいじのせかいへいどむ! けついを! かためる! もえスチルさいこぉぉぉぉぉぉ‼︎ すてきぃぃぃぃ‼︎ エンディミオンでんかぁぁぁぁぁ‼︎ すきぃぃぃぃぃ‼︎」
あ。
暗黒オーラ引っ込んだ。
すげ。
「ん、んっ! アリィ? また、ぼくのよびかた、もどってるよっ? ちゃんとよんで?」
咳払いとかしても無駄なレベルで顔を赤くして照れてるエンディミオン殿下は、それでも呼び方の訂正をアリューシャに要求した。
「はぁい♡ だってエンディってば、さすが、おうじてんか♡ ってかんじで♡ すっごく、かっこよかったんだもん♡」
え? 待って。
聖女にコイツが選ばれた理由って、まさか……エンディの闇堕ち阻止?
「エルドレッドさま」
「え? なに? リリエンヌ?」
アレコレ考えかけていた俺は、リリエンヌの手が俺の腕に触れて名を呼びかけてくれたことで、その思考の全てを綺麗サッパリ放棄した。
「わるいのは、いちぶのひとたちで、このひとのようなかたたちは、わたくしが、おとうさまとおにいさまにさからえなかったように、さまざまなじじょうで、いうことをきくしかないたちばにおられるかたも、いるとおもうのです……だから」
「だいじょうぶ。キミの、のぞまないことを、おれはしないよ」
リリエンヌの訴えに、そう即答したら、本当に嬉しそうな綺麗で可愛い笑顔を彼女が見せてくれたから。
「ありがとうぞんじます」
可愛い声でお礼言ってくれたのも聞けたし、俺⭐︎満足。
うん、とりあえずリリエンヌに免じて国ごと無くすのは勘弁してやるよ、デルタズマフェン。
心優しいリリエンヌに感謝しろよな! 割とマジで!
「何故、とお聞きしても?」
「すうねんかけてじゅんびして、はつどうから3ねんもついやして、あとすこし、というところまでいったこっかのけいりゃくが、すいほうにきすしゅんかんくらい、たちあわせてやらないと、かわいそうだろ?」
再び女性騎士さんから問われたことに俺はそう答えて、氷檻の中の変態女装子へ目をやった。
既に職業人としての矜持をフランソワーヌとエンディミオン殿下に消し飛ばされ、人としての尊厳も俺とアリューシャに折り砕かれ、唯一慰めてくれたっぽいリリエンヌは、事もあろうに自分が国の命令でその命を狙った家の御令嬢で、全員揃って3歳児ときた。
おまけに現状を冷静に分析すれば、どう考えても360°退路はゼロ。
負け犬街道まっしぐら。
なら、やることは1つだろ?
「まどうおこくなどどいう、かこのえいこうにすがったままのにんしきで、しゅうへんしょこくに、いほうなまどうぐや、いほうのまほうやくをばらまく、ベーターグランディアにつぐめいわくこっか、デルタズマフェン」
女性騎士さんと話していた格好の状態で、首だけを左斜め後ろへと、横ではなく縦で傾けるようにして氷檻の中へと言葉を投げる。
心なし、ビクッとしたヤツにその態勢を変えず酷薄な笑みを口元に貼り付けて続ける。
「おまえらが、くすりをつかい、しゅうへんしょこくをうちがわから、くさらせてゆこうとするたくらみ。“ラザエリーのはこにわ” けいかくにおいて、もっともしょうがいとなるだろうそんざいは、かっこくにねづく、ちょうやくしたちと、うけつがれるちに、そのさいをもつ、くすしのかけいと、そのけいふ」
死んだような目をしてる癖に、ヤツは俺が口にすることへ僅かながら瞳を揺らした。
「わが、シグマセンティエにおいては、まもられた。これがなにをいみするか、わからぬはずはあるまい?」
檻の中で凍った身の冷たさからか、それとも。
捕らえられたままでも地獄、戻っても地獄な状況を理解したからなのか、震えている身体。
「そうとおくないみらい、デルタズマフェンのなまえは、たいりくじょうからきえてもらうことになる」
「あら、いいじゃない。まおうせんのときだって『これぞこうき』なんて、こくおうみずからいっちゃったりしてさ? しゅうへんこくガンむしして、ベーターグランディアといっしょになって、じゃましかしないんだから。いまのうちからなくしちゃえばいいのよ!」
「魔、王、戦……?」
俺の後を続けたアリューシャが、口走ったワードを驚愕と共に拾い上げたらしいネストールが、切れ切れに呟く声。
アリューシャは、スタスタと氷檻の前へ行き。
「ステータスオープン!」
ヤツの前で自分のステータスボードを開き、現れたその光板を右手の掌で思い切り叩いた。
「みなさい! これがしょうこよ!」
アリューシャが、掌で叩いた場所の傍には “聖女[覚醒前]” の表示。
「っ‼︎」
「わかったなら、もう、わたしたちのじゃまはしないで。つぎにわたしたちのまわりをうろちょろしたら、アンタんとこのしろと、おもだったきぞくのやしきに」
要求しているというより、完全に脅す気配を纏っていたアリューシャは、何故かそこで言葉を切って、変なタメを作ったと思ったら、ずびしぃ! と音が鳴りそうな勢いで俺を指差した。
「6せいれいおうをけしかけるわよ! エルが!」
「おれかよ⁈ たんかきったの、おまえじゃねぇか‼︎ つか、かかわってこられたときのたいおうどうすんのか、きめてねぇくせに、てきこくのちょうほうぶいんをおどそうとすんな!」
「うるさいわね! かくせいしてんのアンタだけなんだから、アンタいがいにだれがなにできるっていうのよ⁈」
「やだな、アリィ。そんなのくにとしてもんくつけるにきまってるじゃないか」
俺とアリューシャの不毛な会話に割って入ってきたのは、不思議と物凄く機嫌が激悪い感じの声を出したエンディミオン殿下だった。
「ぼくだって、おうぞくなんだよ? なかまをがいされて、くにとたみをきけんにさらして、かんけいきぞくのメンツをまるつぶしされたあげく、くににつくす、ぶんかんや、ぶかんのものたちを、これほどまでにコケにされて、だまってなんかいられないよ」
その暗黒オーラ、魔王級⭐︎
「じゃなくて! エンディ! おまえは、ゆう……」
「きゃあああああああっ‼︎ エンディミオンでんかかっこいいいいいいいいいいいいいい‼︎」
俺のセリフにモロ被りする形で、アリューシャが叫んだ。
「なかまのために! くにのために! たみのために! そしてひび、しんめいをとしてしょくむにはげむものたちのために! ふだんおだやかなエンディミオンでんがが、いかりといきどおりもあらわに、てきこくのかんじゃをあいてに、いさましくもはげしいおもいをぶつけ、ついに! こくさいせいじのせかいへいどむ! けついを! かためる! もえスチルさいこぉぉぉぉぉぉ‼︎ すてきぃぃぃぃ‼︎ エンディミオンでんかぁぁぁぁぁ‼︎ すきぃぃぃぃぃ‼︎」
あ。
暗黒オーラ引っ込んだ。
すげ。
「ん、んっ! アリィ? また、ぼくのよびかた、もどってるよっ? ちゃんとよんで?」
咳払いとかしても無駄なレベルで顔を赤くして照れてるエンディミオン殿下は、それでも呼び方の訂正をアリューシャに要求した。
「はぁい♡ だってエンディってば、さすが、おうじてんか♡ ってかんじで♡ すっごく、かっこよかったんだもん♡」
え? 待って。
聖女にコイツが選ばれた理由って、まさか……エンディの闇堕ち阻止?
「エルドレッドさま」
「え? なに? リリエンヌ?」
アレコレ考えかけていた俺は、リリエンヌの手が俺の腕に触れて名を呼びかけてくれたことで、その思考の全てを綺麗サッパリ放棄した。
「わるいのは、いちぶのひとたちで、このひとのようなかたたちは、わたくしが、おとうさまとおにいさまにさからえなかったように、さまざまなじじょうで、いうことをきくしかないたちばにおられるかたも、いるとおもうのです……だから」
「だいじょうぶ。キミの、のぞまないことを、おれはしないよ」
リリエンヌの訴えに、そう即答したら、本当に嬉しそうな綺麗で可愛い笑顔を彼女が見せてくれたから。
「ありがとうぞんじます」
可愛い声でお礼言ってくれたのも聞けたし、俺⭐︎満足。
うん、とりあえずリリエンヌに免じて国ごと無くすのは勘弁してやるよ、デルタズマフェン。
心優しいリリエンヌに感謝しろよな! 割とマジで!
応援ありがとうございます!
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