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第1章 ウィムンド王国編 1
蘇生の始まり
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飲食店通りの火事が完全に鎮火して、巻き込まれた人々 ── 軽傷から重症まで様々居た ── が全て治癒の光に包み込まれるまで、大体10min(約10分)程度の時間が過ぎた頃。
焼け跡から運び出されて来たのは、無残に焼け爛れた3つの遺体だった。
内1体は、大きさからして子供なのだろう。
石畳に敷かれた布の上に並べられた者達に家族や知人を見つけられなかった人々が、恐る恐る近寄って来るのが見える。
「っ⁈ これは、ラディの……嘘っ⁈ 嘘でしょ⁈ 嘘よねっ⁈ ……嫌……嫌あぁぁぁ!! ラディィィィ! 嘘よ!! 誰か嘘だって言って!! ラディ! ラディっ!!」
「ラディ!! あああああ!!」
子供の右手が握っていた何かの破片。
それから持ち主を特定してしまったらしい夫婦が遺体に駆け寄って、子供の名前を叫びながら泣き崩れた。
「……アイシャ? こ、この指輪……今朝、僕が、渡した……アイシャっ⁈ アイシャなのか⁈ 何で⁈ 嫌だ! 何でだ! どうして君が⁈」
別の亡骸でも所持品から個人を特定してしまったらしい男性が、困惑と衝撃から受け止め切れぬ恋人の死に混乱した様子を見せていた。
もう一体の遺体は男性のようだが、特徴らしき特徴が残っていなかったのか傍寄る者もおらず、遠巻きに様子を窺われていた。
「これだけの被害で死者が3人なんて、有り得ん程に少ない話しではあるが、それでも……嫌なものだな」
スライが、誰にともなくポツリと言ったことに返る声は1つもなかったけれど、周囲に居た者達は皆、一様に俯き加減となって沈んだ表情をしていた。
「……3人か。間に合うと良いが」
「?」
すぐ傍から聞こえた呟きに彼がそちらへ顔を向けたと同時に外側へ向けて真横に勢いよく左手を振り切ったのは、アーウィンだった。
3つの遺体が青白い光に包まれて浮き上がったことに泣き叫んでいた者達も様子を見ていた者達も驚きに目を瞠る。
「殿下? 何する気です?」
「先ずは肉体の損傷を復元する。特に身元が判明しておらぬ者が1人居るゆえ、捨て置く訳にもいかぬ」
怪我人を治癒させている白い光球とは、微妙に色の違う青白いそれは、内包した遺体を文字通り復元しているようで、内側に金の光粒による渦巻きを発生させながら、焼き切れた血管を光粒で補完して繋ぎ合わせ、捲れ上がった皮膚を平らにして足りない部分を光粒で塞ぎ、焼け焦げて見る影もなかった髪をスルスルと光粒を継ぎ足すようにしながら伸ばすことで元の長さに戻してゆく。
「おおっ……!」
感嘆を示す声があちこちから漏れる中、最後に簡素な生成りの貫頭衣を身に纏わりつかせてから光粒の渦は消えていった。
代わりに青白い光球の中に横たえられた身体の丁度、頭上に当たる位置へ、何かの数字が現れて、右端から段々とその数字が減っているのが見て取れた。
「その者達の頭上に現れた数字が、残り時間だ」
よく通る声で、そう言いながら歩き出したアーウィンは、真っ直ぐ彼等の元へと向かう。
「それが全てゼロとなった時、その者達の身体と魂の繋がりが切れ、誠の死を迎えることとなる」
「!!」
子供の傍に居た夫婦が。
恋人の傍に居た男性が。
それぞれに現れている数字へ目を向けた。
全員、既に3tim(約3時間)を切っている中、子供の数字だけが一際短く、残り1tim(約1時間)を下回っていた。
「まだ間に合う」
傍近くで足を止めたアーウィンが、夫婦を、残された恋人を、順に見遣りながら告げる。
「そなた達の子は。想い人は。まだ、真に死したのではない。冥界より連れ戻すことは可能だ」
「どうすればいいの⁈ 何をすればラディは生き返るの⁈」
「これが残り時間だって言うなら、ウチの子にはもう時間がない! 教えてくれ! 何でもする!!」
バタバタと慌てて這いずるような動きでアーウィンの足元へとやってきた夫婦が縋るように訴えた。
「術は私が発動する。そこは考えなくてよい。必要なのは、その者を連れ戻すことが出来るだけの強い絆と意志を持ち、冥界の長であり、死後の裁判を司る神である地獄神に魂を連れ戻すことを許されるだけの資格……その者への深い愛情を最低でも2人の者が示さなければならない」
「えっ」
アーウィンの言葉にあった「最低でも2人」の部分に反応したのは、女性の傍に居た恋人の男だった。
「彼女には、まだ時間がある。もう1人該当する者を探し出して早急にここへ連れて来い!」
「っ! 分かった!!」
もう1人に心当たりがあったのだろう。
1度だけ彼女を見返ってから頷いて、男は全力で走り出した。
「その子は急がねば間に合わん。覚悟が決まったならば始めるぞ?」
「この子が取り戻せるなら何でもする! 頼むっ!」
「お願いしますっ!」
目を戻して入れたことわりに夫婦が返答を変えることはなく、アーウィンは強く頷いてその場に膝をつくと両手を光球の下にある地面……子供に1番近い場所へとピッタリくっつけた。
「騎士スライ・ベックリン。この子の蘇生をして居る間に身元の判明しておらぬ残りの1人、間に合う内に関係者を洗い出してくれ」
「分かりました!」
アーウィンからの依頼に了承を返して他の騎士や冒険者、傭兵達に声をかけた彼は、残りの1人を知る者を見つける為に動き出した。
焼け跡から運び出されて来たのは、無残に焼け爛れた3つの遺体だった。
内1体は、大きさからして子供なのだろう。
石畳に敷かれた布の上に並べられた者達に家族や知人を見つけられなかった人々が、恐る恐る近寄って来るのが見える。
「っ⁈ これは、ラディの……嘘っ⁈ 嘘でしょ⁈ 嘘よねっ⁈ ……嫌……嫌あぁぁぁ!! ラディィィィ! 嘘よ!! 誰か嘘だって言って!! ラディ! ラディっ!!」
「ラディ!! あああああ!!」
子供の右手が握っていた何かの破片。
それから持ち主を特定してしまったらしい夫婦が遺体に駆け寄って、子供の名前を叫びながら泣き崩れた。
「……アイシャ? こ、この指輪……今朝、僕が、渡した……アイシャっ⁈ アイシャなのか⁈ 何で⁈ 嫌だ! 何でだ! どうして君が⁈」
別の亡骸でも所持品から個人を特定してしまったらしい男性が、困惑と衝撃から受け止め切れぬ恋人の死に混乱した様子を見せていた。
もう一体の遺体は男性のようだが、特徴らしき特徴が残っていなかったのか傍寄る者もおらず、遠巻きに様子を窺われていた。
「これだけの被害で死者が3人なんて、有り得ん程に少ない話しではあるが、それでも……嫌なものだな」
スライが、誰にともなくポツリと言ったことに返る声は1つもなかったけれど、周囲に居た者達は皆、一様に俯き加減となって沈んだ表情をしていた。
「……3人か。間に合うと良いが」
「?」
すぐ傍から聞こえた呟きに彼がそちらへ顔を向けたと同時に外側へ向けて真横に勢いよく左手を振り切ったのは、アーウィンだった。
3つの遺体が青白い光に包まれて浮き上がったことに泣き叫んでいた者達も様子を見ていた者達も驚きに目を瞠る。
「殿下? 何する気です?」
「先ずは肉体の損傷を復元する。特に身元が判明しておらぬ者が1人居るゆえ、捨て置く訳にもいかぬ」
怪我人を治癒させている白い光球とは、微妙に色の違う青白いそれは、内包した遺体を文字通り復元しているようで、内側に金の光粒による渦巻きを発生させながら、焼き切れた血管を光粒で補完して繋ぎ合わせ、捲れ上がった皮膚を平らにして足りない部分を光粒で塞ぎ、焼け焦げて見る影もなかった髪をスルスルと光粒を継ぎ足すようにしながら伸ばすことで元の長さに戻してゆく。
「おおっ……!」
感嘆を示す声があちこちから漏れる中、最後に簡素な生成りの貫頭衣を身に纏わりつかせてから光粒の渦は消えていった。
代わりに青白い光球の中に横たえられた身体の丁度、頭上に当たる位置へ、何かの数字が現れて、右端から段々とその数字が減っているのが見て取れた。
「その者達の頭上に現れた数字が、残り時間だ」
よく通る声で、そう言いながら歩き出したアーウィンは、真っ直ぐ彼等の元へと向かう。
「それが全てゼロとなった時、その者達の身体と魂の繋がりが切れ、誠の死を迎えることとなる」
「!!」
子供の傍に居た夫婦が。
恋人の傍に居た男性が。
それぞれに現れている数字へ目を向けた。
全員、既に3tim(約3時間)を切っている中、子供の数字だけが一際短く、残り1tim(約1時間)を下回っていた。
「まだ間に合う」
傍近くで足を止めたアーウィンが、夫婦を、残された恋人を、順に見遣りながら告げる。
「そなた達の子は。想い人は。まだ、真に死したのではない。冥界より連れ戻すことは可能だ」
「どうすればいいの⁈ 何をすればラディは生き返るの⁈」
「これが残り時間だって言うなら、ウチの子にはもう時間がない! 教えてくれ! 何でもする!!」
バタバタと慌てて這いずるような動きでアーウィンの足元へとやってきた夫婦が縋るように訴えた。
「術は私が発動する。そこは考えなくてよい。必要なのは、その者を連れ戻すことが出来るだけの強い絆と意志を持ち、冥界の長であり、死後の裁判を司る神である地獄神に魂を連れ戻すことを許されるだけの資格……その者への深い愛情を最低でも2人の者が示さなければならない」
「えっ」
アーウィンの言葉にあった「最低でも2人」の部分に反応したのは、女性の傍に居た恋人の男だった。
「彼女には、まだ時間がある。もう1人該当する者を探し出して早急にここへ連れて来い!」
「っ! 分かった!!」
もう1人に心当たりがあったのだろう。
1度だけ彼女を見返ってから頷いて、男は全力で走り出した。
「その子は急がねば間に合わん。覚悟が決まったならば始めるぞ?」
「この子が取り戻せるなら何でもする! 頼むっ!」
「お願いしますっ!」
目を戻して入れたことわりに夫婦が返答を変えることはなく、アーウィンは強く頷いてその場に膝をつくと両手を光球の下にある地面……子供に1番近い場所へとピッタリくっつけた。
「騎士スライ・ベックリン。この子の蘇生をして居る間に身元の判明しておらぬ残りの1人、間に合う内に関係者を洗い出してくれ」
「分かりました!」
アーウィンからの依頼に了承を返して他の騎士や冒険者、傭兵達に声をかけた彼は、残りの1人を知る者を見つける為に動き出した。
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