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第1章 ウィムンド王国編 2
報告その2 -ワイバーン回収 2 -
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大きく広がる魔法陣は、丁度真上から見た時に荷車の縦幅を少し過ぎるくらい、横幅は完全にオーバーする正円で展開された。
上空に浮かんでいる陣からゆっくりと姿を現したワイバーンの亡骸は、地上にある荷車の繋ぎ合わせの群れに向かって降りて来る。
倉庫街でその姿を見た者こそ、この場には居なかったけれど、その時と同じ……翼を畳んで尻尾を身体に沿わせる形で足元から現れた巨体が、輝く金赤の瞳も、ずらりと並んだ歯列や鰭も生きていた時、そのままで荷車の上へと下される。
上空に展開されていた大収納の魔法陣が閉じた瞬間、ズン、とワイバーン自体の重量が荷車へとかかったことで車輪が地面に沈み込んだ。
その事実と間近で見る圧巻の巨体。
死んでいると分かってはいても何故か威圧されているように気圧された。
「お、おい! ぼさっとするな! すぐにロープで固定しろ!」
「はっ!」
ベントレー子爵の言葉に今日、幾度目になるか分からない “そうだった!” 感を抱きながら騎士達が動き出す。
「殿下」
「何だ?」
「本当に討伐したこと、それ自体に対する報酬もこのワイバーンの素材受け取りも望まれないのですね?」
「うえぇっ⁈」
念の為チック満載な声音で、フリュヒテンゴルト公爵がアーウィンへと尋ねたことに何故か作業中の騎士達が驚愕の声を上げた。
「? ……ああ。昨日話した通り、ヴォルガニアレガース亜種に食らった無作為転移の結果、この国の国境を意図せずして侵してしまったことを代わりに容赦してくれるのならば、報酬も素材も望まぬよ。それでも足らぬと申すのならば、ネードリー平原で得た全ての素材と情報も渡そう」
事情を知らない騎士達から上がった声の意味を勘違いしたのだろうアーウィンが、全く交換条件なしに譲渡する訳ではないのだと示すように答え、しかも交換物を上積みした。
「いやはや、流石にそれでは我が国に齎される恩恵の方が多すぎますのでな。まず、殿下の国境侵犯に関しては、後程、陛下から御免状が発行される運びとなりましたので、ご心配なく」
「そうか。貴国の国王陛下が下された賢明なる御判断に感謝を」
「いえいえ。その上で、なのですが」
「うん?」
「我が国に御滞在中の傍付きと致しまして、殿下の後ろに居ります、フェリシティア・セギュワール伯爵令嬢をお付け致します。彼女は第1王女付きの侍女としても優秀な娘でございますので、お気に召しましたなら是非、御国までお連れくださいませ。本人もそれを強く望んでおります」
フリュヒテンゴルト公爵の言葉に背後でミューニャと手を握り合っている彼女へとアーウィンが振り向いた。
対するフェリシティアは、あくまでも彼の国境侵犯を問われなくする為の工作を成し遂げた報酬として、この国から逃して貰えるのだと思っていたのだろう。
反射的にビクッと身体を竦ませてから、慌ててミューニャの手を離し、隠し持っていた水晶型の魔導具をアーウィンへと差し出した。
「あ、あの! 申し訳ございません! 陛下が御免状を発行なさる運びを存じ上げなかったものですから、わたくしの出来る範囲で可能な限りのことを、と……海軍伯の役職を頂いている父より入国登録の魔導具を強だ……いえ! 借り受けておりましたもので」
(……今、強奪って言いかけなかったか?)
(おいおい。大丈夫か、お嬢さん。立派に偽証系の犯罪になるんだぞ、それ?)
(上にバレたら家どころか国から追ん出されんぞ?)
突然、水を向けられたことで心の準備がすっ飛んでしまったのだろうフェリシティアは、取り繕うことも出来ず、洗いざらいこの場で白状ってしまい、会話が聞こえる距離にいた騎士達から心の総ツッコミを受けていた。
幸か不幸か、騎士達の言葉は口から音として紡がれはしなかったけれど。
「フェリシティア嬢。もしかして、公爵と子爵の立ち合いで私にしたかったもう一つの話しというのは、このことだったのかね?」
話しの流れからフェリシティアが王女のお茶会への招待状を自分に持って来たこと以外の用事というのは、それしかないだろうとアタリをつけて問いかけると彼女は、少し俯き加減となりながら頷いた。
「………はい。不要になってしまったようですが」
「そういうことを言っているのではない。理解出来ているかね? 私の罪を不問とする為に貴女がしようとしたことは、例え国に露見せずに済んだとしても虚偽や偽証として罪科総記録所に記録され、貴女が死した後に彼等同様、該当する罪の地獄へ堕獄する可能があったと言うことなのだよ?」
今以って空間上に浮かぶ四角の中で2つの回転打刻突起に苛まれている5人を示して問いかけたアーウィンにフェリシティアは顔を上げ、もう1度彼等を見やった。
犯した罪相応の呵責、と言われていたから己が全く同じ目に遭うことはない筈だ。
だが、アーウィンがああ言う以上、きっと虚偽や偽証に当て嵌まる地獄は存在するのだろうな……そう思った。
「わたくしは、3つの理由を以ってこの魔導具を持ち出しました。決して盗み出したのではございませんが、その3つのことを理由に己の罪を正当化するつもりはございません。露見して、この国の裁判にかけられることも覚悟はしておりました」
「3つの理由とやらがどんなものなのかを尋ねてもよいかね?」
「はい。1つ目は、わたくし自身の望みを叶える為。2つ目は、この国の行く末の為。3つ目は、わたくし自身がアーウィン殿下の為になると考えていたことを実行しただけ、ということになるかと存じます」
「……2つ目と3つ目はいい。最初の理由、貴女の望みというのは何だね? それは現世と隠世双方で罪となることを犯してまで叶えたいことなのかね?」
「はい」
アーウィンからの問いかけにハッキリと是を返したフェリシティアは、四角の向こうから彼へと視線を移して続く言葉を口にした。
「わたくしは、自由になりたかった。伯爵家の長女として生まれたからには、飲み込まねばならぬ自由が義務という形で存在していることは分かっております。その理解からこれまで、己が耐えているのだと言うことすら忘れて姫からの理不尽に耐えて参りましたが、実はそれが耐えなくてよい理不尽であったことに気がついてしまったのです」
前置きのようにそう言って、フェリシティアが語ったことは、この国の貴族や王都に暮らす国民ならば誰もが知っている第1王女の暴挙だった。
アーウィンは彼女の話しを聞きながら公爵、子爵、レンリアード、ローガン、果てはミューニャや騎士達までもが “デスヨネー” みたいな空気感と苦虫を噛み潰してしまったような表情を浮かべている様を見回して、彼女の話しが、キチンと国内で理不尽であると理解されていながらも王族の命令である、というただその1点のみを理由にこれまで是正されずに来たことなのだと理解した。
「理由と経緯は説明いたしましたが、わたくしは生まれて初めて海軍伯である父に逆らいました。これまで唯々諾々と、ただただ従順であることだけを旨として来た姫と侍女長の命令にも。例え犯罪者として裁かれた結果だとしても、逃亡者としてビクビクしながら追われる身になるのではなく、この国が追い出してくれるのならば、もうそれでいい。わたくしは……!」
「そこまで、心が追い詰められてしまったのだな」
「っ」
心の中で溜まりに溜まっていた膿みや汚血を吐き出すように語っていたフェリシティアへ、労わりを滲ませた声でアーウィンは言った。
「アーウィン殿下! 貴方様を利用しようとしたことは幾重にもお詫び申し上げます! ですがっ!」
「利用されたなどとは思っておらぬ。私の存在は、単なる切っ掛けに過ぎぬのだと話しを聞いて居れば分かるからな。それよりも貴国の王女殿下を始め、その傍に居る女性者達が、極度の視野狭窄に陥っていることの方が気にかかる」
「えっ?」
「世界は広いのだぞ? この国がある大陸の他にも我が国だけでなく、様々な大陸に色々な国が存在して居る。本当に理想の男とやらを探したいのならば、この国に居る者や訪れた者だけに拘らず、様々な地へ探しに行けばよいではないか。王族であるが故に己で行くことが出来ぬと申すのならば、誰か人を探しに向わせればよい。そうだな……手始めに、此度の件が終われば、この国を出て帰国の途に着く私と共に、そなたがその任を担うというのはどうだ?」
「…………アーウィン殿下………」
公爵が、自分のことを気に入れば国に連れ帰っても構わないと口にした意味と語って聞かせた己の望みを正確に理解し、その上でされた提案にフェリシティアの視界が涙で滲んだ。
「わざわざ咎人になどならぬでよかろう? 堂々と出る方法なぞ、幾らでも作れるではないか」
嬉しかった。
自分の思いを。
苦しみを。
きちんと受け止めてくれた上で尚、後ろめたさを感じずに済む方法を考えてくれる人が存在していたことが。
「フリュヒテンゴルト公爵、茶会の誘いを辞退する詫びとして、貴国の王女殿下に相応しい男とやらを探す為の先遣隊を侍女達の中から組織し、私がその先導を務めることを提案したいのだが、どうだ?」
「よいのではないのですか? 公爵閣下。儂とレンリアード、スライとバリナが侍女達の護衛につきましょうぞ」
「………」
ローガンが名を上げた面子は、このままいけばフェリシティア同様、王女派や宰相一派から睨まれて、爪弾き者となることが確定している者達だった。
そうなる前に大義名分と手筈を整えてしまえることは、本人達が同意している以上、最上の手段であると言える。
「ニャア! それなら大陸越えしてる組織の協力者としてミューニャも同行するのニャ! 他国への足掛かりが何もないより、ずっと話しがスムーズに進むのニャ!」
「私も構いませんよ! スライ隊長も喜んで同行すると思いますから話しをしておきましょうか?」
ミューニャもバリナも諸手を上げて協力を申し出てきたことにフリュヒテンゴルト公爵は、深々と盛大な溜息をついてみせた。
「……確かに、それが1番平和で角の立たぬ落とし所ではあるやもしれぬな。陛下に上奏してみることにしよう」
それ以外に八方丸く収める手段を思いつくことの出来ない己の頭が恨めしかった。
上空に浮かんでいる陣からゆっくりと姿を現したワイバーンの亡骸は、地上にある荷車の繋ぎ合わせの群れに向かって降りて来る。
倉庫街でその姿を見た者こそ、この場には居なかったけれど、その時と同じ……翼を畳んで尻尾を身体に沿わせる形で足元から現れた巨体が、輝く金赤の瞳も、ずらりと並んだ歯列や鰭も生きていた時、そのままで荷車の上へと下される。
上空に展開されていた大収納の魔法陣が閉じた瞬間、ズン、とワイバーン自体の重量が荷車へとかかったことで車輪が地面に沈み込んだ。
その事実と間近で見る圧巻の巨体。
死んでいると分かってはいても何故か威圧されているように気圧された。
「お、おい! ぼさっとするな! すぐにロープで固定しろ!」
「はっ!」
ベントレー子爵の言葉に今日、幾度目になるか分からない “そうだった!” 感を抱きながら騎士達が動き出す。
「殿下」
「何だ?」
「本当に討伐したこと、それ自体に対する報酬もこのワイバーンの素材受け取りも望まれないのですね?」
「うえぇっ⁈」
念の為チック満載な声音で、フリュヒテンゴルト公爵がアーウィンへと尋ねたことに何故か作業中の騎士達が驚愕の声を上げた。
「? ……ああ。昨日話した通り、ヴォルガニアレガース亜種に食らった無作為転移の結果、この国の国境を意図せずして侵してしまったことを代わりに容赦してくれるのならば、報酬も素材も望まぬよ。それでも足らぬと申すのならば、ネードリー平原で得た全ての素材と情報も渡そう」
事情を知らない騎士達から上がった声の意味を勘違いしたのだろうアーウィンが、全く交換条件なしに譲渡する訳ではないのだと示すように答え、しかも交換物を上積みした。
「いやはや、流石にそれでは我が国に齎される恩恵の方が多すぎますのでな。まず、殿下の国境侵犯に関しては、後程、陛下から御免状が発行される運びとなりましたので、ご心配なく」
「そうか。貴国の国王陛下が下された賢明なる御判断に感謝を」
「いえいえ。その上で、なのですが」
「うん?」
「我が国に御滞在中の傍付きと致しまして、殿下の後ろに居ります、フェリシティア・セギュワール伯爵令嬢をお付け致します。彼女は第1王女付きの侍女としても優秀な娘でございますので、お気に召しましたなら是非、御国までお連れくださいませ。本人もそれを強く望んでおります」
フリュヒテンゴルト公爵の言葉に背後でミューニャと手を握り合っている彼女へとアーウィンが振り向いた。
対するフェリシティアは、あくまでも彼の国境侵犯を問われなくする為の工作を成し遂げた報酬として、この国から逃して貰えるのだと思っていたのだろう。
反射的にビクッと身体を竦ませてから、慌ててミューニャの手を離し、隠し持っていた水晶型の魔導具をアーウィンへと差し出した。
「あ、あの! 申し訳ございません! 陛下が御免状を発行なさる運びを存じ上げなかったものですから、わたくしの出来る範囲で可能な限りのことを、と……海軍伯の役職を頂いている父より入国登録の魔導具を強だ……いえ! 借り受けておりましたもので」
(……今、強奪って言いかけなかったか?)
(おいおい。大丈夫か、お嬢さん。立派に偽証系の犯罪になるんだぞ、それ?)
(上にバレたら家どころか国から追ん出されんぞ?)
突然、水を向けられたことで心の準備がすっ飛んでしまったのだろうフェリシティアは、取り繕うことも出来ず、洗いざらいこの場で白状ってしまい、会話が聞こえる距離にいた騎士達から心の総ツッコミを受けていた。
幸か不幸か、騎士達の言葉は口から音として紡がれはしなかったけれど。
「フェリシティア嬢。もしかして、公爵と子爵の立ち合いで私にしたかったもう一つの話しというのは、このことだったのかね?」
話しの流れからフェリシティアが王女のお茶会への招待状を自分に持って来たこと以外の用事というのは、それしかないだろうとアタリをつけて問いかけると彼女は、少し俯き加減となりながら頷いた。
「………はい。不要になってしまったようですが」
「そういうことを言っているのではない。理解出来ているかね? 私の罪を不問とする為に貴女がしようとしたことは、例え国に露見せずに済んだとしても虚偽や偽証として罪科総記録所に記録され、貴女が死した後に彼等同様、該当する罪の地獄へ堕獄する可能があったと言うことなのだよ?」
今以って空間上に浮かぶ四角の中で2つの回転打刻突起に苛まれている5人を示して問いかけたアーウィンにフェリシティアは顔を上げ、もう1度彼等を見やった。
犯した罪相応の呵責、と言われていたから己が全く同じ目に遭うことはない筈だ。
だが、アーウィンがああ言う以上、きっと虚偽や偽証に当て嵌まる地獄は存在するのだろうな……そう思った。
「わたくしは、3つの理由を以ってこの魔導具を持ち出しました。決して盗み出したのではございませんが、その3つのことを理由に己の罪を正当化するつもりはございません。露見して、この国の裁判にかけられることも覚悟はしておりました」
「3つの理由とやらがどんなものなのかを尋ねてもよいかね?」
「はい。1つ目は、わたくし自身の望みを叶える為。2つ目は、この国の行く末の為。3つ目は、わたくし自身がアーウィン殿下の為になると考えていたことを実行しただけ、ということになるかと存じます」
「……2つ目と3つ目はいい。最初の理由、貴女の望みというのは何だね? それは現世と隠世双方で罪となることを犯してまで叶えたいことなのかね?」
「はい」
アーウィンからの問いかけにハッキリと是を返したフェリシティアは、四角の向こうから彼へと視線を移して続く言葉を口にした。
「わたくしは、自由になりたかった。伯爵家の長女として生まれたからには、飲み込まねばならぬ自由が義務という形で存在していることは分かっております。その理解からこれまで、己が耐えているのだと言うことすら忘れて姫からの理不尽に耐えて参りましたが、実はそれが耐えなくてよい理不尽であったことに気がついてしまったのです」
前置きのようにそう言って、フェリシティアが語ったことは、この国の貴族や王都に暮らす国民ならば誰もが知っている第1王女の暴挙だった。
アーウィンは彼女の話しを聞きながら公爵、子爵、レンリアード、ローガン、果てはミューニャや騎士達までもが “デスヨネー” みたいな空気感と苦虫を噛み潰してしまったような表情を浮かべている様を見回して、彼女の話しが、キチンと国内で理不尽であると理解されていながらも王族の命令である、というただその1点のみを理由にこれまで是正されずに来たことなのだと理解した。
「理由と経緯は説明いたしましたが、わたくしは生まれて初めて海軍伯である父に逆らいました。これまで唯々諾々と、ただただ従順であることだけを旨として来た姫と侍女長の命令にも。例え犯罪者として裁かれた結果だとしても、逃亡者としてビクビクしながら追われる身になるのではなく、この国が追い出してくれるのならば、もうそれでいい。わたくしは……!」
「そこまで、心が追い詰められてしまったのだな」
「っ」
心の中で溜まりに溜まっていた膿みや汚血を吐き出すように語っていたフェリシティアへ、労わりを滲ませた声でアーウィンは言った。
「アーウィン殿下! 貴方様を利用しようとしたことは幾重にもお詫び申し上げます! ですがっ!」
「利用されたなどとは思っておらぬ。私の存在は、単なる切っ掛けに過ぎぬのだと話しを聞いて居れば分かるからな。それよりも貴国の王女殿下を始め、その傍に居る女性者達が、極度の視野狭窄に陥っていることの方が気にかかる」
「えっ?」
「世界は広いのだぞ? この国がある大陸の他にも我が国だけでなく、様々な大陸に色々な国が存在して居る。本当に理想の男とやらを探したいのならば、この国に居る者や訪れた者だけに拘らず、様々な地へ探しに行けばよいではないか。王族であるが故に己で行くことが出来ぬと申すのならば、誰か人を探しに向わせればよい。そうだな……手始めに、此度の件が終われば、この国を出て帰国の途に着く私と共に、そなたがその任を担うというのはどうだ?」
「…………アーウィン殿下………」
公爵が、自分のことを気に入れば国に連れ帰っても構わないと口にした意味と語って聞かせた己の望みを正確に理解し、その上でされた提案にフェリシティアの視界が涙で滲んだ。
「わざわざ咎人になどならぬでよかろう? 堂々と出る方法なぞ、幾らでも作れるではないか」
嬉しかった。
自分の思いを。
苦しみを。
きちんと受け止めてくれた上で尚、後ろめたさを感じずに済む方法を考えてくれる人が存在していたことが。
「フリュヒテンゴルト公爵、茶会の誘いを辞退する詫びとして、貴国の王女殿下に相応しい男とやらを探す為の先遣隊を侍女達の中から組織し、私がその先導を務めることを提案したいのだが、どうだ?」
「よいのではないのですか? 公爵閣下。儂とレンリアード、スライとバリナが侍女達の護衛につきましょうぞ」
「………」
ローガンが名を上げた面子は、このままいけばフェリシティア同様、王女派や宰相一派から睨まれて、爪弾き者となることが確定している者達だった。
そうなる前に大義名分と手筈を整えてしまえることは、本人達が同意している以上、最上の手段であると言える。
「ニャア! それなら大陸越えしてる組織の協力者としてミューニャも同行するのニャ! 他国への足掛かりが何もないより、ずっと話しがスムーズに進むのニャ!」
「私も構いませんよ! スライ隊長も喜んで同行すると思いますから話しをしておきましょうか?」
ミューニャもバリナも諸手を上げて協力を申し出てきたことにフリュヒテンゴルト公爵は、深々と盛大な溜息をついてみせた。
「……確かに、それが1番平和で角の立たぬ落とし所ではあるやもしれぬな。陛下に上奏してみることにしよう」
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